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「妙神山のただおくん39(GS)」

のりまさ (2006-01-15 18:45/2006-01-16 00:13)
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<忠夫>
「じゃ、行ってくるね」


 玄関で靴を履きながら、小竜姉ちゃんにそう言う。
 いつも早めに学校に出る俺たちだが、今日はいつもより更に早い時間帯。
 今日から学園祭なので、
 その準備を朝早めに来てしなければならないからだ。
 俺たちより忙しいおキヌちゃんなんかはもうすでに出ている。
 俺とルシオラはもう少し楽だが、それでも早めに出なければならない。

「私も後で行きますからね。忠夫さんたちは確かめいどきっさでしたっけ?
 どんなものか知りませんけど、楽しみです」


「いや、あれはクラスの奴らの冗談だったんだよ。
 まさか本当にやるわけじゃないさ。
 楽しみにしてもらっても、実際はただの喫茶店だよ」


 そうそう、この前のあれはきっとただのおふざけだろう。
 大体メイド喫茶など、
 それもメイドガイ喫茶など学校側が許すとは思えない。
 実際ここ数日の準備はただの喫茶店の準備しかしていないからな。


「なあ、ルシオラ?」


「……ええ、そうね」


 ?


「それじゃ、行ってきます」


「行ってくるわ」


 小竜姉ちゃんに手を振ると、笑顔で応えてくる。


「ええ、気を付けて行ってくださいね。
 横断歩道を渡る時はちゃんと右を見て左を見て、もう一度右を見るんですよ。
 怪しい人におやつあげるからおいでって言われても行っちゃ駄目ですよ。
 迷子になったら泣かないで落ち着いて交番に行くんですよ。
 美味しい匂いに釣られて寄り道しないでくださいね。
 悪い人に攫われそうなったら大声で火事だーって叫ぶんですよ。
 知らない人になんぱされたら逃げるんですよ。
 知っている人だったらぐーで殴っていいですよ。
 あと、えーと、あの……」


「小竜姉ちゃん、俺もう中学生なんだけど……」


 小学生から恒例になっている毎朝のやり取りに、少々辟易する。
 まあ小竜姉ちゃんが大切に思ってくれているのは嬉しいけど、小学生じゃないんだが。


「そ、そうですね! では行ってらっしゃい!」


「まったく、小竜姉ちゃんの過保護にも参るよな、ルシオラ」


 ちょっとやれやれといった感じでルシオラに話しかけるが、
 当のルシオラは何かぶつぶつ言っている。
 考え込んでいる感じだ。


「どうした、何か考えごとか?」


「……ん? いや、ヨコシマには関係ないのよ?」


 別にそんなことを聞いたわけじゃないんだが……。


「にしても、普通の喫茶店でお客さんが入るのかな?
 まさかメイドガイ喫茶がいいとは言わないけどさ」


「……そうね」


 まあ、例え客がいなくてもメイドガイ喫茶よりはなんぼかマシか。


「ま、初めての学園祭だし、頑張るか!」


「そ、そうね」


妙神山のただおくん〜学園祭だよ 最初の日〜


 甘かった。俺が甘かったとしか言わざるを得ない。
 正直に言おう。俺は奴らを舐めていた。
 奴らに追われながら、俺はそう結論づける。
 自分の甘さに歯噛みする。だがもう遅い。

 俺はすでに奴らの罠に嵌ってしまったのだから。


「「「「「「「「「「「「「「「横島くん待ちなさーい!」」」」」」」」」」」」」」」


「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 なんでこうなったかって?


 はっはっは。俺は普通に教室に入っただけなんだよ?
 そしたら女子数人が、というか数十人が、
 つーか女子全員が待ち構えていた。


 ……メイド服持って。

 しかも昨日までちゃんと普通の喫茶店の飾りつけだったのに、
 当日になるとなぜかもう、なんというか、看板とかなんかすごいことになってるし!
 いつの間に変えたんだよ!

 俺はその瞬間に全てを理解したさ。
 もうこのクラスとも付き合い長いしさ。
 当然、すぐに教室から出ようとしたよ。

 でもさ。


 がちゃり、だよ。


 すぐ後ろから来たルシオラが鍵閉めちゃったんだよ!
 暗い笑みを浮かべながらさ! 
 しかも内側から開けれないようになんかドアが勝手に改造してあるし!

