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!警告!壊れキャラ有り

「オレンヂの挽歌。(GS)」

雅 水狂 (2006-05-05 10:54)
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 まあるい果実よ、酸っぱい果実。
 どうしてお前はオレンジなのか。


 策士は策に溺れると言うが、我らが狐は感情に溺れるのである。


 其処は屋根裏部屋。
 その窓から見える青空には雲一つなく、それが何処か忌々しくも清々しい。

 部屋の中を二分する二つのベットの上にはそれぞれ二人の少女。
 黄金の髪を珍しいというよりは限界に挑戦したという感じのナインテールの少女と、長い銀色の髪に赤いメッシュを入れている少女。
 彼女達が身に纏う雰囲気は静と動、クールと熱血といった感じではあるが、どちらの少女の顔の造詣も一級品で、所謂美少女。
 美神除霊事務所美神令子預かりの妖狐と人狼、金毛白面九尾タマモとフェンリルの末裔シロである。

「……このオレンジ、神父の教会にある野菜みたいにしたら横島のこと教えてくれるかしら?」

 一字も逃さぬよう丁寧に手紙を読み終えて、タマモがぼそりと呟いた声に反応したのは狼一匹。
 彼女もまた手紙を読み終えて、何度も何度もそれを繰り返し読んでいたのだが、急に尻尾をぴーんと立てて、「さあさあさあ」とタマモに詰め寄った。

「タマモっ! さっさとこのオレンジ殿に先生のことを教えてもらうでござるよっ、どうすればいいのでござるかっ!?」

 「聞いてやがったのか、このバカ犬」とタマモが思ったかどうかは定かではないが、彼女は「ちっ」と舌打ち一つ。目を細めて、その乱入者を睨みつけていたが、やがて無駄だと諦めたのかはあっと溜息を零す。
 用意周到と言うべきか、それとも、無駄に用意がいいと言うべきか、タマモがスカートのポケットから取り出したるは一冊の本。
 恋する少女は何時だって、物理法則を無視するのだ。これ、すなわちオヤクソク。
 タマモはコホンと咳払いをすると、言葉を紡ぐ。

「この前ピートからあの野菜について聞いたんだけど、美神さんとピートがこの本に書いてある通りに儀式をしたらああなっちゃったんだってさ。ま、何のためにしたのかは聞いても教えてくれなかったんだけどね」

「む……。よくわからんでござるが、つまり、このオレンジ殿もこの本に書いてある通りに儀式をすれば、先生のことを話してくれるというわけでござるなっ?」

「全く、このバカ犬はそんな簡単なことも分からないから……って、ちょっ! ちかいちかいちかいちかいちかいかおちかいぃっ!!」

 バカ犬と、呼ばれたことも、何のその、マジでキスする、五秒前(字足らず)。
 もとい、極限までシロはタマモに顔をぐぐっと近付けて、

「ならば、これは拙者が頂いたでござるっ!!」

 ぱっとタマモの手からその本を奪い去る。
 それは本当にあっと言う間の出来事で、何も反応できなかったタマモはシロの手元にある本と己の手を何度も何度も見比べて、八重歯の牙を見せ付けるかのように、泥棒へと向かって吠え付ける。

「何すんのよっ! このバカ犬っ!!」

「悔しかったら拙者から取ればいいでござろう? ま、女狐ごときにそれが出来るとは思わんでござるが……」

 シロはタマモを、はんっと鼻で嘲笑う。
 どこで覚えたその仕草。乙女にゃ秘密がいっぱいだ。

 だがしかし、駄菓子菓子、そうは問屋が卸さない。
 ぼぼぼっと狐火ゆらゆらと。妖狐一匹、お礼参りに参上だ。

「へぇ……よくほざいたわね、この駄犬が」

「ほざいたがどうしたでござるかっ!!」

 びーっと舌を出し、タマモを牽制しつつもシロは本へと目を落とす。
 そして、厳かに言葉を告げた。

「……読めんで、ござる」

 駄目だこりゃとシロは本を投げ捨てて、たまたまそれがそこにあったオレンジにぶつかって、


 どかんとおっきく爆発した。


 オレンジの挽歌。


 煙はもくもく。
 火花はばちばち。
 二人の視界は全く見えず、

「けほっ……何で本とオレンジが爆発なんてするのよっ!?」

「そんなこと拙者に聞かれてもわかるわけがないでござろうっ!?」

 喧々諤々ケンケンキャンキャン大賑わい。
 がっしと両手を取り合えば、ぎりぎりぎしぎし空気が歪む。
 喧嘩すれば喧嘩するほど仲の悪くなる二人です。諺なんて、嘘なのさ。

