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「二人のひみつ(GS+オリジナル)」

猿少年11号 (2005-09-02 14:06)
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 夕暮れの土手を、甚平を着て右手にわた飴の袋を持って、忠夫は叔母の家へ向かって歩いていた。祭囃子を背に受けながら、忠夫は出かける前に言われたことを反芻していた。


 『ただちゃん。お祭りが今夜は“あかね”が一人でお留守番しとるから、はよう帰ってきてな。おばちゃん、お友達のお葬式の手伝いにいかなならんさかい』

 『ええな、ただちゃんはあかねの“お婿さん”になんやから。百合子にはおばちゃんが電話しておくさかい、泊まっていって大丈夫や』


“あかね”は忠夫の許婚だった。と言っても、紅の本家が二人が6歳のときに勝手に決めたことだった。そのときは、何のことだかさっぱり意味がわからなかった少年も、12歳になってようやく事態が飲み込めていた。“あかね”は近所の子供らの間でも、美人で有名だった。日本人形のような白い肌に漆黒の艶やかな黒髪、やけに赤い唇が映えて色っぽい。そんな美人が将来自分のお嫁になるというのだ。忠夫の心は不安を感じながらも、嬉しさでいっぱいだった。


 家に着くと、白いワンピースを着たあかねが、戸口の前に立って出迎えてくれた。遠くから見ても彼女と分かるその美しさに、忠夫は一瞬言葉をなくしてしまった。


 「どないしたん?ただちゃん」

 「へ?!あ・・・いや!!わた飴買ってきたから、一緒に食べんか?」

 「うん!!食べる。うち、わた飴大好きや!!」


買ってきた薄紅色のわた飴は、舌先に少し触れただけで溶け出し、口の中に砂糖の味が直に染み込んでくる。箸からちぎって食べていたので、手のひらがすぐにべとべとになった。忠夫が手についた砂糖を舐めていると、“あかね”が指に吸い付いておいしそうに舐めまわしだした。口から指が糸を引いて解放されると、忠夫はあかねを抱きしめながら畳に押し倒した。そうして畳に寝転がりながら、あかねがふと呟いた。


 「なあ・・・あいつの家、昼に見に行ったら空家になってたんよ」

 「ふ〜ん。見つかるわけあれへんのに、山とか川とか探し回ったもんな」

 「それにな、みんな大人がいないところで話とるんよ。『いなくなってよかった』って。うち、怖いわ・・・・」

 「大丈夫や・・・・。肉は犬が全部食べてしもうたし、骨は砕いて川に流したやんか。心配すんな。それより風呂はいらへんか?汗でこそばゆうてたまらんわぁ」

 「うん・・・一緒に入る」


夏の夕暮れ。二人だけの秘密は、二人の心を繋げていた・・・・・・


 それから数年後・・・・・


 忠夫は転校して、そこで“普通の高校生活”を送っていた。令子の事務所はとっくにやめてしまっていた。理由は言わずもがな労働基準法を完璧に無視した給料と、息子の待遇に怒りをあらわにした百合子が原因である。大樹が浮気をしたと勘違いして帰国した百合子は、さっそく息子を迎えに事務所へやってきた。そこですべてを知った彼女は、令子を告訴しさらにGS協会へ免許剥奪を要請。予想外の敵を作ってしまった令子は、ただちに行動を開始しピンチをしのいだ。これで一件落着かと思いきや、今度は大樹が裏で手を回し、彼女に関係する人間が息子に近づけないように、令子の傍若無人ぶりをリークすると脅しをかけた。横島夫妻の底力をまざまざと見せ付けられた令子は、これを受け入れ今後一切忠夫に近づかないことを約束したのであった。


 入社後から今まで散々な目に会ってきた忠夫も、これを機に自分自身を見つめなおそうと事務所を退社、免許を返還して別の高校へ転校したのだった。棚ボタだったのは横島夫婦で、二人とも東京本社への帰属が言い渡された。この騒動に対する行動力と判断が必要と考えた社長が、裏で手を回しことは言うまでもない。ちなみに、あの名もなき専務は遠い外国へ飛ばされていった・・・・


 あれから数ヶ月、新しい環境での生活にもなれた忠夫は青春を謳歌していた。


 「忠夫、はよご飯すませんと遅刻するわよ!!」

 「ごちそうさま!!ほな、行ってくる!!」

 「あ・・・そういえば忠夫、今日は早く帰ってきてね。茜ちゃんが来るから・・・何でも、牡丹姉さんが亡くなったらしいのよ」

 「へ?!亡くなった・・・それじゃ、茜は・・・」

 「うん。どこにも引き取り手がないから、家に居候するんだって。あ・・あんたらは夫婦やから関係ないか・・・」

 「何だ!!そのいやらしい微笑みと、台詞は!!」


すると、大樹がおもむろに新聞から顔を上げた。


 「忠夫・・・避妊はしろよ」

 「あほかっ!!」


その光景を、一人の神様が真っ白な灰になりながら見ていた。その名もヒャクメ様。小竜姫の命令を受けて、逐一忠夫をストーキン・・もとい観察していたのだが、これはダメージが大きかったようだ。ヒャクメは何とか這い上がると、小竜姫に報告しに行った。


 その日、一匹の竜が山を崩壊寸前に追い込むくらい暴れまわったかどうかは、残念ながらはっきりしない。


 続くのだろうか?


 3話か4話くらいのお話にしようと思っています。連載は初めてなので、ご意見ご感想などよろしくおねがいします。 

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