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「猿の手を借りたなら(GS)」

犬雀 (2006-06-04 16:39)
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『猿の手を借りたなら』


高校生くらいの男女の悩みというのは色々あるであろうが、まあ大まかに分類すれば将来や進路にかかわること、そしてもう一つは恋愛に関することだろう。
氷室キヌにとってもそれは例外ではなかった。
彼女はネクロマンサーという世界でも稀有な能力を有しているとはいえ女子高生でもある。
しかもただの女子高生ではない。
その前に「恋する」と言う言葉がつくのだ。
進路に関しては特に悩んではいない。
彼女は業界でもトップクラスの美神令子除霊事務所のメンバーである。
GS試験があるとはいえ、就職先に困るということはないだろう。
だがそれとは裏腹に恋に関して言えば彼女の前途は多難であった。
何しろ彼女の想い人には自覚無自覚にライバルが多いのである。

彼の隣の住人である小鳩とか同級生の愛子とか、それから彼の弟子であるシロとか。
そして一番のライバルは自分の雇い主でこの事務所のオーナーである美神令子だと思う。

彼女たちはそれぞれがそれぞれのアドバンテージを持っている。

小鳩は隣同士ということもあり、ある意味、横島の日常に最も近い人物と言えるし、愛子は同級生という立場をフルに活用しているらしい。
時折、横島が事務所で「愛子が勉強を教えてくれるのはいいが教師より厳しい」とこぼしていたのがその証拠だ。
さらに職場ではスタイルから何からすべて自分の上をいく上司。
あけすけな好意を隠そうともしない少女など。

考えれば自分だけの立ち位置というのが今ひとつ薄い気がする。
幽霊の頃はご飯を作りに行っていたりもしたが、人の体に戻ってからはなんとなく気恥ずかしくてそれも滞っていた。
かといって積極的にアピールするというのも古風な ─いかに現代のワイドショー文化に毒されつつあるとはいえ─ 彼女にとっては簡単に選べる方法ではなかった。

自分の部屋でこっそり撮影した横島の寝顔の写真を見ながら溜め息をつく毎日。
それが最近の彼女の日課でもあった。

けど今日の彼女の手にあるのはいつもは机の中に秘められた写真ではなく、およそ彼女には似つかわしくないもの。
古ぼけた枯れ木か萎びた干物のように見えるそれは…「呪いの猿の手」と呼ばれる魔具だったのである。


なぜ彼女がこんなものを持っているかと言えば、それは偶然かはたまた何者かの意志なのかも知れない。
いつもの通り厄珍堂へとお使いにいった彼女のスカートにいつの間にかへばりついていたのである。

「え? あれ?」

驚くおキヌに厄珍も不思議そうな顔をしてみせる。

「あの…ごめんなさい。お店のものを勝手に…」

「うーん。ウチはこんなの置いてなかったはずアルね。」

「え?」

不思議がりつつも厄珍はおキヌのスカートを生きているかのようにがっちりと握り締めているモノに手を伸ばした。
引っ張ってみてもしっかりと掴まっていて取れそうに無い。
ただ何かの拍子に絡みついたというわけでは無そうだ。
変わりにおキヌが手を触れるとそれはまるで最初からそこに行きたかったとでも言うかのように自然に小さな指を開き彼女の掌に納まる。
それを見て厄珍は納得したのか頷いた。

「それは「呪いの猿の手」アルな。」

「呪いですか?」

もしや自分は知らないうちに呪われたかしら?と青ざめるおキヌに厄珍は軽薄そうな笑顔を見せる。

「あー。心配はいらないアルよ。きっとお嬢ちゃんは猿の手に選ばれたアルね。猿の手は持ち主を選ぶと聞いた事がアル。」

「選ぶって?」

「猿の手は自分が選んだ持ち主の願いを3つ叶えるアルよ。そして3つの願いを叶えたら持ち主のところから消えて次の持ち主を探すアル。お嬢ちゃんは次の持ち主に選ばれたアルね。」

「はあ…」

そんな上手い話があるだろうか?とおキヌが思うのは仕方ないだろう。
何しろ彼女は幽霊時代に「3つの願いを叶える壷の魔神」に出会ったことがあるのだがが、それはとんでもなく迷惑な代物だった。
しかも厄珍は「呪い」の猿の手と言った。
ならば碌なものであるはずがない。
場合によっては命にかかわるかも知れないではないか。

