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▽レス始

「GSキッズ10(GSオリジナル)」

海(ry (2005-12-12 20:32/2005-12-12 20:38)
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「俺をどこに連れて行くんだい、刑事さん?」

 そのやけに貧相な顔をした男は隣に座る西条にそう話しかけた。
 場所はオカルトGメン車両整備部謹製の護送車の中。
 犯人移送用の荷台の壁面が霊能力を通さない特製の檻、ファラデーケージとなっている対霊能力者用の特殊車両である。

「喋らないでくれるかな。それに僕は刑事じゃあない。オカルトGメンは警察とは違うんだよ」

「へぇへぇ。それでオカGの旦那?俺はどこに護送されるのかな?」

 悪びれた風もなく、その男――逮捕された魔薬の売人――は再びそう尋ねた。
 西条の眉間に皺が寄る。

「聞えなかったかい?僕は喋るなと言ったつもりだったんだが」

「いやぁ、耳が詰まってるのかも知れねぇな〜。この手錠外してくれよ?そしたら耳の掃除が出来てあんたの言う事がよぉく聞えると思うぜ?」

「くっ……。それは気が利かなくて悪かったね。この霊剣ジャスティスは霊も斬れるが耳もほじれるんだよ……」

 とジャスティスを手に取り引きつった笑みを浮かべる西条。
 前髪に隠れた目がギラリと光る。

「じょ、冗談だって!冗談!ったく、冗談の通じねぇ人だね、あんた」

 焦って手錠に繋がれた両手を顔の前で振る男。
 それでもその顔にはどこか余裕があるように見える。

「ジョークは好きだが冗談は嫌いでね。とにかくもう喋らないでくれるかい?これで3度目だ」

「へへっ、仏の顔も三度までって奴ですかい?」

 それには西条は答えず、憮然とした表情で運転席と荷台の境にある小窓を開けた。

「ピート君、まだ着かないかい?」


  
「すいません、隊長。もう少し時間がかかりそうです。渋滞してるんですよ」

 ハンドルを握る若い男、と言っても彼はヴァンパイアハーフなのであまり年をとらないのだが、ピエトロ・ド・ブラドーがすまなそうに西条に告げた。 
 彼らは現在、先日捕まえた売人に魔薬の反応が検出された為、精密検査を行いに都内の警察病院へと向かう最中であった。
 しかし、週末が近いとは言え平日の都内。
 歩いた方が早いくらいの渋滞ぶりである。

「まったく。この渋滞の中をサイレン鳴らして突っ切ったら気持ちがいいだろうねぇ……」

「た、隊長……ダメですよ、そんな事言ったら……」

 半ば本気とも言える表情で物騒な事を呟く西条にピートが冷や汗を流す。
 売人を逮捕してからのここ数日間、寝る暇も家に帰る暇もなかった西条は疲れていた。

「このヤマが終ったら有給とってのんびり田舎に釣りでもしに行こうかな。家族を連れてね」

「それはいいですね。僕も今度実家に妻連れて帰ろうかなぁ」

「ん?君のお父さんは確か……」

「そうなんですよ。最近とうとうボケましてね……。電話で村の人に聞いた話じゃ、美女と間違えて石像に噛み付いて歯が全部イカれたらしいですよ……情けない……」

「じゃあ総入れ歯かい?入れ歯の吸血鬼とは……しまらないねぇ」

「でしょう?」

 などと談笑しているうちに車は六道学園の横を通り過ぎる。
 横島たちはそろそろ目標の目星くらいは付けているだろうか、などと西条が考えた時、車両後部で今まで黙っていた売人が再び彼に声をかけた。

