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「洗いグマ  タスカル?  後編(GS)」

犬雀 (2005-12-03 19:02)
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『洗いグマ タスカル? (後編)』


がっくりと膝をつきさめざめと涙をこぼす俺の横でどう声をかけたものかオロオロとしていた魔鈴さ…げふん…クマの姿が視界に入る。
しばらく悩んでいたが不意にポニッと肉球を鳴らすと部屋の隅に置いてあったカバンからごそごそと何かを取り出してちゃぶ台に置いた。

「あの横島さん。そういえば私おいしいお饅頭を買ってきたんですよクマー。一緒に食べませんかクマ?」

それも良いかも知れない。
人間、腹が減っていれば思考がネガティブになりがちだ。
気も短くなるし。

それに俺はバイトから帰ってきてからお茶しか口にしてない。
時間はそろそろ深夜に差し掛かっている。
折角の好意、ここは受け取るのがお互いのためにも良いだろう。

「いただきます。」

砕けそうになる膝をなんとか動かして俺はクマと向かい合ってちゃぶ台の前に座ると、上に並べられた茶色い大きめの田舎饅頭を一つとって口に入れた。
なるほど中々に美味である。ちょっと餡子に何かの風味がつけてあるのだろうか。
口の中に爽やかな甘みが広がって、やるせなかった俺の心を癒してくれた。

「この饅頭おいしいですね。なんて饅頭なんですか?」

「あ、これは『チェリー饅頭』です。桜の風味が美味しいでしょクマ。」

「まだそこにこだわるか!!あんたわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

思わず立ち上がり様に放った前蹴りを慣れたのかスウェーバックでかわすクマ。
だがそれこそが俺の狙いだ。
もともと顔面に当てる気は無い。俺の狙いはクマの鼻面だった。
狙い違わず鼻面を蹴り上げられて宙を舞うクマの頭。

ポテッと意外に軽い音とともに床に落ちたクマの頭の前で口をポカンと開けてこっちを見ているのはやっぱり魔鈴さんだった。
うむ。モコモコクマの着ぐるみから美人の頭だけが出ている姿と言うのは中々にシュールだがそそるものもある。

魔鈴さんはしばらく自分の身に何が起こったか理解できないというように呆然としていたが、ゆっくりと肉球のついた手を上げると自分の頭をモニモニと触り出す。
当然だが彼女の正体を隠していたクマの頭部はすでに無い。
肉球が髪を触る感触で自分の正体が露見したと知った彼女の顔が真っ赤に染まり、目に大粒の涙が溜まり出す。

涙目のまま魔鈴さんはちゃぶ台の上にあった饅頭に両手を伸ばすと、二個の饅頭をつかみそれを自分の頭に乗せた。

「……くまー…」

「それで耳のつもりですかっ!!」

俺の突っ込みについに魔鈴さんは耐え切れずにがっくりと項垂れる。
ポトリと床に落ちた茶色の饅頭が物悲しかった。


「さて…どういうことかちゃんと説明してもらいますよ。」

「ぐすぐす…はい…」

鼻を啜りながら頷く魔鈴さん。
やはり体だけはクマのまんまだが脱げとも言えない。
むしろ俺は一刻も早くこんな時間を終わらせたかった。

「実はさっきお話したとおり童貞さんの精液が必要なんです。」

「で、なんでクマなんですか?」

「はい…それが…」

魔鈴さんは再びカバンに近づくと中から黒い機械を出してきた。
む?あれはノートパソコンか?
なんか魔女とノーパソというのも違和感が有るな。
しかも今は半分クマだし。
魔鈴さんはちゃぶ台にノーパソを置き、電源を入れるとまた話し出す。

「でも…私…どうやってそれを入手すればいいかわからなくて…血液センターに電話して怒られたりして…ぐす…」

そりゃあ「童貞の精液の在庫ありますか?」なんて聞かれたら血液センターも仰天するだろう。

「それで…困って…でも、最近やりはじめた「いんたぁねっと」で調べればいいんだと思いたちまして…」

「はあ…」

インターネットは俺も高校の授業でやっているし事務所でも出来る。
だから俺にも一通りの知識はある。
おキヌちゃんもああ見えて得意らしい。
前にちょっとした興味でおキヌちゃんの「お気に入り」を覗こうとしてすっげー怒られたことがある。
フォルダにパスワードを設定できるなんてことはその時、彼女に聞いてはじめて知った。

