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「あるいは、幸せの詩を 第6話(GS+AIR)」

長門千凪 (2005-10-23 12:51/2005-10-23 12:55)
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第6話 カラーの世界、モノクロの世界。


「へ〜。往人は旅芸人だったのか。」

「まあな。この身とこの人形一つで色んな街を回っているわけだ。」


横島と往人は二人並んで商店街の道を住宅地の方へと歩いていた。
出会ってから僅かな時間しか経ってないはずなのだが、二人の仲は非常に打ち解けている。
芸人気質な者同士、相通じる物があったのかもしれない。

ちなみに、現在は昼と断言できる時間帯。
なぜこんな時間帯に、男二人が連れ立って歩いているのだろうか?
まあ簡潔に言ってしまえば追い出されたのである。
往人曰く、「まだ営業終了には早すぎる!」時間帯だったのだが、白衣の女性――――――霧島聖と言うらしい――――――その人が、


「こちらの営業を散々妨害しておきながら何を言うか! 今日はとっとと帰れ!」


と言うので仕方なく帰ることになったのである。

決してメスの影に屈したわけでない。
………多分。


「マジか!? 大変だなあ………。あ、そう言えばあの人形はどうやって動いてたんだ? まるで超能力か魔法の類の様だったなあ………。」


往人はその言葉にピクリと反応する。


「………っと、すまん。変なこと聞いちまったな。忘れてくれ。」

「いや、かまわんさ。まあ実際、お前が言ったような力の類だからな。」


往人は僅かな時間で横島と意気投合したこともあってか、素直に答えてくれるようである。


「って当たりだったのか………。まあ、そう言う超常現象の類を見飽きるほどに経験しているからなー………。今更人形一つで驚いたり騒いだりはしねーよ。いや、むしろできないか?」

「忠夫………。お前どんな生活を送ってきてるんだ? そっちの方が遥かにオレよりハード生活じゃないか………。」


横島が何でもないことのように話す経験談に、往人は引き気味になっている。
さすがに超常現象が日常だと言われたら、そんな反応を返すのは当然かもしれない。
もっとも、往人も十分その領域の人間なので拒否反応はかなり薄いのだが。


「そんなもんか?」

「当たり前だ!!」


全くである。


「あー、そう言えばオレの力についての話だったな。」


往人が何とか思い出したかのごとくに話を切り出す。
まあ、さっきまで散々脱線していたせいなのだが。


「正直言ってオレにも詳しいことはわからん。わかっているのは、この力がオレの一族に伝わる力であることと、名前が“法術”であることぐらいだしな。」

「へー。一族で伝わる力か。オレの知り合いでもそんな人が多いなあ………。」


美神家や六道家などがその最たる家だろう。


「オレの先祖はもっと凄い力があったらしいぞ。心を読むとか、何もないところから火を起こしたりとかな。まあその力もだんだん薄れてしまったらしく、オレの代ではこの人形一つを動かすことで精一杯だがな。」


往人は無造作に人形を尻のポケットから取り出す。


「そう言えばこの人形、えらく古びてるな………。」

「オレがものごころついた時からこんな感じだったぞ?」


“そのせいか? あの呪い雛人形の時の感じとは違うが、圧迫感みたいなものを感じるんだが………?”


そう、この人形からは不思議な雰囲気が漂っているのだ。
呪い人形の一件とは違う感覚。
邪悪な感じは受けないが、かと言って神聖な感じも受けない。


“しっかしこの人形、ボロボロの極みだよなあ………。”


………既に横島の関心は別の方向に向けられていたようである。


“ま、気のせいだな。”


横島はこの人形を無害と判断した。
誰かに害を及ぼす様な気配は欠片もないからである。

そしてもう解決したとばかりに、人形から目を離そうとした――――――その時、


――――――ドクン


“――――――――――――ッ!?”


心臓を鷲掴みにされたような感覚。
そんな感覚の発信源は間違いなく目の前の人形。


“な………んだ? こ………れは………っ………!?”


必死にそれから逃れようとするが敵わない。
視界が段々と薄れていく。

そして、為す術もなく横島の意識は暗転した――――――


………深い、深い黒。
どこまで行っても底が見えない黒。


そこは上下左右を闇に包まれた空間だった。
一切の音も聞こえず、一切の光も感じ取れない。
完全なる静寂に包まれた闇の空間。
確かに感じられるのは自らの体の感覚のみ。

意識が浮上する。


“――――――!

