インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「埋めるもの(GS)」

ラッフィン (2006-07-05 18:21)
>NEXT


アシュタロスの事件が解決して1ヶ月が過ぎた。
ルシオラを失ったことで塞ぎこんでいた横島だったが、友達や事務所の面々のおかげで、最近では笑顔が出せるようになっていた。
特に雪之丞は一番大切な人――母親――を失った過去があったために一番親身になって、それこそ体を張って横島に訴えた。

「横島!!てめぇいつまでウジウジしてるつもりだ!」

「お前がそんなことしててもルシオラは生き返らないんだぞ!」

横島も黙ってはいなかった。

「俺のせいでルシオラは死んだんだ・・・」

「こんな奴のために自分の命を捨てたんだ・・・」

「お前に俺の気持ちがわかるか!」

この横島の言葉に雪之丞の拳がとぶ。バキッと言う鈍い音が響き渡る。

「ああ、お前の気持ちなんてわからねぇよ。だがな、大切な人を失くした悲しみは知ってる。」

「お前がいつまでもへこんでたらルシオラも浮かばれねぇぞ」
「うるさい!」

横島は子供が癇癪を起こしたように雪之丞に殴りかかる。雪之丞は落ち着いてその拳を避わし、逆にカウンターを入れた。それを受けた横島はふっとぶもすぐに立ち上がり再び殴りかかる。しかし、今度は雪之丞が先に拳を繰り出した。
二人の殴り合いは半日近く続いた。すでにお互いに最初の目的を忘れている。
最後にクロスカウンターをお互いの顔面に入れて二人はようやく力尽きた。
そのときの横島の顔はどこかすっきりしたような顔をしていた。

「・・・・雪之丞」
「あ?」
「サンキューな。」
「おう」

その翌日、事務所に顔を出した横島の顔には久々に笑顔が浮かんでいた。

しかし、横島はルシオラのことを吹っ切れたと思えなかった。
美女にとびつくのはいつものことだったが、いつもの勢いがないし、何もないのに突然涙を流したり、ささいなことで過剰に怒ったりすることが多々あったから。勿論、本人にそういう気は全くない。感情の制御が出来なくなっているのだ。
さらに、霊能力が除々に使えなくなってきていた。
今ではサイキックソーサーも出せなくなってしまっている。
当初は・・・

「何、勝手に霊能が使えなくなってんのよ!」
「堪忍やーーーー!!」

ってなことで上司にシバかれてたりもしたが、サイキックソーサーも出せなくなった今ではさすがに心配されている。そして、今日は神族の調査官、ヒャクメに横島を霊視してもらうことになっていた。


「じゃ、早速始めるのね〜」

ヒャクメはパソコンに繋いであるコードを額に当て、横島の霊視を始める。
傍らには付き添いとして妙神山の管理人にしてヒャクメの唯一の親友、小竜姫の姿もあった。
霊視はものの5分と掛からずに終えたが、ヒャクメの表情は沈痛な面持ちだった。
横島は隣の部屋に待機してもらって、ヒャクメは美神とおキヌ、小竜姫に霊視の結果を知らせた。

「ヒャクメ、どうでしたか?何かわかりました?」

小竜姫の問いかけにヒャクメは自信満々に答えた。

「もちろん、解ったのね〜。横島さんの今の状態は精神が不安定になっていることによる混乱が原因なのよ。」

ヒャクメの説明によると、表上は普通にしているが、内面では激しく混乱しているために、突然泣いたり、怒ったりしているとのことだ。
次に原因の説明に入るとこで再び表情を曇らせる。