「…とりあえず「童貞の精液の採集方法」で検索したんですけど…見つからなくて…ぐす…」

そりゃ無理です魔鈴さん…仮にヒットしても貴女のような淑女が見ていいサイトじゃありません…今は半分クマだけど。

「ぐす…で…困った私はとあるネット掲示板で「童貞の精液を採集する方法知りませんか?」と聞いてみたんですが…」

ああ…なんだか結果がすでに見えた気がする。

「…書き込まれたのは意味のわからない言葉ばかりで…ぐす…」

「は?」

「はい…「逝ってよし」とか「氏ね」とか「1を迎えに来ました」とか…ぐすぐす…」

ああああ…やっぱりなぁ…って誰だよ魔鈴さんにそんなサイトを教えたのは。
ぐずぐずと泣きじゃくる魔鈴さんに同情しつつも肩の力が抜けていくのを抑えきれない俺だ。

「でも…でも…幾たびのウイルス?でしたっけ?それを乗り越えた私の前についに親切な方が現れて「ここへ行ってみな」って教えていただいたのが…」

そういうと魔鈴さんは不器用な手つきでノーパソを操作しだした。
いや肉球クマハンドで操作しているのだから案外と器用なのかも。
やがてノーパソの画面が何やらピンク色に染まる。

「…ここです。」

魔鈴さんが見せてくれたのは目がチカチカするようなピンクの背景を持つHPだった。
えーと…サイトの名前は…『恋愛教組 プリティーミミちゃんのお色気恋愛講座』……。
なんつー胡散臭いページだ…。

「ちょっといいすか?」

肉球で四苦八苦しながらマウスを操作しようとしている魔鈴さんと交代した俺の前に次々と現れる謎のコンテンツたち。
うわ…頭痛え…。

「年下の子を落とすには?」とか「年下の男の子を焦らすには?」とかもう色々と眉毛に唾をつけなきゃないようなことが書いてある。

そして俺はそのHPにある掲示板を開いてみた。
それはこのHPの管理人が閲覧者の質問に答えるという趣旨らしい。
その中の一つに…あった…ありましたよ…はい…「童貞の精液を採取する方法を教えてください」ってのが…。

「あ、それが私の書き込みですね。」

後ろから覗き込んでいた魔鈴さんがどこか嬉しげな声を出す。
嬉しいんですか魔鈴さん…。ちなみに投稿者名はと言えば…。

「……魔女ギャル リンリン?」

「う゛っ…」

仰け反る魔鈴さんのコメカミに汗がタラリ…。

「どうでもいいっすけど…ギャルは死語ですよ…」

「あうううう…」

崩れ落ち慟哭する彼女に憐憫の視線を向けながら俺は続きを読もうとして…三行で挫折した。

『きゃるーん♪ 書き込みありがとねー(はあと) うーん。難しい問題なのだー。
 でもでもミミちゃん思うんだけどー。最近は獣っ娘属性ってのが流行なんだっぴょん♪
  んー。コスプレってやつ?ネコ耳アーンド肉球プニプニ〜!!きゃーきゃー♪』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

蕩けかける脳みそを必死に宥めすかせてサイトを一通りチェックし終わった俺はとある疑念を抱きつつ、部屋の隅っこで体育座りしながら虚ろに泣き笑っている魔鈴さんをちゃぶ台へと誘った。
色々とダメージがでかかったのか魔鈴さんはされるがままに腰掛ける。

