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「小さな事件or大きな事件?(GS)」

テイル (2005-07-17 04:04/2005-07-18 13:12)
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「ある一定以上の力ある者は、死後神となることがある。それは知っていような、小竜姫」
 大事な話がある……。
 そう彼女の師が話しかけてきたのは、その日の鍛錬が終わり、井戸端で汗を拭いているときだった。小竜姫とともに鍛錬していた元魔族の少女が頭から井戸水をかぶる様を見ながら、老師は小声で耳打ちしたのだ。
 不意とも言えるタイミングに戸惑いを隠せず、小竜姫はいぶかしげな表情を浮かべた。そんな弟子に師匠である猿神は、再び小さく、夜が更けた後道場に来るよう言ったのだ。
 どうやらパピリオには知られたくないことらしい……。
 猿神の様子からとりあえずそれだけ理解すると、小竜姫は小さくうなずいた。
 そして今、老師が呼びつけた弟子に開口一番言ったのが冒頭の台詞である。
「はい。ですが異教でのことですよね?」
「そうじゃ。まあ、異教だ何だといわれていても、神族という括りで囲んでしまえば違いはないがの」
 細かいことは気にするなというように、猿神は軽く手を振る。
「それよりももう一つ。これも異教じゃが、死神は知っておろうな?」
「死すべき人の魂を刈り取る、農夫のような存在……だったと記憶しております」
 小竜姫の答えに、猿神は何度かうなずいた。
「結構じゃ。まあ、世間にも広く知られた事柄じゃから、お前が知っていても何の不思議はない。今のはまあ、念の為の確認じゃ」
 猿神は懐から書類と思しき紙を二枚取り出すと、小竜姫に渡した。
「本題はそれじゃ。そいつを見るにあたって、今の知識を持っていないとしんどいでな。……まず一枚目を見てみるがよい」
 促され、小竜姫は書類に視線を落とした。さまざまな紋様によって装飾されたその紙は、題名の所にこう書かれてあった。
 「神格化決定の者」と。そして紙の中心には一人の名前が記載されてある。
「………!」
 その名前を見たとき、小竜姫の驚きは言葉もなかった。目を見開きまるで穴でもあけるかという具合に、その名前を見つめる。
 そして小竜姫は、その驚愕したままの表情で猿神を見た。
「老師。これは……」
「うむ。あの小僧じゃな。何度か話し合われていた議題だったそうじゃが、前回行われた最高指導者会議で正式に決まったんじゃと」
 小竜姫は再び書類に視線を落とした。その顔に柔らかな笑みが浮かぶ。
「そうですか。彼が……」
 感慨深げに彼女はつぶやいた。
 彼は小竜姫のかつて弟子だった。それも才能はあるが、不肖といってもいいくらいの。
 それがある事件を契機に、猿神を同じ師匠とする兄弟弟子となった。さらには三界を揺るがした事件を解決する、立役者にもなった。
 ……今回の神格化は、おそらくそのときの功績なのだろう。しかも最高指導者会議で決議されたとなれば、彼はおそらく小竜姫よりもはるか格上の存在として生まれ変わるはずだ。それがどれほど名誉なことなのか……神族である彼女はよく知っている。
 規格外。その言葉がまさしく相応しい存在。
 笑顔とともに書類を読み進めていた小竜姫は、ある一文に目を留めた。神格化した後の第一赴任先。その欄には、確かにこう書かれている。
 ……妙神山、と。
 ぱあっと小竜姫の顔が輝いた。なんとすばらしい朗報ではないか。彼がここに神としてやってくる。自分も嬉しいが、きっと彼の妹はさらに喜ぶだろう。すぐにでも教えなくては……。
 そこまで思考を働かせて、小竜姫は気づく。
 これは朗報だ。そう、どう考えても朗報に他ならない。それなのに、なぜ老師はパピリオに隠れるようにこのことを自分に伝えたのだろう。
 顔を上げた小竜姫は、渋い顔で自分を見る老師の姿を見た。
「老師……」
「気づいたか。……その理由は、二枚目の書類に書かれておる」
 重々しいとすらいえる口調に、小竜姫はごくりと喉を鳴らした。そしてゆっくりと紙を手繰ると、二枚目に視線を落とす。
 二枚目の書類の題名は、「死神の書」。死神が持つという、死すべき運命に捕らわれた人間たちのリスト……その写しのようだ。
 ……中央に、彼の名前があった。死亡予定の日付は――。
「一週間後っ!!」
 死ぬ? 彼が死ぬ? それでは今彼を取り巻く人たちはどうなってしまうのだろう。彼に依存している者達を、少なくとも小竜姫は何人も知っているのだ。その彼が一週間後死んでしまったら……想像もしたくない。
 この運命を変えることはできないのだろうか? もし変えられるものなら、なんとか変えてほしい。死神は慈悲深い神という。神族である自分が必死に頼み込めば、もしかしたら……。
「ちなみに、その運命は変えられんぞ」
 まるで考えを読んだように、老師はそういった。
「わしも上奏したんじゃ。しかしこやつ、過去に死神の運命を一度変えたことがあるらしくての。……二度目は駄目なのだそうじゃ」
「そう、なのですか」
 それでは、もうどうしようもない。
「……でもみんな霊能者ばかりだから、ここに来てもらえば……。少し遠くなるだけで、会えなくなるということはない、か」
 なんとか、そう前向きなことを考えるしかなかった。
「確かにそやつらはそれで良いかもしれんな」
 猿神はうなずく。
「じゃが、重大な問題がまだあるじゃろう。それがパピリオに伝えなかった理由なのじゃからの」
 あと一週間で彼は死んでしまう。しかし神となってすぐに妙神山に訪れるのであれば、それはパピリオにとって悲嘆すべきことではない。
 老師はパピリオにこのことを伝えなかった。ならばそこには、もっと明確な理由があるはずなのだ。
 小竜姫はその理由が何か考え、すぐさま答えを出した。
「……ルシオラさん」
「そうじゃ。あやつが……横島が、死ぬ。それはパピリオの姉の、消滅を意味するのじゃ」
「そん……な……」
 もしそうなろうものなら、パピリオはどうなってしまうだろう? いや、横島自身もどうなってしまうか、わからないではないか!
 小竜姫は身を震わせた。
 戦場では一度もその感情に敗北せず、勇猛で知られる竜神の剣士が、初めて恐怖におののいた瞬間だった。 


あとがき

電波です。
ちなみにこれからどうするかほとんど考えていません。
そう、実は小竜姫様がヒロインかどうかもわからない状態!!(おい)

もし良かったらリクエストくれると……とか言ってみたり。 


それにしても、しょうりゅうきって普通に変換するとなぜ小隆起になるんだろう。
それが気になる私がおかしいのかなぁ???

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