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「横島三世(プロローグ)(GS)」

おやぢ (2005-06-08 19:24)
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階段を上る影。
一歩一歩軋む階段を上る。
後ろ手を縛られているらしい、
階段に写る影がそうであることを示していた。
階段は13段目で終わっている。
白い世界が目の前に広がっていた。
足を置いていた場所が無くなる。
重力に従って身体は地面へと向かう。
首に掛けられていたロープだけで全体重を支える事は、人間には不可能である。
その男の生涯は幕を閉じた。


司法解剖の結果、死刑執行されたのはヨコシマ三世本人
であると結論された。


だが、信じようとしない男がいた。


真夜中の山道を走る1台の車。
車種はかなり古いブルーバード、博物館入りしてもおかしくない旧車だ。
無謀にもその旧車で雨の降る山道を猛スピードで駆け抜けていく。
車内だというのに茶系のトレンチコートを着たままで同色のソフト帽を
被ったまま運転している。
その男は必死の形相でブルーバードを走らせていた。
男は西条警部。ICPO所属の刑事である。
山道を登りきると、なにやら物の怪でも出そうな古城がそびえている。
臆することなく西条は古城の門を潜った。
かび臭い古城に入ると、迷うことなく地下室へ向かう。
石の階段を踏み外すことなく数段飛ばしながら走り降りる。
西条を迎え入れるかのように、階段には蝋燭が灯っていた。
革靴の足音だけが古城に響く。
最下層につくと行き止まりの扉を蹴り破り、古城の静寂さをも打ち破る。
地下室には洋風の棺桶が真ん中に安置してある。
気にする様子もなく西条は棺桶を開けた。
中を開けると、洋風の死に装束をまとい、それに不似合いな赤いバンダナを
つけた少年が胸の前で手を組まれて眠っていた。
西条は少年の顔を見ると口の端を歪めて笑った。
「は〜はっは!!ピート君にあやかって永遠の命を得ようってワケか?
だがな物事には“限り”ってヤツがあるんだ!!!」
手にしていた木の杭を少年の死体目掛けて振り下ろす。
少年の身体が杭に突き刺された瞬間、少年の身体が爆発した。
「どわーーーーっ!!!」
かなりの爆発で城の床や壁の石も瓦礫と化している。
西条は瓦礫の山に埋もれていた。
「んふふふ・・・あ〜〜っはっはっは」
埋もれている西条を誰かが笑っていた。
西条は瓦礫から身を起こし、声の方向を探した。
「あ〜〜〜〜〜!!!!!」
驚きの声が上る。
先程棺桶の中にいた少年が西条の眼前にいるのだ。
「あ〜いかわらず殺気だってんなぁ〜西条のとっつぁ〜ん。」
「よ・・・横島君??き・・・君は死んだんだぞ??」
瓦礫からどけて立ち上がると、横島と呼ばれた赤いジャケットの少年は天井の
梁に足をかけてぶら下がっていた。
「らしいなぁ〜・・・で俺も困ってんのよ。」
「確かに処刑された横島は本人だった・・・・それは断言できる。」
「簡単にいうなよ。そんじゃこの俺はどうなるんだよ。」
「そいつを確かめに来たんだっ!!」
近くにあった瓦礫を横島めがけて振りかざした。
横島はそれをかわすと地面に降り立ち、地下室から駆け出した。
西条も横島に続いて飛び出していく。
城の上へ上へと目指して駆け上がっていく2つの靴音。
吹き抜けのテラスで横島は巨大な蝙蝠傘の横に立っていた。
「その話は後でじ〜っくり聞かせてもらうわ。」
蝙蝠傘を開くと、傘ではなく黒いハンググライダーである。
横島は蝙蝠型のハンググライダーに飛び乗ると、射出用のレバーを引いた。
おそらくスプリング式の射出装置であったのであろう。
轟音を残すことなくハンググライダーは城の外へ飛び出していく。
「ほんじゃお達者で〜〜〜〜♪」
その姿はまさに蝙蝠であった。
城の外にいた蝙蝠たちも仲間と思ったのであろうか、
ハンググライダーに併走していく。
後に残された西条は、テラスの先端までいくと身体が揺れていた。
身体が熱をだしているのが自覚できた。
「や、奴は本物だ・・・・生きていた、生きていやがった・・・」
逃げられた悔しさは毛ほど感じなかった。
腹の底から喜びが上ってきているのだ。
おもわず口から笑みが漏れる。
「ふ・・・ふふふふふふ・・・・あーーーっはっはっは。」
顔に手をあて込み上げてくる感情を露にした。
警察官としてはあるまじき態度である事は百も承知だ。
しかし西条は笑わずにはいられなかったのだ。
自分の人生の目標、横島三世が生きている。
それだけで彼は自分の存在を示すことが出来る。
これ以上の至福は無い。
西条は顔に当てていた手を背広の中に入れ、ショルダーホルスターの
ベレッタM92Fを抜いた。
「貴様が死なんなら俺も死なん。こうなったら終わりはないぞ!
貴様の骨に戒名を刻んでやるぞ!!!!」
拳銃の射程外の距離にすでに横島は飛んでいた。
そんな事は関係ない。
当たる当たらないではないのだ。
これが俺とお前の戦いの始まりだ。
祝砲にも似た発砲を西条は横島に向けた。
古城に拳銃の発射音が響いた。


横島三世VS(とりあえずまだ秘密)

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