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▽レス始

「神父にラブソングを!! その2(GS+オリジナル)」

R (2005-07-02 00:32)
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まぶしいほどの朝日が、小窓から降り注ぐ。私は緩やかな寝覚めに背伸びをし、大きく息を吸い込む。窓の外から聞こえてくる小鳥のさえずりが、私の毎朝の目覚ましだ。いつものようにさわやかな朝日を満喫したあとは、入れたての紅茶と焼きたてのトースト。さくりと音を立ててのどへと飲み込まれていくその風味に、私はいつも幸せを感じている。そう、誰にも邪魔されないゆっくりとしたときの流れの中で―――


どたどたどたどたどたッ!
「ち、遅刻よ、遅刻ーーーッ!イヤーッ!!」
「君が目覚ましを壊すのが悪いんだろッ!!」
「だってしょうがないじゃない!うるさいんだからっ!」
優雅とは程遠く、必死にパンをくわえて走る男女二人が、ドアをぶち破る勢いで飛び出してきた。


GS唐巣 楽園大作戦!!
リポート2:唐巣くんの言えない事情


都内にひっそりとたたずむ、古めかしい家。外観を見るに、華族か何かの邸だったのだろうか。荘厳な造りが、広い庭に良く映えていた。明るい日差しを受け緑に輝く木々とは対照的になぜか怪しい雰囲気をかもし出すその家は、まるで眠っているように見えた。

時は1971年―――
天下のカップヌードルがようやくその姿を現す頃、唐巣和宏はGSの本免許を取得するために、都内のミッションスクールに通いながら、知り合いのGSの元に住み込みで修行する道を選んでいた。
住み慣れた旭川を離れ東京にやってきたのは、少しでも早くGS免許を取得するためだ。現行のGS資格制度では、「見習いとして100匹除霊すれば一人前」である。それならばより霊が多く、除霊の機会が多い場所で修行するのが一番いい。もちろん北海道にも除霊すべき霊はいるのだが、その数は東京と比べるとかなり少ない。そのため、唐巣は競争率も高いが仕事も多い東京を修行の地に選んだのだった。
それに、知り合いがいたというのも、唐巣が上京した大きな要因であった。その知り合いというのが―――


「セーフ!!あと5分遅かったら遅刻ね」
足元から砂埃を巻き上げ、スカートを翻して走りこんできた少女がまぶしそうに時計を見上げた。真っ白なワンピースに、真っ白な靴。少女は全身白尽くめの、さながら天使のようないでたちだ。白い服に映える、美しく長い黒髪が印象に残る。胸元には銀色のロザリオがきらりと輝いていた。
荘厳な雰囲気でたたずむ教会風の建物に掲げられた時計は、「8」の字の一歩手前で動き出すのを今か今かと待ち望んでいる。
「セーフじゃない!アザミくん、君はどれだけ目覚まし時計を壊せば気が済むんだッ!」
少女に一歩遅れて駆け込んできた青年は、息を切らせつつ大声で怒鳴った。少女とは対照的に上から下まで真っ黒な青年は、ずいぶん必死に走ったのだろう、額にはうっすらと汗が浮かんでいた。青年の言葉に、アザミと呼ばれた少女は不満そうに振り向く。
「なによ、唐巣が悪いんじゃない。夜中の仕事は入れないでって言ってるのに、深夜2時から除霊手伝わせるんだから!!」
「それは都合上仕方ないだろう!夜中しか現れない霊だったんだから―――」
「だからって、もうちょっとやり方があるでしょ!」
少女の言葉を口火に、ぎゃあぎゃあと互いの意見の応酬が始まった。誰もいない校門に、二人の言葉の応酬ばかりが響く。その騒ぎに気がついたのか、教室の窓からのぞく人影があった。神父のように見える初老の紳士だ。柔らかな表情が曇り「またか」と、大きくため息をつくその背中は哀愁に満ちている。彼がちらりと時計に目をやったと同時に、大きなチャイムが学校中に響いた。紳士はもう一度大きくため息をつき、窓際から去る。
「・・・あーーーーッ!!」
二人は、高らかに鳴り響くチャイムの音に我に帰って走り出す。
時を告げる役目を終えたチャイムは、一日の始まりを告げると同時に、彼ら二人の遅刻を告げていた。


