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▽レス始

「センチメンタル・エゴイスト 序(GS+少年魔法士)」

瑞原夕梨 (2006-02-14 01:58)
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 さて、この世には、本当にたくさんの仕事があるね。
 中には、とてもとても危険な仕事もある。

 その筆頭は、GS・ゴースト・スイーパーかな?
 もちろん、君も知っているだろう?
 かつては、除霊師、悪魔祓い、拝み屋etc、多くの名前で呼ばれていた職業だ。
 しかし、アレだね。僕はたくさんの世界を知っているけど、これほどこの職業が認知されている世界というのも、珍しいよ。
 ああ、僕が何者かなんて君は気にしなくていい。ただの語り手。それ以外の意味なんて、君にとっては無と同様さ。
 さて、それはさておき、GSという職業が存在する為には、一つの大きな大前提が必要だ。
 君にはそれが、分かるかな?
 何、簡単なことだよ。
 彼らは霊を祓える。
 それが可能なのは、霊と人間が別物であるからだ。
 当たり前だって?
 確かにね。だけど、考えてごらん。どうして霊たちは取り付いた人間と交じり合ってしまわないのだろうね? そうすれば、祓われることなんてないのに。
そうだろう?
 一度溶けた絵の具を再び取り出すのは、なかなかに難しいことだからね。

 つまりだ。
 『肉体を離れた純粋に霊的な状態でさえ、人間は他者と交わることなど簡単には出来ない』

 免疫。知っているね?
 細菌もウイルスも共に暮らしている地球上で、生物が生きていく為に必要な機能。自分以外の他者を排除し、体を守る機構だ。
 魂にもそれと同じものがある。

 人はね。根源的に自分以外の他人を受け入れることが出来ないように創られているんだ。

 ああ、君は今、不思議に思ったね。
 そう、君は知っている。失った魂の代わりに、愛する人の魂を与えられた少年を。

 彼は、ナゼ、大丈夫だったんだろうね?
 たまたま、愛した相手が適合者(ドナー)だった?

 それはもう、天文学的数値の偶然だ。

 だから、本来ならば、あの時に訝しむべきだったんだよ。
 誰か一人でいい。ナゼとそう疑問に思うことができていたら――

 未来は変わっていたかもしれない。
 否、未来は変わらなくてすんだのかもしれないと、そう言うべきか。
 いや、これは君の知らない話さ。過去という名の未来。そういう話だからね。

 とにかく、あの時は、誰もおかしいと思わなかった。
 それこそ、神魔両サイドの最高神でさえも。

 うん。「横島だから」そんな言葉で納得してしまったのかもしれない。
 良くも悪くも、彼はそう思わせる何かを持っていたから。何でもアリみたいな。
 それこそ、彼の能力の粋である文珠がそんな力だったしね。

 だから――
 だから、この物語の結末は、完全に神魔両方の責任だ。
 彼に責任を取らせようというのは、お門違いだと指摘しておこう。

 そして、おそらくこの結末が一番始末に負えない。

 彼はもはや彼ではないし、物語は完全に放り出されてしまうだろう。

 でもそれも、一つの終わり方ではあるがね。

 さて、長々と付き合わせて悪かったね。もうすぐ、新しい物語が始まる。古い物語の終わりと共に。
 君はそちらを見に行くといい。


 願うならば、新たな物語の結末は、笑顔で飾られればいいと祈っているよ。


 ――――まあ、これも感傷なんだけどね。


序・結末と冒頭と


森は深い宵闇に包み込まれていた。

午前2時
草木さえも眠りにつく時刻、丑三つ時だ。

 しかし、そんな草木の眠りを妨げるように、音が、森の奥からこだましていた。

 高い金属音。

 高速で金属同士がぶつかり合う音だ。

 それは――剣戟。

 何者かが、森の奥で戦っている。


「はっ」
 鋭く吐き出した呼気と連動するように、剣が横薙ぎに振られる。

 その速度は神速。

 当然だ。
 剣を振る者はまさしく、その名を冠された存在なのだから。

 対するは、一人の青年。
 ジージャンにジーパン。何処にでもいるような二十歳前後の若者。特徴といえる特徴は、額に巻かれた赤いバンダナくらいか。
 神の振るった剣先は、狙いたがわず、青年の首へと吸い込まれた。

