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▽レス始

「月に吼える 第拾参話(GS)」

maisen (2005-07-07 00:16/2005-07-08 00:22)
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犬飼忠夫は考える。

侍とは何か。

仲間とは何か。


―――負けるとは?


ドクター・カオスに負け、美神の危機に直面し、結局自分はそこまでか?


―――そんなことが認められるかってーんだっ!


「ちわーっす」

 今日も今日とてGS美神除霊事務所に青年の声が響き渡る。空元気も元気の内、という。何かに悩んでいようとも、そこらへんを見せると言うのは彼の男としてのプライドが許さない。だからこその空元気であり、そして彼の矜持でもある。ならば、結局どうこう悩んでる暇なぞない。やることやって、それから何を悩んで何が変わるか、とりあえずそれは後回し。

「あら、横島君だったの?」

「いきなりひどいっすよ、美神さん」

 だから―――

「ん〜いま、ちょっと急いでてね。早いとこ届いてくれるといいんだけど」

「今日のお仕事に関することっすか?」

 まずは、頑張ろう。


「日本にパイパーっていう『悪魔』らしきものによる被害があってね、それで、ソイツに対する切り札の到着を待ってるところだったのよ」

「パイパー?」

「そ。なかなか凶悪な奴でね、能力としては相手を子供にするって言う只それだけ、なんだけど――」


 悪魔パイパー。ヨーロッパにて散々その特殊能力を振るいまくり、時の僧侶によってその力の源である『金の針』を奪われるまで膨大な被害を撒き散らした世界規模での賞金首である。「ハーメルンの笛吹き」とも呼ばれる彼の力は、本当に相手を子供にするという以外には、それなりの魔族としての能力しかない。それでも並みのGSにとっては十分に強敵となるだろうが。


―――『金の針』がその最も大きな弱点である、と言う事、そして、その能力の半径がとんでもなく広い事。特筆事項としてはこれらが挙げられる。前者は、その弱点が力の源であることもあり、そのため僧侶に『針』を奪われたことでヨーロッパから駆逐された訳だが、後者はかなり文明社会にとって危険な能力となる。その範囲が一つの都市を軽く覆ってしまえるほどに広いのだ。


 もし、その能力が大都市のど真ん中で発揮されれば?原子力発電所の近郊で使われれば?パイパーが猛威を振るっていた時代とは人口密度も、そして技術力とそれが制御を離れた場合の被害も比べ物にならない。はっきりいって、そうなってしまえば只一体で一国どころか、オカルトにあまり耐性のない国ならばまとめて5,6ヶ国ぐらいは無くなってもおかしくない。


 だからこその高額な賞金であり、国連が世界中のスイーパーに抹殺を呼びかけると言う事になるのである。


「・・・なんだがセッコイ能力ですね〜」

「甘く見ちゃダメよ。確かに子供にするって言うところだけ見ればそうたいしたことはないかもしれないけど、実際のダメージは甚大よ。なにせ、それまでそこにいた人間の力と記憶を、社会的な存在ごと抹消してしまう訳だから・・・」


 社会は歯車と現されることもある。別に歯車を卑下している訳ではない。その様子がまるで複雑で超高度な技術の集大成であるような機械の塊のように、多くの人々が組み合わさって、それぞれ動くことで社会と言うやつが動いていく。その様子が、『歯車』と言う表現につながる訳である。

 では、その歯車のうちいくつかが抜け落ちてしまえば、その機械はどうなるだろうか。多少の不備ならばこの機械は自力で補修できるであろう。しかし、あくまでも「多少」である。幾つかの都市に存在する人間が、ごっそりと子供になってしまう―――つまり、機械の中から、幾つかのブロックがごっそりと抜け落ちてしまう―――と言う事態になれば、さすがの高度な社会も―――いや、高度であるからこそ―――その機能を保つことはもはや不可能であろう。


