「おはよう愛子〜!宿題忘れたから見せて〜!」
「うん、おはよ〜!ってまたなの?しょうがないなぁ・・・」
ど〜も、愛子です!今普通の高校生やってます。
付喪神になってからもう30年以上経ったけどまさか普通に生徒として学校に通えるようになるなんて思わなかったわ。
朝におはよ〜って言い合って宿題忘れたから見せて〜なんて、う〜んこれぞ青春よね!
ホントこんな生活ができるのも横島君のおかげ。たしかに私の「間違った青春」を正してくれたのは美神さんだけど、このクラスに違和感無く受け入れられたのは横島君が妖怪の私よりもインパクトが強かったからだと思う。まあ要は変なものに慣れてたってことなんだけどね。あのスケべっぷりは妖怪以上だったし。
・・・そんな横島君が急に変わった時期があった。あまり笑わなくなった。私は当事者じゃないし、おキヌちゃんやピート君に聞いただけなんだけど、横島君はあの「魔神大戦」の時に恋人だった魔族の女性ルシオラさんを亡くしたらしい。
ショックだった・・・亡くなっている相手に不謹慎だとは思ったけれど嫉妬した。会った事すらない「横島君の恋人」に。
そして嫉妬して初めて気づいた。ああ、私は横島君の事が・・・
「・・・こ、ちょっと愛子ってば!お〜い戻ってこ〜い!」
「えっ、な、何?」
「も〜しっかりしてよ〜。ほら、早くここ教えて」
ふ〜危なかった。ちょっとトリップしてたみたいね。
集中集中!しっかり教えないと。
「おい、あれ見ろよ!」
「まさか、そんな!?」
ん?なんか窓側が騒がしいわね。何かあったのかしら?
「ねえ、何かあったの?」
「それが信じられない事に横島が・・・」
「あら、横島君来てるの?確かに二日連続なんて珍しいわね♪」
「いや横島が・・・
美人の姉ちゃんと同伴出勤を〜!!」
は?
奥様は・・・〜その4〜「これぞ青春!? 机娘の憂鬱!(前編)」
教室に入った横島と小竜姫は目の前の光景に愕然とした。
気絶したまま動かない者(男)
血の涙を流す者(男)
頬をつねり続け顔の面積が二倍になっている者(男)
終末思想を唱えだす者(男)
急に同性愛に目覚める者(男)
暴動と略奪、人心の荒廃、クラス内の治安は一気に低下し阿鼻叫喚の地獄絵図(男子限定)が展開された。
「・・・横島さん、人間の学校って個性的ですね」
「え〜と、なんていうか・・・」
そんな光景の中で女子のみなさんはというと・・・
「そっか〜、着替え覗かなくなったと思ったら彼女ができたんだ・・・」
「何よ、残念そうじゃない?まさかあんたも!?」
「うん。最近ちょっとかっこいいかなとか思ってたんだけどさ〜・・・って『も』って何よ!まさかアンタも?」
「いや、その〜・・・実はこの間の放課後にさあ・・・」
という青春ストライクな会話をしていたりする。
「よ〜こ〜し〜ま〜、一体その子は誰なんだ!」
その後二人が入り口で固まっているといち早く復活した眼鏡君が横島に問い詰めた。
その声に反応し次々と蘇ったゾンビ達(クラスメイツ)も「どこからさらってきた!」「早く自首しろ!」などと口々に騒ぎ出す。
「ああ、彼女はオレの「「「「「オレの!?」」」」」姉弟子で神族の小竜姫様だ。」
「親族?親戚か何かか?」
「違うって。神の一族って書く神族。つまり彼女は神様だ。」
「「「「「神様!?」」」」」
驚きの表情で小竜姫を見つめる一同。注目された小竜姫は皆に向かって一礼すると、
「はい、妙神山管理人竜神族が一柱、小竜姫と申します」
ニッコリ笑ってそう言った。その笑顔はまるで誰にも触れられた事のない処女雪のような清らかさと内からにじみ出る優しさが込められたとても魅力的なもので、何人かの男子生徒は頬を染めたまま動かなくなった。