「原因はルシオラさんのことなのね〜・・・横島さんの中で激しい自責の念が渦巻いているのよ」

4人の空気が沈む。
特にヒャクメは心を覗ける能力を持っているため、横島の抱いている感情を読み取ってしまい、ことさら堪えている様子。

「で、でも霊能力が無くなったのはどうしてなの?」

その空気を変えるように美神は質問した。けど、これは完全に失敗だった。

「霊能力も同じ、精神の不安定が原因。ただ、勘違いしているみたいだから言うけど。横島さんは別に霊能力をなくしているわけではないのね〜」

「へ?なくなってないの?」

「そう、無くなってないわ。使えないだけ。霊力は以前と変わってないのね〜。いえ、むしろ上がっているくらいなのね〜」

驚愕する3人を他所にヒャクメは説明を続ける。

「ルシオラさんの魂を取り込んだから、霊力が増してきているの。一応、ルシオラさんは上級魔族級の魔力があったわけだから当然と言えば当然の結果なのね〜。ただ、精神の混乱による霊力の暴走を防ぐために無意識に能力を封印している状態なのね〜」

これがとどめとなり、この場は沈黙が支配した。
この場にいる人は言葉にはしないが『やっぱり横島(君、さん)にとってルシオラ(さん)の存在は大きいのね』と思っていた。


横島には取り合えず、『同期合体による後遺症』という話にして誤魔化した。
ルシオラのことを引きずっているからとは言えなかったからだ。最近、ようやく笑顔が出せるようになったのに、それを言ってしまったらまた消えてしまうと考えたために。

最も美神は『せっかく文殊使って道具代を浮かそうと思ってたのに〜!!』と言う考えも持っていたのだが。

横島は小竜姫達が真実を言っていないことは解っていた。それは自分への気遣いだと言うことも理解しているので何も言わなかった。
自分でも今の状態はおかしいことくらいわかっている。何かが足りない。心にポッカリと穴が開いているのだ。けれど、こればっかりはすぐには解決しないだろう。心の問題だから。時間をかけて少しずつ受け入れて行くしかないのだ。

「とりあえず、霊能が使えないのはわかりましたけど。これからバイトはどうすればいいっすか?」

そう、心の問題は今はどうしようもない。が、バイトとなるとそうはいかない。生活が掛かっているからだ。霊能が使えない今となっては自分は足手まといでしかないのだから。やめたくはないがクビと言われれば仕方ないだろう。となると早急に新しいバイトを探さねばならない。ただでさえギリギリの生活だったので金がない。
このままでは給料貰うまで持たない。
そんな不安を抱き横島は問うた。

「今までと一緒よ。」
「え?でも、俺は霊能使えないっすよ?」
「は?何言ってるのよ。誰もアンタの霊能なんか頼ってないの。アンタは荷物持ちとしてついてくりゃいいのよ。わかった?」
「は、はい!よろしくお願いします!」

他人が聞いたら怒りそうな言葉だが、横島を思いやっての言葉だった。
ここでようやく皆の顔に笑みが浮かんだのだったが・・・

「荷物持ちがいないと仕事も出来ないしね。それくらいのリスクは仕方ないわ」

美神は美神だった・・・。


数日後。
事務所に1件の依頼が来た。依頼料はそれほど高くはなかった(美神主観)がその依頼人が前に雪女の事件の時の依頼人だったため、過去の冷徹な女とレッテルを貼られた事を思い出してしまい、泣く泣く引き受けた。

――北海道――

「さすがにこっちはまだ肌寒いくらいね」
「あっちはまだ暖かいくらいっスから、こんなもんじゃないっスか?」
「そうですね〜」

現地に着いた美神、横島、おキヌは早速、依頼人のところに行き状況を聞きに行く事にする。何でも、暗くなったころに前に雪女を退治したところで青白く発光しているそうだ。付近の人も不気味がって近づかなくなっていると言う。
美神達は一泊して、昼頃に下見調査を行うことにした。

「さすがに雪もほとんど溶けちゃってるわね」
「私、北海道はずっと雪が積もっているかと思ってました」
「そういうとこもあるんじゃない?」

翌日、下見にやって来た美神達だが、そこは何もおかしなところはなかった。
それでも、油断することなく周囲を見て回ってみたが、結果は変わらずだった。
と言うわけで、発光すると言う時間にもう一度来ることになった。

日も沈み辺りが暗くなった頃。
再び美神達は現場に来て、近くの岩に隠れている。前に雪女を凍らせたあの機会も持ってきているので準備万端だ。目撃情報通り辺りは青白い光を放っている。
周りが暗い中、ここだけは青白く淡い光を発しているために残っている雪が輝いているように見え、幻想的な雰囲気を創り出していた。