「なぁ、旦那。あんたDI−Aについてどのくらい知ってるんだい?」

 振り返る西条。
 その先にあった顔には、先程同様皮肉げに歪んだ表情が貼りついていた。


GSキッズ10
「乾坤一擲!奥の手発動!西条輝彦の必殺技!?」


「えっと……これより準決勝を始めます!1年A組、2年D組、先鋒の選手前へ!」

 審判員の教諭が両チームに声をかける。

「よぉっし!ウチはアタシからいくよ!」

 1年A組からはパァンと両手を打ち鳴らし炎華が。

「ならこっちは俺がいくしかねぇだろ!」

 2年D組からは両手の関節をコキコキ鳴らしながら虎次郎が立ち上がり、リングへと向かう。
 二人はほぼ同時に結界の中へと入ると、中央に歩み寄りにらみ合った。

「へっ、炎華!今日こそてめぇをぶっ潰してやるぜ!」

「そりゃアタシの台詞よ、このデカブツ!3002敗目をプレゼントしてやるわ!」

「なんだとぉ!?」

「なによぉ!?」

「あの……そろそろ試合始めてもよろしいでしょうか……?」

 恐る恐る進言する審判。

 ギロ。

 「す、す、す、すんませんっ!失礼しましたぁっ!」

 二人に睨まれ、凄まじいスピードで政樹たちのいるテントまで逃げてくる彼。


「教頭〜〜!あの二人怖いですよぉ〜!やっぱり審判変わってください!」

「あのな、鬼怒川クン……」

 泣きそうな顔で訴える教諭――鬼怒川 泉(28)通称『温泉』――においおい、と言った表情を向ける政樹。

「だって、教頭〜〜!」

「教師がそないな事でどうするんや!?もうちょっとしゃきっとしてくれんと困るで!?ほれほれ、さっさと戻った戻った!」

「そ、そんなぁ〜〜!?」

 犬を追い払う時のような仕草で鬼怒川を追い払う政樹。
 その横で冷や汗掻きつつ眺めている横島と令子も先程戻ってきた時に政樹から散々絞られている。
 さすがに教師生活が長いだけあってその説教っぷりは堂に入ったものだった。

「ま、まぁ鬼道。そんな邪険にするのもなんだしそろそろお前が審判に戻ったら……」

「あかん!俺がいなくなったらまたお前らどっか行ってまうかもしれんしな。それに……」

 政樹が横島の前に一枚の紙を突きつけた。
 試合の内容など気が付いた事を書き込むために横島と令子に渡されていた用紙である。
 ところで余談ではあるが、横島たちは政樹の事を未だに旧姓である鬼道と呼んでいる。

「なんや、この内容は?『1年F組……3人目の子のシリが良かった』、『3年A組の清純そうな子のフトモモが良し』、『3年E組、あのチチで高校生とはけしからん!ここは俺が清く正しいじょしこーせーと言うものを身体に云々』等等。ちなみに男子だけのチームに関しては一言も記入してないで?」

「うぐっ……」

 政樹と令子がジト目で横島を見据えた。
 思わず器用にも椅子に座ったまま後ずさる横島。
 政樹はともかく令子の目が怖かった。

「へ〜え……珍しく真面目に感想書いてるかと思えば……あら、そう〜」

「相変わらずやな〜、横島。つーか、そろそろ四十も近い言うのに女子高生に欲情すんなや。ったく」

「そんなに若い子がいいんだったらいっぺん死んで生まれ直してきたら……?今なら出血大サービスで無料で極楽に逝かせてあげるわよ?」

「いや、こいつなら間違いなく地獄行きやろな〜。ありとあらゆる苦痛を1万年かけて味わってそれを1万回くらい繰り返さなあかんで」  

 令子が懐から神通棍を取り出し霊力を注ぎ込む。
 政樹も影の中から夜叉丸を喚び出し、二人揃って横島ににじり寄る。 

「れ、令子!それちょっと洒落にならないんじゃっ!?って、あーーっ!ほ、ほらっ!炎華の試合が始まるぞっ!頑張れーーっ!炎華ーーっ!ほら、令子も応援しないと!」

「鬼道クン、後でビデオ貸して。ちょっと見てる暇無さそうだから……」

「ラジャーや!」

「んなアホなーーっ!?」 

 令子の頼みに絶妙の呼吸で応えを返す政樹。
 下手すると横島より息が合ってるかもしれない。

「フフフフフ……横島クン……極楽に逝かせてあげるわっ!」


 それとほぼ同時に鬼怒川が上にあげた手を振り下ろす。

「試合始めっ!」

「いくぜ、炎華ぁ!おおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「来なさいよ、虎次郎!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 令子の神通棍が横島の脳天に突き刺さる。


 炎華の右手から溢れ出した炎と虎次郎の霊波攻撃が真正面からぶつかり合う。


 瞬間。


 どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!


「なんなの!?今の音は!?」

 動かなくなった横島を放り出し、令子がテントの外に駆け出した。


「なんだ!?今の音!?」

 相殺し合った霊波の巻き上げた土煙の中から無傷の炎華がその方向を見る。


 そして。


「ぐっ……ぶ、無事か……?ピート君!?」

「ぼ、僕ならなんとか……!一体何が!?」

 吹き上がる黒煙と散乱する護送車の破片の中で西条とピートがお互いの無事を確認し合う。
 二人とも多少の怪我はしているが無事だったようだ。

『ククククク……どうだい、旦那?気に入ってくれたかなぁ!?ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!』