「よっ!また遅刻か、唐巣」
「・・・・・・」
教師からお小言をいただいて肩を落として座っている唐巣の肩をポン、とたたいて現れたのはクラスメートの縦島だ。女好きで無節操、無鉄砲なおよそ教義とは縁遠い人間だが、なぜか唐巣と仲がいい。ニヤニヤと笑みをこぼす縦島を、唐巣はふふくげな表情で見上げた。
「間に合ってはいたんだろーけどな。また、例のアレだろ?」
「・・・ああ」
縦島がそういいながら視線を向けた方向には、今朝方唐巣と校門に駆け込んできた少女の姿があった。彼女も不満そうな表情をしながら友達に文句をまくし立てている。視線に気づいたのか、こっちを見るとフイッと顔を背けた。その様子に、唐巣はさらに機嫌が悪くなる。
「しっかしまー、お前と御厨ってまさに犬猿の仲って感じだな。同棲なんておいしいシチュエーションの癖に、勿体ねーよなー」
「おいしくもないし勿体無くもないッ!そもそも彼女がだ―――」
「だーッ!タンマタンマ!わかってるから!!教室の迷惑にもなるし!なっ!」
同棲という言葉に反応したのか、唐巣がものすごい剣幕で反論するのを、縦島が必死に止める。もうお約束になっているのか、教室は無反応で次の授業の用意や友達とのおしゃべりに忙しい。
縦島に止められて落ち着いたのか、唐巣は窓から空を眺めてため息をつく。その様子に、縦島も苦笑いをしていた。
ため息と同時に、ガラガラと音を立てて教室のドアが開き、神経質そうな教師がつかつかと教室へと入ってくる。とたんにざわついていた生徒たちは、自分の机にもどって押し黙る。縦島も慌てて自分の席に戻っていった。
授業開始か、ともう一度大きくため息をついた唐巣は、今はいない自分の師匠の事を考えた。
「・・・先生、いったいどこに・・・」
そのつぶやきは、空に吸い込まれるより早く授業開始のチャイムにかき消された。


唐巣が身を寄せたのは、東京に住む知り合いのGSの元だった。名前を御厨孝志(みくりこうし)といい、全国を旅すがら、霊障を解決するという変わったGSだ。唐巣が彼に師事するきっかけは旭川での出会いだった。御厨の貧しきも分け隔てないスタンスとどこか達観した雰囲気に惹かれ、彼の元で学ぶことにしたのだ。御厨も唐巣のことを気にいったようで、受け入れを快く承諾した。そして上京し、御厨の家に住み込みで働きながらGS試験に合格したのだ。
そこまではよかった。問題は、試験に合格したあとにあった。
師匠である御厨が旅に出てしまったのである。もともと放浪癖のある人だったが、唐巣が試験に合格するまでは一ヶ月のうち十日ほどいなくなっていたのが、合格してからというもの、十五日、一ヶ月、一ヵ月半とどんどん伸びていき、しまいにはほとんど家にいつかなくなってしまった。今では一ヶ月に一度手紙と除霊用の札をよこしてくるだけである。
実際のところ、GSを呼びにくい地方の人々を助けるために旅を続けていた御厨が、いつまでも東京の家にいるわけが無かった。唐巣の実力が除霊を任せるほどだと確認した後に、彼は本来の自分の仕事に戻っていったというわけである。
弟子を取っておきながら、いい加減極まりない。とはいいつつも、そんなふうに困っている誰かを一人でも多く助けようとアクティブに動き回る御厨に共感して指示しているわけだから―――なんともいえない唐巣であった。


「・・・する。多くのキリスト者はキリスト教における聖書の意義を強調し、それをキリスト教の原点と―――」
キリスト教史の授業を聞きながら、唐巣はあくびをかみ殺した。御厨がいなくなってから、もうずいぶん経つ気がする。その間、時折入る除霊依頼をこなしながら何とか今までやってきた。自慢するわけではないが、唐巣は見習いでもかなりの実力の持ち主だ。唐巣だけでも、入ってくる依頼の7割方は何とか対処することができた。あまりにも難しい依頼は、御厨の知り合いの六道家に助けを求めれば何とかなる。六道家も師匠不在の唐巣を気の毒に思ってか、割と良くしてくれていた。
幸い、生活費も除霊にかかるお札などの費用もまかなえており、問題は無かったのだが―――
「ふわぁ・・・っとと」
授業中に襲い掛かる睡魔には毎回辛い思いをさせられていた。見習いGSとはいえ、唐巣はまだ学生だ。除霊は夜中の仕事がどうしても多くなる。学生の本文を怠るまいとおもうものの、両立はなかなか難しい。
それに、GSとしての仕事よりもよっぽど大変なことが目の前にあった。ノートを取りつつ、ちらりと目をやるその先にいる少女。彼女の名は御厨アザミ。唐巣の師匠の一人娘である。
住み込みという事は、必然的に彼女と同居することになる。それが望ましいことでなくとも、だ。御厨と生活しているのならそれも我慢できたが、今ではすっかり同棲同然。おかげで妙な噂を立てられたり、暮らしづらかったりといいことが無い。
しかも、唐巣とアザミは水と油のような関係だった。二人は、何かとあれば意見が食い違う。縦島が「犬猿の仲」とたとえたのも、毎日戦争のように怒声を交わしているからだった。
そもそも―――と、今朝方の言い合いを思い出しながら、出会い方が悪かったんだ、と唐巣は苦い顔をした。普段は温厚な唐巣が、アザミにだけはついついムキになってしまう理由もそこにある。
その出会いというのは―――