――――――腕、動く。

――――――足、動く。

………………ふう。体は問題なし、か。”


身体の感覚だけが、横島にとって唯一の自我を感じさせられる確かな生命線であった。


“――――――そうだ、あの人形の黒い瞳を見つめていたら………いつの間にかここに………。”


前後の状況を必死に手繰り寄せる。
しかし唐突にこの現況へと放り込まれたため、いくら思考を加速させても満足のいく結果は得られない。


“ま、なるようにしかならねーか。”


無闇にうろたえるよりはマシ。
そう結論を下す。
どのような意図あったのか知らないが、向こうが引きずり込んできたのだ。
ならばまた向こうからモーションを掛けてくるはずだろう。

横島はそんな訳で気長に待つことにした。


“………ん? 何だ? あれは?”


一瞬、深遠な闇の奥に光の様なものが見えた。


“………? 気のせいか………?”


しかしすぐに消えてしまったため、それが何であるかまではわからない。


“あれは一体………? 
――――――!? いや、またか!?”


今度ははっきり見えた。
白く小さな光点が揺らめいている。


ユラリ、ユラリ、と。

フワリ、フワリ、と。


“近付いて来ている………………のか?”


先程はパチンコ球くらいの大きさしかなかった光点だが、今は野球のボールくらいにまで大きくなっている。
おそらく横島の見立て通りであろう。
光点は確実に、そしてゆっくりと近付いてくる。
周りが真っ暗なため白色が殊更に強調されているせいもあろうが、その光は宇宙空間の中で輝き続ける太陽を髣髴させられるがごとくであった。
力強い。
しかし暖かい。
それは世界各地で太陽信仰が発生したことを納得させられるような、そんな輝きであった。


光球が横島の目の前で止まる。
バレーボール大の光球は先程の様に大きく揺らめくのは止め、静かに佇んでいる。


“………………………。”


横島はそれに恐る恐る手を伸ばしてみる。


後10cm。

光球には何も変化はない。


後8cm。

光球は変わらず光を放ち続けている。


後5cm。

“――――――ッ!?”


光球の放つ光が突然強くなった。
横島はそれに驚いたのか、慌てて手を引っ込める。


“………ふう。”


横島は気を取り直したのか、唇を引き締める。
そして、再度光球に向かって手を伸ばし始めた。


後5cm

先程と同じように光球が輝きを増す。


後2cm

光球は煌々と輝く。


“――――――くっ。”


過度の光量を脳が処理しきれない。
眼前がホワイトアウトしそうになる。
しかし、横島はそれを強引に無視し、これが最後とばかりに手を伸ばす。
そして指先が光球に到達したその瞬間――――――――――――


“どわっ!?”


閃光。

球体はまるで爆発したかの様に割れ、内包されていたナニカが戒めから解き放たれたことへの歓喜を上げるがごとくに溢れ出す。
それは、純然たる光。
光の奔流が闇夜の空間を真白に塗り替えていく。
あまりの光量に目を開けることすらままならない。
直視してしまえば一瞬にして視神経が焼き切られそうな程の光の暴風。
そう、暴風。
指向性や法則性などは欠片も見当たらない、剥き出しな力の洪水。
それは視覚など介さなくても十分感じることができる。
いや、恐ろしい程感じることができる。


“ぐぅ………………………っ!!”


横島は必死に耐える。
この光の暴力にはいかに横島といえども、対抗する術はない。


じっと耐えること数分は経っただろうか?
光が段々収まってくる。
まぶた越しに感じられる真白が徐々に薄れていくのを感じる。
横島はゆっくりと、そして恐る恐る目を開けていく。
そこには――――――――――――


“――――――人影!?”


まだ光が完全に収まっていないせいか、横島の目に映る人影はひどくぼんやりしている。


「あなたは………?」


横島の問いに対し、目の前の人物は何の反応も示さない。
ただこちらをじっと見つめている。
横島の視界は依然として朦朧としているため、相手の表情など判るわけがないのだが、なぜだかそんな感じがする。


“そう………。あなた様が………。”


目の前の人物が唐突に声を発する。
その声は何かに遮られているかのように聞き取りづらい。


“お願い致します………。■■様を………。”


この声を聞いた途端、横島は自分の意識が急速にどこかへと浮上していくのを感じる。
意識をこの空間に留め置けることができない。
目の前の人の言葉がぼやけていく。


“あのお方を――――――”


もう上手く聞き取れない。
もう帰らなくてはいけない。


――――――救ってさし上げて下さい――――――


最後に、そう聞こえたような気がした。


「!?」


意識が再浮上する。
周囲を見れば、青い海、薄青の空、古びたアスファルト、深緑に包まれた山が眼に入る。


“戻ってきた、みたいだな………。”


周りには色が溢れている。
先程のモノクロ空間に目を慣らされていた横島にとって、日常であるはずのそれは非常に新鮮に感じられた。
自分の居る世界と全く同じ風景。
横島は密かに安堵する。


“しっかし、何でいきなりあんなことに………?”


