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「迷犬タダオが行く!(GS)」

拓坊 (2005-12-21 21:47/2005-12-22 17:18)
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ようっ! 俺の名前は横島忠夫。今は高校に通う17歳のナイスガイだ!

俺は高校に入ってから一人暮らしを始めて、生活のやりくりの為に金を稼ぐために今勤めている美神除霊事務所に雇われているのだ。

まあ、最初に所長の美神さんの色香に目が眩んだのが運の尽き。

時給250円と完全に労働基準法違反な賃金で働いているんだが、まあ…としてはなかなか満足できる職場だったもので今でも働き続けているのだ。

まあ、最近は時給のほうもなんとか人並みには上げてもらえたのでちょっと裕福な気分だ。それが錯覚だとは分かってるけどさ…チキショー!

ともかく、俺は美神さんのところで働いている間に霊能力に目覚めた。サイキックソーサー、栄光の手と類稀なる才能を開花させたわけだ。流石俺だ。自分でも怖いくらいの才能だぜ。

そしてその霊能力の極めつけが文珠だ。一つの漢字を込めて、それをキーワードに様々な効果を引き出せるまさに万能な俺の奥の手なわけだ。


で、俺はその能力を駆使していろいろな事件を乗り越えて来たんだが…正直俺は今大変困った状況に陥っている。

今世紀最大、空前絶後、あのアシュタロスと退治したとき並…いや、それ以上にどうしていいか分からない。


「わおーーん(なんじゃこりゃーーー!!)」


自分の部屋で目が覚めたら。俺こと、横島忠夫は現在正真正銘の犬になっておりした。


何故に!?


迷犬タダオが行く!
犬生活の始まり


何故? どうして? Why〜? 全然心当たりなんてないぞ!

畜生! って、俺自身が既に畜生なんだよ、コンチクショー!

…何で俺は犬なんかになってるんだよ?

今俺はこの前福引で当たった手鏡を見ているんだが、其処に写っているのは白と黒が混ざった変わった毛並みに、バンダナを首に巻いている子犬だった。

円らな瞳は少し赤みが掛かっていて、毛並みの方は一見ぼさぼさに見えるけど、実際はふわふわとしていて触れば気持ち良さそうだ。
そして子犬特有の保護欲をかき立てるような、ちっと可愛い感じを醸し出している。
うん、流石は俺だ。


って、納得してる場合じゃねーー!!


「くぅ〜ん(マジで何がどうしたんだ?)」


少なくとも俺には心当たりが無かった。兎に角、この状況ではどうすることも出来ないので、美神さんのところに相談に行くことにした。きっと美神さんならどうにかしてくれるはずだ。


「くぅん…(…有料だろうけど……)」


そう思った瞬間気持ちが一気にブルーになった。

うあ〜、今月ももうピンチなのにこれ以上給料引かれたらマジで死んでしまう…

まあ、今はお金の心配をする前に一つの難問に差し掛かっていた。


「わぉん…(と、扉が開けられねぇ…)」


犬の姿になっているのでもちろんのこと、扉を開けるどころかノブにすら手が届かなかった。

何度かジャンプしてみるが、触るどころか掠りすらしない。おのれたかが扉の癖に生意気な…

(元)人間の知恵を舐めるなよ!

俺は部屋の中から手当たり次第に足場になりそうなものを引っ張ってくる。


「ぐ、ぐるるる…(ふ、布団でさえろくに引けんのか俺は…)」


俺は布団を引っ張って玄関まで引き摺っていく。はっきり言ってかなり重い。

だが、これさえ持っていけば足場は完成するのだ。

ぬおぉぉぉぉ! 負けるかぁぁぁぁぁ!!


ゴトンッ…


ん? 何の音だ?

俺がそっちを見ると、布団が机の脚に引っかかっていた。

ふっ、それくらいで負ける俺ではないわーー!

