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▽レス始

「重ねる心。思いはここに…(第四話)(GS)」

颯耶 (2005-09-11 17:31/2005-09-11 17:36)
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「ちょ、ちょっと何で雪乃丞がこんな所にいるのよ!?」

ここは平行世界の過去の筈で雪乃丞が居るわけが無い。

―――いえ、この世界で雪乃丞が修行に来ていたならば判らないけど…
それにしても、私達の事を知っているみたいだし、横島君とも仲良く?している。


「それは当然だろう。雪乃丞とやらもその娘達と一緒に修行しておったからの」
「しかし左の、考えてみればアヤツを試した事があったかの?」
「どっちにしても我らとしては会った事すら無い者ばかりだかな」
「しかし、何故我らが突然現れたのだ?
 これからどう呼べば良いか判らぬではないか」


私の驚愕とは裏腹にのほほんと会話するお鬼門達。
――――そういえばこいつ等も中に入れておけって言われてたわね…
ある意味、首に頭が乗っている鬼門が珍しい。

人間形態の時は乗っていたし、確か妙神山が断末魔砲で消滅する時は
鬼のまま乗っていた気もするけど…

元々見分けの付かない二人?組だったけど、倍になったらそれこそ邪魔ね…

「美神の旦那、俺が妙神山に居たらオカシイか?それに巻き込まれたって?」

ま、鬼門の事はどうでも良いわ。

―――察するに、雪乃丞はおキヌちゃん達と時を同じくして
妙神山に修行に来ていて、サルと一緒に居たらしいわね。

それで、今回の移動に巻き込まれたって訳かしら。

「まぁいいわ。アンタが修行馬鹿って事ぐらい知ってるし。

 巻き込まれたってのはどうせ横島君にも説明しないといけないし、
 サルが帰ってくるまで暇だし説明するわよ」

そう言うと、先ほどまでの会話の内容を時折ヒャクメやタマモの補足を受けながらも説明した。


「―――――つまり、美神さんの時間移動能力に俺の文珠が作用して平行世界への壁を破ってしまった。
 そして来たは良いけど、帰れなくなった可能性が高いって事ですか」

「なんつーか、旦那達が居ると本当に暇しねぇな」

横島君は事態を重く受け止め、雪乃丞はやはりと言うか
随分軽く見ている様だ。
確かに彼程の実力があれば、一人でも十分生きて行くだけの力は
あるのだろうが…

「まぁ、とりあえずはサルが帰ってくる迄は出来ることが無いわね」

本当にいつ帰ってくる事やら…


「――――ふん。それほど心配せずとも今帰ってきたわい」

物音も一切の気配すら感じさせること無く、そこにサルが現れる。

「―――老師!!」

小竜姫の叫びに片手を上げて応えるサル。
でも今はそんな事はどうでも良い。

「――――で、どうなったわけ?私達は帰れるの?」

目下最重要課題はこれしかない。
感動の再会?そんなのは無いわよ。

「結論から言おう。


 ―――無理じゃ。

 如何なる神魔族、その上層部に至るまで元の世界へ帰る為の指針を
 示すことが出来た者はおらぬ」

そう言い放つサル―――いえ、斉天大聖。
おちゃらけた雰囲気が一切無く、それを告げる姿は違える事なく上級神の宣告だった。


そしてその言葉に私達の世界から来た全員が少なからず衝撃を受けてしまう。


「そして、ワシを含めた平行世界移動者全員の処遇を言い渡す。
 神魔族の両最高指導者直々のお言葉じゃ」


そう言って猿神が懐から紙を取り出す。
―――命令書…かしらね?


「『あんさんらにはいくつかの選択肢がある。
  一つ目に、無理、無駄を承知の上で元の世界に戻る事や』」

――――そうだったわ…
最高指導者なんて偉そうな呼び名でも、関西弁の訳分からない奴らだったわね…

「これに付いては既にヒャクメに聞いておるじゃろう?
 元の世界に帰れる可能性は皆無と言って良いほどじゃ。

 それに、来た時と同様の力を得ようとしても
 既に腕輪が壊れておる以上それも無理じゃろう」

その言葉に自らの腕を見る。

「あれ?腕輪が無いわ…?」

外した覚えも無いけれど、確かに跡形も無い。
暴走で消滅したのかしら…?

「腕輪は気絶しておるうちに物証として外させて貰ったわい。
 ――――ほれ、これじゃ」

そう言って取り出した腕輪は確かにヒビだらけになっており、
とても使える状態には見えない。

「―――仕方ないわね。どっちにしても帰るのがそれほど無謀な確率なら
 挑戦する気も起きないわ。それで、私達はどうなるの?」

「慌てるでない。まだ続きがある。

 『もっとも、ソレを選ぶ事はないやろな。
  自分から死にに行く様なもんやし。
  次の選択肢は、潔くその場で魂すら残さずに消滅する事や』」

――結局死ねって事…よね?
確かに猿神なら魂すら残さずに消滅させれるでしょうけど、そんなの認めないわよ?

「その辺りの絶対に選ばない選択肢はどうでもいいわ。
 もっと建設的な選択肢は無いわけ?」

「ワシもこれを選ぶとは思っておらん。心配するでないわ。

 『さて、上のは気に入ってもらえんようやし、本番は次ぎからやで?
  この世界に居るあんさんらと融合する事。
  若しくは、どちらかが消滅する事。
  このどっちかや。

  期限は人界の時間単位で二十四時間。
  それまでにどちらかを選ばなかった場合にはワイ等が責任を持って消滅させたるから安心せえ。

  以上や』」

――――思っていたよりも選択肢が少ない。
融合か消滅か…
どちらを選ぶにしても今の私達は消えてしまう訳ね…

「ところで『今』っていつなのよ?どっちを選ぶにしても
 それが判らなければなんとも言えないわ」

これからの事、考えないと…ね。

「私達を基本年として考えると、四年半ぐらい前ですね」

ヒャクメの答えに思わず詰まる。
――――四年半…か。つまり私自身、ここに居る誰とも出会っていない状況な訳ね。

「少し説明をするのね。
 辛い選択肢の様だけど、考えられる理由としてだけど…
 融合か消滅か。
 それは、全く同質の魂を持つ生命体が二つ以上
 同一の世界にある事が問題となって来るのね。
 それだけで、世界のバランスが崩れかねない危険性があるのね」

ヒャクメの説明に疑問が出てくる。

「なんでよ?同じ魂なんて元の世界のママが時間移動してた時だって一緒でしょ?
 直接は会ってなかったみたいだけど、同じ魂どころか同一人物が同時に存在していた訳じゃない?」

魂レベルで見れば、私とメフィスト、横島君と高島だって
平安京で一緒に存在していた訳だし。

「それとは次元が違う話しなのね。
 第一に、私達が平行世界から来た事。

 美神さんを例にすると、この世界にいる美神令子と
 平行世界から来た美神令子。

 恐らく遺伝子レベルから霊基構造まで細分に至って調べても
 同一人物だけど、それでもやっぱり違う人物なのね。
 これは時間移動で同一世界内を移動した現象とは似て否なる物なのね」

―――なんだか判ったような判らない様な…
変な説明ね…
ま、とにかくこの世界に元から居る私と、平行世界から来た私では違う人物って事ね。

「その辺りは人間には判り辛い感覚じゃろう。
 ワシらとて、それが拙い事は知っておっても言葉にして説明するのは難しい事じゃからな」

要領を得ないわね…

「まあいいわ。イマイチ納得行かないけど、融合か消滅か
 どっちかを選べって事でしょ?
 それなら考えるまでも無いわ」

私の言葉に周囲の皆が頷く。
―――そりゃそうよねぇ?


「―――この世界の私達を消滅させてそれに成り代わるだけよ!!」


握りこぶしを振り上げ宣言する。
それしかないわっ!!

