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「ちるどれん短編物(前編)(絶対可憐チルドレン)」

むぎちゃ (2005-10-27 18:28)
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 注)この話は今週号の『絶対可憐チルドレン』のネタばれになる恐れがあります。
   まだ今週号を読んでいない方はご注意を。


 その日、ザ・チルドレンである『明石 薫』『野上 葵』『三宮 紫穂』の三人娘と、その指揮官『皆本 光一』の間で繰り広げられていた、ちょっとした?ドタバタの最中に、一本の緊急電話が掛かってきた。

 その電話の内容は『特務エスパーへの緊急出動要請』。

 沖合いで起きた、漁船とタンカーの衝突により行方不明になった乗員6名、その救助作業中に船の沈没に巻き込まれたダイバー2名、合わせて8名を救助するという任務であった。


 で、時間は過ぎて今現在。

 「皆本ぉ〜〜 ここ、寒いし臭いよ・・・」

 「我慢してくれ・・・ 救助艇が戻るまで1〜2時間の辛抱だから」

 「むぅ〜〜」

 「水圧に逆らって空間を確保するには、君の念動能力(サイコキネシス)がどうしても必要なんだよ」

 「わかってるよ! それでも寒いものは寒いし、臭いものも臭いのっ!!」

 沈没したタンカーの内部のとある空間。

 そこに不満げな顔で文句を言う薫と、それをなだめる皆本、二人の姿があった。

 二人ともいつもの制服やスーツではなく、バベル仕様のウェットスーツを着ていて、薫は足を伸ばして地面にぺたんと座り込んでおり、皆本は壁に背を預けるようにして座っていた。言葉通り体が冷えるのか、薫は少しでも体を温めようと両腕を胸の前で組んだ格好をしている。

 ところで何故、二人がこんなところでこうしているのかというと・・・

 要請を受け出動し、要救助者を救助していったのはよかったが、タンカーに密航者が乗っていたことが判明。予定よりも救助者の人数が急激に増えた為、最後の最後に救助者の数が救助艇に乗せられる数を上回ってしまった。

 上回ってしまった人数は2人。さらにその空間の空気は10分ほどでなくなるというおまけつき。

 そこで皆本は、自分と空間を確保できる能力を持つ薫の場所と、上回っていた2人の救助者の場所とを、瞬間移動能力者(テレポーター)である葵の能力で交換。限界まで救助者を詰め込んだ救助艇が海面まで戻り、身軽になった救助艇がまたタンカーの場所まで帰ってくるのを二人は待っているというわけである。

 「まだ救助艇は戻って来ないのかよぉ〜!?」

 「無茶を言うな。まだ船がここから離れて30分も経ってないんだ。早くても、まだ一時間近くはかかるさ」

 「うぇ〜〜! まだ、そんなにあるのかよ・・・・・・」


 ごぼごぼごぼ・・・ ヴーーーン・・・ ごぽ・・・・・・


 所、変わってこちらは救助艇。

 その中には、チルドレンの残りの二人である葵と紫穂がいた。

 「・・・もう少し、スピード出ない?」

 「これでフルスピードですよ!」

 「そう・・・・・・」

 「どないかしたんか?」

 救助艇を操作している女性が座っている席。その背後に立っている紫穂が、心配そうな表情で船の進む速さを急かすのを見て、同じように席の背後で、紫穂の横に並ぶように立っている葵が不思議そうに声を掛けた。

 「・・・・・・」

 「・・・紫穂?」

 葵の問い掛けに、何かを考えるように人差し指を小さな口にあて、俯いた紫穂だったが、すぐに顔を上げ口を開く。その表情は真剣そのものだ。


 「催眠のかかったままの状態の皆本さんと、あの薫ちゃんが二人っきり・・・ 葵ちゃん、危ないと思わない・・・?」

 「いや・・・ 薫はともかく、皆本はんはマジメやし大丈夫やろ?」 

 何を言うかと思えば。と、どこかあきれた様子の葵に、真剣な表情のまま紫穂が言葉を続ける。

 「マジメだからこそ危ないのよ・・・」

 「・・・・・・? そういうもんなんか?」

 「そういうものよ。それに・・・私はまだいいけど・・・ 現場に二人を迎えに行くのは葵ちゃんでしょ。そのとき・・・」

 「・・・そのとき?」

 紫穂の脅すかのような喋り方に、葵ののどがこくりと音を立てた。

 「葵ちゃんが皆本さんと薫ちゃんを迎えに行ったとき、二人が「びくっ!!」とかして、急に離れたりしたら・・・・・・」

 「そら・・・気まずいなぁ・・・・・・」

 微妙に盛り上がってきた二人の脳裏に、テレポートで現れた葵に驚き、さっとお互いが身を離す皆本と薫の姿が鮮明に映る。

 二人の脳裏の中の薫は、こちらを向くと、恥ずかしそうに頬を染めながらもやわらかい笑みを浮かべて・・・

 「しかも! しかも!! 薫ちゃんが、なんだか大人っぽい雰囲気になっててこう言うの!!」

 そう叫ぶと、興奮気味だった紫穂が一瞬にして落ち着き、頬を染め葵に微笑む。まるで想像の薫を真似るかのように。

 「心配しないで・・・ なんにもなかったよ。


                       ・・・って、きゃあぁぁぁ!!」

 「ひいぃぃッ! キツ!!」

 再び、自分の想像で叫びを上げる紫穂に、今度は葵が詰め寄る。

 「そのクセ、アレやろ! 目と目で会話して心が通じ合っとる二人・・・とか!?」

 「そう! そんな感じ!! で!!!」

 紫穂はくわっと目を見開き、

 「帰りの船では、二人こっそりと指をからめあってたりするのよぉ!!」

 狭い空間に響き渡るかのような大声で叫んだ。普段の彼女からは考えられないほどの音量である。

 「最低ッ!! フケツ!! そんなチームでこの先、脇役として生きていくなんてイヤヤ〜〜〜ッ!!!」

 その隣で両頬に手のひらをあて、いやんいやん、と全身をくねらす葵。

 「バベルに帰ってからは、行動がさらに・・・・・・」

 「そんでもって、家に帰ってからは・・・・・・」

 天井知らずにヒートアップしていく二人。最早、想像というより妄想の域に達しているそれは注釈なしでは書き表すことは不可能だ。

 (小学生に!? 皆本って人、ヤバい奴だったのね!?)

 二人の止まる事のない妄想が、前で救助艇を操作している女性に皆本のあらぬ人物像を植えつけているのだが、ここにいない皆本にそのことがわかるはずなどない。

 「操縦士のお姉さん! もっと、もっと速ぉ! もっとスピード出したって!!」

 「そうよ! このままだと皆本さんと薫ちゃんが!! 私たちが脇役にッ!!」

 「そんなっ! 無理ですって、これが精一杯なんですって!!」

 「なら、後ろの救助した人らを、うちの能力で放り出せば・・・!!」

 「もっと速くスピードを出さないと、今まで生きてきた中で恥ずかしい記憶トップ3を・・・くすくす・・・くすくす・・・・・・」

 「誰かぁ・・・!! ここから私を救助してぇ〜〜〜!!!」

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