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▽レス始

「月に吼える 第参拾話(GS)」

maisen (2005-08-01 01:17/2005-08-01 01:18)
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「―――分割式・メタソウルに・登録・されている・特殊項目・個体・確認」

ひゅおぉぉぉぉぉ・・・・

「マザー・ソウル・休眠中。ドクター・カオスとの連絡・現行の・禁則事項に・抵触」

 高く、高く。遠い夜空の中。

「―――自立判断に・基づく・行動演算―――終了。音響・霊波・光学迷彩・多重起動」

 その少女は、空に浮かんでいた。

「―――潜入・開始」

 額に、θの文字を刻んだ、ツインテールの小さなマリアの型代は。


こつこつこつ

ぎぃぃぃぃっ


「すかー。すぴー。すかー」


「・・・この状況下で眠れるっていうのは、やっぱり馬鹿だと思うんだけどねぇ」

 忠夫とメドーサの姿は、1時間ほど前まで闘っていた屋敷の地下にあった。半人狼の青年はその体の殆どが高さ2M、縦横幅1Mほどの、直方体の中にあった。はみ出ているのは首から先の頭部と、両手首から先だけである。

 そして、彼は熟睡ぶっこいていた。


「ほら、おきなッ!」

がんっ!

「あだっ!って何だ?!金縛りか?!・・・あー。・・・夢であって欲しかったっ!」

ずごんっ!

 メドーサは、忠夫に槍の柄でもう一撃かます。

「現実逃避も程々にしな。さて、用件は分かってるね?」

「・・・すかー。すぴー」

「―――永眠したいかい?」

「嫌じゃぁぁぁっ!!」

「んじゃとっとと囀りな。あんたらのお仲間の事を、ね」

 そう言って忠夫の首に槍の穂先を押し当てる。

「・・・いやー。それがね?」

「ふん?」

「お腹が減って・・・もう死にそ。なんか食べる物くだせぇぇぇ・・・」

ぐぎゅるるる・・・

 メドーサは、確かに土角結界に阻まれて聞こえるはずの無い、忠夫の、腹の虫の鳴き声を聞いたような気がした。


「ま、あの性悪の蛇女のことだから、絶対に出入り口は2つ以上確保してると思ってたけど」

「意外な盲点でしたね。まさか地下鉄の中に作るなんて・・・」

 こちらは美神たちの本隊。彼女達は今、香港島の地下にある、ある地下鉄の路線上にいた。

「・・・それにしても、この都市って・・・」

「ほんとーに変な奴らばっかりだな。まさか、一件目の情報屋であっさり見つかるか普通」

「というか、分かっててほっといた節があるのよね・・・」


 彼女達がこの地点をピンポイントで見つけられたのには訳がある。

―――魔都、香港。そこは表を歩けば観光都市としても充分以上に魅力的な町並みが広がっている。が、


 一皮剥けば、其処にはまさに人の裏が其処彼処に見られるのである。


「ま、優秀な風水師を簡単に見つけるっていうのも、楽じゃないでしょうし・・・おそらく、利用したわね、あの蛇女」

「・・・まさか、こうなる事を見越して風水師の情報を流した奴らが?!」

「推測に過ぎないけど、ね。裏でごたごたがあれば、それなりに策を―――謀事をやる奴らも出てくるでしょう」

 ―――風水師、という存在は、この都市では以外にポピュラーなものである。その裏表を問わず。そして裏に存在する者達には、確固とした原則がある。味方じゃない者は、敵か、利用できる敵であるという。

 今回の騒ぎで消えた風水師たち。その動きを追ってみれば、ある程度共通項が見つかるのかもしれないが・・・それは彼女達のお仕事ではない。

「誰に喧嘩売ったか教えてあげるわ、メドーサ。さて、それじゃ」

「此処は一つ派手に行ってみましょうかね」

「おっしゃぁぁぁっ!!」

「横島さん・・・待っていてください!」

「どうか、無事で帰ってきてくださいね・・・」

どごぉぉぉんっ!!

美神、ピート、勘九郎、雪之丞―――突入。


「ほら、さっさと「と、届かん!とどかんぞぉぉっ!」・・・なんて世話の焼ける情報源だい・・・」

 忠夫の前に突き出されたのは、いかにも保存食というかったそうな乾し肉と濁った水。それでも、貪るようにどんどんと食べていく。

はぐはぐっ!

「へったくそな乾し方だっ!」

がつがつ!

「お肉に対する敬いの気持ちが感じられんなっ!」

ずずずっ!

