これはある少年が、失った人を取り戻す、心温まるストーリー。
ある日、彼は思った。
「文珠じゃあいつを蘇らせるほどの力は出ない。
でもコスモプロフェッサがありゃルシオラ生き返るんだよな。
・・・文珠で結晶体とコスモプロセッサ。直せねえかな?」
実際にやってみた。
ルシオラ、見事に復活。
「うわっ早っ!!」
はぁ!?お前どうやってやったんだよ。え、秘密?ええいそんなこたぁどーでもいいや。
うっほい!やったぁ!!コイツは大団円だぜぃ!
飲めや食えや、歌えや踊れぃ!!
と皆は(女性陣はどこか陰りのある笑顔で)美神除霊事務所に押しかけて大喜び。
しかし、そんなどんちゃん騒ぎの片隅で、一人思いつめたような顔で復活した彼女を見つめる物がいた。
彼女の妹であるパピリオが暗い表情をした彼女に気付き、声をかける。
「どうしたんでちゅか、ベスパちゃん」
「ああ、パピリオ。私は本当に嫌な奴だ・・・。せっかく姉さんが復活したってのに、私はポチと姉さんに嫉妬のような感情を抱いている。
羨ましいんだよ、私の大好きなアシュ様は蘇らなかったのに、何で、姉さんだけが・・・って。
しかもアシュ様は滅びたがってたんだ。魂の牢獄から逃れるために・・・。それを生き返らせるなんて、裏切り行為もいいとこだよ。
ふっ・・・・こんな事考える私は、最低だろう?」
「ベスパちゃん・・・」
パピリオはベスパの胸のうちに渦巻くどうしようもなく不憫な気持ちを幼い心ながら理解し、表情を曇らせた。
いつも元気そうな触覚も悲しげにたらりと下を向く。
が、パピリオさんはふと視界の片隅に『ある物』を発見し、ピコーンと触覚が跳ね上がった。
無言で悲しみに暮れる姉の服のすそをくいくい引っ張ると今見つけた物を指差し、にぱっと笑う。
彼女の見つけた『ある物』を見たベスパも目を見開いた。
彼女らが見つけた『ある物』・・・それは、
横島から事情を聞き出した美神によって「こんな物使ってって事がばれたらとんでもない事になるわよ!!(よーするにバレないように上手く私が使えば・・・ふっふっふ)」とか言いながら回収された・・・
ザ、コスモプロセッサ!!
やっちゃう?
うん。やっちゃおっか
ピキャー-ンと、二人の虫っ娘の目が妖しく輝いた。
途方もなくデンジャーな香りがします。
んで、やっちゃいました。
その結果・・・
チュドォォォォォォン!!!
何故かお約束の大爆発。
――――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!
体内で大爆発と言う、まるで北斗神拳でもくらったかのような恐るべき目に会った人口幽霊一号が悲鳴を上げた。
一体何が!?
とあちこちにヒビが入って息も絶え絶えの人口幽霊の中で、こちらも大ダメージを受けつつも身を起こすGSメンバーズ。タフな奴らである。
もうもうと煙の立ち込める爆心地を見つめる彼ら。
皆真実を見定めようと静かに目を凝らしているので、耳に入る音は、天井(人口幽霊一号の一部)が剥がれ落ちるぱらぱらと言う音と、家具(人口幽霊一号の一部)が燃えるぱちぱちと言う音と、
―――う、うう。あ、あ・・・・
人口幽霊一号のうめき声だけだった。
そして、煙が、晴れる!
息を呑むGS達!
うめく人口幽霊一号!
煙の向こうから現われたのはもちろん・・・
躍動する胸筋、
隆起する上腕二等筋、
波打つ腹筋、
その珠(というか玉鋼)のような肌はうっすらと汗ばみ、てかてかと光っている。
そして黒い布をはち切らんばかりの○○○。
「ふははははははっ!そうか、この手があったのか!!盲点だったぞ、こうすればわざわざ消滅する事無く運命から逃れられるではないか!!