「・・・結構怖い悪魔なんですね」

「・・・・・・・・怖くない悪魔なんて聞いた事ないわよ、おキヌちゃん」

 とはいえ、その凶悪な悪魔もここ2,3百年ほどは力を蓄えるつもりであったか、おとなしくしていた訳だが。


「つまり、切り札って言うのは―――」

「そう、『金の針』、よ」

「・・・・・・・・・美神さん?」

「なによ?」


 なんとな〜く汗をたらしながら、忠夫は美神に質問を続ける。それを横目でみながら、除霊道具の用意に余念がない美神。


「パイパーってのにとって、金の針は絶対に取り戻さなけりゃならないモンなわけですよね」

「当たり前じゃない」

「・・・・・・・・んで、今回の依頼はどっから?」

「解体業者よ。いきなり「うちの社員が変なのに子供にされちまった!どうにかしてくれ!」って高額の依頼が来てね」

「―――変なの?」

「ええ。ピエロのかっこしてラッパを持った、変な笑い声の悪魔だったって「そいつを見てるんですか?!」―――らしいわよ、ってまさか!!」


ちゅらちゅらちゅらちゅらら〜〜♪


 何処からともなく妙に明るい音楽が聞こえる。TVか、とも思ったろう―――その音楽に、強力な魔力が篭っていなければ。


「美神さんっ!!」


 衝動的にその音楽が聞こえてくる方――窓の方へ、美神たちを庇うように懐から霊石を取り出しながら飛び出す忠夫。彼が窓を開け放つと、其処には果たして


ちゅらちゅらちゅらちゅ〜ら〜ら〜♪


 悪趣味なピエロの格好をし、ラッパを吹き鳴らす悪魔。パイパーの姿があった。

「へイッ!!」

「うおっ!!」

ぼんっ!!

 慌てて手に持つ石を投げようと振りかぶったが既に遅く、忠夫はそのパイパーの『子供にしてしまう』能力をもろに喰らってしまう。

「ちぃっ!!」


 悪魔パイパーは最も大きな霊力を持った、おそらくGSであろう女性が無事であることを確認すると、そのまま中に飛び上がり―――東京の空へと消えてしまった。


「しまったっ!!この依頼自体が罠だったのねっ!」

「美神さん!!横島さんが、横島さんがっ!!」


 つまり、パイパーが目撃されたこと自体が罠であり、パイパーとしてはその姿と能力を見せ付けてしまいさえすれば良かったのである。あとは自分を悪魔パイパーだと断定した人間達は、放っておいても、勝手に自分に対して最も有効な武器『金の針』を取り寄せる。その受け渡しの現場を抑えるも良し。若しくは片方を先んじて潰しておき、後から来た獲物を狩るも良し。後者には、自分の存在がばれると言うリスクがあるものの、どちらにせよ『金の針』奪還という目的は果たせるはずであった・・・が。


「あの妙な小僧!!もう少しだったって言うのに、とぼけた顔して勘の良い!!」


 忠夫が横槍を入れたおかげで、予定が大幅に狂ってしまった、と言う訳である。


「ちっ!!やってくれるじゃないあの禿げ!おキヌちゃん、すぐGS協会に連絡を取って!こっちから『針』を受け取りに「わんっ!!・」・・・横島君?」

「・・・・・・・みたいですね」

「おねーちゃんたち、だれでござるか?それにここはどこでござるっ?!」


 パイパーの攻撃を喰らった忠夫が起き上がると、其処には―――狼の耳と尻尾を持った、年の頃10歳前後の和装の子供が、腰に挿した全長50センチほどの木刀をその先っぽをぷるぷると震わせながら、半泣きでこちらに向けている姿があった。


