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「神父にラブソングを!! その1(GS+オリジナル)」

R (2005-06-27 18:12)
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あたたかな昼下がり。明るい日差しが、木々を照らす。その木漏れ日が窓から差し込み、私はいつにもまして穏やかな気分で紅茶をカップへと注ぐ。注がれた紅茶は、美しい琥珀色に光を浴びて、きらりと輝いている。この教会とともに生きてからどれくらい経ったのだろうか―――。私はこの穏やかな時をとても愛している。そう、この静かで静謐な―――


「神父ー。お茶まだー?」
「のどが渇いたでござるよー!」
「おっ!美女発見ッ!ムフフ♪」
「き、君たちねーッ!!もーちょっと遠慮というものはできんのかね!遠慮はッ!」
相変わらず騒がしい教会に、唐巣の情けない叫び声が響いた。


神父にラブソングを!

リポート1:秘められた過去!


ここは唐巣の教会だ。何かとあればGSたちが集まって騒ぐことで、近所では有名である。何でも、何かにつけてリフォームだの工事だので騒がしいのは、魔物を呼び出す秘術のためだとか、教会は隠れ蓑で裏で汚い仕事をしているからだとか、興味本位の黒い噂が絶えない。噂の大半は唐巣自身に非があるわけではなく、集まる人間(?)のせいだった。そりゃあ、しゃべる野菜やイージススーツやゾンビや吸血鬼や云々のあげく、黒い噂の絶えない美神がやってきたりするもんだから、ご近所が治安維持に不安を感じるのも仕方の無いことであろう。「唐巣さんはいい人だけどねえ」と、町内会の会長に変な事件を起こさないようについこの間念を押されてしまい、なんだかやりきれない気分の唐巣であった。
そんなことよりも、と目の前の状況に唐巣は頭を悩ませた。目の前には、教会に備え付けられた長椅子に寝転びながらお菓子をほおばるタマモ、横島にじゃれ付くシロ、アルバムを見ながらよだれをたらしている横島がいる。せっかくの昼下がり、掃除終わりに紅茶でも飲んで一息つこうかと思っていた矢先に現れた、迷惑千万な来客であった。
彼らがやってきた理由は、どうやらお使いのついでらしい。夏も近づき日差しの強くなってきたこの季節、足休めに教会へよっていこうと三人組は意気揚々と教会の扉を開けたのだった。横島の隣にある大きな風呂敷包みから「美神事務所 厄珍堂」と書かれたタグがのぞいている。
はじめ三人がやってきたとき、一人で飲むのも味気ないと快く了承した唐巣であったが、すぐに後悔することになった。この三人、遠慮というものをかけらも知らないのである。お茶はねだるわ菓子はねだるわ、果ては暇だからなんか見せろという始末。しょうがないので以前見せたことのあるアルバムを引っ張り出して寄こすと、横島は早速美女漁りを始めたのだった。唐巣は失敗したなと密かに思いながらも、たまにはこんなにぎやかな昼下がりもあっていいだろう、と無理やり自分を納得させていた。
「それにしても―――すっくねーなー」
「え、なにが?」
ぺらぺらとアルバムのページをめくりながら、横島がつぶやく。そのつぶやきに、シロはもちろん、ごろごろしながらお菓子をほおばっていたタマモも反応したようだ。シロとは反対側から興味心身でアルバムを覗き込む。
アルバムにはさまれている写真には、ほとんど女性の姿が見当たらない。おそらくイギリスのオカルトゼミで撮ったのであろう集合写真のほかは、ほとんどが教授風の男性や神父、よくても若い青年と写っている写真ばかりである。たまーに女性も見かけるのだが、横島の思っているような若い美女ではなく、これまた少しお年を召しすぎた女性なのであった。こうなってくると、横島ではなくとも抱く疑問が浮かび上がる。
「し、神父・・・。神父ってまさかそっちのケが・・・?!」
「確かに教会ではそーゆーことも・・・って、何を言わせるんだね!私はノーマルだよ、ノーマルッ!!」
相変わらず墓穴を掘るノリツッコミで返事をする唐巣に、やや疑いのまなざしを向けずにはいられない三人だった。まさに、キジも鳴かずば撃たれまい。冷ややかな視線にたじろいだのか、唐巣は「まったく」とつぶやきながら大きなため息をつき、奥の部屋へととぼとぼと引っ込んでいった。
そんな唐巣をよそに、横島はぺらぺらとアルバムをめくり続けた。どうもめぼしい美女の写真はなさそうだなと思った瞬間、一枚の写真が目に飛び込んでくる。
「おおっ!これはッ!」
食い入るようにしてアルバムを見つめる横島の視線の先には、若い唐巣と長く美しい髪の女性が並んで立っていたのである。
若い唐巣は現在と同じく真っ黒な衣装に身を包んでいるが、その胸元が殺風景に見えるのは見慣れたロザリオが無いせいだろう。幼さすら感じさせるその表情は、今よりも少し厳しく見える。その隣にたたずんでいるのは、美しいというにはまだ幼く見える少女だ。ぱっと見、シスターのようにも見える地味な白い服に胸元には名札がついている。文字はよく見えないが、その様子から見るに学生なのだろう。彼女は快活そうな表情をこわばらせ、じっとこちらを見つめている。
「へーっ、これって誰?・・・見たことない顔だけど」
「んー、美神殿のお母上・・・というわけでもなさそうでござるな」
タマモとシロの両名が不思議そうに写真を見つめた。横島が今まで見つけた写真の美女とはまた違うようで、アルバムの次のページをめくってもその少女が写っている写真は無かった。この少女の写真はたった一枚のようである。
女ッ気のひとつも無かったアルバムに突如現れた美少女。しかもその隣には唐巣である。どう見たって『何かある』と考えるほうが自然だ。このとき、横島の思考には非常に単純な公式が作られていた。