 だが、そうしている間にも次第に煙は晴れていき、取っ組み合いをしていたタマモとシロがそれに気付いたのは運命というよりは宿命であった。
 ただし、それは悪魔からの贈り物。

 ――オレンヂだ。

 そう。確かにそれは、オレンヂだった。
 上下右左、何処から見ても360度どころか1080度にも対応しており、慌てて何度も目を擦ってみたのですが、どう見てもオレンヂです。本当にありがとうございましたってな感じである。

 ただ、その果実の身体には針金のような手足が四つ。
 顔なのだろう、小学生が書いた似顔絵のような目と口に、ぴんくの頬紅がぷりちーだ。

 ああ――
 はっきり言ってしまうならば、み○ん星人――ではなく、おれんぢ星人。

 今まで喧嘩していたことはすっかり忘れ、二人仲良くでっかい汗水垂らし、人の世に染まってしまったタマモとシロの脳裏には、何やら嫌な予感がひしひしと。なんていうか、こう、版権辺りというか著作権辺りに。商標登録とか、五月蠅いし。
 どんなに狐と狼が可愛かろうと、所詮は獣。天下のテレビ局には勝てないのだ。美神令子ならば知らないが。

「ちょっと……これってどういうことよ?」

「拙者に聞かれても分かるわけがないでござろう? 大体あの本を用意したのはタマモではござらんか」

「で、でも、まさかこんなのになるなんて――って、アンタがオレンジにあの本をぶつけるのが悪いんでしょうがっ」

「なっ、拙者のせいにする気でござるかっ。大体女狐があんな本を用意しなければ――」

 肩を組み合いぼそぼそと。
 小声で再び喧嘩を始めた二人の先で、不意に、がぱりとおれんぢ星人の口が開く。
 喧嘩しつつも注意だけは払っていた二人はびくぅと身を竦め、何が出るやら飛び出すやらで戦々恐々。

「HAHAHAHAHA」

「米の人っ!?」

「何一々ツッコミいれてるでござるかっ! どうでもいいからさっさと先生のことを聞くでござるよっ!」

 まあるい身体。
 どこが腰かはわからぬが、手を腰に当て、いきなり高笑い始めたおれんぢ星人に比較的常識人――常識狐であるタマモはついついツッコミ入れてしまう。

 そんなタマモを差し置いて、一歩リードしたのはシロである。
 汗水垂らしたこともつい忘れ、さっさと横島のことを聞こうとするのは世の非常識や不条理に慣れ切ってしまったのが悪いのか。まあ、全ては横島が悪いとしておこう。恐らくきっと、それがたった一つの真実だ。

「そ、そうだったわね。あーあーあー……、んん、こほんっ。……そこのオレンヂっ!」

 足を開いて、左手腰に。
 びしいっ! と右手の人差し指でおれんぢ星人指させば、あっという間に「そこのアンタ」のポーズ。ツンデレならば、当然だ。時代遅れ? 流行? クーデレやサドデレなんて知りません。つんでれ☆めいおーっなんて最強ですよ。それが俺のジャスティス。

 そのまた後ろ、シロが真似してるのはご愛嬌。
 タマモはオレンヂ指差したまま、高圧的に口を開いた。

「変な米風笑いしてないで、さっさと横島のことを教えなさいよっ!!」

「教えるでござるっ!!」

 その二人の言葉で。
 ようやくおれんぢ星人、高笑いをやめて。右よし、左よし。お前によし。
 そして、最後にタマモとシロの胸をじっと見つめ、何処から取り出したのか、煙草(メンソール)に火を点けて、ぷはぁと煙を吐き出した。

「ハッ」

 煙草を咥え、両手のひら、天へと向けて。肩竦めれてみれば、これぞ元祖「むかつく」ポーズ。
 そういえば、ジェスチャーは向こうの国のが大振りだ。その大振りに比例するかのようにムカツキ度は天井知らずの鰻上り。チンチンジャラジャラ確変止まらず、大入れ食い。

 ああ――
 もう、何も言わなくてもいいだろう。
 ばちばちぃっと火の粉が舞い散り、空気は剣気でキィンと凍結する。
 可愛いどたまに何個も怒りのマークを張り付けて、二人の乙女は呟いた。

「――焼きおれんぢにしてやるわ……」

「――霊波刀の錆にしてくれるでござる……」

 悪ガキ名物焼きミカンも美味いが、焼きオレンヂだって美味しいよ?
 それを切り分けてくれるのだからここの店も大したもんだと誰が言ったか定かじゃないが、大国USAのオレンヂは島国JAPANなんかのオレンヂなど目ではない。月とすっぽん、晩白柚と金柑てなもんである。