「美神さん、あの光はなんでしょう?」
「ちょっと待って」

おキヌの問いかけを制止し霊視ゴーグルで観察する美神。
「あれは何かが霊気を吸っているみたいね」

「霊気をですか?」
「そうよ。あれは霊気を周りから、それも雪から取り込んでいると思う」
「んじゃ、何が雪から霊気を吸ってるんスか?雪しか見えませんけど」
「雪の下になんかあるのかも・・・横島君。ちょっといってみてきて」
「え?マジっすか?」
ジャキッ!
「何?文句あるの?」
「いってきま〜〜〜っす!!」

仕方なく横島は隠れていた場所から出て発光している雪に向かって歩いてく。
それを心配そうに見るおキヌと何が起こっても対応出来るように注意して見る美神。
雪のところにたどり着き、掻き分けてみるとそこには手のひらサイズの氷があった。

「美神さ〜〜〜ん!少しでかい氷があるだけっス」
「氷?」
「そうです。こんなの・・・ぐあ」

美神に見つけた氷を見せようと手にとって見た横島が突然、苦しみ出した。
咄嗟に氷を放り投げる横島に慌てて駆け寄る美神とおキヌ。
が、その横島の持っている氷が激しく発光し目を開けていられなくなる。

次に目を開けると膝をついている横島と横島の前に佇むおキヌと同年代くらいの一人の少女の姿があった。

「ぐ・・・霊気をごっそり持ってかれた」
「大丈夫ですか?横島さん」
「ああ、霊気を持ってかれただけだから」
「たく、気をつけなさい。それより、今はちょっと危険っぽいからシュンとしなさい」

美神とキヌは視界が戻ると横島に駆け寄りキヌは横島に異常はないかを調べ、美神は二人を庇うように立つ。二人も美神の言葉を聞きいつでも行動が取れるように構える。だが、目の前の少女はキョトンとして立ち尽くしているだけで敵意も殺気も感じられなかった。視線は横島に向けられていたが。

「あの・・・お兄さん。誰ですか?」

目の前の少女の第一声がそれである。視線は横島を一時も離さずに口にした。
横島のほうも視線を外さなかった、いや。外せなかった。髪こそ長いものの、その少女の顔にルシオラの面影が感じられたから。それでも混乱しているかと思いきや、意外に冷静だった。それは過去に同じような経験をしたことがあったからだ。あのときは腹を食いちぎられそうになったりもしたが。とにかく、目の前の少女は自分の霊力を吸って体を構成したということだ。

「俺は、横島忠夫。君は雪女だよね?」
「はい。雪女です。名前は・・・ありません」
「そうか。で、君はどうするんだ?」
「?」
「俺はGSだから。もし、君が人間を襲う気があるなら除霊しなきゃならない。でも、もしそういう気がないなら見逃・・・「何、勝手に話を進めてるのよーーーー!!」あぎゃあああああああああ!!」

少女を見て横島と同じくルシオラの面影を感じ話に置いて行かれた美神は横島を神通棍でシバく。まぁ、彼女は害がないなら払うことはしないだろう。金が関わらなければその辺の良識は持ち合わせている。
地面に顔を埋めた横島を見て初めて美神とおキヌに気づいた雪女。

「たく、であんたは「ひぃいいいいいいいいいいいいいいい!!」な、何よ(汗)」

話の続きをしようとした美神だが、雪女は美神を見ると怯え出した。まぁ、目の前で人を鈍器(神通棍だが)で躊躇なく思いっきりフぶっ叩く人を見れば覚えるのも当然だと思うが。これでは話にならない。美神はおキヌに目線で訴えおキヌもそれに了承して雪女を宥めようとする。

「大丈夫ですよ。美神さんはああ見え「ひぇえええええええええええええええええ!!」ええ!私にもですか?(泣)」

が、結果は同じでおキヌにも怯えてしまっている。おキヌのほうも怖がられてしまったことがショックで今にも泣きそうな顔をして美神に泣きつく。これはどうしたものかとおキヌの頭を撫でながら考える美神。しかし、その考えも杞憂に終った。