 互いの身体を支えあいながら立ち上がった二人の前に立つ巨大な影。
 2m以上の体躯。
 ゴムのような質感の物質で覆われたボディ。
 それを上からさらに包む肋骨のような形状の鎧。
 そして、眼窩だけが開いた髑髏のようなマスク。
 異形の怪人がそこにいた。

「くっ……あれが……!」

「あの姿は……!魔装術!?」


 時間は数分ほど遡る。

「なぁ、旦那。あんたDI−Aについてどのくらい知ってるんだい?」

 皮肉そうなニヤニヤ笑いを顔に貼り付かせた売人が西条を見ていた。

「DI−Aについてだと……?どういう意味だね?」

「そのままの意味さ?DI−Aの効果やなんやについて旦那たちはどのくらい知ってるんだろうなって思ってよぉ?」

 ますますその陰険な笑みを強くする男。
 その態度が西条の感情を逆撫でする。

「それを君に話す義務は僕にはないね。さっき君は自分で言っただろう?仏の顔も三度までだ、と。やりたくはないが、向こうに着くまで強制的に大人しくさせてもいいんだよ?」

 そう言いながらジャスティスを再び手に取る。
 彼の愛剣の技の一つ、ジャスティススタンを使えばこの男一人を気絶させる事は造作もない。

「クックックックック……!そう言うだろうと思ってたさ。じゃあこの優しい俺が教えてやるとしようかねぇ……」

「黙れと言ったはずだ!それ以上喋ると……!」

「霊能者がDI−Aを使うとどうなるかをよぉ!」「力尽くで黙らせ…………なにっ!?」

 西条が霊剣ジャスティスを抜き払う。
 それと。
 男の口の奥でカリッ、と言う微かな音が聞えたのは。
 ほぼ同時だった。


「口内にDI−Aを仕込んでいたのか……!」

『ククククク……そうさ。まぁ俺の最後の手段だよ、旦那。超高濃度に濃縮したDI−Aエキス。数百μl以下の摂取量で一気に限界以上の力を得ることが出来るのさぁ!ただし……その分一気に中毒になるんだけどなぁ!』

 二回り以上も巨大化した男の腕が一閃する。

「「ぐあぁっ!?」」

 なす術もなく大きく吹き飛ばされる二人。
 爆発のダメージは小さくはなく、満足に受身も取れずに再び地面に這いつくばる。

「くっ……隊長……!あの姿……鎌田勘九朗の……!!」

「あぁ、僕もGS協会の資料室で見た事がある……!雪乃丞クンの物とは違う……魔に堕ちる魔装術の極みに……そっくりだ」

『そう……、霊能者がDI−Aを使えば何の知識がなくともここまで極める事が出来るんだよ!名前を付けるなら……ブーステッド魔装術ってとこかぁ!?ヒャハハハハハハハハ!!』

 大仰な身振りで男が笑う。
 元々の彼の霊能がネクロマンシーだったせいか、その笑い声に引き寄せられるように雑霊たちがその姿を現し始める。

「くっ……奥歯に仕込んだDI−Aに気付かなかったのは僕のミスだ……。なんとしてでももう一度逮捕する!」

「隊長、お手伝いします……!」

 ともすれば笑う膝を左手で押さえ、ジャスティスを抜く西条。
 その横で両手に霊気を纏わせたピートが戦闘体勢を取った。

「初弾で決める!ピート君!」

「了解っ!」

 西条の号令と共に二人が同時に飛び出した。
 西条は右に、ピートは左に大きく跳躍し左右同時に攻撃を仕掛ける。

「破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!だだだだだぁっ!」

「主よ!精霊よ!以下略っ!ダンピールフラッシュ!」

 ジャスティスから放たれる無数の霊気の刃。
 ピートの両手から放たれる高出力の連続霊波砲。
 それが魔装の男を包み込むように殺到し、爆煙を噴き上げる。

「やったか!?」

「ぐわっ!?」

『甘いぜ、旦那ぁ!』

「ピート!?ぐあぁぁぁっ!?」

 こちらが消耗しきっていると見せ掛けた上での左右同時攻撃に勝利を確信した西条。
 だが、爆煙の中から伸びた腕がピートを、さらに西条を捕らえ高く吊り上げた。
 煙が晴れ、二人を高く掲げた男の姿が現れる。

「ぐっ……かはっ……」

『舐めてもらっちゃぁ困るぜ、旦那ぁ?出力だけならそこらの魔族にも引けはとらねぇしな!ヒャーッハッハッハッハッハーーッ!』

 男はそのまま跳躍、六道学園の校舎の外壁に凄まじい勢いで二人を叩き付けた。
 学園中に轟音と激震が響き渡る
 その衝撃で二人の背後の壁がすり鉢状に陥没、さらに校舎全体にも無数のひび割れが走る。

「「ぐはっ……!?」」

 背中を突き抜ける衝撃に息が詰まる。

『ヒヒャハハ……ヴ……ヴヴ……ヒャ、ヒャハハハハハハハ!』

 校舎の3階に相当する外壁にめり込んだ二人をそのままに、空中に浮かぶ男。
 その笑い声に微かにノイズが混じった事を見逃す西条たちではなかった。

(今のノイズは……!ピート君!)