「あー。つまり魔鈴さんはこの返信を見てそのとおりに行動したと?」

「は、はい…でも…ネコ耳とか肉球ってのがどこにあるかわからなくて…それでお店の近くのレンタル屋さんに無いか聞きにいったら…」

「クマの着ぐるみしかなかったと…」

「はい…それにこれだと顔も隠れるからちょうどいいかなぁ…なんて…」

魔鈴さん…あなたはコスプレを完全に間違えています。
ていうか…貴女の普段の格好がすでにコスプレっぽいです。

そう言いたい気持ちを必死に抑える。
今の彼女にそんなことを言うのは衰弱した人に致死毒を投与するようなもんだろう。

俺の心の言葉は気がつかなくても雰囲気は察したのか、再び魔鈴さんの目に大粒の涙が溜まり始めた。
うわ…なんていうか年上の美人のお姉さんが泣くってのは煩悩の髄を刺激する光景だ。
うーん。やっぱり泣きボクロと涙というのは様になるな…って俺ってちょっと外道入ってる?

「ぐすぐす…こんなに恥ずかしい思いまでしたのに…」

「はあ…お気の毒です…」

…ブッチン…

なんと言っていいのかわからずつい口から出た言葉だったけど、それがどうやら彼女の中の最後の糸をぶちきったらしい。
俺にさえ聞こえるような異音とともに魔鈴さんは鬼気を纏ってユラリと立ち上がった。

「うふ…うふふふふふ…そうですか…気の毒と思ってくださいますか…」

「え?あ?ちょっと?魔鈴さん?」

その変貌振りにつられて立ち上がる俺に魔鈴さんは涙で潤みながらも真摯さを湛えた瞳を向ける。
その顔は元々美人だけに凄くセクシーで俺の脳を一撃で凍結させた。
一瞬で乾いた口を開く前に魔鈴さんが俺の胸に飛び込んできてその身を預ける。

「え?」と思う間もあればこそ、魔鈴さんはいきなり俺の唇を自分のそれと重ねた。
柔らかい…それでいて先ほどの涙なのか塩味を感じた途端に俺の脳はスパークする。
正直に言えばキスの経験がないわけじゃない。
しかしなんか不器用さを感じさせる彼女のそれは大切な過去の思い出とまた違った感覚を俺に与え、俺は自分の下半身に熱いものがこみ上げてくるのをどこか他人事のように感じていた。

そっと彼女が唇を離す。
そして潤んだ目元を真っ赤に染めて彼女は俺に手を差し出した。
握手のつもりだろうか?と訝しげ思いながら差し出し返した俺の手首が彼女の白い手に掴まれる。

なんで手首?と思った瞬間、魔鈴さんが叫んだ。

「沈黙の六畳間!!」

「せがぁるっ!!?」

我ながら意味不明な悲鳴とともに一回転して床に叩きつけられる俺。
突然のことに混乱し大の字ひっくり返ったままの俺に魔鈴さんが覆いかぶさってくると肉球の手で俺の頬を押さえ再び唇を重ねてくる。
頬を挟む肉球の柔らかさがどこか現実離れしたこの光景をますます加速していくようだ。

ところでどうやってあの手で小手返しなんて技をかけれたんだろう?…なんて考えるあたり俺もかなりテンパっているらしい。
なぜなら魔鈴さんのキスは先ほどのどこかほんわかした感じのそれじゃなく、今やぎこちなく俺の口内を蹂躙する舌の感触は噂に聞いたディープという奴だったからだ。
彼女の口から流れ込む唾液が俺の喉を滑り落ち、俺はこの世のものとは思えぬほどの甘露なその蜜をたっぷりと飲み込む。

……って…ちょっと待て…いくらなんでも甘すぎないか?…これってさっきの饅頭の甘さとも違う気が…。

嫌な予感が脳裏を走り抜けると同時に魔鈴さんが上気した顔を離すとにっこりと笑う。
その笑顔は穏やかながら俺に一抹の不安を感じさせるものだった。
「何を…」と言おうとして俺は気がついた。
か、体に感覚がねえぇぇぇぇぇ!!