「ほら、怖がらなくていいんだぞ。誰も君を襲うことはしないから。」

頭を撫でられて嬉しそうにしている雪女といつの間に復活していた横島が雪女を宥めている姿がそこにあった。不思議と横島はこの少女を愛しいと感じていた。まるで妹のように感じる。だが、その顔を見る横島は愛しく微笑ましい思いとルシオラのことを思い出すことで複雑な思いを抱いていた。
その後、横島のおかげでなんとか落ち着いた雪女に今後どうするのかと問う。まだ、怯えの色が消えないがさっきみたいに取り乱すことはなかった。

「えっと〜・・・う〜んと・・・」

真剣に考えている彼女。それは可愛らしいのだが、どうしてもルシオラのことが思い出されて胸が痛い美神、おキヌ両名。横島はルシオラも生きていたらこんな表情をしたかもしれないと色々なことを考えてしまい、自責の念に潰されかかっている。
こんなときに限って嫌なことが起こるものである。

4人が同時に顔を上げる。
周りをいつの間に霊団によって囲まれてしまっていたのだ。美神はこの状況になるまで気がつかなかったことを不覚に思うもすぐに思考を切り替え冷静に状況を判断する。これが彼女がプロたる所以である。

「さっきの横島君の霊力の閃光に引き寄せられて来たのね。おキヌちゃん!」
「はい!」

ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!

おキヌのネクロマンサーの笛が鳴り響き霊を成仏させる。美神も神通棍に霊力を注ぎ鞭のように伸ばし、ネクロマンサーの笛で成仏し切れなかった霊を払った。霊能の使えない横島は雪女を背に庇うように立つ。
だが、霊の数が多過ぎて全ての霊を捌ききれない。次官が立つにつれ美神の神通棍を通り抜ける霊が次々と現われる。向かう先は復活したばかりの雪女。復活したてなので霊気構造が安定してないため憑き安いと本能で理解しているからだろう。

「きゃぁああああ」
「あぶねぇ」

彼女は腕を引っ張られたおかげで霊を避けることが出来た。引っ張ったのはもちろん隣にいた横島だ。伊達に霊能が使えなかった頃から現場についてきて囮はやってない。倒すことは出来なくても避けることは出来る。
雪女をお姫様抱っこで抱き上げ向かってくる霊を避け続ける。横島にお姫様抱っこされている雪女を見て羨ましいと思っているおキヌがいたり。

「っと、のわ!」

今まで避けに避け続けた横島も、さすがに数が多くなった霊を避け続けることが不可能になってきた。さらにマズいことに避けるのに必死で美神、おキヌと離れてしまったのだ。すでにGジャンはボロボロで腕やら背中は出血している。横島の腕の中の雪女には傷は一つもついていないのはさすがだ。
ここまで粘ったがとうとう追い詰められた。美神とおキヌは助けたくても離れているし助けられない。
霊団が迫る。横島はちらっと腕の中の少女を見つめる。その少女は恐怖に震えながら自分の服を握っていた。その姿が最後に見たルシオラとダブって見えた。
横島は腹を括って決意した。この娘を護ると・・・

「そうだ。今度こそ守るんだ。もう、俺の目の前で女が死ぬなんてゴメンだ。」

「俺はどんな手段を使ってでも守る。もう、後悔するのはたくさんだ」

少女を片手で抱きしめ、右手を霊団に向かって突き出し精神を集中させる。
変化はない。
霊は構わず突っ込んでくる。距離がみるみる無くなって行く。
まだ、右手には変化は現われない。

「おら、出ろよ!何出し惜しみしてんだ。出ろって言ってんだろ!!」

必死に集中しながら叫ぶも変化はない。
もう霊は目と鼻の先のとこに来ている。
ここまできても変化は現われない。

「絶対に、絶対に護るんだぁああああああああああああああああああ」

バシィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

最後の最後で霊達は弾かれた。
横島の右手に現われた六角形の盾によって。そう、GS資格試験で最初に覚えた霊能、サイキックソーサーに。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」

横島は少女を抱えたまま霊団につっこむ。サイキックソーサーは出力が上がり肥大化し、右手を肘まで覆う手甲になる。さらに横島はそれを伸ばし霊波刀に変えた。
戦闘において横島が最も愛用する栄光の手『ハンズ・オブ・グローリー』である。
『栄光の手』で次々と霊を斬っていく。

「美神さん、おキヌちゃん」
「横島君、無事なの・・・」

横島が無事かどうか確認する美神だが驚愕して言葉を切った。おキヌも笛を吹いているために声は出せないが驚愕している。
横島は夢中で気づいてないが、『栄光の手』は今までにないほどに輝き、ものすごい霊力が収束されていたからだ。

「手荒で悪いが俺はこの人達を護るためなら容赦できないんでな。悪く思うなよ」

栄光の手がさらに収束して、だんだんと小さくなっていく。そして現われたのはビー球サイズほどの球体。横島の奥の手にして人界で横島にしか作れない万能のアイテム。文殊だ。

その球に込められた文字は<浄>

「極楽にいけぇええええええええええええええ」

文殊が発動し、霊達は残らず浄化された。


あの後、雪女の少女は美神達と一緒にくることになった。横島にべったりとくっついているので美神はイライラしているし、おキヌは嫉妬バリバリに睨んでいる。
横島の霊能が復活したことと、横島の霊力を吸い取り復活した雪女のことが霊感に引っかかった美神はそのことを小竜姫に相談するとすぐにヒャクメを連れて霊視をしに来てくれた。
ヒャクメ大活躍である。

「私、役にたってるのね〜♪」

とてもご機嫌だ。

「そんなことはどうでもいいの。で、結果はどうだったの?」
「そんなことって(泣)」

世間はとても冷たかった。

「まず、横島さんの霊能が戻ったことは簡単よ。精神が安定したから。今はとても安定しているからもう大丈夫なのね〜」

この場にはヒャクメ、小竜姫、美神、おキヌ、雪女、横島がいる。ヒャクメが横島もこの結果を聞いたほうがいいと言ったからだ。この場にいるということは前回の霊視の結果を正しく伝えないといけないのが、本人は『あっそうっすか』で済ませてしまったのでよしとしよう。
この霊視結果にこの場にいる人達はホッと息をついた。

「で、本題の彼女のことだけど」

この言葉にまた緊張がこの場を支配した。

「彼女は美神さんの報告通り、消滅しかかっていて、周りからの霊気を吸って消滅するのを防いでたところで霊力豊富な横島さんが本体の氷を掴んだからコレ幸いと吸い上げて復活できたのね〜」

「で、若返ったのは横島さんが無意識に氷を手放したから完全復活する霊力に満たなかったらなのよ。普通の人なら霊力を無くなるまで吸い取られてしまうのに、横島さんの反射神経は人間じゃないのね〜」

ここで、横島の人間離れした能力が暴露されたが、この雪女から悪意が感じられないのはどうゆうことか?
これは、前の雪女事件のときにいなかったヒャクメは知らないことだが、雪女を氷漬けにした後に、美神によって自滅したときに雪女の悪意の部分が砕けたからだ。簡単に言うと自分のアイデンティティーを壊されたから。
美神を相手にしたのが運のつきだったと言うことで。

この後のことが横島にとってとても良い結果をもたらした。
『なんで、この娘はルシオラに似ているのか』という問題の原因によって。

「彼女がルシオラさんに似ているのは横島さんの霊力を吸い取ったからなのよ。正確に言うと横島さんに混じっているルシオラさんの霊力ね。雪女は女性だから体を構成するときに多少ルシオラさんに影響されちゃったんじゃないかしら?」

とのこと。そして、横島は自分の中にルシオラが生きているということを悟った。
その瞬間、心の穴が埋まったような気がした。

「そっか、ルシオラはここに生きてるか」

ルシオラを失って以来出していなかった心からの笑顔を浮かべることが出来たのだった。


「おはようございます」
「おはよ〜」
「おはようですジャー」
「おっす」

教室にピートが入ってきて挨拶を交わす。最初に挨拶するのが愛子、タイガー、横島の通称除霊委員会のメンバー。最初は何で私まで?と言っていた愛子だが今ではすっかり馴染んでしまった。