(えぇ、僕も見ました。霊力の負荷に精神が持たなくなっているみたいですね……)

 テレパシーを使い相手に悟られぬように会話する二人。
 やがて二人はお互いの顔を見ると頷き合った。

「ジャスティス……スラッシュ!」

 キンッという甲高い音を立てて男の眼前に迫る西条の剣気。
 それに一瞬相手が気取られた隙にピートが二人の身体を霧に変え、地面に降り立つ。

『グ……舐めた真似を!逃がすかぁっ!』

「ピート君!」

「はいっ!」

 実体化した二人を追って男が地上へと猛スピードで急降下する。
 しかし、それを見越して二人は再び霧化、多少距離を取ってから再度実体化した。

『ちょこまかと逃げやがって……!待ちやがれ!』

「フッ……では優しい僕が君に一つ教えておいてあげよう。正義の味方たる者、必殺技の一つや二つ温存しておくものなのさ!」

『な、なに!?』

 ビシッと指を突きつけ高らかに宣言する西条。
 そのあまりの堂々とした態度に思わず男が怯む。
 相手は内外にその名を知らしめたオカルトGメン、その隊長を務める男が言う必殺技である。
 警戒するなと言う方が無理であろう。

「行くぞ、ピート君!タイミングを合わせるんだ!」

「はいっ!」

『グ、グゥ……!?』

 ビクッと反応する男。
 思わず両腕で顔をガードする。

「「必殺!!」」

『う、うぬっ!?』

「「戦略的撤退ーーーーーーーーーーーっ!!」」

『ぐわーーーーーーっ……………………って、なんだとぉ!?』

 その言葉の意味に気付いた時には既に、二人は遥か彼方を全力疾走していた。

『ちょっと待てコラーーーーッ!それが正義の味方のする事かーーーーっ!?』

「うるさいっ!僕だって本当はこんな事したくないんだーーーーっ!」

「とか言いながら楽しそうですね、隊長……」

「いや、やってみたかったんだよね、コレ」


 その頃、護送車の爆発した地点を調べていた令子と政樹は一つの結論に達し、テントへと戻っていた。
 試合会場では先程の爆発音はただの事故なので慌てないように、とのアナウンスが流れている。

「横島っ!いつまで寝てんの!西条さんたちが危ないのよ!」

「判ってるよ。さっきピートから連絡があったんだ」

 しかし、横島は落ち着いたものだ。
 いつの間にか六道学園内の地図を広げ、炎華たちに協力してもらいながら二人と売人の男の逃走経路をマッピングしていた。
 その地図によれば、いくら広大な敷地を持つ六道学園とは言え、あと十数分で彼らはこの試合会場に到着する。

「どうするんや、横島?ここで迎え撃つんがえぇんやろうけど、今から生徒たち逃がしてる暇なんてないで!?」

「鬼道クン、この近くで生徒全員が集合できそうな場所は?」

 令子にそう尋ねられて政樹が考え込む。
 が、すぐに場所が頭に浮かんだらしい。
 学校の周辺が載った地図を取り出した。

「ここや!この河川敷の公園なら!」

「OK!横島クン、いいわね?」

「なんとかやってみるさ!」

 不思議そうな表情を浮かべる政樹を他所に、横島は二人から少し離れると両手を水を掬うような形にし集中し始めた。
 その手の中に傍から見てもそれと判る程の膨大な霊力が溜まっていく。

「なにをする気や、横島は?」

「生徒全員を『転移』させるのよ。それより鬼道クン。校内にある霊的トラップ、あるだけすぐに準備できる?」

「あ、あぁ!すぐに手配させる!」

「設置に時間はかけられないわ。雑でもいいから教員全員使ってでもすぐやって!」

「判った!」

 鬼道が駆け出していく。
 その間に令子はちら、と横島を見た。
 目を閉じてひたすら集中する横島。
 文珠の複数制御には莫大な霊力と同時に集中の為の時間がかかってしまうのが難点である。
 それゆえに戦闘中は2、3文字の同時使用以外はほとんど使えないのだが、逆に時間のかけられる状況ではこれほど便利な物はない。
 とはいえ、現在ですらそう時間がある訳ではない。
 焦っているのか、横島の額にはいくつもの玉のような汗が浮かんでいた。
 その姿に声には出さず、心の中で声援を送る令子である。