「ぷはっ!せめて井戸水がよかったー!」

「黙って食べろ・・・頼むから」

「ごっつぉーさん」

「早ッ?!」

―――この緊張感の無い雰囲気だけでもどうにかならないものか。


「・・・で?」

「うむ。乾し肉は天日干しか薫製にした方が良いと」

ちゃきっ

「・・・で?」

「えーと。なにが聞きたいんでございましょうか?」

 あくまでも韜晦する忠夫に、とうとう業を煮やしたか。メドーサの額にはでっかい井桁。

「とりあえず、そっちの戦力だね・・・誰が来てるんだい?」

「はいっ!美神さんとピートと勘九郎と雪之丞でっす!」

「・・・ふん。やはりそちら側についたか」

 そう呟くメドーサの目には、憎々しげな光。

「もういつ後ろから俺の貞操が襲われるかと、怖くて怖くて・・・視姦?」

ずがんっ!

「ようするに、いつも通りだったわけだね?」

「あ、あれがいつも通りっていうのも嫌だなぁ」

 メドーサは、忠夫に一撃くれたあと、顎に手をやってしばらく考え込む。そして、その視線を、す、と上げると

「・・・忠夫、とか言ったね」

「はいっす!」

「あんた、こっち側につく気は無いかい?」

「―――へ?」


 忠夫を引き込みにかかった。全く考えてもいなかったその提案に、思わず素の表情を見せる。

「少々力不足とはいえ、あたしとかなり良い所まで争ったその戦闘能力。人狼とか言ったね?その鋭敏な感覚、おそらく、偵察に出たのは適役だったからだろう?」

「え、あの、その、ちょっと」

「―――あんたの力があれば、かなり楽になる事は間違いない。どうだい?こっち側につかないかい?」

 メドーサの表情に嘘は無い。真剣な、何処までも本気の感情が浮かんでいる。

「報酬は望みのまま、だよ。やりにくいって言うんなら、今回は参加しなくてもいい。原始風水盤も、どうやらあの方にとっては余り重要な物ではないみたいだし、ねぇ」

「ってーと?」

「ふん。いくら地脈を操れるからって言ったって、あれ一つで人界全てを魔界に置き換えることなんて不可能さ」


 原始風水盤。地脈を操り、世界を滅ぼす事さえ可能なその力。では、メドーサ達にとって、その使い道はなんなのであろうか。 
 たとえば、メドーサ本人が言ったように、人界を魔界に置き換える?

 ―――不可能ではないが、その場合完璧に神界の干渉を受けるだろう。原始風水盤の製作、操作が魔界の住人にできて、おそらくタッグを組むであろう人界、神界の技術集団にできない、ということは考えにくい。其処までの技術格差があれば、とうに魔界の勝利でこの世界は幕を下ろしていただろうから。と、なれば後は単純な陣取り合戦になるだけだ。時間と労力が大量に必要な消耗戦の様相を呈してくるだろう。

 世界を滅ぼす?―――それこそ、何のメリットにもならない。彼らは、世界を滅ぼす事が目的ではない。彼らの目的の為にも、いまはまだ世界に滅びてもらっては困るのだから。

 神界への交渉のカード?―――これも少し弱い。彼らにも扱える可能性のある技術など、それこそ睨み合いで終わるだけの公算が高い。本当にそうしたいのなら、世界のありとあらゆる地脈のツボに、全く同時に発動できる下準備をしておく位のことは必要だ。


「・・・んじゃなんだってこんな大掛かりな事を」

「さて、ね。その大掛かりな事に使う駒があたしと陰念―――ま、実質あたしだけって言う時点で、既にこの作戦の重要度がわかるってもんさ」

「そりゃそうだ。もっと大規模に戦力を使うならともかく、こんな一発でその発動が知れるもんじゃなぁ。テストにしたって効率悪すぎるし」

「―――いいねぇ。頭も悪くない。やっぱり、あんたが欲しくなってきたよ」

「―――ええと、求婚でしょうか?」

「ふん、十年早い。がきんちょが」

「ひでぇ・・・」

「で、どうだい?戦力があたしひとりでも、やりようによっちゃああいつらなんぞ簡単に捻り潰せるよ」

 そう言い、メドーサは唇を歪ませる。


「ま、そりゃそうだろうけど・・・残念ながら、今回のお誘いは断る」

「・・・ほう」

「これでも狼なもんで。仲間は裏切れないなぁ」

 断りの言葉を聞いた瞬間に、その手に魔力を纏わせたメドーサだったが、次の言葉でその魔力を放散させる。

「・・・そういう奴こそが、欲しいんだよ。絶対に裏切らない、忠実な部下が、ね」


「―――仲間、の間違いだろ?」

「っ!」

「なぁ、お前こそこっちに来ないか?」

「ざ、戯言をっ!」

「いやいや、マジで。うちの里ならけっこー簡単に受け入れてくれると思うぞ?美人だし、乳でかいし」


 忠夫の思いがけない言葉に動揺してしまうメドーサ。何故動揺したか、など、本人には分からない。

「あそこはいいぞー。皆馬鹿ばっかりだから、少なくとも退屈はしないし。一緒になって馬鹿騒ぎやるのも悪くない。満月の夜には皆で酒盛りしたりとかな」

「ふんっ!魔族を受け入れる存在など、いるわけが無いだろうが!」


「―――なら、俺と一緒に酒でも飲もう。そんで一緒に馬鹿騒ぎしよう。・・・仲間にならんか?」

 忠夫はあくまでも真剣に、メドーサに語りかける。

「―――ふざけるなぁぁぁっ!」

 何故、こんなにも怒りが湧いてくるのか。なぜ、こんなにも寂しいと思ってしまうのか。


何故、一瞬でも―――そんな光景の中にある自分を想像してしまったのか。


「―――もういい。分かった。それなら、お前の意思など必要ない」

「あ、やばいかも」

ずんっ

「あ・・・がっ」

 打ち下ろされた槍は、忠夫の意識を刈り取った。

「貴様の存在ごと、あたしの眷属にしてやる」


「ぐるぉぉぉおおおおっ!!!」

「門番にケルベロスとは、中々洒落の聞いてることっ!」

ずがんっ!

「ちっくしょー!表面に妙なコーティングがしてあるせいで、霊的ダメージが反射されてやがるっ」

「魔装術でも駄目だなんて・・・メドーサは、私たちのことも予想済みってわけ?!」

 忠夫達よりさらに地下深く。美神たちは結構なピンチであった。

「こんのっ!こうなりゃピート!あんたの出番よっ!」

「嫌な予感がしますがっ?!」

「大当たり!霧になってあいつの腹の中潜り込みなさい!」

ずごうっ!

 ケルベロスの体当たりを危うい所で避ける美神と勘九郎。

「そんな一昔前の怪獣映画みたいな?!」

「いいからとっとと行け弟弟子!」

「よかったわねー!見せ場よ見せ場!」

「羨ましいなーっ!だから早いとこやれぇぇぇっ!!」

「がぁぁぁぁっ!!」

 ケルベロスは一声上げると、再び突っ込んでくる。

「こ、こんな姉弟子は嫌だぁぁぁっ!!」

ぼひゅっ

 マジ泣きの入った半吸血鬼は、その体を霧に変えるとケルベロスの口の隙間から潜り込む。


「がっ?!がぁぁぁぁぁっ・・・」

ずずぅぅぅん

「あら、ほんとに上手く行ったわね」

「火でも吐いてきたらどうしようかと思ってたけど、良かったわねピート♪」

「さすが俺のライバルだぜっ!」

ひゅぼっ

「えーえーもうなんでも良いですから、とっとと先行きましょう」

 そんな姉弟子を取ったのは、あんたの師匠だ。諦めた方が精神衛生上良い。


「―――犬飼忠夫・確認。周辺に・敵性存在・確認できず。迷彩・解除」

びゅむっ

 其処は、先ほどまで忠夫とメドーサがいた空間。今は何処から運んできたやら、古びたパイプベッドに、埃っぽいマット、薄い毛布。そういった物の上に忠夫が気絶していた。
 先ほどのθの文字を額に刻んだマリア(小)は、迷彩を解くとその傍らに歩み寄る。

