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「約束は今も−(GS)」

夜影 (2005-10-19 22:25/2005-10-20 08:23)
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初めまして。夜影(よかげ)と言います。
以前からこちらの掲示板を見てて、ああ、素敵な作品が沢山あるなあ、とか、
自分も未熟ながら何か書いてみたいなあ…と思いつつ昨日までROMしてました。
それで書きたい熱が爆発して今日投稿させていただいてしまいました。
本文末後書きにも書いてますが、未熟者ゆえ至らぬところも多々あると思いますが感想ご指摘等ありましたら宜しくお願いいたします。
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2300年−日本

サクッ、サクッ、サクッ…。

「…ここね。」

巨大な鉄塔。
その前にいるのは亜麻色の長髪の女性と、黒色の長髪の少女。

「ふあ〜…大きいですね。」

少女は目の前のタワーを見上げ、感嘆の声をあげる。
そんな少女の横顔を見て、女性は少し苦笑いをした。
少女が驚くのも無理はない。

「東京タワー。昔ここがまだ砂漠でなく東京と言う街だった頃の遺物ね。」

昔は東京という街があったらしい場所。
環境汚染とやらのせいか、そこは今は辺り一面が砂漠と化していた。
今、人の住む街はここから随分離れた場所にある。
そんな砂漠の中、何故か、この塔だけは朽ちることなく、
記録によると300年前そのままの姿のままであり続けていた。そんな、不思議な塔。

「ここに今回の除霊対象がいるはずよ。いきましょ。おキヌちゃん。」
「はい!美神さん!」

そこに、今、

亜麻色の長髪の女性−美神令子

黒色の長髪の少女−氷室キヌ

−この2人は立ち入ろうとしていた。


「ここに犯人さん、いるといいですね。」
「そうね。」


何気なく話しかけてくるおキヌに対して美神は依頼書を片手に難しそうな顔をしていた。彼女が難しそうな顔をする理由。それは依頼の内容と−

『ここ数日、深夜に出没しては公園をデートするカップルを襲っていた女性の幽霊がいるのでそれを除霊してほしい。他のGSに頼んだが返り討ちにあった上逃げられた。』

−普通なら断るような、報酬も低いしやりがいが無い、そんな依頼なのに。
でも引き受けたのは多分、次の項目が彼女の霊感に引っかかったから−。

『なお、その幽霊は東京タワー方面へ逃げた模様。』

−彼女が20歳になってから良く見るようになった夢があったから−。

彼女は鉄塔らしいものの上に立っていた。
こんなところ、来たことがない。でも解る。ここは…。

(東京タワー…。)

そしてふと後ろへ振り返ると、

(…真っ赤な、夕日…。)

何故か、悲しい気がした。そして

『美神さん。』

(誰?)

不意に、名前を呼ばれる。その声の主が知りたくて彼女はまた後ろへ振り返る。

が、

いつもそこで目が覚めるのだ。そしていつも、涙を流している自分に気がつく。

あの声の主は誰なのか…。声からして男だろう事は解る。
けれど、あのような声の持ち主は知らない。記憶にない。


(…行けば、『彼』に会えそうな気がする。)

「…さん」

誰かは知らないけれど、無性に逢いたい。そう思うから。

「美神さん!」
「へ!?」
「もー、どうしたんですか?ボーっとして。」
「え、あ、な、なんでもないわ。」
「ホントですか?さっきからずっと俯いてましたけど…。」
「ほ、ホントよ。さ、中へ入りましょ。」
「無理はしないでくださいね。最近風邪とかはやってますから。」
「ありがと。おキヌちゃん。」