「ママ!アタシたちはどうすりゃいいのよ!?アタシたちまで学外に放り出すって言うんじゃないでしょうね!?」

「僕にも何かできる事があれば!」

『ボクも手伝うヨ!』

 炎華、雪比古、花子の三人が令子の下へ駆け寄って……と言うか詰め寄った。
 こんな面白そうな事件なんだから一枚噛ませろ、と言わんばかりである。

「当然でしょ、人手が足りないんだからアンタたちにも働いてもらうわよ!ちょっと耳貸しなさい」

「ん?」

 令子を中心にスクラムを組む四人。
 傍から見れば……いや、見なくてもなにやら悪巧みをしているだろう事は一目瞭然である。
 やがて円陣を解くと令子は3人に向かってにやりと笑って見せた。

「OK?」

「当然!」

「僕、頑張ります!」

『ボックも頑張るぅ〜!』

「それじゃあ…………散!」

 令子の号令以下会場に向かって3人が駆け出していく。
 そこに横島が声をかける。

「令子!準備できたぞ!」

「OK、じゃあ生徒だけでも逃がすわよ!やって!」

「あぁ!」

 横島の手の中に浮かんだ十数個の文珠。
 その一つ一つに込められた霊力、そしてイメージが爆発的に膨らんでいく。
 そこに込められた文字は。
 『河』『川』『敷』『近』『所』『公』『園』『六』『道』『全』『生』『徒』『転』『移』『除』『炎』『華』『組』
 の全18文字。
 現状における横島の可能な最大文字数である。

「いっけぇーーーーっ!」

 彼の声と共に、広大な六道学園の敷地内を淡い暖かな光が包み込んだ。
 そして次の瞬間。
 学内から生徒たちのざわめきが消えた。

「…………成功したみたいね。お疲れさま」

「まだだろ?次は主賓を出迎える準備をしなきゃな」

 そう言って横島が笑う。
 その顔には疲労の色が濃いにもかかわらず、である。
 18文字の同時制御だ、霊力がほとんど枯渇していると言っても過言ではない。 
 令子はそっと、横島を抱き締めた。

「れ、令子!?」

「ヒーリングよ!こうしてれば少しは回復できるでしょ?まだアンタには働いてもらわなきゃならないんだから!」

 慌てる横島に顔を紅くした令子がそう言い放ってそっぽを向いた。
 しかし、その両腕は彼の身体に回されたままである。

「令子……すまん」

「いいのよ」


 と、このまま終ればいい雰囲気だったのだが。

「ん?なによ、コレ」

 背中に手を回した令子の手に何か金属のような感触が触れた。

「あ゛っ……それはっ!?」

 慌てる横島を脇にどかすと令子はそれを奪い取った。
 手にとってしげしげと眺める。

「デジカメ……?」

 何気なく操作してみる。
 ぴしっ!!
 空気が凍りついた。

「よ〜こ〜し〜ま〜!なによ、コレは!?500MBのSDカードが女子高生の写真でいっぱいなんだけどぉ〜〜!?」

「れっ、令子さん!これは……その!」

 焦りながら後ずさった横島のポケットからさらに二つの文珠が転げ落ちる。
 そこに込められていた文字は。
 『奥』『手』
 例の奥の手であった。

「ほ〜う……これでカメラを操作させてたって訳ね……。通りですごい集中力だと思ったわ」

 令子がデジカメからSDカードを取り出した。
 それを手で弄ぶ。

「令子さん!?あんまり手荒に扱わないで……」

 べきっ。

「あぁーーっ!?俺の霊力の源がーーーーーーーーっ!?」

 弁解の余地なし。
 その後の横島の運命は推して知るべし、である。

「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!??」

合掌?


GSキッズ11に続く!


あとがき

どうも、海(ryです。
随分と更新に時間がかかってしまって申し訳ないですm(_ _)m
さて、とうとう大台に乗りました第10話です!(>_<)
このままひっそりこっそりねっぷりと更新していけたらなぁ、なんて考えておりますので見捨てないでいただければ幸いですm(_ _)m


レス返しです。

>四号様
今回ほとんど親世代しか出てませんね〜、結局動かしやすいのは原作キャラって事でしょうか……?(汗)
炎華たちの出番がない事ない事(笑)
横島と西条の関係については四号様のおっしゃる通り、うしおととらが自分のイメージにぴったりでした。
今後またそう意識して書けるように精進したいと思いますm(_ _)m

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