その様子を愛子はじっと見つめていた。
余談ではあるがその笑顔を見た男子一同は彼女を「美の女神」と認定し、武神だと言っても決して認めなかったそうな。
その後固まってしまった男子一同を脇に除け、教師に事情を説明し授業を受ける許可をもらい一息ついていると、金髪の美青年と巨体の青年(?)が登校してきた。
「おはようございます、横島さん。って小竜姫様!?」
「なんで小竜姫様がここにおるんですかいノー?」
教室に入って早々目を丸くするピートとタイガー。
「あ〜、えーとな・・・」
めんどくさそうに横島が二人に事情を説明する。
「えっと、小竜姫さんだっけ?私愛子って言うの。よろしくね。」
横島が二人に説明している間手持ち無沙汰になっていた小竜姫に少しだけ不安そうに愛子が話しかけた。
「はい、よろしくお願いします!あら、あなたはもしかして?」
「やっぱりわかる?私は机の妖怪なの。今は横島君の机兼女子高生かな?」
「横島さんの、ですか・・・」
一瞬表情を変える小竜姫。その顔からうかがえるのは嫉妬という名の感情だった。それを見て愛子の推測は確信へと変わった。
「ねえ、もしかしてあなたも横島君のこと・・・「「えっ!!小竜姫様と同棲してる!?」」えっ、嘘!?」
「「「「「なに〜!!!」」」」」
ピートとタイガーの発言でクラスはパニックになった。すでに授業開始時間は過ぎているのだが、教師も一緒になって騒いでいるので問題ない。
「ちょ、ちょっと横島君どういう事?ど、同棲だなんて不潔よ!!」
「そうだ横島!なんでお前だけいい思いを!」
「うらやましいぞこの野郎!!」
「の○太横島の癖に生意気だぞう!」
愛子の叫びに呼応するように不満をぶちまけるジャイ○ン野郎共。
そのあまりの剣幕(主に愛子の)に怯えた横島が
「ち、違うって!いや、まあ同棲はしてるけどやましい事はねえよ。なんだかよくわからんが神族としての任務でオレの所にいるらしいし。それに二人っきりってわけじゃないしな」
「どういう事?」
「美神さんとかシロタマも一緒なんだ。」
「「「「「なに〜!!!」」」」」(((((そろそろリアクションとるのにも疲れてきたな・・・)))))
またも揺れる教室。
「結局ハーレムかよ!」とか「お前を殺してオレが代わりに!」などと騒ぐ一同の中に、冷たい殺気を横島に向ける男がいた。
普段はいつも愛想がよく、皆に優しい好青年で女性にはよくモテる彼。
そう、殺気を放っていたのは金髪美形のバンパイアハーフだった。
「横島さん、もしかしておキヌさんも一緒なんですか?」
「ど、どうしたんだピー「一緒なんですね!」は、はい!」
「ク、クックック・・・アーハッハッハッハ」
「ピ、ピートサン?」
ピートは普段のさわやかな笑顔とは180度異なった禍々しい、まるでジャッ○・ニコ○ソンのような笑みを浮かべ、これまた普段使っている聖なる力とは180度異なる魔力100%の魔力砲を発射せんと右手を横島に向けた。
「ダ〜イ♪」
「おい!それは洒落にならんぞ〜!!」
「クラエ!ダンピールジェノサイド!!」
「のわ〜〜!!」
乱射されるピートの魔力砲を横島はゴキブリのそれを彷彿とさせる人間離れした動きでかわす。
「相変わらずすごいと言うかなんというか・・・」
「・・・青春ねえ」
「何であれで避けられるんですかいノー・・・」
その様子をちゃっかり教室の隅に避難したクラスメート達はのんきに見物していた。(注:今は授業中です)
「それにしてもピート君ておキヌちゃんが好きだったのね。う〜ん以外だわ」