「――――」

じー。

「くかー。すぴー」

 訂正。馬鹿が一匹寝ていた。

「――――――――」

じーーーー。

・・・ぽっ

ごそごそ

「――――んー」

「――――これより・防衛任務に・つきます。これは・最優先事項・です」

 少女は、何故か言い訳するように無表情にそう囁いた後、ほんの少しだけ嬉しそうに忠夫の傍らに潜り込んだ。


『起きろ、小僧』

「うおっ?!」

 其処は、真っ暗だった。

『全く。無様にも程がある』

「えーと、あれ?」

 しかし、自分の姿は見えるし―――

『最も通る確率の高い所に罠を仕掛けるのは当然だろうが』

「あっ!お前あの影法師っ!」

―――忠夫の正面に立つ、いつぞやの影法師も良く見える。

『挙句の果てに、こんな物まで此処に入れよって・・・』


びちびちびちっ


 影法師の手の中で暴れているのは、メドーサの眷属、ビッグイーター。まるで釣り上げた魚のようにあっさりと片手で動きを封じている。

「此処ってどこだよ?」

『ふん。お前の中だ』

「げ。そんなもんどうやって・・・」

『覚えておらぬか。中々大胆な接吻であったぞ?』

「まじかっ?!」

『うおっ!?』

 その一言で、一瞬で影法師との距離を詰める。

「手前っ!なんで起こさなかったんじゃぁぁぁぁっ!!」

『知るか。全く・・・不味そうだが、質は良い、か』

がぱ。

ごっくん。

「げ」

『ふん。腹の足しにはなるか』

「そんなもん食べんなよ・・・」

 影法師は、その手に持ったビッグイーターを一飲みにしてしまった。その光景を見て流石にげんなりとする忠夫。

『心配するな。しっかりとお前の血肉にもなる』


「――――――――――そんなもの勝手に俺の血肉にすんなぁぁぁっ!!!」

がばぁっ!!
とすん。

 布団の上で跳ね起きる忠夫。絶叫交じりの悲鳴は、しょうがないとも言えるだろう。同時に何かが落ちたような音も聞こえたが、

「ん?」

きょろきょろ

辺りには忠夫以外の人影は無い。

「あれ?えっと―――やばっ?!」

 状況把握に数秒費やした忠夫は、ベッドから飛び降りると走り出す。

「美神さん美神さん美神さんあとその他―――!!」

 その他が聞いたら殴られる。


「―――め・迷彩起動・確認。ぎりぎり・セーフ」

それでどうやって護衛するつもりだったのか。


---アトガキッポイナニカ---
はいすいませんmaisenでございます^^
というわけで第参拾話、此処にお送りいたします。

参拾話・・・ビックリだ。


レス返しー。

ヒロヒロ様>忠夫君の狸っぷり、楽しんでいただければ幸いですがw 

法師陰陽師様>おおー、カオスがかっこいいとw マリアの姉妹・・・さてさて、彼女達、どんな場面で出てくることやらw

白様>美神の位置・・・ただ適応するだけじゃー面白くないw サブイベントは、予想を裏切った方がいいですよね?(待て

八尺瓊の鴉様>おお、初めましてでございます^^ そんなに言って頂くと、もれなく作者が喜びまくります(爆 これからもよろしくお願いしますね^^

ナマケモノ様>α:近接武装特化型 β:斥力場式補助型 θ:隠蔽式高機動偵察型 δ:遠距離武装火力特化型 と設定しております。ま、あくまでも目安にしてる物ですので、お気になさらぬようw そーですねぇ。すくなくともこの時点で惚れたはれたは難しいかな、と

皇 翠輝様>マリアの量産型は・・・ふふふw ってピンチ要因の一つですかいw さてさて結果は何時の日かw

casa様>どっちかってーと憂さ晴らしに近いような気もw 既成事実って頭と手だけで一体何をってナニでしょうかうわまてやめr(ぱーん

偽バルタン様>マリアの意思で、ですね。何故そんな事をしたのかというと・・・それはいつかのお楽しみw は、今回はこんな形ですw

柳野雫様>憂さ晴らしですw 量産型マリア、4体目―w一応これで打ち止めですのでご安心をw はい、あの馬鹿騒ぎの影響ですともw まった。OK目を逸らさずに話し合いましょう?(マテ

邪我様>はい、引き抜きにかかりましたなーw 残念ながらメドーサと美神たちの顔合わせは次回、となりましたがw 

桜葉 愛様>は、決まっておりませんなw(爆 ふ・・・シリアスとは気付かないうちになっている物で私は大分困っていちゃったりなんかしてああもう(黙れ 秀逸とまでいっていただけるとは^^; はっはっは!ドリルもすてがたいがパイルもねっ?!

k82様>やーめーてー!そんな非難囂々確実な事やるわけ無いじゃないっすかー!w 

梶木まぐ郎様>ヤモリ・・・流石に嫌いだと思いますw だって・・・ねぇ?w 陰念・・・今回は出番・・・まだあるのかな?(マテ

nacky様>は、正面衝突では確実に力負けする忠夫くんですがw 仲良く喧嘩・・・馬鹿さわぎっすかねw

ドアノッカー様>おお、初めましてでございます^^ エデン○ボゥイ・・・それかぁぁぁぁっ?! いや、なんだかどっかで見た事があるデザインだなー、と思ったんですよねー。ま、いいや(マテ このまま行きましょうw

ジェミナス様>どうだろうかと言われましてもw マリアがヒロインだと固定した訳ではありませんよ?w

ヴァイゼ様>忠夫君的にはこれ以上無い大ピンチですw はっは!期待にこたえずしてなんのレスか!(爆 というのは置いといてw シンパシーくらいは使えるようになるかもしれませんなーw

しゅーりょー。

次はそろそろ原始風水盤の所まで行っちゃうのか、それとも何処まで行くのか、もはや私にはわかりません(爆 

とりあえずの参拾話。さてさて頑張って行きましょうか^^ノシ

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