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▽レス始

「二人のひみつ(GS+オリジナル)」

猿少年11号 (2005-09-04 15:02)
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 忠夫は自転車を快調に走らせながら、茜のことを考えていた。あの秘密が二人を結びつけてから、もう5年の月日が流れた。繰り返すように転校することが多かった忠夫は、それと同調するように紅の本家に遊びに行くことも少なくなっていった。それなのに、彼女が自分を今でも許婚と考えているとは思えなかった。忠夫自身、そういう気持ちがあったからこそ以前はナンパしたり奇行をやって女性の気を惹こうとしたのだ。もし、許婚の約束が今でも有効だったら、あんなことは絶対にしない。


 と、いつのまにか以前在籍していた学校の前に来ていた。校門を見覚えのある顔が、次々と通っていく。と、後ろから不意に声をかけられた。


 「横島さん?横島さんじゃないですか!!」

 「ピート?久しぶりだな・・・・・」


忠夫が事務所を辞め、免許を返却してから半年後の試験に合格したピートは、低料金で確実な除霊を行うことで評判だった。


 「タイガーも無事に合格して、今は本格的に活動してますよ。一文字さんのおかげで、女性恐怖症も克服したみたいですしね」

 「ほーーー・・・・で?エミさんとは相変わらずか?」

 「ええ。よく教会に来て、事務所に誘いにくるんですよ。困った人です」


ピートは、久しぶりに忠夫に出会えたことに喜びを感じていた。変な気持ちで言っているわけではない。横島夫妻の情報網はある意味すばらしいもので、横島に関わった人外の存在までキャッチしていた。そういう者たちも含めて、忠夫に直接関わることを禁じられ、話せるのは『偶然会ったとき』と何とも低い確率での許可を得ただけになった。ようするに、自分たちは令子のせいでとばっちりをくったわけだ。


 「じゃ・・・俺そろそろ行くわ。いそがんと遅刻・・・・あれ?」

 「どうしたんですか?」


忠夫の視線は横断歩道を渡ってくる、セーラー服の女生徒にくぎ付けになっていた。漆黒の黒髪に涼しげな瞳。忠夫は渡り終えたその生徒を、思わず呼び止めた。


 「茜?おまえ・・・・茜か?」

 「忠夫ちゃん・・・?」


一人取り残されかかったピートは、自己紹介しようと彼女に近づいた。と、茜は忠夫の腕にしがみついて、後ろに隠れてしまった。


 忠夫は離れようとしない茜を家に連れて帰ると、そのまま休むことにした。


 「しかし・・・相変わらず美人だなぁ。ボーイフレンドいるんだろ?」

 「ううん・・・うち、男の子と話なんか・・・」

 「へ?またまたぁ。隠さなくていいんだぞ?」


すると、茜は静かに顔を上げて忠夫の目を見ながら言った。


 「だって・・・・忠夫ちゃんがおるもん。うちは忠夫ちゃんのお嫁さんになるんよ」

 「は・・・?茜・・・お前、あの約束守ってたのか?」

 「うん・・・忠夫ちゃん、抱っこして」


茜はそう呟くと、忠夫のひざに乗って子供のようにしがみついた。


 夕食を食べ終えると、二人は忠夫の両親が帰ってくるまでリビングでだべっていることにした。昔の話をしながら楽しく過ごしていたが、そのうち話題はあの秘密に行き着いてしまった。


 「なあ・・・忠夫ちゃんはあの日のこと、まだ覚えてる?」

 「ああ・・・あいつ、自分がどうなったかわかんないって顔して倒れてたもんな」

 「忠夫ちゃん。うち、地獄に落ちんの?」

 「安心しろよ。そんなことしたら、仏様でも俺は殺すぞ・・・・。お前をそんな目に合わせるやつに、生きてる権利はない」


忠夫は茜を抱き寄せると、頭を優しくなでた。茜は気持ちよさそうに目を瞑り、いつのまにか眠ってしまっていた。


 その夜、令子は事務所で一枚の依頼書を読んでいた。依頼は、行方不明になった息子の魂を探してほしいというものだった。依頼人の息子は5年前、山に遊びに行くと出て行ったきりそのまま行方知れずになり、付近を捜索したところ血のついたTシャツが見つかった。遺体も見つからぬまま時が過ぎていくなかで、ある夜依頼人の夢枕に、行方知れずになった息子が立って助けを求めたという。GS協会からの報告書には、息子はある地主の娘に恋心を抱いていたらしい。そして、その娘の名前が目に入ったとき、令子は時が凍りつくのを感じた。


 ・紅 茜 (くれないあかね)

 母親は最近、病気で他界。横島百合子(旧姓・紅)を叔母に持つ。また、許婚が一人存在するが目下調査中。


 「あ・・・あの人が叔母?かんべんしてよ・・・・。依頼、却下しようかしら」


気落ちした令子は、深深とため息をついた。あの日以来、横島夫妻の力に恐怖した令子は、忠夫のことを極力忘れようと努力してきた。『村枝の百合』と呼ばれた元キャリアウーマンと、『村枝商事特命係長』の任についていた男の実力は半端なものではなかった。危なく社会的抹殺にまで追い込まれたのだから、そのときの恐怖は思い出したくもなかった。

 だが、離れて気が付くというのか・・・・。ふと、気が付くと自分自身も他の女性陣も、忠夫のことを考えてしまっていた。楽しかった毎日を思い出し、最後はいつも後悔のため息をつくのだ。


 「でも、依頼は受けたんだし調べなくちゃいけないわね。茜って子の過去、そしてその許婚のことも」

 「そのことから、すでに調べてあるよ」


後ろから声をかけられ振り向いてみると、そこには西条が微笑みながら立っていた。


 「お兄ちゃん!!いつ、戻ってきたの?」

 「アメリカでの依頼を済ませて、そのままとんぼ返り。さっき、空港に到着してそのまま来たんだよ。それより、その許婚なんだが・・・誰だと思う?」

 「あたしが知ってる人間?誰よ」

 「・・・・横島君だ。彼が紅 茜の婚約者だったんだよ」

 「うそ・・・・どういうこと?」


事務所の部屋に重苦しすぎる沈黙が舞い降りた。


 続くようです・・・・

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