「それじゃ、おねーさんたちはてきではないでござるな?」

「ござるって・・・ええ、そう思ってくれてもいいわよ」

 いまだにソファーの陰から警戒心剥き出しでこちらを眺める忠夫に対し、あまりの口調の時代錯誤っぷりから、違和感バリバリの美神。


「ええと、どうしましょう美神さん?」

「・・・・・・・・足手まといを連れて行くわけにも行かないわね。先生のところで預かってもらいましょう」

「あしでまといとは無礼な!これでも父、犬飼ポチと母、沙耶の息子!れっきとした侍でござ「の、玉子でしょ?」・・ぅぅ〜〜」

 会話の流れは分からずとも、なんだか自分が役立たずといわれたっぽいことは分かる。思わずソファーの陰から飛び出し、反発し反論する忠夫(小)であったが、あっさりと子供であることを指摘され、悔しさに唸る。


「・・・・・ぅぅぅぅぅ〜〜〜」

「美、美神さん」

「な、なによ」

「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜」

「なんだか、泣きそうな目でこっちを見てるんですけど〜〜〜!」

「し、知らないわよっ!!本当に危険なんだから、連れて行くわけにもいかないでしょう!!」

「・・・・・・・ヒック」

「「・・・・・・・あ゛」」


「拙者は足手まといではないでござる〜〜〜!!うわ〜〜ん!!

「「・・・・・・・・・ぁぁぁぁぁぁっ!!逃げた!!」」


 別に逃げた訳ではない。本人曰く、「せんじゅつてきてったいでござる!」である。


 とりあえず窓から探してみたものの、元が半分とはいえ人狼である。「あっ」というまにその視界から消えている。

「・・・・・まいったわね。パイパーに狙われてるって言うのに」

「どうしましょう、美神さん。私が横島さん探しましょうか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいえ、一緒にこのままGS協会に行って、『金の針』を受け取る方が安全ね。さっさと切り札持って、パイパー倒さないと被害が広がっちゃう可能性が高いわ」


「そんなっ!横島さんはどうするんですか?!」


「・・・あれでも半分人狼なんだし、そうそう捕まったりはしないでしょ。あの逃げ足の速さといい、こっちがさっさと決着つければ、問題無いハズよ」


「・・・・・・・・でも、「いいから早く行くの!これ以上グダグダしてたら、それだけあの子の危険も増えるわよ!」―――はい」


 どこにいったか、そしてその捜索にいくら時間を取られるか分からない以上、とりあえず所員である忠夫のことを後回しにして、元凶を一気に叩き潰す作戦に出た美神たち。それでもその足取りには、振り切るには少々後ろ髪引かれる心配もあった。



「・・・・・・・・うまくいったでござる。これぞ我流「逃げたふり」!役立たずじゃないことを母上に誓って証明して見せるでござる!」

ごそごそごそ

 その後ろ500メートルほどのところには、頭に木の枝を括り付け、その妹分にそっくりの格好で美神たちの後をつける狼耳と尻尾の生えた子供の姿があったが。


―――コンクリートで覆われた街中で、どれほど目立ったことだろう。


「・・・・ったくあのハゲピエロ!!離れたとこからちゅらちゅらちゅらちゅらっ!!いいかげんうっとーしいのよ!!」

「でも、そのおかげで横島さんが見つかってないのが分かるんですから・・・」

「この結界石、買ったら一体いくらすると思ってんの!あの子の時給じゃ十年たっても払いきれないのよ!」

「そういう問題でもないような気が・・・」


 あの後、車に高価な対呪歌専用の結界を封じ込めたという、オカルト商品取り扱い「厄珍堂」の今月の目玉商品というひっじょ〜〜に怪しげな試供品を使い(以外にもその効果は高かったが。ちなみに厄珍、「たまたま」パイパーのうわさを「何処から」か聞きつけ、「たまたま」美神のところに商品を持っていったという。美神は美神で、「そんな怪しげな商品、テストもしてないんでしょ?今ならレポートとGS美神のお墨付きをあげるわよ。役に立ったらね」と只同然の値で強奪していった)、幾度となくあったパイパーの能力を使った嫌がらせに近い攻撃を凌ぎつつ、目的地である「バブルランド遊園地」にたどり着いた美神たち。


 この遊園地、バブルの崩壊とともにその建設計画も正に泡と消え、そのまま何年も放置されていたと言う曰く付きの物件であるが、今回のパイパーが目撃された地点もここである。強固な結界の張られたGS協会にて『金の針』を受け取り、それを使った『ダウジング』でも確かめてみたが、やはり反応はここであったことから
美神たちはその根城を断定。そのまま突入することとなったのである。ちなみに神父達は別件で除霊にでかけているらしく、連絡が取れなかった。


「ちくしょうっ!あの小娘ども、とうとうここまできやがったか!!なんとしてもアレを取り返して、またあの頃のように暴れまわってやる!」


 バブルランド遊園地の地下深く。そう呟くパイパーの周辺には大小様々の、それまでの被害者の顔の浮かぶ風船が浮かんでいた。


 その頃――

「・・・・・・・なんでござるかこの惨状は」

 そう呟く忠夫の前には、おそらく美神たちに対するパイパーの攻撃によるものであろうクレーターや、転倒した自動車、砕け散った街灯、折れ曲がった看板などが道に沿ってずっと続いていた。流石に時速100km近い速度で一般道を道交法を無視しすっ飛ばす美神たちの車には追いつけなかった忠夫は―――

「・・・・・・・・これを追いかければ、簡単に目的地にいけるでござるなっ♪」

―――そう簡単にのたまうと、再び自動車並みの速度で駆け出そうとし、


「・・・・・おや?」


 何かの声を聞きつけ、近くに横転しているトラックの荷台に近づく。

「・・・・・・・・・・何かがいるようでござるが・・・・わからん。こういうときは、父上の耳が羨ましいでござるなぁ」

 そのまま、立ち去ることもできずに、仕方なく救助活動をはじめる忠夫。

「困っているものを助けるのが、武士の役目と母上も言っていたでござるからなっ!・・・・・えいっ」

バコンッ!!

 どうみても歪んで簡単には開きそうに無いその扉を、あっさりと片手でこじ開けてみれば、中には

キランっ

 無数の輝く光点。

びくっ

 おもわず仰け反る忠夫に、中身「達」は――


「にゃっ!!!」×無数

 飛びつき、懐き、じゃれまくるのであった。

「こ、こらっ、拙者は狼なんだぞっ!!うひゃひゃひゃひゃ!くすっぐったいって!やめてー!!」

 山中に、半人狼の子供の笑い声が木霊した。


「―――よし、頼んだわよおキヌちゃん」

「はいっ!頑張ります!」


 遊園地内部、その中心にあるおそらく完成の際はパレードなどが開かれる予定であったのだろう広場で、美神から何事かを耳打ちされ

たおキヌは美神からペンチと細長い針のようなものを受け取ると空に舞い上がり、

「パイパーさぁぁぁぁん!早く出てこないと、この針折っちゃいますよぉぉぉぉっ!!」

「マテェェェェッ!!!」

 とりあえずパイパーを召還?した。

「お出ましのようね、悪魔パイパー!」

「お前らなぁぁぁぁっ!!人がせっかく色々と準備して下で待ってんのに、どうしてそういうことをだなぁぁぁぁっ!!」

 その人質をとるようなあまりと言えばあまりの行為に、おもわず隠れ家と言うか秘密基地と言うか、とりあえず本体のいるところから飛び出してきたパイパー。

「・・・・・・ハン、ばっかじゃない?だれがそんなミエミエの相手の罠に自分から引っかかりに行くかって〜の」

「だからっていきなりそういうことをするかぁぁぁっ!あれはお前らにとっても切り札なんだろうがぁぁぁっっ!」

「別に切り札を使わなきゃ勝てないって訳でもなさそうだしねぇ。あんた、悪魔にしてはセッコイし」

「・・・・・・・・・・ナ、ナンノコトカナ」

 パイパーが美神たちにやってきたことと言えば、不意打ち、反撃の仕様の無い遠距離攻撃、トラップ、そして多少の、かなりの高出力とはいえ、それこそ呪歌専用のはずの結界でも防げるような魔力を使った砲撃。

