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「タイガーの挑戦  〜GS編〜(GS)」

MAGIふぁ (2005-04-19 12:45/2005-04-19 23:24)
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「それじゃタイガー、ご苦労だったワケ!」
「おつかれさまですジャー、エミさん。では、ワッシはこれで」

 いつものようにエミの除霊のアシストを勤め、事務所に帰ってミーティングをこなした後に家路へつくタイガー。
 その顔は、さっきまでとは違って明らかに沈んだ表情を浮かべていた。

「……ふぅ……」

 ふと立ち止まりため息をつくと、彼はサイフから一ヶ月前にようやく手に入れたGS免許を取り出して手にとった。
 特別枠のGS免許という制度が立ち上がるのを待っての発行だったため、実際に手に入ったのはGS試験から2ヶ月後。その間は本当に待ち遠しかった。
 いつものように何かが起こって、手に入らないのではないか?
 何度そう疑った事だろう。しかし今回は何事もなく、とうとうこの手に収まった。
 しかし今、そのGS免許証を眺めつつも、タイガーの表情は曇ったままだ。

「ワッシは…」

 このプラスチックのカードを手にするために、正に心血を注いで修行をした。必死に色々と考え、実行した。一度は命だって賭けて修行した。

「ワッシは…これからどーすればいいんですカノー…」

 そうまでして取得したGS免許。だがそれは彼に、何ももたらしはしなかった。強いて言えばエミが給料を上げてくれたが、それだけだ。
 いや、それはそれで嬉しいのだが、そのために頑張っていたわけではない。何かもっと、他のもののために頑張っていたはずなのだ。
 それが一体なんだったのか……
 目に見えた変化のない、免許取得前と変わらずにエミの助手をする日々にタイガーは疑問を覚えていた。
 手にすれば、自分も何かになれると思っていた。
 上司や友人たちのように、出番、じゃなかった光溢れる場所が待っている、と単純に信じていた。
 しかし、待っていたのは相変わらずな日々で。

「ワッシは…タイガーはしょせん、タイガーということなんですカイノー…」

 そんな真理を悟り、受け入れたその時、彼の前に一人の女性が現れた。

「何言ってんだよ。タイガーがタイガーだってのは、当たり前だろ?」
「魔理さん…」

 タイガーは苦笑した。彼女が言ったのは、おそらく単純にそのままの意味だろう。自分が言ったのは、タイガー寅吉は『タイガーというキャラ』から逃れられないのか、という自嘲だったのだが。
 まぁ、どちらにせよ同じ事か。タイガーは苦笑した。

「どうしたんですジャ?こんな時間に」

 今は除霊が終わった後、帰宅するような時間。霊が活発に活動する時間よりもなお遅い、深夜である。

「あんたを待ってたんだよ、タイガー」

 そう言って、どこかはにかむように笑う魔理。
 その笑みを見て、タイガーはようやく悟った。
 そうか。
 自分の光溢れる場所とは、ここだったのか。
 この少女の傍こそが、そうだったのか。

「あ……ありがとうございますジャー、魔理しゃん…」
「お、大袈裟だな。なにも涙ぐむこたーないだろ?」

 これからは魔理のために生きよう。手に入れた力も、GS免許もそのために使おう。
 タイガーは内心でそう決意する。
 しかし、結果から言えば………その決意だけではまだ、彼女には足りなかったりする。
 なぜなら…


「それで魔理さん、何か急な用でもあるんですカノー?」
「えっと、その、ね………………できちゃった♪
「はいーー!?」

 心当たりがバリバリにあったため、うろたえるタイガー。
 GS試験に受かった後、彼女がごほうびと言って、その、なんだ。いたしちゃったわけで。
 そして一回しちゃったら、若い男女の常としてのめり込んじゃったわけで。

「ほ………………」
「ホントだよ。あ、先に言っておくけど、産むから、わたし

 すでに確定ディスカー!?

「無いとは思うけど、堕ろせとか言ったら殺すからなー♪」

 そんな明るく言われても!?

「あ、それと明日、うちの両親揃って家にいるから、お昼でよろしくな!」

 ご挨拶!?しかも明日!!?

「じゃあタイガー。また明日なー」

 嵐のように現れて去っていく魔理の背中を見ながら、タイガーは悟った。


「なるほど……出番が増えるとゆーのは、こーしてトラブルも増えるって事なんですノー…」


 まぁ、間違ってはいない。


 <完>

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