 でもでも、だけど、別にひんぬーだっていいじゃない。ただし、横島忠夫はきょぬー好きなの。
 今、二匹の脳裏には、ばくれつ☆きょぬー外人にたぶらかされるスケベーYOKOSIMAの姿しか浮かばない。ああ、もう、これだから、男なんって大嫌い。

 溜まった鬱憤晴らそうと、ギンッとおれんぢ星人睨み付ければ、何時の間にやらあのにっくき橙色は純白の小さなブラに包まれて。しかし、その巨体は入りきらずに零れ落ちる。これまた何故か、隣にあった少し大き目のブラでも所詮は同じこと。後片付けは大切です。
 具体的に擬音を付ければ、ぽろりではなく、すかって感じ。

 ――――すかっ?

「「う、うわぁぁぁぁあああああんっ!!」」

 大きい胸など犯罪です。
 何故なら、それは武器だから。二人のうら若き少女には、まだまだ持てない武器だから。ほらほら、よっく言うじゃない。女の武器って、言うじゃない?

 だからこそ、時代はつるぺた。
 きょぬーなんて時代遅れの型遅れ、ひんぬーこそがベストチョイス。えろい人達にはそれがわからんのです。でも、涙が出ちゃう。だって女の子だもん。

 うううと目尻に涙を湛え、二人の獣はおれんぢ星人に相対す。
 今この時、二人の想いは(多分)初めて一致した。
 即ち――

 ――こいつは敵だ、と。

 故に、二人がこの共通の敵に襲い掛かろうとしたその時である。

「ミーは出荷されたオーレンヂいーがいに話す気はないのデース。バァット、ユーたち、まだまだブルーでチャイルドな出荷前デース。oh、それとーも、それがジャパンの普通サイズなのデースカー? これはまた、随分とスモールなのデースネ」

 あ、喋った。

 ……ではなく、何この似非害人。一体何年前の――。

 …………でもなく、ぴしゃんぴしゃんと己の額(だと思う)を何度も叩き、再び「HAHAHA」と笑い始めたおれんぢ星人には聞こえていなかった。ぶちぶちぃっと言う音が。
 だから、

「おおっと、こーしてはいられまセーン。ミーはジャーイアーントなフレーンドを探しに――」

 おれんぢ星人の言葉が、止まった。

 屋根裏部屋を覆う空気は禍々しくも綺麗に染まり、それは密度の塊となっておれんぢ星人へと押し寄せる。気の弱い人間ならば、きっとそれだけで気死したことだろう。
 果たしてそこには神話や物語に詠われた二匹の――伝説。


 ――――いっぺん、逝ってみる?


「ぎぃゃぁぁぁぁぁあああああああああああああああっっ!!」

 以後一ヶ月、屋根裏部屋からはオレンヂの匂いが取れなかったそうである。合掌。


 ――かくしておれんぢ星人の危機は去った。
 しかし、何時の日か、第二第三のおれんぢ星人が――

「うふ。うふふ。この本に書いてある通りにすれば、きっと横島さんのことを――」


 ―了―


 ■
 後書き
 正直、すまんかった_no
 本当に、ごめんなさい。
 何かもう、勢いだけとかだだ滑りとか読者置いてきぼりとか文章壊れすぎとかいっぱい言いたいことはありますが、今、私には謝ることしかできません。割腹自殺しながら、批判三昧お待ちしております。


 以下、オレンヂの歌のレス返しです。

>S様
 帰ってきた横島君のお話はご想像にお任せします。恐らくまた昔のような日常になるのかな?(笑
 おれんぢ星人は……ごめんなさいでしたっ。

>香様
 有難うございますー。
 横島の手紙は少し悩んだ箇所ですので、そう言っていただけると有難いです。

>メド栄様
 ご指摘有難うございます。
 おキヌちゃんのことに関しては私も気になったのですが、こういう形にさせていただきました。感に触ってしまったら申し訳ございません。
 また、タマモですが、これは全面的に私の勘違いですね。書いている最中にどうもタマモに焼かれる横島の姿を連想してしまいました。本編を確認せずに書きあげてしまい、不備があった点、大変申し訳ございません。

>とおり強行偵察型様
 有難うございます。
 次回作も頑張りますので、ご声援の程、お願いいたしますー。

>無虚様
 それは、秘密です(笑

>偽バルタン様
 オレンジの存在感は世界一です(笑
 おれんぢ星人は……やっぱりごめんなさいでしたっ。

>米田鷹雄様
 各々のキャラが出せていればいいなぁと思っていましたので、そう言っていただけると有難いですー。

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