 ルシオラも完全にあっちに取り込まれてるのかよ!


 完全に閉じ込められたと思ったさ。
 メイド服を持ってじりじりとにじり寄る女子たちを見て観念しようかとも思ったさ。

 だがまだ希望はあった!

 俺は教室のドアの上側にある窓に気付くと、ジャンプして無理やりそこから廊下に飛び出た。


 そして全速力で逃げたさ!


「くっ、逃げられたか!
 ならばこれよりオペレーション・メイドを決行する!
 A班は校門を、B班は裏門を塞げ!
 C班は他クラスに。D班は高等部に応援を呼べ!
 残りは私とともに横島くんを追うぞ!
 E班は五階から、F班は一階から追い詰めていく!
 ルシオラさんは教室で連絡係をお願い!
 時計合わせ、0:00! 行くぞ!」


「「「「「「「「「「「「「「「ラジャー!」」」」」」」」」」」」」」」


 逃げながら、教室の方で委員長とそれに続く声が響いた。

 なんで皆こういう時だけ団結力が凄まじいのさ!


 ……というわけでこうなっちゃったわけさ。


「大体昨日まで飾りつけとかの準備も普通の喫茶店だったじゃん! どうして当日になって教室に来てみれば中身も外見もいきなりメイド喫茶に変わってるのさ!」


 激走しながら廊下を逃げ回る俺。


「ふふふ、それは謎の五人目の男子、タイガー寅吉君の能力のおかげよ。
 彼の持つ精神感応能力で上手くあの教室をカモフラージュしてたの」


 50メートルを六秒切る俺の足に平然とついてくる女子大隊。


「すまんですのー、横島さん」


 後ろを振り返ると、そこには確かに大男が一人、
 すまなそうにしながら女子と一緒に追いかけていた。


「嘘だ、だって最後の男子が退院したなんて話、知らないよ!
 それにそんな奴クラスに今まで居なかったじゃん!」


「彼には精神感応以外にも能力があるのよ。
 そのおかげで気付かなかったのね」


 精神感応以外の能力?


「それはね……影が薄いのよ!


 納得しちゃった。


「酷いですのー」


「いたわよー!」


 げっ、後ろからも追われてるってのに前から女子小隊が来た!?
 かといって立ち止まれば後ろからの大隊に捕まるし。

 仕方ない!


「サイキック・猫騙し!」


 ぱんと両手に霊波を出して叩き付けて発光させる。


「きゃあ!?」


 女子小隊が目の眩んだその間に通り抜ける。
 さすがに女の子を殴り倒すわけにはいかないしな。

 多分今のが上から来た部隊だろう。ならば今は上の階は手薄なはず。
 さっそく階段へ向かい、躊躇なく上へと昇っていく。


「横島、待ちなさい!」


 上の方で立ち塞がっているには、担任の先生(男 38歳 独身)だ!
 つーかなんで先生までこんな馬鹿騒ぎに!?


「先生! 先生は生徒に平等であるべきじゃないんですか!?」


「横島、確かに私は教職者だ。
 だがな、私は先生である前に、人間なんだ。
 聖人でも神職者でもない!
 ただの欲望にまみれた、
 一人の、人間なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


「なんかカッコいいこと言ってるけど、
 絶対どこか間違ってるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


「さあ横島よ、我に捕まれ!
 そしてこの聖衣を着るのだ!」


 階段の上から跳躍して襲い掛かってくる先生!

 メイド服持って。


「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 あまりの恐怖に俺は右手を思いっきり突き出す。
 とっさに纏った栄光の手に最大霊力を込めて。


「ぶげら!?」


 それがちょうどクロスカウンターの形になり、飛び掛ってきた先生を撃墜してしまった。
顔にめり込んだ拳を引き抜くと、先生はずりずりと落ちていく。

 ぼて。

 これって校内暴力か?
 ま、まあ気にしない気にしない!
 大体今の俺の状態も精神的校内暴力みたいなもんだしな!

 先生に軽くごめんなさいをして、すぐにまた階段を駆け上がる。

 でも上へ行ってどうしよう? 逆に逃げ場が無くなるような……。


 そうだ、屋上まで逃げてそこから高等部に逃げよう! 
 まだまともな美神さんや冥子ちゃんならきっと助けてくれるはず!

 俺は三階、四階、五階と階段を昇っていき、遂には屋上のドアを開ける。

 だがそこには!


「逃がさんぞ、横島ぁ!」


 陰念がいました。

 この今回の騒動の大本の原因が!


「お前に逃げられてしまえば、数ヶ月にも渡る俺の作戦がパーだ!
 タイガー寅吉という切り札を隠しておくために本当はすでに退院していたのに、
 もう一度力ずくで入院させて!
 何人かの女子を買収するための金を日夜アルバイトで稼いで!
 最高のコスチュームを用意するためにヨーロッパで
 世界最高と名高いメイド服作りの達人に三日三晩家の前で土下座して、
 二年先まで予約で一杯のところを特別に作ってもらい!
 この数ヶ月で俺は体重が15キロも減ったのだ!
 この努力を無駄にせぬためにぃぃぃぃぃぃ!
 故に、お前はここから逃がさん!」


「下らないことにそんな熱意をかけるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!」


 もう話すことなどない!
 悪いが男で丈夫な陰念なら手加減などしない!
 というかかなりむかついているし。

 俺はサイキック・ソーサーを多数空中に浮かべていく。


「サイキック・ソーサー、乱れ撃ちだー!」


 手を振るうと十数のサイキック・ソーサーが陰念へと向かっていく。
 これならいくら丈夫な陰念でも倒れるはずだ。


「なんとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 だが陰念は体中の傷跡から霊波を出すと、俺の放った全てのソーサーを撃墜してしまった!
 その数は数十を軽く越えている!

 どこの無限力ロボですかあんたは!


「そして俺はこの日のためにある女の下で修行に修行を重ねたのだ。
 そう簡単にお前にはやられん!」


 にやりと不適な笑みを見せる陰念。
 くそ、ただのギャグキャラじゃなかったのか!?

 陰念がゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。


「さあ横島、覚悟しろ。貴様に今日こそ、今日こそ!
 長年の夢だったメイ、ド、ふ……」


 ばたり。

 なんか急に倒れちゃった陰念。


『ふむ、急に己の限界以上の霊力を一度に出してしまったせいで、
 霊力中枢に軽いショックを起こしてしまったようだな。
 貧血を起こしてしまったようなものだ』


 戦闘になったせいで目覚めた心眼が俺の無言の疑問に答えた。


「……アホ?」


『アホだな』


 なんというか、むなしかった。


「ここにいたのね、横島くん!」


「げっ、追い付かれた!?」


 取り合えず陰念の墓を作って(いや、死んでないけどなんとなく)やっていたところに、
 追いかけていた後続部隊がやってきた。

 忘れてた! 早く逃げなければ!

「伸びろー!」


『伸』


 甲にある玉が輝き、いつものように栄光の手を伸ばして高等部の校舎の屋上の手すりを掴む。
 そして以前小鳩ちゃん騒動の時におキヌちゃんから逃げる要領で栄光の手を縮ませて、
 高等部の校舎へと移っていく。
 ターザンが木のロープで移動するように、って言ったら少し違うかな?


「逃がすかぁぁぁぁぁ!」


 だがそう思い通りにはいかないのが人生というもの。
 女子一人の放った霊波砲が、伸ばして強度の脆くなった部分の栄光の手を打ち抜いて、


「げっ!」


 俺はその爆発と反動で屋上ではなく、高等部校舎の中へと吹き飛ばされていった。


<令子>
 今日は学園祭当日だが、六道おばさまの依頼で妖怪の除霊を頼まれている。
 おばさまが言うにはGS資格試験のほんの肩慣らしだと言うが、
 おばさまのことだからどこまで本気なのやら。
 にしてもわざわざ学園祭当日にこんなことやらなくても……。