一気に蒼褪めた俺を見て彼女は「ふーっ」と溜め息をつく。

「やはり魔女は魔女らしくですよね…。魔鈴特性痺れ薬は効果覿面だったようです。」

「も、盛ったんですか…」

「はい。盛りました♪」

いや…そんなに朗らかに言わなくても…。
あー…きっとなんか色々と振り切れちゃったんだろうなぁ…。
真面目な人が吹っ切ると突き抜けちゃうしなぁ…。

「さて…それでは始めますか…」

何をですか魔鈴さん。
ええ…わかってますけど…それはちょっと遠慮したいです。
だって魔鈴さん、あなた顔色がめっさ悪いですよ。
それにあなたは大きな間違いを犯しました。
麻痺させられた俺からどうやって搾り出す気ですか?

…………って…ちょっと待て!俺の下半身!何ゆえ臨戦態勢のまま麻痺しておるか貴様!

あー…そういやさっき魔鈴さんにキスされたときに下半身に熱いものがこみ上げたままだった…ううっ…そのまま麻痺したんか俺よ。

「えーと…まずは脱がしますよ〜。」

「嫌やぁぁぁ!こんなんは嫌やぁぁぁ!!」

「心配要りません!私は魔女ですよ。こ、こういうことは慣れてます!」

だったらなんで手が震えていますか?
顔だって青いじゃありませんか?

「まさか魔鈴さん…未体験とか?」

途端にビキリと異音を立てて空気が軋む。
え?俺ってば地雷踏んじゃいましたか?

「うふ…うふふふふ…そうですか…横島さんもそういうこと言いますか…」

「そううこと?」

「ええ…掲示板の人たちみたいに…「キモーイ」とか「処女が許されるのは18までだよねー」とかわざわざイラストつきで…うふふふ…」

「あんただって俺を童貞呼ばわりしたやんかぁぁぁぁ!!」

「問答無用です!」

うっわー逆ギレだー♪
なんだか魔鈴さん。今までどこかおどおどした様子がすっかり消えてるし。
つーか搾り出す気満々でズボンに手をかけ始めるし。

「止めて〜。こんな初体験嫌やぁぁぁ!絶対トラウマになるうぅぅぅ!!」

「初体験って!し、しません!献血みたいなもんです!」

今度は真っ赤になって首をブンスカ振る魔鈴さん。
ですから!搾り出されるだけってのがトラウマになるんですってば!って言ったってどうせ聞いちゃくれないだろうなー。

ああああ…とうとうズボンが脱がされてパンツまで手がぁぁぁ!!

「止めろぉぉぉ!ショ〇カーぁぁぁ!!」

「誰が悪の秘密結社ですか!」

アホなことを言っているうちについに俺の最後の砦が陥落した。
途端にピョコタンと屹立する我が息子。

「あう…」

魔鈴さんはトマトも裸足で逃げ出すぐらいに真っ赤だ。
頭から湯気が出ているのが俺にも見える。
つーか、俺の顔も同じぐらい赤いだろう。

「え、えーと…データーを取らなきゃ…」

「は?」

不思議な言葉に驚く俺にはお構い無しに魔鈴さんはカバンからごそごそと色々な器具を取り出し、あろうことか俺の息子の身体測定を始めた。

うわぅお!肉球が!肉球が当たるっ!!
いかん!このままでは発射シーケンスに入ってしまう!
このまま熱いパトスを迸らせたら、思い出を裏切ってしまいそうだぁぁ!

って…あれ?
確か俺って麻痺してたよな…。
つーことはトリガーに手がかかった気がしてたのっては気のせいか?感覚ないし…。

ふと冷静になって魔鈴さんを見れば、なにやらぶつぶつと呟きながら電卓を使っていて俺のことを見ちゃいない。
一つに集中すると他が見えなくなるタイプなんだなぁ…とつくづく理解した。
だけどそれで俺が救われるってわけじゃないのがちょっと悲しい。

「えーと…確か文献によれば膨張率が…2倍ちょっとで…」

何やら想像したのか魔鈴さんは突然、ボンと音を立てて顔から発火した。
何度も俺の息子と自分のお腹のあたりを見比べては首を振っている。
ぼそぼそと呟く声がなんだか悲しげだ。

「駄目…絶対に無理…」

魔鈴さん…計算の前提が間違っていると思います。
思わず言いそうになったが考えてみればこれはチャンスだ。
魔鈴さんが勘違いで呆然としている間になんとか体の自由を取り戻さねば。

しかしそんな希望は一瞬で打ち砕かれた。

「ま、まあ…搾り取るだけですから…」

魔鈴さん…割り切るの早すぎです。
あううう…せめて…せめてクマの着ぐるみを脱いでください!