「横島さん、今日は早いですね。しかも、なんか嬉しそうだし。なんかあったんですか?」
「ん?わかるか?まぁ、理由は後でわかるからさ」
「はぁ・・・」

いつもならまだ登校してないはずの横島が笑顔を浮かべながら席に座っていたのを気になったピートは理由を聞いたがそれに答えずに返す。愛子とタイガーもピートと同じことを聞いたのだが答えは同じだった。3人とも首をかしげるしかなかった。
そこへ先生が入ってきたので追求することも出来なくなった。


あの霊視の後、雪女の処遇についてどうするかということで話合った。と言っても雪女は横島にしか懐いていなかったし、そうなればだいだい決まったようなもんである。
彼女は横島の保護している妖怪と言うことでGS協会に報告した。
横島も一応ライセンスを持っているので認められた。

次に彼女の戸籍を用意した。横島の妹ということで。
これには父、大樹と母、百合子に協力を願った。まずは電話説明して、実際に一度合ってもらった。両親とも息子の説明が半信半疑だったのだが、一度合ったら雪女だということはなんの問題ないという勢いで気に入ったようだ。二人とも娘が欲しかったらしい。

一番の問題は名前だったが。
「お兄ちゃんに決めて欲しい」とのことで横島が決めることに。
一日中考えに考えた結果・・・


「よ〜し、今日は転校生を紹介するぞ」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおお(×他多数)」」」」」」」」」」

「喜べ、男子。美少女だ」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお(ピート、横島除く男子)」」」」」」」」」」

美少女と言う言葉に男共は狂喜乱舞だ。タイガーも混じっている。(一文字さんはいいのか?)もう女性恐怖症だった虎はいないみたいだ。女子はそんな男子に呆れているが、一番騒ぎそうな横島が反応ないままだということに驚愕している。
たまらず、愛子とピートが問いかける。

「よ、横島君?どうしたの?なんか病気?」
「そうですよ。横島さん」
「ん?俺、そんな顔色悪いか?」
「「だって美少女って言われて反応しないんだもん(ですもん)」」

二人の言葉にズッこける横島。それを聞いていた女子は愛子・ピートに同意らしく、うんうんと頷いている。まぁ、そう思われても今までが今までだし仕方ない。
ちなみに男子は美少女転校生のことで舞い上がってるから問題外。

「黙れ、お前ら。単位欲しくないんか?」

シィイイイイイイイイイン

「よし、じゃ入ってきなさい」
「失礼します」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおお(ピート、横島除く男子)」」」」」」」」」」

教師の単位攻撃で静まるクラス。この職権乱用攻撃は学生にはかなりの威力を誇るが、緊張した面持ちで入ってくる美少女転校生を見ると効果はなくなった。予想以上の容姿に男子どもは発狂寸前だ。
その少女を見つめる横島は優しい笑みを称えている。その笑顔を見つめる愛子の頬に赤みがさしているのは秘密だ。

「えっと、私は雪女のよ、横島雪蛍(ゆきほ)です。よろしくお願いします」

アシュタロスの事件以来、とまっていた横島の時間がようやく動き出したのだった。


あとがき

初めて書かせて頂きました。ラッフィンと言う者です。
他の皆様の作品を読み自分も書いてみたいと思い書いちゃいました。
いや〜、書くってほんとに難しいですね・・・

ネタは浮かぶけどそれを表現するのが難しかったです。
ああ、世の中の作家の人を尊敬しますよ。

私はどうやら脇役好きらしいです。なんか出したくなっちゃうんですよ。
では、これからも精進していきますので暖かい目で見守ってもらえると嬉しいです。
よろしくお願いします。

>NEXT

△記事頭

▲記事頭

e[NECir Yahoo yV LINEf[^[z500~`I
z[y[W NWbgJ[h COiq@COsI COze