若い唐巣+美少女=ナニがアレしてこーして(以下略)


「ぬぅぉぉぉぉぉ!!許せん!聖職者のくせにこんな美女とぅぉぉぉおおお!!」
血涙を流しつつ、激しい怒りに身を振るわせる横島に、シロとタマモはドン引きである。まあ、確かに引きたい気持ちもわからなくは無い。
「せ、先生!どーしたでござるか!!センセー!」
「ば、馬鹿だわ・・・」
「許せーん!貴様の悪行、この正義の使者横島が正してくれるわーッ!!」
そんなことを叫びながら唐巣が引っ込んだ奥の部屋に突撃する横島を、シロもタマモも止められようはずが無かった。向こうの部屋では「落ち着きたまえ横島君ッ!」「黙れこの鬼畜神父ー!」などといった喧騒が聞こえてきたが、シロもタマモももーいっか、とあきれた様子で耳をふさいだのであった。


「で、この写真が原因なわけだね?」
「そーっすね、ハハハ・・・」
ずり落ちたメガネを直しながら、唐巣は広い額に青筋を浮き立たせた。先ほどの騒ぎのおかげで、きれいに片付いていた部屋がすっかり散らかってしまった。さらには横島の突撃で額に小さなたんこぶをつけてしまった唐巣は、引きつった笑顔を浮かべている。対して横島たちは、いかにも気まずそうな様子で乾いた笑いを浮かべていた。この騒ぎのおかげで、またもや黒い噂が近所に飛び交うのだろう。まったく迷惑千万である。
唐巣は一度大きく深呼吸をして心を落ち着けると、アルバムの中から写真を取り出して手に取った。写真の中には、今ではすっかり懐かしい若き日の自分が写っている。そして、その隣には―――
「それで、その女性は誰なんでござるか?拙者も気になるでござるよ」
シロが顔色を伺いつつも、尻尾を振って唐巣に尋ねた。その問いに、唐巣は少し懐かしそうに写真を見つめて、ポツリポツリと話し出した。
「この女性の名前は御厨(みくり)アザミ、私の―――恩人さ」


1971年(昭和46年)―――
唐巣和宏、17歳。いまだ修行中の身であった。


―――――――――――――――――――――――――――
どうも、Rです。
今回は少しオリジナルを含めた唐巣神父の過去話を。
題名がちょっとこっぱずかしいのですが、「天使にラブソングを」からとってます。
なんとなくGS美神'78テイストで行きたいとおもいます。ちょっぴり青春な感じで。オリジナルが入る分、とっつきにくいとはおもいますが、できる限り原作風にしたいとおもいます・・・
前回同様6話程度で終わらせようとおもっておりますので、お付き合いくだされば幸いです。
それでは。

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