「すみません!唐巣和弘君、います?!」
ガラッと大きな音がして、突然教室のドアが開かれた。延々と小難しい授業を聞きながら、半ば眠りについていた生徒達がいっせいに注目する。
ドアを開けたのは、黒淵メガネの冴えない女性事務員だ。慌てた表情で、息を整えながら大声で叫んだ。
「杉田という依頼者さんから緊急の連絡が入って、突然霊が暴れだしたと―――!!」
「なんだって?!」
その言葉に、唐巣は机を揺らして立ち上がる。
―――そんなはずはない。あの霊は何もしなければおとなしかったはず―――!!
予想外の出来事に、唐巣は一瞬動揺を見せる。そんな唐巣に活を入れるかのように、アザミが叫んだ。
「行くわよ、唐巣!」
「あ、ああ!」
すでにアザミは帰り支度まで整えてドアの前に仁王立ちしている。そんなアザミに、唐巣はずっこけた。
「き、君ねぇッ!これから除霊に行こうとゆーのに帰り支度なんてしてる場合かっ!!」
「いいじゃない!どうせ直行直帰でしょ。じゃ、センセ。そういうことで♪」
「お、おーいっ!!」
唐巣の静止も聞かず、さっさと姿を消すアザミ。そして注がれる唐巣への視線。
心地よく授業をしていたのを中断された教師が、恨めしそうに唐巣を睨んでいる。
「・・・先生。早退させてもらいます・・・」
そういうと、唐巣はさっさと出て行ったアザミを追って教室を後にした。
―――これだから彼女は・・・
朝から何回ついたかわからないため息をつきながら、唐巣は依頼者の元へと駆け出した。幸い除霊の道具はそろっている。
校門に着くと、アザミはすでに捕まえたタクシーに乗り込んで、カバンの中の除霊道具を吟味していた。
「遅いわよ」
「わかってる」
いつもの、何気ない会話だ。だがこの言葉を交わすたびに除霊に向かう緊張感が体を満たす。
「文京区○○まで。お願いします」
そういうと、タクシーはドアを閉めて走り出す。流れていく街の様子が遅く感じるのは、気持ちが焦っているせいなのだろう。
―――なぜ大人しかったはずの霊が暴走を・・・?
嫌な胸騒ぎがする。唐巣はここ最近、霊の動きが妙に活発になっているように感じていた。何かが起こる前触れなのだろうか―――
「どうしたの、緊張しちゃって」
「え、ああ、いや・・・」
不意に声をかけられて、唐巣は現実に引き戻される。隣では腕組みをしながらアザミが不思議な顔をしていた。アザミは、妙に晴れない顔の唐巣をぺちんと叩く。
「っつ・・・!何を―――」
「らしくないわね。唐巣のいいとこは後先考えず突っ走るところでしょ?どーせ“変だな”て考えてたんでしょうけど・・・そんなの後回しでいいのよ。今はアンタが頼りなんだから、気張ってよね」
「・・・・・・」
不服ながら、アザミの言うことにも一理ある。唐巣が「分かったよ」というと、アザミは少し満足そうに頷いた。
ともかく目の前のことを終わらせよう。
深く息を吸い込み、吐き出す。そして唐巣は手にした聖書に力を込める。
―――今回も上手くいきますように。

謎も問題も山積みのこの状況を早く終わらせたいと、帰ってこない師匠と気紛れな神に、唐巣はひたすらに祈るのであった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――
どうも、Rです。
オリジナルのキャラクターを動かすこと、世界観を作ること、話の流れ・・・それらすべての難しさにぶつかってしまい、思ったように上手く表現できないことにもどかしさを感じます。冗長で説明ばっかりで終わってしまった気が・・・。
しかし、結局若くっても神父は不幸なのでしょうか。話の方向が自然とそうなってしまいます(笑)
次回はもう少しシンプルに、楽しく出来たらいいなあと思いますので、よろしければ次回も目を通していただければと思います。
では、また。

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