「違うっしょ!?」
「さ…流石にそれは…」
「ミカミらしいけど…」

それぞれが否定的な言葉を口にする。
――――ま、無駄でしょうけど一応説得してみましょうか。


「下手な正義感とか倫理観を振りかざしても仕方ないでしょ?
 融合しても私達が消滅しても、どっちにしても『今』の私達が居なくなる訳じゃない?

 だったらこっちの世界の私達を消しちゃえば良いのよ。
 幸いオカルトに携わる身だし、数年の加齢なんて
 なんとでも言い訳が付くわよ」


私の説明にも関わらずやはりその否定的な視線が私を突き刺す。
―――――やっぱりダメか…

「――はぁ。私だってそれがダメな事ぐらい判ってるわよ。
 別に死ぬわけじゃ無いし、この世界でもアンタ達には
 会えると思うから構わないんだけどね。
 でもやっぱり、私が私じゃ無くなるのは嫌なのよ。

 ―――ううん、私だけじゃ無い。
 言ってしまえば今回この世界に来たのは私のミスで来ちゃったのよ?
 私のミスでアンタ達全員を巻き込んじゃったのが…ね…」


流石の私でも責任は感じてしまう。
今まではなんとかなって来た『ミス』。
でも今回は神魔族の協力が有ってすら戻る事が不可能な『ミス』になってしまった。

私の言葉に周囲には沈黙が落ちる。


「――――さて、結論が出た所でそれに付随する事を説明する。
 融合する手段は、横島の文珠が鍵となる。
 『融/合』とする訳じゃな。

 双方の同意の元に『融/合』の文珠を使うことによって融合する事が出来る。
 融合した際にベースとなるのはこちらの世界の者じゃ。
 つまり肉体はこちらの世界の物になると考えて良い」


しんみりとした空気を打ち破るように猿神が口を開く。
正直な所、その気遣いが嬉しかった。


「次に精神―――記憶じゃが、これは大抵が失われると思って良い。

 これには多くの理由があるのじゃが、本来『百』の魂に
 全く同質の『百』の魂を融合させる訳じゃから、
 魂の総量は『二百』になる。

 されど、それは器に収まりきらぬ範囲の事。
 その『二百』を無理やり『百』にするのじゃから、
 歪が出ない方がおかしい訳じゃ。
 この場合、その歪は記憶の欠損という形で出るわけじゃな」

―――――チョットマテ。
記憶に欠損が出るなんて聞いて無いわよ!?

「それじゃ、私達は融合じゃ無くて吸収―――
 いえ、消滅するのと同じ事じゃない!?」

肉体は向こうの物。
記憶も無くなる。
つまり、何も残るものが無いじゃない!?

「結論を急ぐでない。記憶は残らんでもない。
 ―――その想いが強ければ強いほどのぅ…
 つまり、お主達の記憶のうち、印象が深い事については
 何とか覚えておる事が出来るわけじゃ。

 ―――尤も、その残る記憶も『その事態が起きれば思い出す』
 程度じゃがの…」

つまりは、私が横島君やおキヌちゃんを見れば彼らに関しての事を思い出す可能性がある訳ね…
反面、普段の除霊などの記憶は殆ど残らずに消えてしまう…か。

「次に霊力じゃが、恐らく両者の中間ぐらいになるじゃろう。
 元が五十マイトだった者が今が百マイトだとするならば、
 融合後は七十五マイト前後といった所かの。
 技などについては諦めて貰うしかないのう」

成る程…ね。
私達にとってはパワーダウンだけど、向うにとってはお気軽にパワーアップ出来る
訳ね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「まだ話してない事があるだろ?今の説明じゃ、美神さんとシロ、
 それに雪乃丞ぐらいにしか適用されないって事ぐらい俺でも判る。
 ―――何隠してんだ?」

俺のその言葉に全員が注目する。
―――気付いて無かったのか?