不思議な話だ。300年は経ってるはずなのに、エレベーターは正常に稼動していた。
それでとりあえず展望台らしきところまであがった。

「さて、見鬼くんで目標を探しましょうか…って…その必要はないか。」
「み、美神さん…。」
「マヌケね…。そんなんで隠れてるつもりなのかしら?」

本人はうまく隠れてるつもりなのだろう…が。
右斜め手前の消火器の上に…。

「そこのあんた、人魂が丸見えよ?」
『え!?あ、しもうた!!!!』

指摘されてかなりびびったらしい。それは自分から出てきた。
黒髪ロングの、顔も身体もいかつい…胸を除けば男性と言っても過言で無い姿の女性の幽霊。

「そんなとこで何してんのかしら?まあ聞くまでも無いでしょうけど。」
『えーと…そのー、人がここに来るいうんはめずらしーから見てみようかなあと…。』

女幽霊はただ美神たちを見てみたかっただけという。
けれどそれは全く説得力はなかった。何故なら…。

「はあ。バカね〜…人魂同様ハンマーが見え見えよ!あんたね。最近公園でカップルを襲ったって言う幽霊は!」

溜息をつきながら苦笑いをした美神の指摘どおり。
女幽霊にとっては必死で隠しているつもりの右腕に握られたものでっかいハンマー。
それがでっかいが故に背中から飛び出ているように見えているから。

『うぐ、そ、そうじゃ!!襲ったんはウチよ!!!でもそれがどーしたいうんよ!?』

等といってその女幽霊は顔に青筋を浮かべながら開き直る。
そんな女幽霊に今度はおキヌが近寄り話しかける。

「なんでそんなことしたんですか?沢山の人が迷惑してるんですよ!?」

おキヌは女幽霊を説得するつもりだった。が、しかし。

『何が迷惑なんよ!あんなん公園で見せ付けられる方が迷惑じゃ!!』

女幽霊が頑として譲らない。譲らないだけならまだしもハンマーをぶんぶん振り回している。
おキヌは青筋を浮かべながら苦笑いをする。
女幽霊の態度に美神の方も飽き飽きしてきた。
というのも、

「どうして迷惑なのよ。」

(まあ理由はだいたい想像はつくけど…。)

女幽霊の言いたいことが余りにも解り易すぎるから。

『う、ウチが…ウチが一人モンじゃからいうてバカにするような目でこっちみながらイチャイチャしよってーーー!!!』

そう。要するに女幽霊は容姿でモテない(と思い込んでいる)からカップルを逆恨みしているという馬鹿馬鹿しいことこの上ない話。
もてるもてないは容姿だけではないことが多いが、この女幽霊の場合はそんな話は通用しまい。頑固だし。

「「…(やっぱりそういうことか(だったんですね)」」
「まぁとにもかくにもあんたがここにいると迷惑なのよ。大人しく成仏しなさ…」

(こんなのにつきあっていらんないわ。)

余りにも馬鹿馬鹿しいのでさっさと終らせよう。
そう思って美神は破魔札を手にしたその時−

−彼女の運命を変える出来事は起こった。


『一生ついていきます、おねーさまーーーーッッ!!!!』
「わああッ!!何すんのよ、変質者!!」

バキャ!!!


美神にいきなり背後から飛びついてきて彼女の胸を触ったもの。
彼女はそれを神通棍のフルパワーでシバいた。

「は、はぁ…はぁ…。な、なんなのよ!」

美神はシバき終って少しして落ち着いてそのシバいた物体を見た。
するとそれはピクピクしながらもまだ動いていた…。
どうやら人間のようではあった。が、それは

「…み、美神さんあれ…。」
「ぇ…」

普通の人間ではなく、

「人魂?」
『ぁいてててて…す、すんません!!なんか下が騒がしいんで降りてきたら美人なおねーさまがいて余りのフェロモン感じてつい…。』

赤いバンダナを頭に巻いた、ジージャン、ジーパンに黄色いTシャツを身に着けた、
黒髪の少年の幽霊だった。


ふっ、と美神の脳裏によく見たあの夢が蘇えった。

<『美神さん。』>

(その声…。)

この幽霊の声は、夢で聞いたあの声だ。
不意に、美神とその少年の目が合う。

ズキッ…。

(痛い…。)

『え、え!?えぇ!!?』
「ど、どうしたんですか!!?」
「ぇ…あ…。」

幽霊の少年とおキヌの声で美神は我に帰った。いつの間にか、彼女は涙を流していたのだ。

(なんで、胸が、痛いんだろう…彼の顔を見ると…。)

彼の顔に覚えは無い。会った事ないはず。なのに…何故か切なかった。

『ど、どうしたんすか!?触った時どこか痛かったんすか!!?』

その幽霊の少年はわたわたしながら彼女の身体に触れてきた。

「ううん…なんでもないの…。」

幽霊なのに、彼の手は暖かい。美神にはそう感じられて…。

(胸は痛い…でも…ホッとする気も…。)