「あんた・・・・・・・エネルギー尽き掛けてるんじゃない?そうでなきゃ、あんなしみったれたことばっかりやんないわよねぇ?」

「当ったり前だ!そうでなきゃお前らやあの結界なんぞあっさり纏めて―――はっ!!」

「・・・・・語るに落ちるとはこのことね。さぁ、さっさと諦めて―――地獄に帰りなさいっ!!」

 あっさりと自分の内情をばらしてしまい、振り下ろされた美神の神通棍を慌ててかわすパイパー。


「・・・・・くそっ!このパイパーを舐めるんじゃねぇっ!!」

ぴーっ!!

 そう叫んだパイパーは、口笛を高く響かせる。

ちちちちちちちちちちちちちちっ!

 その音に呼ばれ出てくる大量の鼠たち。

「はーっはっはっはぁ!!いけ、我が眷属たちよっ!!」

「ちっ!厄介な物呼んでくれるじゃない!」

 現れた鼠たちそれぞれは普通の鼠である。しかし、その膨大な数と、パイパーによって制御された連携はまさにパイパー自体よりも厄介な壁となって、パイパーに決定的な一撃を決めることができない。

「そらそら、どんどんいくぞっ!!」

ぞぞぞぞぞぞぞぞっ!!

 まさに波のように襲い掛かる鼠たち。

「くっ!このっ!!」

ばしっ!ぼしゅうっ!

 美神も必死に神通棍棒や破魔札で応戦するも、その圧倒的な数の前にはどうしても劣勢を感じてしまう。

「はーっはっはっはぁ!!そのまま鼠どもの餌にしてやるわっ!!」


「ジョーダンじゃないわよ!こんな奴らにくれてやるものなんて一つも―――「・・・・・・・・・・・ぁぁぁぁぁぁ」・・・ぇ?」

・・・・・・・・・・・っ

「・・・・ぁぁぁぁぁあああああああ!」

・・・・・・・どどどどどどどどどど

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

ずどどどどどどどどどどっ!!!

にゃー。

わんわんわんわんわん!!

きしゃー!

かー。

ぱおーん。←?


 そのまま劣勢に飲み込まれてしまうかに思われた美神だが、救いの手は意外なところから現れた。

「たーすーけーてーーっ!!!」


 大音声とともにやってくるのは、一体何処から集まったのやら、と思うほどの獣たちの群。犬やら猫やらに始まり、爬虫類、鳥類、哺乳類。ここら辺りの山の生き物全部ではないかと思うほどの動物たち。

「な、なんだってんだ―――ずどどどどどどっ!!!

 パイパーとその眷属たちは、あわれその質量差だけでも数倍はあるのではないか、と思われるスタンピードの前に、はかなく散ったのであった。


「こわかったでござる!怖かったでござるようっ!!」
「よしよし、もう大丈夫よー」
「しっかしまぁ、異様な光景だったわねー・・・」

 狂乱の大暴走が終わった後、いまだにぐずりつづける忠夫から美神たちが話を聞いたところによると、横転したバスから猫達を助け出した後、どこからともなく野犬の群が現れて、一緒になって懐いてきたので、しばらく遊んでやったのだが――。ふと気付くと、道路の横の森から覗く、異様に多くの視線。

 その視線に怯えて、後ずさってしまえば、後から後から沸いてくる獣たち。思わず逃げ出し―――そのあとを何故か追いかけてくる彼らに対し忠夫はひたすらビビってしまい――気付けば、ここに着いていて、おキヌちゃんに抱きついていた、と言う訳である。ちなみに彼らは、そのままどこかへ走り去ってしまった。


「ひっく、ひっく」

「ほーら、もう泣かないの」

「まったく、あんた男の子でしょ。もうちょっと頑張んなさい」

「ぐしっ。うん。ありがとう、えっと・・・」

「あ、そっか。まだ記憶とか奪われたままなんだ・・・。そっちおキヌちゃん。私が美神よ」

「ありがとう!美神おねーさん!おキヌおねーちゃん!!」


 子供の純粋な笑顔で言われたそのお礼に、柄にもなく照れたようにそっぽを向く美神と、笑顔でど「ういたしまして」と返事をするキヌ。このまま大団円、といくはずだったが―――


「ふざけるなぁぁぁっ!!」

ずごんっ!!