 必殺の一撃。

 ――と、攻撃を放った者は思っただろう。

 しかし、刹那の後、来るべきものが来ない。
 肉を絶ち、骨を折る、その手ごたえが……

 何故と疑問に思う暇はなかった。
 なぜなら……

「横島、忠夫」

 声が響く。
 それは、神の左手、先ほど青年――横島忠夫の居た位置から、ちょうど一歩半右へづれた場所。その、低い位置から、声が。

「逃げ足だけなら、神にも」

 神の顔に浮かぶ色は驚愕。
 馬鹿なと叫ぶ声は空しく途切れた。

「負けんっ!!」

 黄金色の光の筋が、下から上へと解き放たれる。
 横島の右手から伸びた霊波刀は、一瞬の半分の時間で、神の頭を切り落とした。


「はっ」
 ごろりと転がった頭を気味悪そうに横へ、藪の中へ転がしてから、横島は大きく、息を吐いた。
 見渡せば、そこは地獄。
 いくつもの死体が、どす黒く染まった地面に横たわっていた。
 彼らはいずれも神族。
 つまり、横島忠夫は神と冠される存在数人と渡り合い、勝利を収めたことになる。

 考えられないことだ。普通ならば。
 しかし、現に横島がそれを成し遂げたことは事実。
 それが意味するところは……

「くそっ、こっちだって、好きで人間止めたわけじゃねぇっつーの」
 恨みがましげな声は空へと吸い込まれていく。
「あー。何を間違ったかなぁ」
 例えば、いつかはハーレムを作ってみたいだとか、そんな些細な願いをもったことが悪かったのか。
「くぅっ。健全な青少年の純粋な願いやないかー。そんなん男なら誰でも考えるっちゅうねん」
 世の中、そんな男ばかりではないと思うが……
 しかし、考えただけで、実行はしなかった。いや、できなかったというほうが、正確だろうが。なにしろ、ナンパの成功率は未だに0%だ。人間相手では。
 それに対する罰がこれでは、神様も沸点が低すぎるという話だ。

「オレはただ、皆と馬鹿やってればよかったんだよ」

 小さく、零れた声は、しかし、いつになく真剣で。
 俯いた顔からは表情を伺えない。

「それを……」
 危険分子として排除。
 それが、神界・魔界双方の結論だった。
 生きていくことさえ認めない。

「ふざけんな!!」

 それこそ、認められないと横島はきつく、血が滲むほど拳を握り、そして――

 哂った。

 暗く陰鬱な表情で。

「ああ、そうだな。認められっかよ」

呟き、両の手を前に。
 きつく握りこぶしを作れば、そこに現れたのは、十を超える文珠だった。

「認めない。だから、否定してやるよ」

 文珠が輝く。
 いくつもの文珠が連鎖し、輪をえがき、輝きを増していく。

「神も悪魔も、運命も、痛みも絶望も、喪失も、現在(いま)も未来(あした)も、全て、全てを否定しに」

 いつしか、輝きは目を焼かんばかりとなり――


「オレが、神を作ろう。唯一絶対の神を。過去のオレを寄代に」


 唐突に消滅する。
 横島忠夫の姿と共に。


 それはいつかの未来の姿。並行宇宙の一つの結末。
 そして――
 新たな未来の始まり。

 物語の改変。それすらも並行宇宙の可能性。


あとがき
はじめまして。瑞原と申します。
GSは完全な読み専だったのですが、なにを血迷ったのか、投稿などしてしまいました。
一応設定だけは前々からいじっていたんですけどね。
なんか、着地地点を考えついてしまったので、形にしたくなりました。
ああ、長編は大変なのに。
おそらく、かなりのスローペースだとは思いますが、読んでいただければ幸いかと思います。
一応、+少年魔法士となっておりますが、(まあ、読んだことがある人には冒頭で一発ネタバレなんでしょうが)少年魔法士のキャラが出てくるということはありませんので、そちらを楽しみにしていただいた方にはすみませんと最初に謝っておきますね(マイナーですし、いないでしょうが<苦笑)。
設定を少し借りる予定なだけです。
ではでは、あとがきが長くなってしまいました。
次回第一話も早めにお届けできればと思います。

あ、ところでこれ、ダーク表記つけませんでしたが、大丈夫だったでしょうか? 瑞原的にはサラリと流したつもりなんですが……

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