「さ、さあ…それじゃあ行きますよ…」

「無理です魔鈴さん…」

「へ?」

「麻痺してますから…出ません。」

魔鈴さんは何のことを言われたのかわからないようだが、少しだけ考えて解答に行き当たったのか「おーおー」と大きく頷く。
だけどあの不思議そうな目はまだちゃんと理解してないな。

「が、頑張ればなんとかなりませんか?」

「無理です!無理にやっても痛いだけです!」

こういえば今はテンパっているとはいえ優しい魔鈴さんのことだ諦めてくれるだろう。
しかし俺の希望は儚くもまた打ち砕かれた。

「す、少しぐらい痛いのは我慢してください…」

「な、なんですと?!」

「私だってさっきはすっごく痛かったんですから…」

赤い顔に涙を浮かべて俺を軽く睨む魔鈴さん。
あー。そう言えば蹴りまくったなあ。

「お、女の子だってアソコを蹴られたら痛いんですからね!」

「すんません。」

恥ずかしそうに怒る魔鈴さん。
そっちでしたかと素直に謝るしかない俺に彼女は赤い顔のままで頷いてくれた。
うむ…なんとかほのぼのとした空気で終わりそうな予感が。

「じ、じゃあ続けますね…」

無理でした…こんな時に彼女の真面目さが裏目に出るとは…。
ぐすっ…サヨナラ俺の甘い初体験。

すでに諦めの境地に陥った俺に突然、天啓のように一つの考えが浮かび上がる。
うむ…合体しなければ初体験ではないではないか。
ならば折角、こんな美女が俺の煩悩を搾り出してくれるのだ。
実はコレって喜ぶべきことなのではないか?
おお!まさに発想の転換。コロンブスの卵!
コロンブスよ貴方は偉かった。

「い、いきまひゅ!」

緊張のあまりひっくり返った声を出す魔鈴さんがおずおずと肉球で俺の息子に触れたまさにその時、突然玄関のドアが開く。

「許さないぞ!痴女め!」

突然の乱入者に驚く俺と魔鈴さん。
玄関に仁王立ちしているのは月の光を背に受けて立つ…塗り壁のようなもの。
よく見れば塗り壁の上の方にはアニメチックなつぶらな瞳と口がある。
四角い体全体に黒い粒々が散っているその様は壁というよりでっけーこんにゃくである…ってこんにゃく?!!

「誰が痴女ですか!こんにゃく小僧!」

コイツがこんにゃく小僧?!
このでっかいこんにゃくにチープな目と口と手足をつけただけの化け物に苦戦したんですか魔鈴さん。
こんにゃく小僧はずかずかと上がりこんでくると俺に対して慈愛に満ちた目を向ける。

「もう心配はいらないよ。この痴女はボクがやっつけてやる!」

「だから!誰が痴女なんですかっ!」

怒る魔鈴さんだけど説得力ないっす。
っていうか今の貴方の姿はモロに痴女の犯行現場ですから…。
霊力を漲らせるのは出来れば俺の息子を放してからにしてくれませんか?
なんか取れそうで怖いっす。

「だいたい!なんて貴方がここに出るんですか!答えなさいこんにゃく小僧!」

「ボクは童貞の味方さ!困っている童貞が居ればボクはどこにでも現れる!」

エッヘンと胸を張るこんにゃく小僧。
それとは裏腹に魔鈴さんは悲しそうな目を俺に向ける。

「横島さん…困っていたんですか?」

「え…あ…その…」

なんて言えばいいんだろう。確かにさっきまでは困っていたんだけど。
その困るというのが魔鈴さんに困るというよりか…この怒涛の展開にというか。
出来ればちゃんとしたかったと言うか…。
あー。なんでうまく言えないんだ俺は!!

口篭る俺の態度を肯定と取ったのか魔鈴さんは悲しそうに目を伏せた。
まずいっす魔鈴さん!こんにゃく小僧の霊気が高まってます。
今、奴から目を離したら!

「今だ!こーんパーンチ!!」

掛け声とともにこんにゃく小僧のお腹が裂け、そこからヌトヌトした白濁液が飛び出ると悲しそうに顔を伏せていた魔鈴さんに目掛けて襲い掛かる。
待てや!パンチじゃねーだろ!!!

「危ない魔鈴さん!」

「え?ふえぇぇぇぇ!!!」

俺の言葉は一瞬遅く、白濁液は魔鈴さんの顔面を直撃した。
あたりに嗅ぎなれた独特の臭気が立ち込める。
うわーぶっかけたぁ〜。魔鈴さんの顔が真っ白だあ…。

「そ、そんな…初体験もまだなのに…いきなり顔面…はうっ!」

ショックがでかかったかパタリと倒れる魔鈴さん。
トラウマにならなきゃいいけど…って無理だよなぁ。
幸い命には別状無そうだから良いけど苦しそうに魘されながら気絶してる。

「さあ。もう大丈夫だよ。童貞君。」

「五月蝿い黙れ!って言うか早く出て行け!」

くそう。体が動いたならこんなこんにゃく一発なのに。
魔鈴さん、貴方はどんだけ強力な痺れ薬を俺に飲ませたんですか。

歯噛みする俺をじっと見ていたこんにゃく小僧は何かを納得したのかウンウンとばかりに頷くとやたらとフレンドリーに俺の方に近づいてきた。
なんだか嫌な予感がする。

「な、なんだよ…」

情けないけど自分の声が震えているのがはっきりわかる。
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ…。
本能が警鐘を鳴らすが体は指先一つピクリとも動かない。
こんにゃく小僧はそんな俺の前に立つと優しい声で俺に話しかけてきた。

「可哀想に…怖かったんだね。」

「な、何をする気だ…」

ヤバイヤバイヤバイ…動け動け動け俺の体…!!
必死にもがこうとする俺の前に立ったこんにゃく小僧がにっこりと笑う。

「さあ…ボクの体をお食べ…」

「食べるって何?!!ちょ!なんだその真ん中の切れ目は!かがむな!のしかかるなぁぁぁぁぁ!!!」

まさか!初体験が動くこんにゃくですか?!

「大丈夫さ。恐れないで…それが生きる喜び!!」

「意味わからんことぬかすなぁぁぁ!!」

助けて誰か!ヘルプミー!!!
今こそ唸れ!俺の煩悩!!我に力を!!

・・・・・・・・・・・・・

駄目だぁぁぁ!ここで煩悩を炸裂させるのはどう考えても自爆だぁぁ!

「愛と勇気だけが友達でいいじゃないか!」

「そんな寂しいことを断言するなぁぁ!!」

パニックに陥った俺にこんにゃく小僧はどんどんとのしかかってくる。
あああ…神よ。お願いだ。今、たった一度だけでいい。俺の体を動かしてくれ!!
神様ヘルプっ!!!
(なのね〜)
覗くだけならどっかへ行けぇぇぇぇ!!

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!はうっ?!」

必死の祈りが届いたか俺の一部に霊波刀が顕現する。
ありがとう神様……………だけどなんでわざわざ息子で発動させてくれましたか?
そりゃ確かにそこなら確実に奴を貫くでしょうけど…それって意味無いでしょうが!

血の涙を流す俺の心とは裏腹に俺の息子から伸びた霊波刀は見事にこんにゃく小僧の切れ目の真ん中を貫いた。
こんにゃく小僧は満足そうな笑顔を俺に向ける。
その顔にはすでに死相が浮かんでいて…。

「うーん…美味しかったよ…」

「待てコルアぁぁぁぁ!未遂だ!本体は届いてねぇぇぇ!悪質なデマを抱いたまま逝くなぁぁ!!」

俺の悲鳴にこんにゃく小僧はグッと親指を立て、やり遂げたイイ笑顔とともにあっさりと消えた。
それと同時に俺の意識も闇へと落ち、兎にも角にもこの馬鹿馬鹿しい除霊は終わったのだった。