「きゃっ!」

「なにっ!?」

「あぶないっ!!」

その真下から地面を突き破って現れたのは、もはやその力をほぼ全て使いきり、分身を作り出すことさえできなくなったパイパーの本体。そしてその手に掴まれたのは、またもや二人を庇ってその前に飛び出した忠夫であった。


「このくそがきがぁぁぁぁっ!!よくも、よくも邪魔をぉぉぉっ!!」

「ぎゃー!!でっかい鼠がしゃべってるでござるーー!!」

「「横島くんっ(さんっ)!!」」

「おおっと、動くんじゃねぇぞっ?確かにもう俺は終わりだろうよ、もはやここから逃げ切るだけの力もねぇ・・・だがなぁ」

ずどんっ!!   バキッ!!

「きゃぁっ!!」

「美神さん!」

「美神おね―さん!!」

 横島の腕を掴んでぶら下げながら、美神に魔力砲を放つパイパー。かろうじて神通棍を犠牲に防いだが、足に傷を負い、神通棍も折れ、もはや防ぐすべも避けるすべもない美神に向かって―――


「シネヤァァァァァッ!!」

 放たれようとする魔力砲。しかし――


「させるかぁぁぁっ!!」

ずぶっ!

 それを再び邪魔したのは、忠夫の腰にあった木刀の中から出てきた輝く刀身。それはパイパーの右目に突き刺さり、その手にためられていた禍々しい力を霧散させる。


「し、仕込み刀って・・・子供になんて物騒なものを・・・」

「このクソガキッ・・・最後の最後までぇぇぇぇっ!!」

 もはや魔力砲を放つ力さえなくしたパイパーはその牙の狙いを忠夫に定め


「鼠がっ!!牙で狼に敵うかぁぁぁぁぁっ!!」


 しかし忠夫は目に突き刺した仕込み刀をその膂力で引き抜くと、その勢いのままに、自分の腕を掴んでいる方のパイパーの肩に投げつける。たまらずその手を放し、また突然の眼の消失で距離感のつかめない巨大な鼠はその歯の狙いを外し―――

ごきゅり

「ガハァ・・・」

 逆に忠夫に喉元に噛み付かれ、何かが砕ける音とともに崩れ落ちた。


「ぺっ。あー、口の中がくっさいや・・・・」

 そう呟く忠夫の眼は、確かに狩をする『人狼』の眼であった。


「・・・・・ねぇ・・・おキヌちゃん?」

「・・・・・なんですか、美神さん?」

「・・・・・・・・・・もうしばらく、あのままの方が役に立つんじゃない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あは、あはは」

「「あはははははははははははははっ」」


 乾いた笑い声が、ついに完成しなかった夢の跡地に満ちていく。

 空には綺麗に半分に分かれた月が、顔を出し始めていた。


「長老ー?いますかー?」

「なんじゃー?」

「犬飼さんちのてれびがなおったらしいですから、いっしょにみにいきませんかー?」

「ええのー。いまいくぞー」

 里にはもはやだらけ切って、一気に10は老けたような長老の姿があった。やはり、人生多少起伏があった方が張りが出るようである。


「相変わらず器用じゃのー」

「忠夫君には負けますけどねー。それじゃ、えいっ」

ジッ・・・・ジジジッ

「―――――番組の途中ですが、予定を変更して臨時ニュースをお伝えしております!!突如街中に現れた時代劇のような格好をした男二人は、いまだその正体は不明、その姿が巨大な狼に変わったと言う未確認情報もこちらには伝わっています!!」


「「は?」」


「・・・・・・・・・ああっ!あれです、あの二人がその二人のようです!!警官隊による突撃が―――


どかんっ!!