「横島クン…。」


不意に、その言葉が口から零れた。


「『え!?』」

おキヌと幽霊の少年はぎょっとした顔でハモった。

『な、な、なんでおれの名前知ってるんすか!!?』
「え?」
「この人知り合いなんですか!!?」
「え???わたし、今、何か言った??名前????」

おキヌと幽霊の少年は焦っていた。
どうやら幽霊の少年の名前は「横島」という名前で正しいらしい。
美神はおキヌと横島2人に両側からガクガク揺さぶられる。
が、美神はその幽霊の少年を見ることに夢中で自分が何を言ったのか全く解っていなかった。


「ん?そういえば何か忘れているような…。」

ドカッ!!!

急に、床に何かが打ち付けられるような音と共に、辺りが揺れた。

『ほほー…。あんたらもカップルなんか?』

美神もおキヌも横島のことで夢中ですっかり忘れていた。本来の目的。悪霊の女幽霊の存在を。

「げ。忘れてた!つか何がカップルなのよ!!」
『あたしの目の前でイチャイチャ…許せんわーーー!!!』

女幽霊は忘れられた上に目の前でイチャイチャされたと思い込んだらしく、ハンマーを目の前の美神たちにふり降ろす。

ずおおおー!

美神もおキヌも逃げようとするがあまりにも早い。避ける術もなく、

「「きゃーーーーー!」」

2人はもう駄目だ!と思った…が。

『危ない!美神さん!!おキヌちゃん!!』

バチン!

衝撃は来なかった。

『大丈夫っすか!?』

美神は横島の声でゆっくり目をこわごわと開いてみる。すると−

「え、ええ…ぇ?」

横島が小さな楯を手のひらに出現させてそのハンマーを防いでいた。

(幽霊なのに、霊力の楯ですって!?しかもこれは…。)

美神は驚いた。こんなのは見たことも聞いたことも無かった。幽霊で、霊力が使えて、しかも…。

『うわ…こいつつぇえ!お、押され…』
「え!?」

だが、驚いている暇など無かった。相手の力が強いのか、横島が押され、後ろに傾き始めたのだ。

『も、もーだめか!?』

と、その時、

ピリリリリ…。

死霊使いであるおキヌ。彼女が死霊使いの笛を吹き、

『ぎゃー!』

ズデン!

女幽霊を調伏、後ろへひっくり返させて動けなくした。

「おキヌちゃんナイス!」

その後はとりあえず美神がその女の幽霊を呪縛ロープで縛った。結構力の強い霊だったため、一旦縛ってからでないと、札で除霊しようにも危険であったためだ。


「ふー…。一応一安心かしらね。で、あんた…えっと、」

女幽霊を縛った後、美神は横島のことが不意に気になって彼に話しかけた。

『横島忠夫っす!』
「横島クン、なんでこんなトコにいるの?」
『あ、えー…なんて言うんですかね?』
「なんなのよ?さっさといいなさいよ。」
『実はわかんないんす!』

ずでー!

美神もおキヌも盛大にずっこけた。まさか、そんなこと、あってもいいものか!といわんばかりに。

「わ、わかんないって何よ!」

美神はなんとか起き上がって横島に再び問いかける。

『気がついたらここの真上にいて、自分の名前以外解んなくて、しかもこっから動けないみたいなんすよ〜。』

横島はわははは、と笑いながら手を頭の上にやりながら答える。そんな横島にこんどはおキヌが問いかけた。

「動けないってどういうことですか?」
『えっと、この展望台から出ようとすると…』

そういうと横島は展望台から外へ出ようとして見せた。すると−

バチッ

『ぎゃ!』

電流のようなものが発生し、横島は展望台の中まで弾き飛ばされた。

『ッテテ…こんな感じっす。真上に少しなら出られるみたいなんですけどね。』
「要するにくくられてるのね。」
「どうしてなんでしょうね?」
『さあ…。』

おキヌと横島は首をかしげながら向かい合ってう〜んと唸る。
そんな2人を見て美神はくすっと笑った後、横島に顔だけ近づけて、

「セクハラばっかりする悪霊、しかも退治しようにもわたしのフルパワーですら効かない生命力(?)に霊能力持ちでしょ?大方、どっかの誰かが手を焼いて封印って手段でも取ったんじゃないの?」