「あの…これお返しします。」

「無理アル。一度、猿の手に選ばれたからには3つの願い事をするまで離れないアルよ。例え捨てたとしてもいつの間にか自分のところに戻っているアル。」

「そんなぁ…」

だから「呪い」なのだと厄珍は珍しくも真剣な表情で頷いた。

「まあ無難な願い事でもするといいアル」


こうして今、おキヌの手に「猿の手」が納まっているのである。
萎びたそれは確かに猿から切り取った手をミイラのように乾燥させたものであろう。
小さな指が虚空を掴むかのように半開きになっている。
しかし命の無いはずのそれが妙に生々しく見えて彼女は戸惑った。
確かに魔女や呪術師が使う呪いの道具とすればこれ以上にピッタリのものは無いだろう。
正直に言えば気味が悪い。

「…でもなぁ…」

厄珍が言ったように無難な願い事でもしてお引取り願うのが一番だろうとは思うが、いざとなったら願い事が出てこない。

「きっと痛かったんだろうな…」

呪いの効力を高めるために生きた猿の手を切り取ったものだと厄珍は言っていた。
それがどれほどに惨い事かと思えば、気味が悪いからと言っても捨てるわけにもいかない。例え戻ってくるとはわかっていても彼女には出来そうになかった。

「ごめんね…人間の勝手のために…」

何となく哀しみを感じて撫でてやると猿の手は一瞬ピクリと動いたように見えた。
少し驚いたものの錯覚なのだろうとおキヌは苦笑する。
とはいえこのままにしておくのもやはり気持ちのいいものではない。

厄珍は「無難な願い事」をすればよいと言っていた。
ならば人の迷惑になるような願い事は駄目だろう。
美神さんなら「世界中のお金」とか言うかしら?と思うと知らずに口元がほころぶ。
そしておキヌは令子の姿を思い浮かべたとき、つい無意識に呟いてしまった。

「そうね…もし出来るならだけど…今より胸が大きくなればいいかな。」

途端に猿の手がピクリは動く。
「きゃっ」と悲鳴を上げかけた口を押さえるおキヌの手から放り出されたそれは、ようやく願い事をされた歓喜に震えるかのように二、三度震えると再び動かなくなった。

「あ、あのね…今のはお願いってわけじゃないのよ…」

恐る恐る話しかけても猿の手は微動だにしない。
ただ何かを待つかのように床に落ちたままである。
ただ猿の手が動いたことでこれがインチキの類ではないということがわかっただけだ。

この猿の手が本物だとすればちょっとコンプレックスの自分の胸の状況が改善されるチャンスではないか。
それに「胸を大きくして」という願いなら誰にも迷惑はかからないだろう。
少しだけワクワクしてくる心に戸惑いながらも自分の体を確かめてみても変化は無い。
あいかわらず彼女の胸はブラの中に慎ましやかに納まっているだけである。

「すぐには無理なのかしら?」

それともやっぱり偽物?と小首を傾げたとき、いきなり乱暴に部屋のドアがノックされおキヌはい悪戯が見つかった子犬のように飛び上がった。

「は、はい!」

「おキヌちゃん! ちょっと開けてくれ! 大事な話が!!」

「え? 横島さん?」

いきなり訪ねてきた横島に驚く。
確か今日は令子とシロタマはそれぞれの用事があって出かけることになっていてバイトは休みのはずだった。
横島が来る道理がない。
でもドアの外で切羽詰ったかのようにしている声は間違いなく彼女が好きな横島のものだった。

「あ、あの…どうしたんですか?」

「理由は後で! とにかく開けてっ!」

「あ、はい!」

勢いに押されてドアを開けた瞬間に横島が飛び込んできた。
その顔色は熟しきったトマトよりも赤く、その目は自分で自分の感情に戸惑っているかのように忙しく動いている。
いつもののほほんとして様子とはかけ離れた彼の様子におキヌは戸惑った。
「なんの御用ですか?」ととりあえず聞いてみれば横島はギンと力の篭った視線を向けた。

「おキヌちゃん!!」

「は、はい!」

「俺の子供を産んでくれ!!」

「は・・・・・・・・・・・・・・・?」

世界がフリーズ。
あー。えーとー。今日の晩御飯はみんな居ないから簡単なもので…。
そういえば実家のお義父さんが山菜の漬けたの送ってくれたっけー。
私ってばアレって好きなんだよなー。
こう温かいご飯の上に乗せてお茶をダクダクってかけてー。
横島さんも好きかなー。
そういえば晩御飯食べていくのかなー。

「おキヌちゃん!!」

「……あー横島さんだー。晩御飯はフキのお漬物でいいですかー…」

「そうじゃなくて! 俺の子供を産んでくれ!」

「あははーそうですかーフキはお嫌いですかー」

「おキヌちゃん! しっかり!!」

「ふえー」

ガクガクと揺さぶられたのが刺激になったかおキヌの脳みそにやっと横島の台詞が沁み込んでいく。
そしてそれが様々な演算の結果、解答にたどり着いたとたんに彼女は飛び上がった。