「だって考えて見れば判るっしょ?
 おキヌちゃんは幽霊だし、タマモは殺生石の中に居る。
 パピリオに至ってはまだ生まれて無いじゃないッスか。

 それに融合した場合の魂の歪については、
 神魔族には適用されない訳ッスよね?
 神魔族は霊体その物が皮を被ってる様な物だって
 聞いた事がありますからね。

 その容量が増えたってそれほど問題にならないっしょ?」

今気付いたとばかりにおキヌちゃんとタマモが表情を歪める。
神魔族の面々はその言葉に対して無表情で押し通す。

「―――なによ?つまりおキヌちゃんとタマモは融合したって
 どうなるか判らないし、
 パピリオは融合って選択肢自体が存在しない訳?

 神魔族の残りは融合したって私達みたいに記憶とかを
 犠牲にする事も無いって事なわけ?」

美神さんが怒り心頭の表情で問い詰める。
それを受けるサルは涼しい顔をしている。

「ふん。それも今から説明する所じゃ。

 おキヌについては肉体と霊体を別々に融合させる。
 霊能力に関しては霊体の状態では使う事は出来んが、
 生き返った後ならば思い出していくじゃろう。
 但し、折角手に入れた所で悪いが式神の能力だけは一時的に封印をする。

 ――あぁ、そんな顔をするでない。
 生き返って直ぐに式神が使役出来るのでは怪しすぎる訳じゃ。

 それに不要な力を持つ必要も有るまい。もし生き返ってからのお主が
 『力』を求め再び妙神山に来た時に封印を解いてやろう」

―――言いたい事はあるけど、それを言うのは俺じゃない。
明らかにその表情は曇っているが、おキヌちゃんはそれを辛うじて了承した様だ。

「次にタマモ。お主は心配する必要も無い。
 殺生石に眠っているお主に今のお主が力を与える様な物じゃ。

 今の霊力があれば即座に封印は解除されるじゃろうが、
 それに力を取られ霊力は大幅にダウンしてしまうじゃろう。

 但し、記憶においては流石金毛白面九尾の狐と言うべきじゃろうか、
 かなり大部分において残りやすくなっているようじゃ」

その言葉にタマモは安堵の表情を見せる。
封印されている自分と融合してどうなるか、やはり心配だった様だ。

「パピリオについては正直ワシも困っておる。
 まだ生み出されて居ない以上、魂の重複は起きておらん。
 故に今のままでも問題ないのじゃが、今度は違う問題が出て来る」

「どういう事でちゅか?」

ジジイを睨みつけるパピリオ。
その眼に心底困った表情でサルジジイは対応する。


「お主は融合出来ず、またこの時代のお主が生まれるまでの
 時間的猶予がある。
 つまりそれまでは自由に出来る訳じゃ。

 じゃが、神魔がデタント状態にあるとは言っても
 魔族を妙神山に置くのは認められんじゃろう。

 ―――そこにおるジークが実績を積み、問題が起きずに
 半年程度の時を過ごした。

 そしてあの戦乱の後、混乱に乗じて引き取ることが決まったのじゃから、
 今の平和な状態では些か無理があるのじゃ…

 とはいえ、お主ほど力のある魔族を人間界に放置するのは
 無理な話しなのじゃ」


そして記憶を失う俺達では魔族の少女を保護する事は考え難い訳だ。

――――もっと成長して美人になれば『俺』なら判らんが…

そして神族としても表立って魔族を保護する事は出来ない。
となれば魔族に任せる事になるが、ワルキューレ・ジーク共に軍に所属している為にそれも難しい。

「むぅ…」

状況を考え、それを理解したのかパピリオが唸る。
理解してもそれを解決する手段が思いつかない。
それに、アシュタロスがパピリオを作り出したらその時には融合か消滅をしなくてはいけなくなるのだ…
下手な手段は選べない。