といい、ほほほ、と笑った。

『なんすかそれはー!ヒドイっすよ!美神さん!』

横島は青筋を顔に浮かべながら反論するが、

「なるほど」

おキヌはぽむ、と手を打って納得して、

『なるほどって何納得してるんだおキヌちゃん!』

横島はおキヌにも反論する。美神もおキヌもそんな横島の反応がおかしいのか、あははははは、と盛大に笑い始めた。それから横島もいじけつつも顔は笑顔になっていた。

しばらくしておキヌははたととあることに気づいた。

「あはは…だって…って…あれ?何で横島さんが美神さんやわたしの名前知っているんですか?」
『ぇ?あれ?そういえば…。』

彼にはまだ2人とも名前は名乗ってもいないはずだった。
そういえばよく考えたら先ほど悪霊の女から救ったときも2人の名前を彼は呼んでいなかっただろうか?何故、知っているのだろうか…?

3人は首をひねってう〜ん、と、また考え込む。そしてまた暫くして…。

「…ねぇ、あんたさ、わたしの事務所で働く気無い?」
『え?』
「え?美神さん??」

美神は唐突な提案をした。

「今女2人しか居なくて荷物持ちとか欲しいと思っていたところなのよね。あんた霊能力もあるみたいだし、さっき触れられてわかったんだけどモノにも触れるみたいじゃない。」
『え、霊力??つか、俺としては美神さんのよーな美人のもとでなんて大歓迎なんすけどでもどうやって?こっから動けないっすよ?』

美神はイタズラ好きな子供のような顔で縄で縛られて忘れられている女幽霊を見ながら

「動けないなら動けるようにすりゃいいじゃない。代わりも丁度居ることだし。ね?」
『ぬ!?あんたら、何を考えとるんじゃ…?ぎゃーーー!!!』

バシュ!!

横島にかけられている縛りの呪のようなものを女幽霊に移した。


「これであんたは自由よ。こんどはあの女が括られる番ね。」

今は東京タワーの真下。展望台の方を見上げると、女幽霊は叫びながらもがいていた。

『うおーー!こっから出さんかーーー!!!』
「おほほほほ、そこでしっかり反省なさいな!」

美神は笑顔だった。彼女自身、こんなにすっきり笑えたことがあるだろうかと思うくらいの笑顔。それだけ嬉しい気分だった。理由は解らないけれど解る。だって…。

「横島さん、よかったですね!」

おキヌも笑顔だった。嬉しかった。おキヌ自身よくわからない。けれど、きっとそうだからだろう。つまり…。

『あ、ああ!有難う!美神さん!おキヌちゃん!というわけでー!』

−『彼』がいるから−。

「何がというわけでだーーー!!!」

−というわけで、と横島は美神にだきつこうと飛び掛った。が、それは成功する事無く−。

ズガシャ!

再び彼は美神に霊力フルパワーの篭った拳で殴られ、その場に倒れた。

「あ、横島クン。ちなみにあんた、時給250円ね。」
『ふぁ、ふぁい…。』
「ああああああ!横島さはーーん!」

彼はピクピク、幽霊なのに流血しながら倒れ、おキヌがそこに駆け寄り、美神はそんな2人を見ながら溜息をつきつつも…。

3人とも、とても暖かい気持ちだった。


(セクハラはちょっとアレだけど結構いいヤツみたいだしそれに…。)

(横島クンが霊力の楯を使っているときに彼から微かに感じた魔力…も気になるしね)


「さ、事務所まで帰るわよ!」


そうして、運命はまた始まって行く。


「『彼』が起きたようですね。」
「せやな。ウマくいくとえぇなぁ…。もーあんなんはこりごりや。」
「そうですね。でもきっと…。『約束』ですからね。」


−約束−

それは今も続いている。


++++++++++++++

おキヌちゃんと横島、立場が逆だったら?なんていうひょんな妄想からこんなもんができました。
単に立場入れ替えだけじゃなくてまあ、妄想が広がりまして、裏設定多々あるのですけれども、
こんな話、アリ…でしょうか?只今心臓がバクバクしております。
アリ…でしたら続き書こうかなあ…とかおもいつつ…。
皆様、未熟者なので至らぬところ多々あると思いますが、もしよかったら感想や指摘等宜しくお願いいたします。

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