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▽レス始

「光との別れ、闇との出会い 1(GS+今は秘密+オリジナル)」

ANDY (2005-03-22 03:14/2005-03-22 03:17)
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人は、理解できないものに対して恐怖を持ってしまう。
太古の昔から人は恐怖を持って生きてきた。
深淵の闇が訪れる夜の世界には何があるのか?
息をしなくなった後、自分は一体どこに行くのか?
自分たちの命を意図も簡単に奪う天災はなぜ起きるのか?
そのようなさまざまな未知に対する回答を、対策を人間は講じてきた。
夜の闇を打ち消すために、人は闇を照らす光『火』を手に入れた。
自分がここにいなくなった後の世界に対して『天国』『地獄』と言う世界を作った。
突如として起こる天災に対して、自分たちが認知することの出来ない超上の存在『神』の仕業とすることで納得を得た。
これが、世間一般の人々が持つ認識。
超上の存在、『神』『悪魔』の存在が空想の中のものだと思っている一般人にとっては。
だが、その認識はある日圧倒的な暴力を持って崩された。
『悪魔』の中の筆頭である『魔王』が極東の島国に現れ、前代未聞の霊的災厄を振りかざしたのだ。
その災厄を見て、ある者は黙示録の始まりを感じ、ある者は世界の終わりを感じ、多くの者は絶望を感じた。
だが、その絶望も恒久的には続かなかった。
なぜなら、『魔王』は討たれたのだ。人間に。
拝み屋、祈祷師、などといわれる類の集団と見られていたGSに。
世界人類は狂喜した。
魔王といわれる圧倒的存在を、自分たちと同じ人間が滅ぼしたと言う事実に。
人間は無限の可能性を秘めていると言う実証に対して。
世界は歓喜に包まれ、また時を刻むはずだった。
確かに、悲しみも生まれた。
だが、多くの人たちはその悲しみを抱えても、明日を生きていこうと思った。
一般人たちは日常に戻っていった。
だが、日常に戻れない存在も確かにいた。
それは、極東の島国の民たちをまとめる存在達だった。
彼らは面白くなかった。
なぜ、自分の国でこのようなことが起こったのか。
なぜ、『魔王』を討ち取ったGS達は自国の兵力ではなく他国の兵力を使ったのか。
国を思う純粋な気持ちと、国際社会における自国の立場を憂い、彼らは鬱葱とした気持ちを持ったまま日常を演じた。
理解できない。そんなことがあってはならない。そのような傲慢な思いを持った彼らはことの真相を暴こうとした。
自分の益になるようならば国民全てに教え、そうでなかったならば自分のカードの一枚に加えるために。
だからこそ調べた。
GSとは何なのかを。
『魔王』を滅ぼした道具の存在を。
その結果が必ずこの国をよりよいものにすると妄信的に信じ。
そして、今回の事件の中心にいた存在『美神除霊事務所』を徹底的に調べた。