―――だめですっ!!止まりません!!20人近い機動隊を一撃でふっ飛ばし、現在新宿区に向かって進行中!!進行方向の市民の皆様は、すぐに非難してくださいっ!!!」


「「・・・・・・・・・・・・・」」


「わーっはっはっはぁ!!ヌルイぞけーかんとやらっ!!これならあの妙な医者の方がまだましであったわっ!!」

「おーい、犬飼ー。そろそろいかないと日が暮れるぞー」

「犬塚、その手にもってるやつ、うまそうだな」

「いや、其処の店先に落ちてたもんで、つい」

「1本よこせ」

「ヤダ」

「「・・・・・・・・・・・」」

ガギギギギギギギギギッ!!!

「仲間割れです!!仲間割れをはじめたようですっ!!そしてどうやらあの二人の名前が判明しました、「犬飼」「犬塚」と名乗っているようです!!」


「「・・・・・・・・・・・・・おい」」


「いー加減にするでござるよ!!父上、犬飼殿!!」

「ああっ!!シローーー!!」

「む、犬塚のところの娘ではないか」

「こんなに回りに迷惑かけて・・・そして、いつになったら兄上のところにいくのでござるか?!」

「「さぁ?」」

「・・・・・・・・・・・狐」

「・・・・・・・・・最初っからそうしてればよかったわね」


「「くらぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」」

「「うおおおおおおおっ!!」」


ちゅぼーん!


「ああっ!あらたに二人の怪人が乱入した模様!!―――ここでいったんCMでーす」


―――ブチン。


「・・・・・ちょ、長老?」

「・・・・・・・殺ル。オレサマ、オマエラ、マルカジリ」

「長老―――?!」


 ふむ。誰だね君は。どうやら全く気付かずにこの空間へと入ってきたようだが、ここのマナーさえも知らぬのか?

 ほう、新入りか、ならばしょうがない。

 なに?新入りとはどういうことか、だと?


 ―――――――――ふむ、「あやつ」がついておる、か。

 なに、それはだな―――――


 ―――――――「やぁ」どうしたんだい、そんな、狐につままれたような顔をして。

 ―――――――どうやら、疲れているようだね、しばらく眠ると良い。戯言には惑わされないことだよ。

 ―――――――おやおや、なぜそんなに興奮しているのかね?

 ―――――――いいから、ほら、目を瞑ってごらん?段々眠くなってきただろう?

 ―――――――まったく、余計なことをしてくれる。いや、只の一人言さ。

 ―――――――それでは、良い夢を。


---アトガキッポイナニカ---


はいすいませんmaisenでございます^^

・・・・・・・長くなったんだかそれでもまだ短いと言うことに気付いてもうorz

そんなわけで、さくさくレス返しに―

柳野雫様>あっはっはっ。はい、獣医でてます。さてどこでしょう?w あの影法師は、一筋縄では行かないと言うか、そもそも勝手に動きすぎと言うかw

偽バルタン様>おいしいとこ取りのキャラって使いやすくていいですねー(マテ そしてシロタマとうとう真実に気付きました。あいつらに頼ってたら無理w

桜葉 愛様>アレで死ぬようなら、とっくに入院してますw そして・・・言うのが優しさってときもあるんですよ、きっと(マテ

ジェミナス様>心にもないこと、というか、実感の伴わない体験談、といった感じですかね。結局実戦に恵まれることのない環境にいましたから。 物足りなくなるような奴らですか、アレが?w

へのへのモへじ様>あいつらは遊んでいるつもりです。そしてとうとう最初の目的も忘れてますw 我慢できずに飛び込んだシロタマ。さてさて、来週の犬飼さんは?(マテ


 さて、明日は出せるといいなぁ、と思いつつお別れです。それでは^^ノシ

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