どうやら肝心な所で何時も小さなミスをするのは私の悪い癖のようだなぁ。はははははっ!!」
腰にむせび泣くベスパをすがらせて、何故か海パン一丁で腕を組む素敵な笑顔の地獄から蘇ったナイスガイ、アシュタロスだった。
コスポプロフェッサの力によって、エネルギーの90%以上を失った代わりに魂の牢獄脱出、一上級魔族となって生まれ変わった・・・
ネオ・アシュタロス、爆誕。
(ちなみに己の力の限界に近い大仕事を終えたコスモプロフェッサは、エネルギー結晶体が暴走してぶっとんじゃった。もし、これほどまでにエネルギーを消費していなかったら日本列島は巨大な穴と化していただろう)
という訳で、以来この世界にはルシオラとアシュタロスも、平和に暮らしている。
「ウソォ!?」×いっぱい
ごもっとも。
これも無限に広がる可能性の、もしかしたらあるかもしれない・・・優しい運命。
横島「・・・優しいのか?」
『アイツがいる世界。』注:アイツ=アシュタロス
BY核砂糖
「って、今のは導入部?一発ネタじゃないのか!?」
「はっはっは。どうしたのだ少年よ。こともあろうにこの私が復活したのだぞ?そう簡単に終わってたまるか」
平行世界からの電波を受信し、突然声を上げる横島くんにアシュタロス様はにこやかに笑いかけました。
ここは早朝の横島のボロアパート。そろそろ朝ご飯の時間です。
ちなみにアシュ様の手にはお玉、そしてそのムキムキの身体にはお約束の最強に不釣合いなフリルのエプロンを、海パン一丁で上半身裸の素肌に装備しています。
それは朝っぱらから見るのはこの上なく不快な光景でした。
横島くんはそんな彼の満面の笑みを浮かべる顔面に向かって、無言で渾身の一撃を放ちます。
ガスゥッ!
横島くんにしては最高の一撃。相手が普通の連中なら致死レベルの破壊力がアシュタロスの鼻っ面に炸裂しましたが、彼は腐っても元魔神、ダメージは微々たる物でした。
まあ少しでもダメージが入るぶん、横島くんは十分凄いのですが、そんな事を誉められても今は嬉しくありません。
「むぅ。何をする痛いではないか」
赤くなってしまった鼻を擦るアシュタロス様。
「何をしてるか問いたいのはこっちだバカヤロウ。
何をしとるんだキサマは!!」
横島くんが彼を殴った反動でビリビリとしびれる拳を抱えて、吼えました。近所から苦情が来そうですがそれを気にする余裕は・・・今はありません。一刻も早く目の前の視覚兵器を何とかするのが先です。
「何って、見て解からんか。我が屋の主人の為に飯を作っているのだよ」
アシュタロスはそう言うとニヤリと笑って手でお玉をくるくるともてあそびました。恐ろしいほど絵にならない光景です。
ちなみに何故彼が横島の元にいるかというと、アシュタロスが現われたそもそもの原因、コスモプロセッサを作った張本人として全ての責任を負わされたからです。
(ルシオラと二人きりと言うデンジャーな状況を防ぐため、との情報も)
「それだけは辛うじて解かる。それに俺はそこまで人でなしじゃねぇから別に男の作る飯など食いたくないとまではいわねぇよ。
だが、何でそんな格好をしている!!」
「む?このえぷろんとやらは人間が料理を作る時身に付けるモノではなかったのか?」
アシュタロスは困ったような顔をしてエプロンのすそを掴むとその場でくるりと一回転。きゅっと引き締まったおしりがセクシーでした。
そのあまりに強力な精神攻撃に、横島は膝をつきます。
「ああ、あんたのその中途半端な知識が殺したいほど憎いよ」
「憎しみは愛情の裏返し・・・。困るな少年。君は私の娘を幸せにしてくれるのではなかったのかね?事もあろうにその対象を父であるこの私にぶつけるなどごんごどうだ・・・「やかましぃ!!!」
なお、アシュ様がつけちまいやっがってるこのエプロンは、横島くんがルシオラさん復活と共に「あわよくば裸エプロンと言う物をしてはくれないだろうか?」という欲望のままに購入した物です。欲望全開で突っ走った結果がこの視覚兵器の誕生に繋がってしまったのでした。エロは身を滅ぼします。
皆さんも、えっちぃ思考はほどほどにしましょうね?
「なるほど。つまりお前は私にこの格好は良くないと。そう言いたいのだね」
話が脱線する事数回。アシュタロス様はようやく横島の話を理解したかのようにそう呟きました。
「おっし、やっと伝わったか。解かったならすぐにまともな格好をしてくれ」
横島は疲れたかのように言います。
「よかろう。流石の私も娘の前ではここまでしたくはなかったんだが・・・
家主に頼み込まれては仕方がない」
何かがとてつもなくやばい!
横島くんがアシュ様の台詞に隠されたヤバイ匂いに気付き戦慄した瞬間、
ヤツは海パンに手をかけました。
脱ぎっ
「何でそうなる!!」
哀れな少年が、顔を引きつらせて絶叫します。
「これが正しいえぷろんとやらの身に付け方だと・・・違うのか?」
黒い布を指先にぶら下げて、心外だな。という顔をするアシュ様。
どうやら他で見かける意地悪なアシュ様とは違い、本気でそう思い込んでいる様子。悪意も悪戯心もなくわざとでもないので、途方もなくたちが悪うございます。
「何処で仕入れてきたその知識!!!」
「君の押入れの中にあった本だ」
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!俺が悪いのかぁぁぁ!?!?」
「ちなみにそれらの本は全てルシオラが処分した」
「オウマイハニィィィィ!!!」
「もういい・・・もういいからさっさと服を着てくれ」
しばらく逝ってしまった友(いけない本)の冥福を祈ってさめざめと涙を流していた彼はとりあえず目の前の視覚兵器に安全装置をつけるように促します。
「脱げといったり着けろといったり・・・一体どっちがいいのだ?
は、そうか。この着脱する動作に萌えるんだな?」
その数千年の英知が詰まった脳みそで恐るべき結論をはじき出しつつ、とりあえず手元の海パンを履き直そうとするアシュ様。
ジャ、ジャン!
ここで問題です。アシュタロスの指はぶっとくて超強力です。しかも長い爪なんか生やしちゃってて、エプロンの紐などをちょうちょ結びにするのにはこれでもかって言うくらい不適切です。
さらに彼の筋骨隆々の肉体はちょっと動いただけでも筋肉の隆起により、かなりの形の変化が現われます。
これらのデンジャラス因子が合わさると・・・果たしてどのようなサプライズが巻き起こるでしょうか?
はらり
「おっと♪」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『修・正』
間一髪。横島の放り投げた双文珠が発動。最悪の事態は回避されました。
「ほほう、文珠というのは本当に霊能とは別の次元のものだなぁ」
一糸まとわぬ肉体において、最も男性というものを強調している、いわば漢のシンボルとも言える場所にモザイク修正を貼り付けて、アシュ様は興味深げにモザイク部分を摘み上げては良い笑顔。
「どーでもいいからさっさと着ろ!っていうか着てくださいぃぃ!!」
そのあまりにも不快感を及ぼす物体から、狭いアパートの空間を限界まで駆使して遠ざかる横島くんは、血涙と共に懇願しました。
凶悪視覚兵器によって削り取られたライフポイントは、もはやレットゾーンに突入しています。これ以上ダメージを喰らうと己の目をつぶしたくなる衝動に駆られてしまうので一刻を争うのでした。
別に裸に執着は無いらしいアシュ様は、高そうなカシミヤっぽいスーツを装着し(何故あったかは聞くねい)、何とか目を向けても腐り落ちない程度のレベルになりました。
彼が裸族でない事に安心している心から横島くん。
しかし今度は朝から見ていない己の恋人が気になり始めました。
「なぁアシュ。ルシオラは何処にいるんだ?」
「気付いていないのか?さっきから食卓にいるではないか」
葦悠太郎スタイルでびしりと決めたアシュ様が指差す方向を見ると、確かにちゃぶ台についたルシオラがなにやら皿の上の物をフォークでつついている。
「くくくく・・・。何故これほどまで狭いアパートで今まで気付かなかったのだろうなぁ?
これが噂のご都合主義・・・「待て、それを言っちゃおしまいだ」
ナチュラルにNGワードを口走るアシュ様の台詞を、横島くんが遮ります。
「つーか何やってるんだルシオラは」
元気なさげにぷらーんと触角を垂らし、フォークで皿の上を突付き続けるルシオラさんを見て、横島くんは思わず声をかけます。
「アシュ様がぁぁぁ・・・」
話し掛けられて振り返るルシオラさん。その目には何故かこんもりと涙が盛り上がっていました。
「な、なんだ?あいつに何かされたのか!」
女の涙に弱いのは男なら誰だって共通。そして横島くんは特に弱いです。
ワタワタとたじろぎ、どうする事も出来なくなってしまいました。うぶでヘタレで、微笑ましいですね?
どうこうしている間に彼女のダムは決壊。
えぐえぐと目を擦りながらルシオラさんは口を開きました。
「アシュ様が・・・好き嫌いするなって怒るの」
「はぁ?」
なにそれ。いみふめーだしー!
と何の事やら理解不能な横島くんのため、アシュ様が代わりに言葉を補います。
「いや実はだね。これは私の完全なる教育ミスなのだが、娘達は好き嫌いが激しく育ってしまったようなのだよ。
聞いた話によると君が彼女らと一緒に逃亡していた頃もこいつ等はかなりの偏食をしていただろう?
まったく・・・前々から汁物だけでなく肉や野菜も食べなさいと言ったではないか!砂糖水だけなど言語道断だっ!」
こらっ!と声を荒くして娘をしかるアシュ様。ピィ~~となさけない声を上げて首をすくめるルシオラさん。
いい年こいた筋骨隆々のおっさんが、ニンジンが食べられなくて困っているいい年したねーちゃんをしかるの図。とてもシュールな光景です。
しかしまぁよくよく考えればルシオラさんは生後一年未満。こんな理由で親にしかられてもしょうがないかも知れません。
横島くんは、泣きながら握り締めたフォーク(お箸は使った事ないからまだ持てない!)でニンジンを突付き続ける己の恋人を見て、なんともいえない感覚を覚えました。
(これはこれで萌えるかもしれない・・・)
「ニンジンいやぁ~~」
「さて、我が娘の事はさておき少年。お前のぶんの朝食も用意してある」
やがてしぶしぶと不器用にフォークを駆使しニンジンを食べ始めたルシオラさんを見て、アシュ様は、満足げに頷くと、今度は横島くんに向かってずずいとカレーの盛られた皿を突きつけます。
朝からカレーかよ。と思う人もいるかもしれませんが、こう見えてもアシュ様、人間の料理なんて作るのは初めてです。カレーというチョイスはあながち間違いではないでしょう。
「さあ、喰え」
目の前にドンと置かれたカレーライス。お決まりのパターンだとこれを喰ったら最後七転八倒は免れません。
一応勢いに流されてちゃぶ台にすわりスプーンを握る横島くんの頬に一滴の冷や汗が流れ落ちました。
食うべきか、食わざるべきか。それが問題だ・・・。英語で言うとデットオアアライブ(笑)
そんな、インパスの呪文をかけたら真っ赤どころか七色に輝きそうなカレーから目線を外し、今回の愛のエプロン戦士、アシュ様に目を向けます。
ドキドキワクワク
アシュ様はまさしくそんな目をしていました。
別にこれから起こる大惨事が楽しみという訳ではなく、只純粋に自分の作った初めての料理を食べてもらうのが嬉しいようです。
続いて救いを求めるように向かい側に座るルシオラさんに目を向けます。
しかし未だにニンジンと悪戦苦闘している彼女は恋人のSOSに気付きもしませんでした。
「・・・・」
とてもさびしい横島くん。ですが良く見ると彼女が突付いているニンジンの皿は、さっきまでカレーが入っていた物のという事に気が付きました。つまり、彼女はアシュタロスカレーを喰っても、別に大丈夫だったと・・・。
横島くんは意を決しました。震える手で一口目を口へと運びます。
途中、ルシオラほどの魔族なら青酸カリの一気飲みしても平気なような気がしましたが、その可能性はスルーしました。
もぐもぐ。