「―――パピリオ、あの時みたいに蝶になれないのか?
 窮屈な思いをするかもしれないが、その状態なら
 少なくても『魔族』である事は隠せる。

 もし気付かれたとしても、力を持たない最下位の魔族だと
 判断されると思う。
 その状態なら、人界で保護される事も出来ると思うが、どうかな?」


あの時、アイツが蛍に姿を変えて南極まで道案内をした時。
俺達はそれがアイツだと気付かなかった。

同じ条件であれば、パピリオだって蝶になれる筈。
それならば、最悪の事態は防ぐ事が出来る…

「―――判ったでちゅ。ヨコシマの言うとおりに
 蝶の状態になって人界に行くでちゅ。
 その後は気が進まないでちゅがミカミの所にでも行くでちゅよ。
 ―――でも、直接ミカミの所に行っても潰されるのがオチでちゅかね…」

それしか選択肢が無いことがパピリオに決意をさせる。
―――美神さんの所に行ったら潰される。には思わず納得してしまうが…

「それならおキヌちゃんに付いていけば良い。
 おキヌちゃんとなら仲良くなれるだろうし、
 美神さんの所にも早めに合流出来る筈だ。
 それに美神さんだっておキヌちゃんの友達なら酷い事はしないと思う」

俺の提案にパピリオは頷く。

「そうするしか無いでちゅかね。それにヨコシマの成長を見守るのも面白そうで良いでちゅ」

―――お手柔らかにな…
まだ見ぬこの世界の俺に冥福を祈る。

「神魔族については、横島が言った様に
 記憶が持ち越せる事になるじゃろう。
 じゃが、並行世界の未来とはいえ、その記憶を持つ事が
 良い事とは限らぬ。

 望むのであれば、記憶を消去してから融合する事も出来るじゃろう。
 小竜姫同士はお互いに話し合って決めても良い。
 それぞれ考え、結論を出すが良い」

その言葉にワルキューレとジークがお互いに顔を見合わせ、小さく頷く。

「斉天大聖様のお気遣い、有り難く存じます。
 我ら魔族に対しての寛大な処置にも平伏の次第です」
「先ほどから念波にて相談して参りましたが、
 我々は記憶を消去してから融合するべきだと判断致しました」

二人が妙に他人行儀に、そして馬鹿丁寧に話す様子を見て思わず眉を顰めてしまう。

「簡単な話しよ。ここは神族の出張所、妙神山。
そこに、事故で魔族が入り込んでしまった。

―――そして、現在神魔の関係は微妙な状況なのよ?
許可無く魔族が神族の領域に侵入してしまった。

それだけでも拙いのに、下手な発言でもしたら
デタントが崩壊しかねないわ。
だからさっきから念波なんかで相談していたんでしょ?」

タマモの言葉に成る程。と納得してしまう。


「でもワルキューレ殿もジーク殿も許可があるのでござろう?」
「その許可は『私達の世界の許可』なのよ。この世界には通用しないわ。
 猿神が居たから大事にはならなかったけど、
 こっちの世界の小竜姫が一人で私達を発見していたら、
 その場で切り捨てられてもおかしくなかった筈よ」

シロの疑問にもタマモは簡単に答える。
―――事実俺と小竜姫様は戦闘を仕掛けられた訳だしな…


「―――で、横島はどうなるんだ?」

雪乃丞のその言葉に、思わず苦虫を噛み潰した様になる。
あえて黙っていたのだが、不要な所で妙に鋭い奴だ…

「どうなるって?横島君も私達と一緒で融合するんじゃない…―――あ」

雪乃丞の言葉でその事に気がついたのだろうか、美神さんもその表情を歪める。

「―――やはり気付いたか…」

サルジジイが小さく嘆息したのが聞こえる。

「俺の場合、霊気構造の約六割は全く同一。そしてその存在も同一。
 だけど残り四割のお陰で魂レベルで見れば厳密には
 この世界の『横島忠夫』とは違う人物だって事でしょう?」