「令子ちゃ〜ん。どうしたの〜? ぼ〜っとして」


「別に、ただ皆が学園祭で遊んでいるっていうのになんで私たちだけって思っただけ」


 私が少しぼーとしていたのを、冥子が不思議そうに聞いてくる。
 というか、いつもぼーとしている冥子にそう言われるのはなんか納得いかないわ。


「さ、ちゃっちゃと終わらして、学園祭を楽しむわよ」


「あら〜、令子ちゃんがそんなこと言うなんて意外だわ〜。
 去年までは学園祭なんて興味ないって顔してたのに〜」


「う、うるさいわね! 私だって偶には普通の学園生活を楽しみたいって思うわよ!」


「あ〜、もしかして〜、誰かと一緒に回る約束でもしてたの〜?
 それは残念だったわね〜。
 いいな〜、私も横島くんに聞いてみようかな〜?」


 別にそんな約束はしていない。いや、一応約一名しようと思った奴がいたことはいたけど。
 でもそいつに会えるのは基本的に昼休みしかない上に、そいつの左右には二人の女の子ががっちりガードしてるため、そう簡単には誘えない。
 片方は誘おうと思ったら、私を黒いオーラで見つめてくるし、
 もう一人は「てめえ何人のもん勝手にかっさらおうとしてんだああん?」って顔するし。

 ま、まあ別にそんなに誘いたかったってわけじゃないしね。
 いつも世話してやってんだから少しぐらい奢ってもらってもばちは当たらないでしょうって思っただけだし!
 ただそれだけなんだから別に残念でもなんでもないわよ!


「もう、話を脱線させない! さっさと除霊して……」


 そう今回の目標である机に向かった瞬間、がっしゃーん!となんとも古典的な音が後ろで響いた。


「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「よ、横島くん!?」


 ガラスを突き破って飛んできたのは横島くんで、
 彼はその勢いのまま私を突き飛ばして、
 私は彼を受け止めることができずに一緒に飛ばされる形になって、
 その先には目標の机があって、


「ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 近づいた瞬間、その机から出た何かに私と横島くんは引きずり込まれていった。


<???>
「ん、忠夫の反応が消えた? まさか死んだってわけじゃないだろうけど、
 どこか異空間に転移したとでも言うのかい?」


 私の上司はそう言うと眉を顰めるが、やがて、


「まあ、忠夫なら大丈夫だろう」


 と、簡単に結論付ける。
 実際、今の彼の能力なら大抵のことは大丈夫だという気はした。
 一時期伸び悩んではいたものの、何のきっかけがあったのは知らないが、
 最近また飛躍的な伸びを見せている。
 今の私では例え全力で戦っても勝てるかどうかは半々といったところだろう。
 だがそれはあくまで私と戦った場合。
 ここでこの上司が加わった場合、勝てる確率はあっさりと傾く。

 私は……。


「忠夫の反応が復活したら行くよ。もう一人の奴にも連絡を取っときな」


「陰念の奴なら、さっきからいくら携帯を鳴らしても出ないですわ」


「……ったく、あの馬鹿は一体何してんだい」


 メドーサ様は苛立たしそうに呟く
 まあ、ある意味二人は師弟でライバルという、熱い関係だからね。


「この前は小竜姫の奴らに邪魔されたけど、ここなら結界が張ってある分、
 そう簡単には察知できないはず。
 あの小僧もあんたの相手にはならないだろうしね。
 ああ、あの小僧がまた邪魔してきたらあんたに任せるよ」


 あの小僧とは恐らく伊達雪乃丞のことだろう。

 友と妹を守るために上級魔族に立ち向かった横島忠夫。
 何の関係もないくせに、友のために私と戦った伊達雪乃丞。


 私は……。


 続く


あとがきとお知らせ
 最近忙しかったけどとりあえず日曜日なので書き上げました。皆忘れているかもしれませんけど、お久しぶりです。実家に居る間は書けず、帰ってきてもレポートとバイトで忙しかったために中々書けませんでした。
 さて、ここで気付いている人もいるかもしれませんが、ただおくん37話を改定しています。ここで忠夫は未来横島に栄光の手二刀流を教えてもらうとなっていましたが、それが文珠に変わりました。
 実は本来の流れがこちらの文珠を教えてもらうという方向でしたのですが、あっさりと予期されたので変えたのです。ですが、そうすると後々の話が少し難しくなるので、やはり元の予定に変えました。
 ですので、申し訳ございませんが一度37話を見直してくれると助かります。

 さて実はそろそろただおくん、終わりに近づいています。今までずっとお馬鹿な展開でしたが、実はこっそりとこの世界に対する伏線があったりなかったり。どこが伏線か分かっても言わないでくださいね。それをそろそろ回収していこうと思います。

 今回ちょっとレス返しできませんが、ではこの辺で。

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