「な、なんてことをいきなり言いやがりますかあなたはっ!?」

「俺、なんか変なことを言ったかい?」

「自分の言っていることの意味を50字以内で簡潔にまとめなさい!こわっぱ!」

「は?」

「これってぷ、プロポーズですよ!こせがれ!!」

「おキヌちゃん…落ち着いて。」

「これが落ち着けますかぁぁ!!」

あまりに予想外の奇襲攻撃の前におキヌちゃん何かを受信した模様である。
しかし横島は巣の中に発炎筒を放り込まれたハチよりも混乱したおキヌのことなど眼中に無いとばかりに彼女の肩を両手で掴んだ。
その力にようやっと帰ってくるいつものおキヌ。
それに安心したのか横島は肩を掴んだまま熱意の篭った視線を彼女に合わせる。

「冗談なんかじゃないんだおキヌちゃん…俺は…俺は…おキヌちゃんに俺の子供を孕んで欲しいんだ!」

「え…?」

ぶっちゃけすぎるほどぶっちゃけた告白とプロポーズにたちまち真っ赤になるおキヌ。
脳内では状況を把握した小さなおキヌたちがチアガール姿で手に手にポンポンを振り回しいた。

「え…と…本気ですか?」

「本気だとも! なんでか知らないがついさっき本気になった! 俺は本気でおキヌちゃんが俺の子供を妊娠してくれればおっぱいが大きくなると信じている!!」

「な!?」


話の前後につながりがあるようなないような…確かに妊娠すれば個人差はあるけどおっぱいは大きくなる。
でも、それって横島さんが気にすることじゃないような…っていうかそっちが目的っ?!!

その途端に脳裏に浮かぶは先ほどの猿の手。
確かに自分は「胸が大きくなれば」と願った。
まさかそれをこんな形でかなえようと言うのかこの呪いは。
慌てて床を見れば猿の手が「やっほー」とばかりに手というか体全体を振っていて、どうやらこの不思議で直接的なプロポーズはこいつの仕業らしい。
途端にがっくりと力が抜ける。

「頼むおキヌちゃん! 俺の子供を!」

「あー…横島さん…それって勘違いですから…」

「そんなことはないさ! 俺は真剣なんだ!」

その目は紛れも無く真剣で、事情を知らなきゃ一も二も無くOKしただろう。
しかし…ただおっぱいを大きくするためにプロポーズされるってのは女として、いいや人としてもあまりに悲しすぎた。
涙で潤み始めた目を床で呑気に手を振っている猿の手に向ける。

「ひーーーーーん…こんなの嫌あぁぁぁ。せめて、せめてちゃんとお付き合いしてからぁ…」

その言葉を聞いた途端に猿の手が再び細かく震える。
それと同時に自分の肩を掴んでいた横島の手が離れた。
怒涛のごとく湧き上がる嫌な予感に恐る恐ると振り返ってみれば顔を伏せている横島の姿がある。

「あ、あの…横島さん?」

声をかけて近づこうとしたおキヌだがふと自分の右手に違和感を感じて見てみれば、いつのまにかしっかりと握られたシメサバ丸包丁バージョンがそこにあった。

「ええっ?!」

その声が引き金になったのか横島が顔を上げるとギンと右手に霊波刀を出現させてそれを腰ダメに構える。

「ひええっ! 横島さんなにをすっとですか!?」

「すまんおキヌちゃん! 俺もなんだかわからんがっ!」

何かの衝動と必死に戦いながらもギリギリとゼンマイ仕掛けの人形のように横島は動き出すと霊波刀を突き出した。

「ひいぃぃぃ!」

悲鳴とともにかわすおキヌの横をゆっくりと通り過ぎる横島の霊波刀。
それを横目で見ながら逃げようとしたはずが、右手は彼女の意志とは無関係にシメサバ丸を横島めがけて突き出していた。

「避けて横島さぁぁぁん!」

「ぬふぅっ!」

必死に押さえたせいかゆっくりと突き出されたシメサバ丸を珍妙な動作でかわす横島。
普段の彼からは考えられないその運動能力に、またおキヌの脳裏に解答が浮かび上がる。
ギンと目に力をこめてそちらを見れば、やはりと言うか「ヤレヤレゴーゴー」と手を振る猿の手の姿。