俺の言葉にサルとヒャクメが頷く。
通常ならば融合で二百になる魂が百六十と四十になる。

「だから、横島さんが融合した場合どうなるかまったくわからないのね。
 こっちの世界の横島さんに完全に吸収されてしまうか、
 ルシオラさんの霊気構造が消滅するか、

 もしかしたら『横島忠夫』自体が消滅してしまう可能性もあるのね」


やっぱり…か。


「俺は消滅しない。アイツの命を貰って生き延びたんだ。
 ―――だから、最後まで諦めない。どこまでも足掻いてやる」

しかし、この世界の横島忠夫を消滅させるのは論外だ。
だが、俺も消滅する気は無い…


「――――ですが、同一の霊気構造が六割だけならば
 余程大丈夫なのではないですか?」

小竜姫様のその声に、皆の視線が集まる。

「実際六割程度の親和率ならば世界に溢れていると思いますが…?」

成る程。確かに言われてみればそれはそうだろう。
同一の魂は無いにしても似た物など腐るほどある。


―――確認した事は無いが。


「話しはそれほど単純じゃ無いのね。
小竜姫が言っているのはあくまで『似ている』次元の話しであって
『同一』の話しじゃ無いのね。
 たから六割も全く同一なら、問題視されてもおかしくないのね」

しかし、ヒャクメの言葉によって、希望は断たれる。


「――――はぁ…。魂の変質でも出来れば良かったのにね…」

今度はタマモの口からそんな言葉が漏れる。


―――――いくら俺でもそんな真似は出来んぞ…?
そんな想いを込めてタマモを睨みつける。


―――――でもヨコシマ、人間の領域から足を踏み外してるし出来るかもよ?


ぐ…
言いたい事を言ってくれる…

いや、口には出してないけどさ?

「そんな事出来れば苦労しないわよ…」
「――――――いえ、もしかしたら…
 老師…?」

美神さんのフォロー?を遮る様にヒャクメが声を上げた。


―――――マジ?


「通常の人間であれば…いえ、例え神魔であったとしても
 魂自体を変質させるなんて考えるほうがオカシイのね。
 でも横島さんには『横島さんの霊気構造:六割』と
 『ルシオラさんの霊気構造:四割』がある。
 ――――もし、ルシオラさんの霊気構造を活性化させる事が出来れば…」


「言い方は悪いが侵食されるか混合するかじゃろうな…
じゃが、それによって比率が少なくなるか、魂の変質を誘発させる事が出来るじゃろう…」


そう口にした老師の表情は、何処か影になっていて見えなった。


「お主等の親和率ならば…もしかしたら…」


それでもなにか懸念点があるのか、老師は口篭る。
それでも俺は…


「でも、可能性があるならそれにかけるのも有りじゃ無いっスかね?
 どうせこのままじゃ、消滅させられるだけだし…」


俺のその言葉に老師は少しだけ躊躇い、そして―――


―――すっとその姿を消した。

「―――え?」

それを認識したかと思うと

「がっ!?」

目の前に老師が現れ、何かを口の中に突っ込まれる。

――――――ごっくん。

「て、てめぇ!何しやがる!?」

思わず飲み込んでしまったが、とてつもなく嫌な予感がする。
咄嗟に罵倒するが、既に手遅れだろう。
何故なら…


「―――ぐぁ…」


こんな時の予感は良く当たる…


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


上記の設定内容を簡単に纏めました。
会話ばかりだったので、判りにくいかと思いまして。


1.元の世界の住民である自分とこの世界(並行世界)の自分が
 同一に存在する事は出来ない。

2.理由としては、全く同質の魂でありながらその存在が異なる物である為に
 世界への過剰負荷がかかってしまい、世界の崩壊の危険性がある。

3.それを回避する手段は幾つかあるが、現実的に考えれば
 ・どちらかの消滅(死では無く完全な消滅)
 ・融合する

の二点しか考えられない。

4.融合した場合、お互いの魂が干渉しあう為記憶の大部分は
 失われてしまうと考えられる。

5.また、霊能力に関しても両者の干渉がある為、
 恐らく両者の中間辺りまで能力がダウンする。
 (並行世界の自分にとってはアップ)

