GS横島忠夫の除霊日記 その1
左右に桜の木々が並んでいる、花はほとんど散ってしまい
緑の葉が目立っている。
その道をゆっくりとした足取りで一人の男が進んでいた
くたびれたスニーカーにGパン、よれよれの黒いジャケットを白いTシャツの上に羽織っている。
前髪によって表情は見えない伸ばした後ろ髪をバンダナで束ねているが、いかにも不審者的な格好だ
口をへの字にし、なにやら背中から哀愁を漂わせている。
(・・・・・・・・なぜだ)
「よこしま~~~」
(・・・・なぜなんだ)
「よこしま?」
「なんで大学に来てナンパがでけへんのや~~~~~~~~!!!」
「・・・・・・・・」
男の名を呼び駆け寄ってきた女性が、無言で横島に向けて手をかざし、炎を放った!
「ぎにァアアアアアアアアアアアアアあああああああ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」
「・・・ほんっっっとに懲りない奴ね、アンタは」
心底あきれた様な声で黒焦げな物体に蹴りを入れている女性は、パーカーにジーンズとラフな格好をし
金色の髪を後ろで九つに束ねている、年齢は10代後半ぐらいだろか。
「タマモ~、お前には兄を気使うという気持ちがないのか?」
「あんたこそ妹に恥を掻かせる様な事を大声で叫んでんじゃないわよ!」
男の名は横島忠夫、年齢22歳、横島除霊事務所所長である。
女の名は横島タマモ、年齢不詳(書類上では16歳)、現在美神令子除霊事務所に居候中金毛白面九尾の狐、妖狐である。
とある理由から横島家に養子として迎えられ横島忠夫の妹になり、横島の卒業した高校にこの春入学した。
ここは東都西大学、横島の元同僚である氷室キヌが在籍中今日はそのおキヌちゃんが所属しているオカルトサークルからの依頼だ。
「ふぅ~、タマモ」
「なによ?」
「ここは大学だぞ?」
「そんなこと判ってるわよ」
「い~や、わかっとらん!大学と言えば女子大生しか居ないんだぞ?
それなのに声を掛けちゃイカンと言うのは拷問以外のなにものでもない!」
「女子大じゃないんだから男子学生も居る「俺には見えん!」あっそ・・・」
「そんなことよりさっさと行くわよ」
「『そんなこと』でかたずける「もっぺん狐火くらう?」イエイエサッサトイキマセウ」
「場所は聞いてきたわ、おキヌちゃんの居るオカルトサークルはC棟の5階にあるそうよ」
「イエッサー!」
そう言って黒焦げの状態からさっさと回復しタマモの後に付いていった。
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「で?大学からの依頼って?」
「ん~・・・いや大学からじゃなくて、おキヌちゃんからの依頼だよ、聞いてないのか?」
「朝ごはんの時、いきなりミカミに横島がおキヌちゃんの大学いくからついてって監視しろって言われただけ」
「ぐっ、まあ依頼と言うよりはお願いかな?なんでもオカルトサークルで力の弱い悪霊を除霊するらしいんだけど立会いのGSがいるんだと」
「おキヌちゃん資格持ってるでしょ?なんで?」
「ああ、おキヌちゃんの他にも1人資格持ってるのはいるらしいけどな
なんか規則とかで外部の人間でないとだめらしい」
「そっか、確かにしょっちゅう除霊の真似事にされちゃあ迷惑よね」
「そゆこと、んで報酬として晩飯1週間作ってくれるそうだ、でもナンパしたら報酬無しなんだけどな」
「訳のわからない叫びはそのせいか・・・って、あんたまさか!おキヌちゃんをあんな事務所に1週間も通わせる気!?」
「んな訳あるかい!いくらなんでもあんな物騒な界隈におキヌちゃんを
1人歩きさせるわけないやろ!俺が美神さんの事務所に通うんや!!!」
「あ~びっくりした、いくらあんたでもその辺の常識はあったか・・・っとC棟はここね」
「お前は人をなんだと・・・・・」
氷室キヌは六道女学院卒業の年にGS資格試験に合格している、と言っても、彼女は数少ないネクロマンサーの能力の持ち主の為
試験は特別枠、能力の確認と質疑応答のみである、ちなみにおキヌちゃんの親友である弓かおりは主席で
一文字真理は4回戦準々決勝で弓に敗れるも合格している。
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「なあ」
「なによ?」
建物に入り階段を上りながら、横島はなにやら照れくさいのか、頭を掻きつつ
「あ~」とか「え~と」などと言いよどんでいたが意を決して
「あ・・・あああの!が、学校はどうだ?ト、トモダチはできたか?いいいじめられてないか?べっべべべ勉強ついてけてるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・ぷっ!・・・・あっはははははははははははは・・・・・・・」
タマモはしばらくキョトンとしていたが、横島の言ったことを理解するとお腹を抱えて笑い出した
横島も自分の言ったことに照れくさいのか、耳まで真っ赤にしてそっぽを向いている
よほどツボにはまったのか、笑いが止まらないタマモ、「お腹がイタイ~」とか「ふっ腹筋が吊る~」などど涙を流しながら
這いつくばって床を叩いたり転げまわったりしている。
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ようやく笑いの収まったタマモ、立ち上って深呼吸を何度かし落ち着いたようだ
「あ~なんか3年分ぐらい笑ったわ、いきなりなにを言い出すかと思えば・・・あらっ?、横島?どこいったの?」
周囲に横島の姿が見えず階段を上がりきると2人の人影が見える、一人は横島だ、もう一人は巫女装束に身を包み
腰まである艶やかな黒髪を先端付近で括っている、氷室キヌだ
横島が座り込みひざを抱えぐしぐしと泣きながらいじけているのを慰めているようだ。
「おキヌちゃん、どうしてここに?」
「あ、タマモちゃん、あはは・・・あれだけ大きな笑い声が聞こえたら判るよ」
おキヌは苦笑しながら答えた
「うっ・・・そんな大声で笑ってた?」
「ふふ、建物中に聞こえてると思うよ」
「む~、馬鹿兄貴のせいで恥かいたわ・・・・」
タマモはバツの悪そうな顔をしている。
「さ、横島さん、もう泣き止んでください、タマモちゃんも行きましょう、部屋はすぐそこですよ」
「「へ~い」」
後書き
皆様はじめまして紋次郎と申します
いつも皆様の作品を楽しみにしています。
なにをトチ狂ったかSSを書いてみたくなり投稿した所存でございます、なにぶん初挑戦ですので読みずらいかもしれませんが、ご指導、ご指摘いただければ幸いです、よろしくお願いします。