「もしかして「付き合い」と「突き合い」をかけたつもりですかっ!! そんなベタなギャグをっ!」

おキヌの叱咤に猿の手はガーーーンと擬音を発し、傷ついたかのようにしょぼくれる。
しかしそれがいけなかった。
戦いの最中に敵?から目を離すなど油断以外の何者でもない。
ましてや他人に突っ込むなど「戦いの最中にやっちゃいけないことシリーズ」の中でも常に上位キープの事柄である。

「ぬはあぁぁぁぁぁ。避けてっおキヌちゃん!」

「え?!」

彼女にしては咄嗟に体を捻れたのは上出来の部類に属することだろう。
だが完全にかわしきれなかった霊波刀はおキヌの胸元を紙一重で通り過ぎた。
ハラリと肌蹴るおキヌの上着とポロリと落ちる白いブラ。
そしてちょこんと顔を出す慎ましやかな白い乳房と桃色の突起。

「ぐはあぁぁぁ!」

攻撃したはずの横島が盛大に流血し

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」

攻撃が当たらなかったはずのおキヌが断末魔にも似た悲鳴を上げる。

横島さんに見られた。
しかも思いっきり正面からまじまじと余すところ無く。
その恥ずかしさが心を揺さぶった瞬間、彼女は全力を持って猿の手に向かって叫んだ。

「無しっ! 今までの全部無しいぃぃぃぃぃ!!」

その途端に互いの体から何かが離れたかのような音が響く。
そして横島は糸の切れた操り人形のようにクタリと力を失って膝から崩れ落ちた。


ものの数秒で横島はユラリと立ち上がる。
その目には先ほどの熱意は無く、その顔一面に疑問の表情が張り付いている。

「あ、あれ? ここは? 俺は何を?」

「横島さん!」

正気に戻ってくれたのね。と抱きつこうとしたおキヌは自分の手がまだシメサバ丸を握っていることに気がつく。
「フン」と一息で天井に放り投げれば、スカッと鋭い音を立てて突き立つシメサバ丸。
とりあえずこれで横島の視覚から証拠は隠滅された。

「ホッ」と一息ついてみれば理性が戻ったか、こっちを見ないようにしつつ鼻を押さえて顔を赤らめている横島が居る。

「横島さん?」

「あ…おキヌちゃん…その…見えているんだが…」

「え? あきゃああ!」

慌ててはだけた胸をかき抱いて、なるべく表面積を小さくしようとしゃがみこむおキヌに横島は申し訳なさそうに口を開いた。

「あのさ…俺にも何が何だかわかんないんだけど…それって俺がやったの?」

「ええ…」

おキヌには詳しく説明するだけの気力はもう残されていない。
というよりも最初から説明すると「胸が」のくだりまで遡らなきゃならないわけで、それはなんというか「鳩の泣きっ面に豆鉄砲」という感じで。

「ごめん…責任取るから…」

項垂れた横島は何かを勘違いしているご様子で。
さすがにそれは気が引けた。
元はと言えば自分が猿の手に迂闊なことを願ったせいなのだ。
だけど口は上手く言葉を紡いではくれない。
ウロウロと思考が迷路の中で迷いまくっているうちに横島は彼なりに結論を出したのだろう、小さく溜め息をつくと肩を落とした。

「本当に…謝ってすむとは思わないけど…もうおキヌちゃんには近づかないようにするから…「ダメです!!」…おキヌちゃん?」


「そんなのダメです! 違うんです! 詳しくは言えないけど悪いのは私なんです!」

「えーと…」

おキヌの勢いに困惑した横島が視線を上に向けようとする。
それはマズイ。天井には物的な証拠が刺さったままだ。
もしアレが見つかれば経緯を全て話さなければならない。
ここで気のきいた作り話が出来るほど自分は器用ではない。

考える間もなく体が動く。
ガバチョと横島に迫るとその顔を自分の胸に押し付けし彼の視線を封じる。
「むふー」と胸の間で横島が慌てるのがくすぐったいが、今はとにかく天井の証拠から彼の注意を逸らさねばと一途に思い込んだ彼女は自分がとてつもなく恥ずかしいことをしていると気づく余裕が無かった。

しかし、それもつかの間…。
いかに慎ましいとはいえ美少女の生乳。
それを顔に押し付けられた横島が耐えられるはずも無く。
おキヌの胸の辺りからバフウと間欠泉の如く吹き上がる横島の鼻血。

「きゃああああ!」

さすがに好きな男とはいえ裸の胸の上で流血されてはたまらない。
思わずあがる悲鳴に横島は貧血でよろめきながらも、なんとか反応して体を離した。

気がつけばお気に入りの私服はダクダクと血で汚れていて、これはおそらく洗濯してもダメだろう。
考えてみれば切り裂かれたブラウスもブラもお気に入りだったし。
せめてそのぐらいは彼に文句を言ってもいいかもとちょっとだけ甘え心を出してみる。

