インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「小笠原エミの心情(GS)」

テイル (2005-08-17 01:51)
>NEXT

 久しぶりに仕事がオフになり、小笠原エミは唐巣神父の協会へ向けて歩いていた。
 無論目当てはあんなおっさんではない。この世のものと思えないほどの美形を誇る、金色のヴァンパイアハーフが目当てだ。
「少し間が開いちゃったワケ。やっぱり定期的に会って、あたしと会うことが自然って感じにならなくちゃいけないワケ」
 ピートに会ったら思いっきり甘えてやる。しかしその為にはあのおっさんが邪魔……。
「さて、どうやってあのハ……もとい、神父を排除するか……」
 きわどいセリフを飲み込みつつ、唇に人差し指を当てながら考える。
 ……えげつない手がいくつも脳裏に浮かんできた。その情け容赦ない反則と言っていい数々の手段に、エミの顔はひくつく。
 これはライバルたる美神令子の影響なのだろう。決して自らの素養ではない、はずだ。
「……まあとにかく、排除することが重要なワケ。その事実だけを見とけばいいワケ」
 何か大事なものを失いそうな気がして、とりあえず思考を神父排除プランの作成にのみ向けるエミ。
 ……賢明といえよう。
 ともあれ、そうやってエミがどの手で神父を排除するか考えながら歩いていた時だった。
「ん? あれは……」
 神父の協会までもう少しという距離にまで至ったとき、エミはふとある人物を目に留めた。よれよれのジージャンにジーパンを身に纏い、頭に巻いたバンダナが一際目立つ青年である。
 後ろ姿からでも一目でわかる。美神除霊事務所所属のGS見習い、横島忠夫だ。
「なにやってるワケ、あいつ」
 彼は挙動不審に電信柱の陰に隠れながら、前方をちらちらと窺っていた。その視線の先には、下校途中と思しき制服姿の少女が歩いている。年の頃十三、四歳位だろうか。おそらく中学生だろう。
 どうやら横島はその少女をつけているようだった。
(俗に言うストーキングってやつ?)
 変態だ変態だと思ってはいたが、まさか子供を標的にするような男だったとは……。
 エミは二人から視線を外すと前方を見た。民家の屋根を越え、協会の十字架が太陽に光っているのが見える。協会はすぐそこ。つまりはピートもすぐそこにいる。
 再び横島達に視線を戻す。とことこと道を歩く少女と、その後方でこそこそと後を付ける横島の姿が視界に映る。
 エミは盛大に溜め息を吐いた。
「……やってらんないワケ。ちゃっちゃとしばき倒して、令子に引き渡すワケ」
 どうにも放っておけない根は優しい元殺し屋は、変態ストーカー男からいたいけな少女を護るべく、踵を返した。


「ピートくん」
 協会の十字架に向かって熱心に祈りを捧げていたヴァンパイアハーフは、師の言葉に顔を上げた。彼の横には穏和な表情と後退しつつある頭が目を引く、神父姿の中年男性が立っている。
「先生」
「どうしたんだね? いつもと少し祈り方が違っていたようだが」
 先ほどまでのピートの祈る姿には、助けを求める真摯な思いが込められていたように神父には感じられた。だから祈りの最中にもかかわらず、声をかけたのだ。
 ピートは立ち上がると、少し躊躇した後、口を開く。
「先生」
「ん?」
「僕はどうすればいいんでしょうか……」
 そう言ってピートは俯いた。
「ふむ」
 神父は先ほど電話があったことを思いだした。「少ししたらそっちに行くワケ!」と、非常にわかりやすい口調で彼女はそうのたまった。そのことでピートは悩んでいるのだろう。
「エミくんの事だね?」
「はい……。彼女は、僕に好意をぶつけてきてくれます。それは嬉しい。でも、僕はバンパイアハーフなんです。種族の違い、そして寿命の違い……。それがどれほどの悲劇を生むのか、父と母で知っています」
 父親の方に様々なでっかい問題があったことは、この際目をつぶる。
「確かにそうかもしれない。しかし今では時代が違うよ? 人外が世間に認知され、受け入れられる日も近いだろう。寿命だって、エミくんは一流のGSだ。何とかする可能性は大いにある」
「先生!」
 驚いたように顔を上げるピートに、神父は頷いた。
「はは、すまないね。少し言い過ぎた。人の命を弄ぶべき邪法など、使わないに越したことはないからね」
 それでもその邪法によって、真に幸せになるというのなら……唐巣神父は使うかもしれない。神父はかつて禁止されていた異教の呪いを用い、ある家族を霊障より救った経験を持つ。その為にバチカンに追放されたが、後悔はしていないのだ。
「何はともあれ、重要なのは本人の気持ちではないかな?」
 ピートは再び俯いた。
「僕には、わからないんですよ……」
「そうかね。……なら、しばらくそのままにしておけばいいかもしれないね」
 神父は協会の入り口に目を向けた。
「もしかしたら、その悩みは無駄になるかもしれないからね」
「え?」
 意外な言葉にピートはいぶかしんだ声を上げたが、神父は変わらず教会の入り口を見ている。ピートも視線を向けてみたが、そこには誰もいない。
 なぜ神父がそんな言葉を言ったのか、ピートにはわからない。再び師に視線を向ける。
「エミくん、遅いねえ」
 神父は疑問を含んだ弟子の視線に応えず、ただそのその顔に深みのある表情を浮かべているだけだった。


あとがき
 目指せ日刊!

 
 上の言葉を、後悔しないように頑張ろう。
 

>NEXT

△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze