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「Y's Genesis : 0(GS)」

hiduki (2005-12-23 02:08)
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自分の可能性なんて信じていなかった。
子供の頃は信じていた無限の可能性も、今では夢想だにすることはない。
このまま面白おかしく生きていければ、―――それで良いとさえ思っていた。
退屈の無い、刹那的な日々。将来なんて見据えてはいなかった。
GSの助手なんて特殊なことをやっていても、
自分の様な凡人では決してああはなれないだろうと、核心さえしていた。

――――今日の、この日までは。

Y‘s Genesis:0

相変わらずの汚い部屋ではなく、
清潔で高級な品揃えで彩られた大きな部屋で横島は目を覚ました。

「あれ?」

寝ぼけた頭のまま首を傾げる。
明らかに自分の部屋ではない。―――と考えたところで昨日の事を思い出した。

「あ・・・っと、そうだ金成木財閥の依頼で・・・・!」

豪華客船での世界有数の財閥の人間が起こした珍事を思い出す。
幽霊恐怖症で美神令子と結婚しようと思うなんて無謀な男の姿を。

「へっ、俺の女に手を出した罰だ。精々おキヌちゃんに追われるが良い」

最初は腸が煮えくり返ったが、あの憐れな姿を思い出せば飲流も下がる。
そうして一人思い出し笑いをして、ふと自分の横にある質感に気付いた。

「あれ、この感触は・・・・・」

布団の中に手を伸ばすと、柔らく暖かな感触が手に残る。
その瞬間、横島は確信した。―――女だ、と。

(―――ッ! 思い出せ横島忠夫。此処は何処だ!? 昨夜一体何が!!?)

部屋を一瞥し、瞬時に脳内で検索する。
検索結果、此処は美神除霊事務所の客間。
何故、此処に? 
―――昨日の依頼の後、ラーメン屋が閉まっていたので、
事務所でビザの宅配を頼み、一緒に飲んだワインで酔っ払ったので、
令子の好意で事務所に泊めてもらった筈。
故にここが見慣れないのは何時もはあまり縁の無い客間だから。

昨日は横島と令子の二人きり。
おキヌは例の阿呆の元で憑いている。
故に隣に寝ている可能性のある人間はただ一人!

「みっかみさーん!! 俺が恋しくて潜り込んできたんすね!!?」

言ってて100%在りえないとは思う。真相は寝ぼけて入ったというところだろう。
だが、既成事実を作るなら今!

(あの手の女は一度こましてしまえば大人しくなると見た!!)

欲望にぎらつく眼で隣に寝転がる人間に襲撃。
女体特有の柔らかな感触と鼻に残る良い匂い。これは――――

(美神さんじゃ・・・・ない?)

今まで散々セクハラしてきたのは伊達ではない。
顔を見ずとも抱きつけばそれが令子で無い事ぐらい瞬時に把握できる。
だが、それでは一体誰が――――

そこに居たのは白い仮面で顔を隠し、青紫色の装束を着込んだ女性だった。
服と同じ色の頭巾から毀れる絹の様に艶やかに輝く白髪。
適度に盛り上った胸部。細く折れそうな四肢。白雪の様に繊細な肌。

顔は見えないが自身の女性と死の予感に対しては機敏に働く勘が告げる。
歳は自分程度と若いが、間違いなく美神さん並みの一級品の美女だと。

(み、美神さんではないが、これはこれで・・・!)

ゴクリと喉を鳴らし、股間が反応する。
状況は良く分からないが、目の前にいるのは美女。
それも何時でもOKと無防備に寝転がっている様子。
此処で手を出さずにして何が男か!

「横島忠夫、いっきまーす!!」

瞬速で服を脱ぎ捨て飛び掛ろうとする横島の前で、先に少女の方が起き上がる。
余程寝起きが良いのか、僅かな眠気も感じさせず、上半身を跳ね上げる様に起き上がった。

「ああ、すんません! 仕方ないんや、若さが悪いんや!!」

まだ何も言われていないのに即座にパンツ一丁で土下座する。
普段の女性陣の対応が身に染みているのか、その格好は実に堂に入っていた。

「・・・ヴッ」

彼女は何処か雑音交じりの声と共に奇行に走る横島に眼を向ける。
感情を感じさせない赤い瞳。
何もかもを飲み込みそうな深みのあるそれに、横島はびくびくしながら伺いを立てる。

「あ、あの僕お金は持ってないんで、裁判とかカツ上げとかは勘弁してくだ――――」

小動物の様にぷるぷる震えながら懇願していた途中の横島に、
少女は僅かな逡巡も見せず横島の胸に抱きついた。

「え、あれ?」

殴られるでもなく、逃げられるのでもなく、泣かれるでもなく、怒鳴られるでもなく、
まるで愛しい人と再会した様な、そんな雰囲気を滲ませて横島に抱きつく少女。
その今までに無いパターンに一瞬思考停止する横島だが――――――

(こ、これは、合意の下でOKということか!!)

