戦いは、佳境を迎えていた。
目前の敵にひのめは闘争心を燃やしていた。
かつてない強敵。
これまで自分の領域に入ってきて、5分と立っていられた者はいないというのに。
こいつは何度攻撃を加えても倒れようとしない。
疲労が全身を蝕み脳を侵す。
倒れてはだめだ。ここは自分の領域。敗北など認められない。
今倒れてしまえば、こいつに何をされるかわかったものではないのだ。
勝利を確認してからでないと、気を失うことは出来ない。
だが、もはやろくに体が動かない。
悔しいが後一撃を加えるのがせいぜいか。
ならば、残る全ての力を乗せた最大の一撃をお見舞いしてやろう。
ひのめはそのこぶしを大きく振り上げ、
自らの力をすべてそこに凝縮し、
目前の敵に全身の体重をかけて振り下ろした。
それは敵に回避の暇も与えずに打ち込まれる。
衝撃に大きくよろける敵に満足しながらも、ひのめの目は油断をしていない。
疲労により、攻撃の反動に耐え切れず自らが倒れても、そのまま敵を睨み続ける。
やがて、目前の敵は動きを止めた。
ひのめの攻撃を耐え切り、立った姿で。
その顔に張り付いた笑みが、神経を逆撫でする。
ひのめは大きく息を吐いた。
私の負け、か。
仕方ない。好きにするといい。
例え体が弄ばれようとも、心までは自由にならないのだから。
次に目覚めた時が、お前の最後の時だ。
そう思いながらひのめは、疲労に身をゆだね意識を失った。
「隊長ー! ひのめちゃん寝ちゃいましたよ」
「あら、今日はずいぶん早いのね」
「プレゼントした新しいおもちゃが気に入ったみたいで、遊びつかれたんでしょう」
「何をあげたの?」
「起き上がりこぼしっす」
END
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