「あ、普通にうまいな」
意外や意外。アシュカレーはごく普通の味がしました。
口に入れた瞬間舌が解け始める訳でもなく、胃袋で爆発する訳でもなく、食べようとしたカレーに逆に食われる事もありません。
「ははっ!そうか!どうやら私には料理の才能もあるようだな。
料理・・・数ある食材から相応しい物を選び抜き、デリケートな過程を経て創造する物。それは芸術とも言える。なんとも私に似合う作業だ。
くくく、これは愉快だ。新たな趣味が生まれてしまった・・・!!」
横島くんに誉められて気を良くしたアシュ様は超嬉しそう。
飲みねぇ飲みねぇと水を勧めて来ました。
「お、気が利くじゃねぇか」
カレーの辛さで、丁度水がほしかった横島くんはありがたくいただきます。
ぐびっ
「とくと味わえよ。少年。それは私がお前の為に用意した特別な水だからな」
ぽんと唐突に飛び出したデンジャーワード。横島くんはぴしりと固まります。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
喉を押さえてのた打ち回る横島くん。焦点の定まらない目でスマイルなアシュ様を睨みつけます。
その目はこう言ってました。
これは・・・何だ!?
アシュ様はさわやかな目線を横島くんに返しました。
超神水。猛毒に打ち勝つ事で己の中に隠れ持っているパワーを全て引き出す事の出来る素晴らしい水だ。
いやぁ、こいつを手に入れるのには中々苦労したよ。
その目はそうほざいていました。
「余計なお世話です!!
ヨコシマ!ヨコシマァ!?しっかりして!!吐き出すのよ!」
ルシオラは、いけしゃあしゃあと流し目を送るアシュ様を怒鳴りつけ、直ちに横島くんの介抱に取り掛かります。
しかし、彼の顔色は見る見る悪くなり、目は裏返って口から泡が吹き出してきました。
このままでは恐らく命はないでしょう。
「ううむ。彼に超神水は少し早すぎたか。慣れればヴォッカやテキーラのように楽しめるんだが。しまったなぁ、『超神水は二百歳になってから』という常識を忘れていたよ。はっはっは」
「アシュ様は黙っていてください!!」
己の腕の中でビクンビクンと海老か何かのように跳ね回り始めた横島くんを必死に押さえつけつつ、ルシオラさんは言いました。
「くぅぅっ!この脳みそにツンと来る猛毒がたまらない・・・・っ!!」
「ヨコシマ、死なないでぇぇぇ!!!アシュ様、そんな物飲んでないで助けてください!」
自分では横島君をどうする事も出来ないと悟ったルシオラさんが、美味そうに超神水をあおるアシュ様に涙ながらに訴えます。
「む、良く見たら横島君が危篤状態じゃないか。どれ早く解毒しなければ・・・」
たった今、横島くんが洒落にならない状況に陥っている事に気付いたアシュ様。お茶目な所がとってもチャーミングです。
彼はルシオラさんと交代して横島くんの隣に座ると、そのやけにでかい両の手の平で横島くんの頭を完全にホールドします。
「な、何をなさるおつもりですか」
なんだかデンジャーな香りを感じ、ルシオラさんがおずおずと口を開きました。
「何をするって・・・決まっているのだろう。口移しで毒を吸い出すのだよ。
おとぎ話で良く聞く、アレだよ」←ちょっと違う
ビクン!!
横島くんの体が一際大きく跳ね上がります。
むちゅーとか言いながら、だんだんと横島くんの唇に近づいてゆく悪夢。出来れば止めたいけど止めちゃったらヨコシマ死んじゃうしどうしよう?と、ルシオラさんは葛藤の真っ最中。助けは期待できません。
ビクン!ビクン!ビクン!ビクン!
アシュ様のゴッド(?)フィンガーの中で激しく身を捩る横島くん。しかし力が減退したものの、一千万マイトはくだらない力を持つ元魔神に敵うはずもありませでした。
恐怖のディープインパクトまで後数センチ。
「あわわわわ・・・」
幽霊時代のおキヌちゃんよろしくおろおろするだけのルシオラさん。
ですがおろおろするだけでは何も解決しないのですよ?
