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▽レス始

「人間供 繕睫攤圈(GS)」

はいじゃんぱー (2005-07-08 22:05/2005-07-09 00:13)
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しゅん

しゅん

しゅん

しゅん

しゅん


シロは鉄瓶から昇る白煙の音で目が覚めた。

目を開くと煤で黒くなった梁が頭上を走っているが見えた。

「・・・ここは」


「おっ、めー覚めたか?」

すぐそばからどこか聞き覚えのある声が聞こえた。

「ひゅん!!」

気配も無く唐突にぬっと出てきた顔に驚いて、シロは全身の体毛を逆立たせた。

ビクンとした拍子に額に乗っていた湿った手拭いが滑り落ちた。

「ちょー待っといて。旨過ぎるもん食わしたるからな。」

そう言い残し、男は手拭いを拾い上げて土間の方へと下りて行った。


シロが寝かされていた部屋は、板張りの十畳間ほどの空間であった。

部屋の中央に囲炉裏を据え、鉄瓶から蒸気が出ている。一つある窓の格子の間からは朝日と、朝の凛とした空気が流れている。

部屋はそこ一つだけで、後は男の立っている小さな土間しかなかった。

土間には小さな釜戸と水瓶があり男は釜戸の前に立ち何かしていて、食欲をそそる香りがシロの所まで流れてきた。


「あの、」


「ほい。完成っ!!」

シロが困惑でいっぱいの顔で声をかけようとしたが、重なるようにして男が湯気を出す鉄鍋を抱えて板間に上がってきた。

鉄瓶と鍋を取替えつつ、男は目尻を下げニコッと微笑みいった。

「聞きたいことあるやろうけど、まぁ食いながらでいこっ!」


かちゃかちゃかちゃ。

箸と椀が出す音と咀嚼の音のみが朝の静寂に響く。

昨日あのようなことがあったせいか、料理が旨かったせいか、シロは大変旺盛な食欲わ見せた。

それでも時折目の前の男が気になるのか、椀から顔を上げチラチラと盗み見る。

そんな様子で朝食の時は過ぎていった。


「ほいよっ。」

ゴトっとシロの前に湯気をたてる湯呑が置かれる。

「・・・・・・・。」

しばらくその湯気をじっと見た後、シロはキッと何か決心した様に顔を上げた。

バっと後ろに下がり、頭を下げ

「昨晩はあぶない所をたすけていただいてありがとうございました。そこで、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でしにしてください!!!」

「いきなりかいっ!!!」

恐ろしく唐突であった。

「でしにしてください、でしにしてください、弟子にしてくださいっ!?『でしに』をするんじゃなくて!?いやいや『でしに』って何やねん!!」

余りに唐突過ぎたせいか、男も可笑しなことを口走っている。

「??・・・・・・・・・・・・・・・、でしにしてください!!!!!」

シロはよく聞き取れなかったと思ったのか、さらに大きな声で唐突すぎるびっくりワードを繰り返す。

「あ〜、ははっ、・・・・・・・・・・・・」

男は困ったように笑った後、何か考え込むように黙りこくった。























「あのっ・・・。」

戦々恐々といった感じで返事を待っていたシロだったが、痺れを切らして男に声をかけた。

「うんっ?ああっ、ええよ。」

「へっ?」

「だから、弟子にしたげる。」

一瞬何を言われたか分からず、固まったシロだったが直ぐに猛然と男に詰め寄った。

「ホントーでござるかぁ!!やった!やったでござるぅ!」

喜んでいる人狼の幼子を口元だけの笑みで見やりつつ重ねた茶碗を持って男は立ち上がった。

キシッ キシッ キシッ

板張りの床が男が歩くにつれて微かな音をたてる。

その音で漸くシロは男が背を向けていることに気付いた。

特に気配を消している訳では無かった。ただ、兎に角すべての動作が自然だった。

予定調和のように足を運ぶ。視界に入っているのに反応できなかった。

幻が動いているようであった。

後を追おうと正座を解き、シロは立ちあがろうとした。

緊張で気付かなかった仄かに甘いような匂いを感じた。

男の所作は空気を切り裂いて動いていることさえ、俄かに信じられない程のものであったが、

しかし、そこは人間である故、男によって撹拌された空気は味付けされた様に体臭を含んでいた。

石鹸に似た甘い匂いにつられるように鼻をひくつかせて白はフラフラと男に続いて土間に下りた。

素足に冷たい土の感触が広がった。


「っっ」

足の裏から伝わる冷たさに、意識の空白から現実に帰ってきた。

目を移すと男は手桶で瓶から水を汲み、洗い物をしていた。

慣れた手つきで腕が動いていた。

「裸足やったら足汚れるぞぉ。弟子一号。」

ほわん、と声が掛けられた。

「あっ、・・ハイ。」

二人分の食器を洗い終えたのだろうか、手拭いで手を拭きつつ男は振り返った。

「おぉっ?何やまだ緊張してんのかぁ?」

微かに笑いながら男はシロの両脇に手を差し込んで持ち上げた。

「うっ、わうっっ!おおぉ、」

突然だったので思わず吠えたが、直ぐに座らされた。

「んっとぉ、足ちっちゃいなー。」

男は持っていた手拭いでシロの土に汚れた足を拭ってやった。

よし、反対っと言われて、素直にシロはヒョコと足を代えた。

「ってゆーか、結構重要なことまだやってないなぁ。」

シロのもう片方の足をぬぐいつつ言った。

「よっし、名前を教えてもらおかな。」

足を戻してやり、少しおどけたように尋ねた。

「ハイっ、犬塚、犬塚シロですっっ。」


うん、うんよし。しろ・・しろっと。と口の中で呟いて、

「オッケー。オッケー。よっしゃ、こっちおいでー。」

そう言って、シロの頭に軽く手を置くと、土間から上がった。

おけー?桶?とぽーっとしながら、

直ぐ隣を通って強くなった匂いにつられるようにして、シロも後に続いた。

「あの・・・・・せんせいの名前はっ・・?」

囲炉裏の前に座ろうとしていた男が振り返った。


「横島忠男や」

男はグッと親指を立てた。


     金木犀  −完−


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すみません!!元ネタ表記忘れました。

なかなか導入部が長引いてしまっています。

>崇弘様

面白いと言って頂いて大変嬉しいです。励みになります。

>nacky様

一応シリアス?方面でいくつもりです。見捨てずにお願いします。

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