翌朝、目覚めた俺と魔鈴さんは汚れちまった哀しみを胸に互いを抱き合ってただ泣くしかなかった…。


昼ごろ、俺とめぐみさんはこんにゃく小僧退治の報告をするためにGメン本部へとやってきた。
隊長はデスクワーク中だったが、俺とめぐみさんのかもし出す異様な空気にビビッた受付のお姉ちゃんが便宜を図ってくれて、俺たちはすぐに隊長室へと通される。

「いらっしゃ…どうしたの?」

机から顔を上げた隊長は、やつれた俺の顔と俺の後ろでGジャンの裾を掴みながら子供のようにスンスンと鼻を鳴らすめぐみさんを見て驚いたようだ。
俺はとりあえず昨日の夜の経緯を全て話すことにする。
話が進むにつれて隊長の顔色が悪くなっていったり、めぐみさんのしゃくりあげる声が大きくなったりしたが仕方ないと思う。
説明している俺だって何度となく鼻の奥がツーンとしたのだから。
うう…また目から汗が出そう。

「そ、そうだったの…大変だったわね…」

青い顔のまま隊長が俺とめぐみさんを労う。
かすかに手が震えているのはこみ上げてくる感情を押し殺そうとしているのだろう。

「二人とも体に傷は無いようね…」

「はい…体には…」

重苦しい静寂が隊長室に満ち、ついに堪えきれなくなったのか隊長が努めて明るい声を出した。

「あ!ねえ?ご飯食べに行かない?私が奢るから!」

「そうですね…でも本当にご馳走になっていいんですか?恋愛教組プリティーミミちゃん…」

「いいわよ!もう何でも奢っちゃ…う………」

凍りつく美神隊長…しかしてその実体はアーパーHPの管理人「恋愛教組 プリティーミミちゃん」その人。

「な、なななな、なんのことかしら…」

ダクダクと嫌な汗を流しながら目線を泳がせるミミちゃん。
俺の後ろでめぐみさんが突然の展開に息を飲む気配がする。

「ネタは上がっているんですよ…プリティーミミちゃん…」

「だ、だから何のこと?証拠はあるの!!」

証拠と言った時点でバレバレであるが隊長は弁が立つ。一筋縄ではいかないのは百も承知だ。
しかし俺には切り札があるのだ。

「隊長…いやさプリティーミミちゃん!あなたの管理しているHPに貼られている管理人直通のメールアドレスはご存知か?!」

俺の切った切り札は雷光の輝きと破壊力をもってついに隊長の息の根を止めた。
隊長…「mitie_mikami」なんてメールアドレスにするからバレるんですよ…。

がっくりと膝をつき肩を震わせる隊長に俺はとどめとばかりに非情の台詞を叩きつける。

「きゃるーん♪ミミちゃんは二十歳の女子大生なのだルンルン♪」

「い、いゃぁぁぁぁぁぁぁ!言わないでぇぇぇぇ!!」

頭を抱え、泣きながら床をのた打ち回るミミちゃん、そろそろ40歳。
しばらくゴロゴロとのた打ち回っていたが机の足に頭をぶつけ、ゴツンと鈍い音を響かせてやっとその動きは止まった。

しばらくうつ伏せになったままピクピクと震えていたミミちゃん。
どれほどそうしていたか、やがてユラリと力なく立ち上がると泣き声で俺たちに訴え始めた。

「夢を…夢を見たかったのよぉぉぉぉぉ!!」

再び崩れ落ち号泣するミミちゃんの姿に俺もめぐみさんもつられて泣いた。


こうして…この悲しい事件は完全に終わったのであった。


「・・・・・・・・とまあ、これがパパとママの馴れ初めなわけだ。同じ心の傷を持つ同士が共感したってやつかもな。だからお前がここにいるのはこんにゃくのおかげなんだぞ。いくら最近は毎日こんにゃくが出るからと言って残しちゃいかんな…っておい!待ちなさい!話はまだ!!」