そして、唇が・・・ぶつかる・・・!!
「グォ・・オ!・・・死んで堪るかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
間一髪。何と横島くんが猛毒に打ち勝ちました。
超神水で得た力をフルに使い、目の前の悪夢を弾き飛ばします。
ドゴォ!!
「アウチ!」
アシュ様は丁度後ろにあったドアをブチ破って吹き飛ばされました。
「むぅ。なんだ、無事ではないか」
余裕ぶっこいて起き上がってくるあたりあまりダメージはなさそうですが、一千マイト近い霊力を持つ彼を吹き飛ばすとは、横島くんは恐るべきチカラを得たものです。
「良かったな、力を得られて」
「「要らんお世話だっ!!(ですっ!!)」」
恋人同士のダブル突っ込み。にもかかわらずがははと笑うアシュ様。その顔に反省の色はあまりありませんでした。何故なら今回の事に全く悪気が無い上に、まだ自分がした事が良い事だと思い込んでやがるようです。
にっこにこの彼を見て横島くんはため息を一つ。
「・・・あ~もういい。とにかくそろそろ美神さんとこ行こうか」
「そうね・・・。でも最近バイトに行っても殆ど仕事が無いのよねー」
「何でだろうな。ちょっと前までは一週間ずっと仕事が無いなんてありえなかったのに・・・」
身支度を整えながら、会話をする二人。
「恐らくそれは私のせいだな・・・」
「アシュのせいだと?」
突然、アシュ様から思いもよらないような言葉を聞き、横島くんは聞き返しました。
「つまり私が一騒動を起こした反動で雑魚霊は皆引っ込んでしまっているのだよ」
「そうなんですか・・・」
ルシオラさんが最近の状況の真相に納得し相槌を打つ。
「・・・つまり美神さんに仕事が来ないのはあんたのせい、と」
「・・・そういうことになる」
ピキン。と横島くんの目が光りました。
「キサマが原因だったんかぁ!!おかげで俺ァー仕事の無い美神さんのストレスの発散対象じゃぁぁぁ!!責任とれぇぇ!!」
「す、すまん・・・」
双文珠に『激・痛』の文字を込めた文珠を握り締め、泣きながら殴りかかる横島くん。ダメージではなく、痛みを与えるだけに特化したこの攻撃には、流石のアシュ様も堪りません。
「いたっ、いたっ、あいたぁっ!!!止めてくれ、さっきから謝ってるだろう!!??」
「ごめんですみゃ-警察はいらねぇんだよ!!」
途中、ついにアシュが切れ、窓を突き破って弾き飛ばされる横島くん。
しかしそれによって却って喧嘩は激化。戦場を空中に映して大暴れ。
「・・・バイト。遅れなければいいけど」
ルシオラさんの呟きは、爆音にまぎれて誰にも聞こえる事は無かったのでした。
「ヨコシマン『粉・砕』ナッコォォー!!!」
「なにをっ!魔神ブルァスタァァァー!!!」
拳と、霊波砲がぶつかり合い、遠くのお空に綺麗な昼の花火が現れます。
横島くんちは、今日も元気。
続けたいけど無理かなぁ・・・?
あとがき
・・・やっちまいました。
わたくし某所で長編小説を書いている核砂糖というモノなのですが、一時期事情により執筆が滞り、
ついついリハビリがてらに書いた物が何時の間にか巨大化。これは眠らせるには忍びない。
前からやりたかったフォントの変化が出来る場所に投稿してみようか・・・。
などととろけた脳みそで考えつつ、やっちまいました・・・。
こんな良くあるネタなんか投稿してどうすんだよぉ~。つーかもう一本の方はどうしたぁ~!
とパソコンの前で皆さんの反応にドキドキしている次第です。
ちなみに本当に書きたかったのはアイツ=アシュタロスが
アシュタロス編以降の話に出てきたら・・・というストーリーです。
また、
これはおかしいんじゃないか?という点、面白い点、投稿の仕方が変だって・・・という点
など言いたい事は何でも言ってください。