所員の生年月日に始まり、各所員の嗜好、身体データ、戸籍、そして能力を徹底的に。
そこから出た答えに彼らは驚愕した。
何に驚愕したと言うのか。
所長の脱税の金額に?
そんなのは自分たちも同じ穴の狢だ。マルサの管轄に口を挟みいらぬ怪我をするような趣味は自分たちにはない。
所員の一人の前歴が幽霊だったことか?
確かに驚愕だが、コールドスリープ装置を秘密裏に作っているのだ。科学の力で。ならば、霊力などと言う魔法のような領域の力を使えば似たようなことが出来たとしてもおかしくないだろうし、事実としてその所員が幽霊として存在していたと言う第三者からの証言も得ているのだ。声高に否定するだけ無駄だと言うものだ。
では、事務所に人工幽霊があることか?
それこそ、超AIだと思えば事足りる。超AIを十年計画で各主要施設に設置する予定なのだから。一般人に先に実用されているのは面白くないが。
彼らを驚愕させたのはそのような自分の理解できる範疇内や、理解の数歩先程度の話ではなかった。
その事務所のもう一人の所員の力だ。
かの事件のとき、彼は敵側にスパイとして乗り込んでいたとある。
彼の年齢などを見れば、人権擁護団体などは黙っていないだろうが、彼らの住むGSの世界は実力主義社会という。だからその点は目を瞑る。蒸し返したところであまり益がないからだが。
そのスパイ活動中に、彼は敵の一人と恋に落ちる。
このくだりを見た瞬間、多くの失笑が漏れた。
「まるで映画のようではないか」
誰かの漏らした言葉にみな共感した。
ストックホルム・シンドローム、という精神作用があるが、それが起きたのだろうと皆納得した。
そこまで報告書を読んだとき、多くの者は楽観視していた。
安物の冒険小説を読んでいるような気持ちだった。あまりにも使い古された物語をかの少年は刻んでいるのだから。
だが、報告書の次をめくり飛び込む報告に目をむいた。
その報告書にはこうあった。
『「甲」は敵女性態魔族「乙」の眷属を無力化するために、「甲」の能力に一つを「甲」の上司に譲渡し、雲ひとつない空から「雨」を降らさせた。『甲』の能力は自分だけでなく、天候をも自分の意思一つで自在に操れることが確認された』
 衝撃が走った。
 なんだ、これは。
 雨を降らせた?
 雨だと?飴の誤字ではないのか?
 みな報告書の不備だと思った。いや、思いたかったのだ。あまりにも理解できない内容に。容易に信じてはならぬ内容に。
 なぜなら、天候を制することが出来る兵器をかの大戦中、いや、東西の冷戦中の間某国が開発をせかしていた核に代わる最終兵器のコンセプトと同じなのだから。
 ありえるはずがない、いや、あってはならない。
 その場にいる全員の思いはそれだった。
 だが、真実はいつも残酷だった。
 彼は、横島忠夫の持つ能力は容易に天候を操作できる、との回答が出された。
 この回答が出た瞬間、横島忠夫の認識は『三流映画主人公のコピー』から『歩く最終決戦兵器』と認識されてしまった。
 これが、彼の、横島忠夫の運命の歯車の齟齬の始まりだった。