俺は布団を銜えて渾身の力で引っ張った。そうしたら、机ごとひっくり返って俺に襲い掛かってきた。


「きゃいんきゃいん!(のわー! 危ねーー!)」


バタンとひっくり返る机に危うく潰されるところだった。危ない危ない…

俺は気を取り直して、布団を玄関まで引き摺ることに成功した。そのまま積み重ねた足場の上に飛び乗って、俺は扉のノブに手(前足)を置いた……んだけど…


「…わぅ〜ん(ま、回せねぇ…)」


肉球も爪もツルツル滑ってノブが回せない。こいつは困ったぞ…

はっ! そういえば最近テレビでやってた『ビックリ動物ショー』で扉を開けてた犬がいたな! アレを真似するんだ!

と、言うわけで俺はテレビでやっていた通りに扉のノブに飛び掛って噛み付いた。まあ、銜えてぶら下がったというほうが正しいかもしれん…


カチャリ…


するとノブは半回転ほどして扉がゆっくりと開いた。


「わふわふ…(よっしゃ! 第一関門突破やー!)」


俺は銜えているノブを放して足場に着地する。

扉の方はちゃんと閉めておいて、鍵は…無理だな。まあ盗られる様なもの無いし大丈夫だろう。

俺はさっそく美神さんの元に向かおうと思って階段の前に立った。

それが本日の第二関門だった…


「くぅ〜ん(階段ってこんなに高かったっけか…?)」


階段から下を見下ろすと、まるで高層ビルの上にいるくらいに高く感じる。正直言ってめちゃくちゃ怖いんだが…

だがぁ! こんなもの美神さんの入浴シーンを拝むために毎回垂直な壁を登っている俺の敵ではないわーー!

そう言って俺は勇猛果敢にも…


「うぅぅ〜、わん!(はぁぁ〜、そりゃ!)」


一段ずつゆっくりと降りることにした。

だって一段一段が自分の頭の高さ以上あるんだぞ? 安全に行くのに越したことは…


ズルリッ…


「わう…(あっ…)」


俺は四本の足でしっかり着地したつもりが、前足が滑って前方にこけた。

で、ここは階段なわけで…まだ半分近く残っているわけで…


「きゃい〜〜ん!(のわぁ〜〜!!)」


俺は階段からそのまま転げ落ちていった。


ドベチャ…


そして見事地面に顔面着陸をきめた。め、めっちゃ痛い…

俺は頭を振って周りを見渡す。

ともかくこれで第二関門も突破だ…これ以上酷い目に会わないように早く美神さんのところに行こう…

俺は四本の脚を駆使していつもどおりに駅へと向かった…


って、この姿で電車に乗れるわけないじゃん!


駅のホームに入ろうとしてすぐさま駅員に摘み出されてしまった。

美神さんの事務所までは駅で丁度二駅分…人間の姿ならまだしも、この姿ではめちゃくちゃ遠く感じる。


「くぅ〜ん(でも行くしかないよな〜)」


俺は覚悟をきめて歩いて美神さんの事務所まで行くことにした。


「わぁ〜、子犬だ〜」


「僕にも触らせて〜」


「きゃい〜ん(ああー、止めといてー!)」


俺はショートカットだと思って入った公園で、見事小学生くらいのガキどもに捕まった。

何とか逃げ出そうとするものの、俺の何倍も大きいガキ達のほうが一枚上手だ。俺は成す術もなくガキどもの手によってもみくちゃにされる。

おい! 其処のベンチでこっち見て微笑んでる奥様方! 野良犬は汚いかもしれないんだから注意しろや!


「皆、何してるの〜?」


ぬぉっ! 何かまたガキの数が増えてきたぞ!

ああっ、其処は触ったらあかん…そ、そこも駄目や!


「ほ〜ら、良い子良い子…」


ガキどもの手が俺を容赦なく蹂躙してくる。


の、喉は止めといてー!

気持ちよすぎて…ああっ! 変になっちゃうぅぅぅぅ!!


俺が解放されたのはそれから三十分後…予想以上にタイムロスだ。

もう心身ともにボロボロだ…こうなったらもう誰にも遭わないように…


「あっ、子犬だ」


後ろからそんな声が聞こえてきた。

ノォーー! 早速見つかったーー!

俺は後ろを振り返ることなく全力で駆け出した。

これ以上弄られてたまるかー!