6.但し、神魔族においては魂の完全な融合が可能であり、
 また肉体的な縛りが無い為に
 記憶は持ち越す事が可能。(不要と判断した場合は封印や消去も可能)

7.各自における融合の条件は以下の通りである。

・美神令子  ・・・   完全な人間である為上記条件の通り問題なし

・伊達雪乃丞 ・・・   同上

・氷室おキヌ ・・・   並行世界では霊体である為、肉体と霊体を別々に融合。
             その為霊能力は反魂の後に復活するだろう。
             式神については反魂の後に即座に使えては
             怪しいので、一時妙神山に封印する。

・犬塚シロ   ・・・  完全な人狼である為上記条件に近いが、
             霊能力が極端に上昇している為、
             恐らく融合後は肉体的に成長してしまう。
             また、人間よりも魂の親和性が高い為
             記憶がやや残りやすい。

・タマモ    ・・・  並行世界では殺生石に封印されている為、
             融合後はその解除に多大な霊力を消費してしまうと考えられる。
             その為、霊能力に関しては大幅にダウンしてしまうだろう。
             だが、魂の親和性及び記憶の扱いについては前世からの記憶をおぼろげながら
             受け継いでいる事から、かなり大幅に記憶が残る可能性がある。

・小竜姫    ・・・  完全なる神族である為、上記条件通り問題無し

・ヒャクメ   ・・・  同上

・斉天大聖孫悟空・・・  同上
             但し、並行世界逆行者の行動において
             責任を取る事。

・ワルキューレ ・・・  完全なる魔族である為、上記条件通り問題無し
             但し、軍に所属している事から並行世界の
             未来の記憶を悪用される可能性がある為、記憶は大半を封印する。

・ジークフリード・・・  同上

・パピリオ   ・・・  現状では生まれて居ない為、唯一上記条件の適用外とする。
             但し、並行世界において生を受けた瞬間に上記条件が適用されるものとする。
             またデタント問題で妙神山には居られない事から、人界にて眷属の姿になり、
             幽霊のおキヌと合流の後に美神令子の庇護を受ける事に。


・横島忠夫   ・・・  文珠を飲まされ…

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

後書き
今回は設定の纏めにしました。
現状の確認がメインですね。

別のSSを書いていたり、HPを立ち上げたりしていたりと、随分と間が空いてしまいましたが、これからはそれなりの頻度で更新する事が出来ると思います。

既に忘れ去られていなければ、これからも宜しくお願いします。


レス返し
>皇 翠輝様
『文珠』のご指摘ありがとうございました。
PCの変換をそのまま使用していましたので、全く気づいていませんでした。
以後は『文殊』→『文珠』で統一致します。

>15な夜様
雪乃丞については少々迷ったのですが、メドーサ戦付近での伏線に出来れば面白いかと思い登場させてみました。
個人的に好きなキャラでもありますから(笑)

>ジェミナス様
要所要所のプロットは有るのですが、行き当たりばったりな感じで書いていますので、私にもこれから先どうなるか判りません(笑)
これからも読んで頂ければ嬉しく思います。

>九龍様
小竜姫様VS小竜姫様は一度書いて見たかったんですよ。
原作では見られなかったバトルを表現出来るのがかなり楽しいです。
これからも宜しくお願いします。

>へのへのモへじ様
ジェミナス様へのレス返しでも書きましたが、自分でもどうなるのか判っていません(笑)
それでも、原作の雰囲気を壊さない様に書いて行きますので、楽しんでもらえたならば、幸いです。

>LINUS様
前話まででは表現しきれていませんでしたが、設定上ではまだ平行世界の横島は出していません。
次話でやと出番がある…かな?

>Rays様
こちらも今回のヒャクメの発言で表記しましたが、約四年半前という事で(原作の時間の流れはループしていましたが…)横島が美神の事務所に雇われる前まで戻ってきた事になっております。
これから先は有る程度原作に沿った流れになると思います。


改定:タイトルが第三話のままになっていましたので、速攻改定しましたorz

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