俺の説教の途中で娘は席を立つと自分の部屋に向けて走り出していった。
むう…反抗期という奴か?パパは悲しいぞ。
溜め息とともに短くなった煙草を灰皿に押し付けた時、ドアが静かに開くと俺の最愛の妻がお茶を持ってきた。

「どうしたんですかあの子?「私はそんなマヌケな経緯で産まれたんだぁぁ」って泣きながら二階に上がっちゃいましたけど?」

「うーん。俺たちの馴れ初めを話したら急にな…」

俺の言葉に妻は頬を染める。
彼女はいくつになってもあの頃と同じ美しさと初々しさを忘れない。
俺には過ぎた妻だと思う。

「難しい年頃ですからね。」

お茶を俺の前において彼女はちょこんと俺の横に座った。
軽く肩を抱き寄せて彼女の髪の香りを嗅ぐ。
ますます染まる妻の頬に軽く口づけしながら俺は彼女の耳に甘く囁いた。

「君は毎晩食べても飽きないよ…。」

「うふふ…でしたら今日は念入りにお風呂に入りますね。」

「今日も…だろ?」

そして俺は妻と口づけを交わす。
彼女はゆっくりと立ち上がると、俺の目を見て照れくさそうに微笑んだ。

「あなた…」

「ん?」

「…くまー?」

「ああ…今夜はくまーだ。」

首筋まで朱に染めて美酒に酔ったように頼りない足取りで先に浴室に向かう妻の後姿を見ながら、俺は今は無き恩人に礼を言う。

「ありがとう…こんにゃく小僧…」

娘の残したこんにゃくステーキが「どういたしまして」と答えたような気がして、俺は一人微笑むのだった。


おしまい


後書き

オッス!オラ犬雀。
すまねえみんな!オラの蓄えていたエロスじゃここまでが限度だった。
今度はみんなのエロスをオラにもわけてくれよな!

という冗談はさておいて…ども。犬雀です。
まあこういう展開になりました。下ネタオンパレードって感じですね。
次もなんとか頑張りますのでお見捨てなきようにと平にお願いしつつ…犬は森へ帰ります(笑)


1>通りすわり様
正解でした。
最後まで行かなくて申し訳ないです。
「沈黙の六畳間」で計算が狂いました_| ̄|○

2>S様
ついでに美智恵さんも壊しちゃいました。

3>ヒロヒロ様
まあ結局、喰って食われたわけですが(笑)

4>セラ様
和んでいただけたようでなによりであります。
5>花翔様
ありがとうございます。壊れ書きの犬にとってなによりのお言葉です。

6>サンド様
ご夫婦でっ!?
実はサンド様のレスをヒントに最後のオチを決めましたです。
ありがとうございますorzペコペコ

7>偽バルタン様
こんな続きになってまいましたぁ〜(笑)

8>柳野雫様
中の人…可愛いと言われると嬉しくて庭駆け回る犬雀でした(笑)

9>比嘉様
クマの理由は美智恵さんの陰謀?でした。積み重ねた悲劇の連鎖?(え?)

10>矢沢様
はいです。魔鈴さん。またの名を「魔女ギャル リンリン」でしたぁ(笑)

11>義王様
すんませんと素直に_| ̄|○しておきます(笑)

12>なまけもの様
やはりすんませんと_| ̄|○であります(笑)

13>ヴァイゼ様
魔鈴さんには悲しい理由があったようであります(笑)

14>Yu-san様
吉田先生は犬も大好物であります(笑)

15>casa様
こんな感じで纏まりましたぁ〜。お楽しみいただけましたでしょうか?

16>十六夜様
ナニを採取しようとしていたようです…結果はごらんの通り(笑)

17>ホムペ推進委員会様
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ。と言う犬のねっとに対する怒りと偏見が元ネタだったりして(笑)
いや…逆恨みですけどね。年内にはなんとか…出来ればいいなぁ…。


18>狐様
実はすでに…げふんげふん…。まあ行間から想像なさってくださいませ(笑)

19>諫早長十郎様
にゃはははは。正解でした〜。犬の脳内の魔鈴さんは未だにしょ…うわなにをす…

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