愛子の疑問も尤もであった。生き返ってからのおキヌと四六時中エミが張り付いているピートの間にそれほど接点があったとは思えない。さらにおキヌが横島に好意を持っていることは周知の事実であり、その想いはおキヌがまだ幽霊だった時からのもので、横島の周りにいる女性の中でも一番歴史が長い。今から狙っても非常に勝ち目は薄いと言えるだろう。
「そういえば前にピートさんが『おキヌさんがよく教会に食事を作りに来てくれるんだよ。おかげで最近は先生も倒れたりしていないんだ。ほんとうに彼女は優しいな〜』って言っとったケン、そこに惚れたんと違いますかノー」
実はこれは唐巣神父の元弟子である意地っ張りな誰かさんの指示だったりするのだが、もちろんピートは気付かない。(唐巣神父の方は元弟子のこの不器用な優しさに気付いてたりする)
「なるほど、エミさんのアタックに疲れたピートさんがおキヌさんの優しさに癒されて・・・というわけですね。」
「それにピート君は真面目だから元々おしとやかな女性の方が好みっぽいしね。」
((つまりこのままピート君(さん)が頑張ればライバルが減るということね(ですね)・・・これは他の人と共謀してピート君(さん)を応援しないと・・・って、え?同じ事考えてる?))
一話でも言った通り恋する乙女は目と目で通じ合う事ができる。しかし実はそれだけではない。乙女が全く同じ人物に好意を持ち、いくつかの条件がそろうと乙女同士に「共振」と呼ばれる現象が起こる。
「共振」とは精神の深い部分、目には見えない場所――――「領域」(スフィア)を通じて想いを共有する事であり、乙女が互いに『必要だ』と強く感じた時のみに起こる。そして「共振」にはある問題があった。
「・・・やはり愛子さんも彼が好きなんですね・・・」
「・・・そういう小竜姫さんこそ・・・」
乙女の「共振」とは会話や通信とは違い「想いの共有」である。そのため好意を寄せる相手の事やその彼をどれくらい想っているのかなどが駄々漏れになってしまうのだ。
「まあいいわ。とりあえずさっき考えた事、協力してくれるわね?」
「ええ、もちろん」
「・・・ふふっ」
「・・・うふふ」
「「お主も悪よのう」」
こうして竜と机という奇妙同盟が結ばれたのであった。
「でも横島君は渡さないわよ!」
「こっちだって譲るつもりはありませんからね!」
・・・同盟が破棄される日は近い・・・
<おまけ>
「KILL YOU♪」
「誰かこいつを止めてくれ〜」
この攻防は愛子と小竜姫がピートを殴り飛ばすまで続き、乙女の黒い部分を間近で見てしまったタイガーは教室の隅で蹲って震えていた。
・・・哀れタイガー、強く生きてくれ・・・
〜あとがき〜
なんとか4話を書き上げました!愛子さんと小竜姫様がちょっと黒いです。てか年が明ける前に書くとか言っといてもう約2ヶ月経ってますorz
今回は学校編という事で愛子、タイガー、ピートを出してみました。愛子さんはともかく、タイガーはホントに使いづらいです。あまりタイガーの出てくる作品が多くないのも頷けます。しゃべり言葉がむずい!
そしてピートですが、彼はおキヌちゃん大好きっ子でいきたいと思います。報われませんけど(笑)一応彼のために壊れキャラの表記を入れてみたり・・・
あとフルメタのネタはなんとなく入れてみました。特に意味はありませんが「共振」はまた出てくるかも・・・
あと今回からサブタイトルを付けてみましたがどうでしょうか?
明日から実家に帰ってのんびりするので、次はもう少し早く書き上げたいと思います。もしよろしかったら感想でも書いてやってくださいm(_ _)m
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