だが、神はあまりにも無情だった。地を駆けている筈の脚が宙に浮き、俺は地面からどんどん遠ざけられていく。
詰まるところ、持ち上げられたのだ。神は死んだと思った。


「わおーん!(キーやんのアホーー!)」


《私にそんなこと言われても…》


何だか電波を受信したが無視だ! 気にしたら負けだ!

それより今の問題はこの拘束から逃げることだ。放せ馬鹿ー! 俺には成すべき使命が…


「わぁ〜、可愛い〜」


「本当だ〜。毛並みもふさふさ〜」


俺を抱き上げていたのはお目見え麗しい女子高生達だった。

使命? 何それ? 美味しいの?

女子高生達は黄色い声を上げながら俺の頭を撫でたり代わる代わるに俺のことを抱きしめる。

その度に女子高生達の甘〜い香りと、柔らかい感触が全身を通して伝わってくる。


「くぅ〜ん(キーやんグッジョブ!!)」


《現金な奴やな〜》


またまた電波を受信したが勿論無視! 今はこの至福のときを楽しむのだ!


「喉の下撫でると気持ちいいんだよね」


「く、くぅ〜ん(そ、そこ…もうちょっと…)」


「目まで閉じちゃって、そんなに気持ちいいんだ」


最高です! もうこの世の極楽というものを垣間見ていますよ俺は!
結局そのまま俺は使命を忘れて快楽の渦に呑まれていった。


へ、へへぇぇぇ〜…極楽だったぜ〜

多分俺が人間のままだったらめちゃくちゃだらしない顔をしているだろう。
だが今俺は犬! 人間がその表情の変化になんて気付かないのさ〜

女子高生達と別れた俺は、やっとこさ一駅分の道のりを踏破して残すは半分となった。


「わぅ〜…(しっかし、人通りが激しいな)」


時たま踏み潰されそうになりながら俺は町の中を歩いていた。

そして、俺は今あることを思いついていた。それは今この姿だから出来ること。この姿だからこそ出来ることだ。

そう…


「わふー!(ミニスカOL来たー!!)」


下から覗き放題なのだ!


そのことに気付いたのはついさっき。これまで何人かスカートを穿いた女性も沢山いたんだが…惜しいことをした、くぅ!

そしてこれが記念すべき一人目なわけだ。

さあ来い! 想いっきり来い!

ミニスカOLがどんどん近づいてくる。


後5メートル…4メートル…3…2…1……


よっしゃぁっ! バッチコーーイ!!


今女性の神秘がその姿を現そうとした瞬間、俺は行き成り後ろから強い衝撃を受けた。

俺の小さな体はいとも簡単に宙を舞った。


「キャイーーーン!?(な、何が起きたーーー!?)」


ドンガラグシャーー!


俺はそのまま幾つかの看板を倒しながら、最後に電柱にぶつかって地面にずり落ちた。

ぐふぅ…視界が歪んできている。
まさかこんなところで死ぬことになろうとは……せめてあの神秘を覗いてから死にたかった…

母さん、親父…はどうでもいいや。アナタの息子が先立つ不幸をお許しください。


《これくらいでアナタがくたばる訳無いでしょう》


《そうや。簡単には死なせへんで〜》


ああ、死ぬ間際の所為か、幻聴が思いっきり鮮明に聞こえるよ…


「ああっ、大丈夫ワンちゃん!?」


どうやら俺をこんな目に合わせたらしい人物が声をかけてくる。
意識が朦朧としていてよく聞き取れないが、その声は女の子! しかも16〜18歳の女子高生で可愛い系と視た!


よし! 許す! 可愛い女の子には罪は無い!!


そこまで考えて俺の意識はどんどんと闇の中に落ちて言った。

俺に最後に入ってきた情報は、慌てている女の子の声と、


「く、ぅん(し…白と青のストライプ)」


しゃがみ込んでいる女の子の下着だった。

ふっ、未練も無くなったしこれで俺も迷わず成仏できるぜ…


…ガクッ……




とがき


頭の中にアホ…もとい神と言う名の妄想が降りてきました。

息抜き程度に書いてみました。今はそのままですがその内『壊』が付きそうです。

この作品においては、もし続編があれば皆犬好きになります。そりゃあもう異常なまでの犬スキーになってしまいます。当たり前ですが横島犬限定で(爆)


それでは、この辺で失礼致します…

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