望むところの展開の為に、即座に気を持ち直す。

「ああ、苦節十六年。来る日も来る日も馬鹿にされた毎日。
美神さんにはしばかれ、おキヌちゃんには殺されかけ、男には襲われ、世の女どもには馬鹿にされた人生は今日のこの日の為に―――――」

じーん、と感動のあまり男泣きする。
だが、直ぐに感傷は消え失せ、頂きまーすと叫んで再び襲い掛かる。

仮面で顔を隠している事や、
この少女が何者だとかはそういう疑念は横島の頭の中にはなかった。
既に頭の中は興奮で一杯である。

「むっ、これは・・・手強い・・・!」

和服というのは意外と脱がしにくく、四苦八苦する横島。
特に戦闘用の装束であるようなので、中々服が開かない。
だが執念で、局部的に胸の部分だけ開く事に成功する。

「おおっ! 白い果実が二つ!!」

ぽよんと擬音が立ちそうな動きで、お椀型の形の良い美乳が毀れる。
あまりの刺激に勢いよく鼻血を吹き出すが、それを根性で止めて、恐る恐る胸に手を触れさせる。

「あ〜、柔らかい」

そのまま昇天しそうな表情で悦に入る。
触れるとそのまま沈みそうなほどに柔らかい胸の感触。
令子の跳ね返す様な弾力とは正反対の良さに改めて感動する横島。

(お父様、お母様。忠夫は今日大人になります!)

「生まれた時から愛してました――――!!」

愛があれば全て良しと言わんばかりに、そのまま顕になった胸に突進する。
その横島の様子に何処か嬉しげに受け入れる少女。
このまま行けば、横島にとっては薔薇色の展開が待ち受けているのだろうが、

「ちょっと、横島。あんた起きたんならとっとと来なさいよ――――」

―――と千年の誓いが邪魔をする。
何故か朝食の準備をしていると悪寒がし、様子見に来た令子が現れた。


客間の時間が暫し止まる。そして――――


「人の家で何しとるかこのエロガキ!!」

「ふべら!!」

そして何時ものお約束と言わんばかりに横島は
日本有数のGSのかぎりなく全力に近い霊力を込めたパンチに景気よく吹き飛ばされた。


「ふ〜む。この娘、式神か使い魔の類ね」

一時間後。横島が徹底的にしばかれ、そして回復した後、横島を伴い事務所の応接室で正体不明の少女を霊視ゴーグルで眺めてながら令子はそう断言する。

「式神っていうと・・・冥子ちゃんのあれっすか、美神さん」

「まあ、冥子の十二神将と比べる程のものでもないと思うけどね。
何か知らないけど、あんたに括られている程度だから大した奴でもないでしょうし」

霊視ゴーグルを仕舞いながら、肯定する。
だが、式神にしても使い魔にしても自然発生するような霊能ではない。
起きたときに何故か霊波刀を使えるようになっていたならまだ納得がいくが、何故か式神が憑いていたなど到底納得のいく事柄ではない。式神と見せかけた悪霊かと思ったが、霊視ゴーグルでは間違いなく式神系に見られる特殊な霊波パターンが検出できた。
異常な事態である。これが我が身に起こったことなら令子も徹底的に調べるが、所詮人事、ましてや横島では調べる意欲など何処を探しても出てこない。ましてや受ける霊波から大した式神でもないのでは。

「ま、あんたの先祖か何かが廃れた陰陽師で、
長期間に掛けて私の霊波を受けた事で突発的に式神が目覚めたのかもね」

「う〜ん、そんな話し親父達から聞いた事もありませんけど」

「まぁね、言ってて私もうそ臭い話しだと思ったわ。
ましてや横島君が式神を持てるほどの霊能力者の家系っていわれてもね。
全く真実味が伝わってこないわ」

「一般人で悪かったな! あんたらみたいなんと一緒にせんでください!!」

いじける様に怒鳴る横島を慰める様に式神の少女がぴとりと寄り添う。
背は横島よりも頭半分低いくらいで丁度肘の辺りに胸が当たる構造となる。

「ああ、気持ち良い。
式神といえど、生身の女の子にこんな積極的にされたの初めて!」

「あっそ」

そんな横島の感動をアホらしそうに切って捨てる。

「まあ、弱そうな式神だけど、親和性は高い見たいだし。
あんたいっそのこと式神使いでも目指してみれば?
何なら冥子のところに研修にでも行く? 必要なら頼んで上げても良いわよ」

「いぃ!!」

例の暴走を思い出し、桃色の世界から現実世界に帰還する横島。

式神使い。
それは陰陽師や修験者の中でも特に式神の使役に特化した術者の事を表す。
現代では数少ない希少な霊能力者達。

この時は令子自身冗談で言った事だったが、
これの言葉がきっかけとなり、この先、横島の未来を大きく変える事となる。


後書き
皆様に触発されてGSのSSを書いてしまいました。
時間軸は令子がまだ妙神山に行く前の段階です。
この世界では横島に式神があるとか、一部のキャラが女性化しているとかある予定ですが、
其れとは別に大きく一つだけ違う事柄があります。
―――まあ続けられれば、おいおい出ると思いますが。

因みに別にこの式神は横島の前世とは関係の無いものです。
高島は式神は基本的に使わないタイプの陰陽師でした。

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