非常識と不思議には慣れっこの横島であるが、それでも違和感が湧き上がってくることは否めない。

漆黒の空間。
真白の光球。
誰かの人影。

それら全て、横島の記憶には存在しないものであった。


“やっぱり、この人形には何かある………?”


人形を観察してみる。
しかし、あの空間に引きずり込まれる前と比較しても、差異が目立つ点は見つからない。
簡素な造型。
ところどころに見られる修理痕。
シミが目立つ服。
――――――そして、あの圧迫感。
全てが先程と同じだった。


「おい? どうしたんだ忠夫? さっきからずっと人形を見つめてなんかいたりして?」


思考を中断する。
声のした方に視線を向けてみると、それは往人だった。
どうやら横島を心配しているみたいである。
こっちの世界での時間はあんまり経ってないようだ。

横島はさすがにすまないと思ったのか、詫びの一つでも入れようと思い、口を開くが――――――


「まさかお前――――――――――――

この人形が欲しくなったのかっ!!??」


それは往人のえらく素っ頓狂な声に掻き消された。
顔にも、正にがーんと言う効果音が似合いそうな表情を貼り付けている。
そして慌てて人形を背中の後ろへと隠す。


「ってちょっと待たんかいっ!! なぜそんな話になるっ!?」

「残念だが、これは商売道具なんでな………。いくらお前が人形フェチでも譲るわけはいかんのだ………。」


往人はえらく生温かい視線を横島に送り始めた。


「って誰が人形フェチやねん!? 勝手に人の好みを変な方向に持ってくな!! あと、その視線はやめい!!」

「欲しいなら他のところ当たってくれ………。」

「人の話を聞けーーーーーーーーー!!!」


やはり横島はシリアスとは果てしなく縁が遠そうである………。


「何だ、人形フェチじゃなかったのか………。」

「いい加減にそこから離れんかいっ!!」


横島と往人はそんなやりとりを続けながら商店街を抜け、住宅街へと歩いていく。
脇では小学生だろうか?
子供たちが元気よく、そしてはしゃぎながら駆け抜けていく。
夏休みと言う時期のせいもあるのか、彼ら彼女らの顔は開放感と奔放さに満ちていた。

横島は空を見上げてみる。
太陽が西に傾き、空は暮色を帯び始めている。
その青と橙が混じりあった世界にぽつぽつと黒点が見える。
おそらくカラスだろう。
都会ではマイナスイメージの強い鳥であるが、この地ではそんな感じは受けない。
むしろしっくりしているくらいだ。
しかし、その鳴き声は何だか物悲しい。
人の喧騒から程遠い土地なだけに、一層際立って感じる。


「………………。」

「ん? どうした?」

「いや、何でもない。」


不覚にもしんみりしてしまったようだ。
往人もそれを感じ取ったのか、こちらを窺うような視線を投げかけている。


「ほれ、人を待たせてるんだろ? 早く行かねーと!」


横島はしんみりさを振り払うかのように、先を歩き出す。


「あ、ああ………。」


往人は横島の様子を怪訝に思いながらも、詮無いことと思ったのか、思考を断ち切ることにした。

カラスがまた一声、啼いたような気がした。


〜執筆後記〜

どもども。
長門千凪です。
前話から三週間近くも間が空いてしまって申し訳ありません………。
下手をすれば、もう存在すら忘れてしまった方も居るのではないでしょうか?
うぅ………大失敗………。
全ては課題レポートと、「舞-HiME 運命の系統樹」のせいだぁっっっ!!!!!!!!


………………………ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
つい責任転嫁しちゃいました。
はい、そうです。
全ては見通しの甘かった自分のせいなんであります。
これからは執筆時間をきちんと確保するようにしますです。
どうか、どうかこれからもお付き合いくださいませ!

まあともかく、次の話をお楽しみに!
ではでは!!

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