「責任とってくださいね…」

「新しい服を買うのに付き合ってください」と続くはずの台詞は横島がいきなり土下座したことで途切れた。

「あの…横島さん…」

「そんなつもりじゃ」と続くはずの台詞を横島が遮る。
こういうときは自分のトロさが憎らしいと臍を噛むおキヌの耳に飛び込んできたのは謝罪の言葉ではなかった。

「お、おキヌちゃん! 俺と付き合ってくれ!」

「あ、あはは…それは一時の気の迷いですよー。」

言ってて悲しくなるが仕方ない。
呪いのせいで告白されたなんてルール違反にもほどがある。
さすがに彼女はそれをよしと出来るほど悪女ではない。
何よりそれで付き合えたとしても、万が一呪いがとけたらと考えるだけで背筋が寒くなる。

「いや違うんだ! 俺は前から言おう言おうと思っていたんだけど…なかなかきっかけがつかめなくて…責任とかそんなんじゃないんだ!」

「え?」と驚きつつ彼の目見れば、確かに熱意とともに不安も感じられる。
それは先ほどの何かに憑かれたようなものではない。
彼と長く接していた彼女だからこそわかる。
そこにあったのは紛れも無い横島の本心だった。

それを見た彼女が真っ赤になり涙をこぼしながら「はい」と頷いたということはあえて書くまでも無いだろう。


さてこうして若い二人は正式に恋人として付き合うことになった。
色々と前途に多難なものを含みつつ、まずはハッピーエンドであろう。
恋によって彼女の女性らしさはますます磨きがかかってきたし。
当然スタイルも令子ほどではないにしろ大人の女性に近づいている。


だがおキヌは今でもふと思うのだ。


もしかしたらこの恋は猿の手のせいなのではないのだろうかと。
胸が大きくなったのも、横島と付き合うことになったのも全ては呪いの力ではないのだろうかと。


微笑ながらももの問いたげに向けられる彼女の視線に、部屋の隅でフランス人形のように綺麗なガラスのケースにしまわれている猿の手は何も答えないのである。


おしまい


ども。犬雀です。
えーと。今回のテーマはパラドックスですね。まああまり詳しくは語りませんが(笑)
でも上手く書けたか自信が無いような気がしないでもないでも。

そろそろ山の季節ですのでペースは落ちますが、なんとか暇を見つけていきたいと思います。

では…おやすみなさいませー。


1>ななし様
んー。タマモ弄りというか虐めるキャラはその時の犬のマイブームで決まりますから。気が向けばまたタマモをいじるかも知れません(笑)

2>とろもろ様
あはは。それを考えるともう一本書けそうですねー。
実はダークなネタはあるんですが、犬はどうもダークが苦手で(笑)

3>ミアフ様
他の方もおっしゃてますが、こんにゃく小僧…以外に人気ある?(笑)

4>いりあす様
まあ犬の中では並みの手段じゃフラグがたたないって感じですので(笑)<魔鈴さん

5>むーみん様
初めまして。これからも楽しんでいただけるようなSSを書いて行きたいと思います。

6>ダヌ様
魔女ですねー。どこまで彼女の計算でしょうか(笑)

7>純米酒様
にはは。実は横島の妨害エピソードの一つは実話です(笑)

8>k82様
>……犬雀さんのSS自体まともじゃうわなにをするy
ばれたかー…って何を今更(笑)

9>黒覆面(赤)様
む。やはりこんにゃく小僧大人気ですな(笑)

10>LINUS様
うーん。やはり書けそうですねー。妨害する乙女たちネタ。
今度、考えて見ますです(笑)

11>滑稽様
搦め手、懐柔なんでもありが魔女の恋と勝手に妄想中(笑)

12>aki様
そのうち吸肉鬼メインで書きましょうか?読みたいですか?(笑)

13>足岡様
カエル・マックロクロ事件…それは語るも涙の物語。(笑)

14>偽バルタン様
吸肉鬼召還魔法…考えるだに恐ろしい(笑)

15>柳野雫様
意外とですね「お父さんのバカ」と言われるのは快…げふん…冗談です(笑)

16>ヒロヒロ様
んー。それは知りません。出来れば詳細を(笑)

17>Yu-san様
さて何をしたんでしょうねぇ(笑)

18>kamui08様
わははは。なんで「用意」していたんでしょうねぇー(笑)

19>木藤様
ああ。その可能性もりますねー。横島は気にしないでしょうが(笑)


では…

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