光との別れ、闇との出会い
        第一話  認識


「まったく、読めば読むほど理不尽な塊だな。君は」
 どこかの執務室然とした場所で、二十代後半から三十代前半ほどの白髪の男がいた。その男は手にした報告書を読み、読み終わったそれを机上に放り投げ、疲労した眼球を軽く揉みながらそう先ほどの言葉を発した。
 その報告書にはある存在についてのものであった。
 その存在の判断いかんでこの国、いや、世界の運命は変わってしまうといっても過言ではない存在の近況が記されていた。
「バックドラフト現象を生身で受けて生き残る?世の消防士の遺族が耳にしたらどう思うか。化け物じみた非常識さだな」
 報告書にあった一文を口にし、そんな一文を口にした自分に対して激しい疲労感が襲ってくるのを感じた。
 自分は柔軟な思考の持ち主だと自負をしていたし、他者からも柔軟な思考は好評だった。が、この彼の存在は柔軟やそういった言葉を無視したものだ。
 漫画やアニメなどならば「お約束」という言葉でどうにでもなるし、そのほうが読者や視聴者は食いつくだろうからそのほうがいいだろう。
 が、実際自分と同じ世界に住み同じものを見て感じていると思えば―
「寒気を感じるな」
―理解できないものへの原初の恐怖を感じずにはいられなかった。
 普通の人間なら死ぬような事象も、彼にとっては過激なギャグやコントの一部かのようになってしまう。
 あれか?彼は『笑いの神』の加護でもうけているのか?
 埒もない答えを頭に浮かべてしまったことに対し、男は苦笑を浮かべた。
 違う。一般人だと思って読むから疲れるのだ。
 ならば、最も理解しやすい兵器として読めばどうだろう。
……とてつもないほど清清しく理解でき許容できてしまった。
自立歩行する不条理な最終兵器。
その単語を頭に浮かべると同時に薄ら寒いものを感じずにはいられない。
あまりにも人間と言うカテゴリーを逸脱しすぎている。
危険すぎないか?いや、そもそも彼は本当に人間なのか?人間の面をかぶったナニかではないのか?
「……まだカードは不十分。この案件自体とてつもないほどデリケートだ。失敗は許されない。ならば、万全の状態で勝負に臨まなくちゃならん。今握っているカードはあまりにも不十分」
 そう呟きながら男は、部屋に備え付けの冷蔵庫から水の入ったボトルを取り出すと口にした。
 二、三喉を鳴らし、机に向き直るといつの間にか新たな報告書が置いてあった。
 その報告書に驚きの表情を浮かべることもなく、男は無表情にその報告書を読み始めた。
 そこに書かれている内容はある意味美談だった。
 無関係のときに読めば大いに感動するか、大笑いするかどちらかだが、今回においては笑うしかなかった。それも嘲笑のほうで。
「いきなりジョーカーが手に入るとわな」
 そう呟くと男は受話器を持ち上げどこかに連絡を取った。
「ああ、私だ。例の案件だが。……そうだ。……ああ。そのプランで行く」
 つながった先に指示を出しながら男は笑った。
 声質を変えることなく、それでも笑っていた。
「ああ、そうだ。『魔王殺し』を殺しに行くぞ」
 そう相手に伝えると、男は受話器を元に戻し、部屋を後にした。
 机の上に残された資料にはこうあった。
『横島忠夫 純粋な人間の可能性』『金毛白面九尾の狐の生存確認と現状についての報告』『都市部麻痺怪奇ガス事件の真相』
 これらの資料が意味するものは何なのだろうか。

「はぁ〜」
 夕日を眺めながら横島はらしくもないため息を吐いた。
 彼の傍らには砂糖が盛られた紙と、ミネラルウォーターのボトルがあった。
 自分を救ってくれた最高の女の終焉の地であるここは、下界から隔絶された場所であり、唯一横島が弱音を吐ける場所でもあった。
「まったく。どうしたもんだかな〜」
 そう呟くと同時に横に寝転がる。
 地上三百メートル以上だと言うのに横島に吹き付けられる風は優しく、撫でるように触れては去っていた。
 その心地よさに、この一種の聖域めいた場所に感動をすると同時に、まだ彼女に後押しされている自分に気づき苦笑した。
「なあ、聞いてくれよ」
 その後押しを甘んじて受けて横島は口を開いた。
「お前が逝ってから、もう四十九日も無事に済んだって言うのに、俺も色々と落ち着いてきたって言うのに、周りがまだお前のことを腫れ物のように扱ってるんだ。意識的にお前のことを忘れようとしてるんだぜ。誰もお前との思い出を共有しようともせず、思い出の中のお前を消そうとしてるんだ。……多分、俺を気遣ってるつもりなんだろうけど、正直つらいんだわ。今の状況。なあ、俺はどうしたらいいと思う?」
 沈み行く夕日に問いかけるが、夜の闇が訪れても風は何も答えてはくれなかった。


「さて。作戦を開始する。深く、静に開始せよ」
 白髪の男はそう号令を飛ばすと同時に、男の前にいた十数人の人影は音もなく消えた。
 それを見送ると、男は手に持つ書類を掲げ、ジッポで火をつけその場を後にした。
『横島忠夫 完滅計画』とそれには書かれていた。

書類が燃え、火にあぶられる音ともに、どこからかいびつな歯車の音が響いていた。
 何かの嘲笑する声が響いた。
                       To be continued・・・・・


―あとがき―
 ANDYです。二回目をお送りさせてもらいました。
 どうだったでしょうか。
 読みづらいところも多々あると思います。
 そのようなところがありましたら、どしどしと指摘してください。
 では、また次回に。

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