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「若き竜の涙1(GS+いろいろ)」

ハネぽん (2005-03-19 17:59)
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若き竜の涙1 
運命の出会い


林の中に一人の少年が現れる。
その少年は中国風の服を着て、腰には剣があった。
そして一番に目を引くのは、両耳の上にある角だろう。


「いたたた。ここはどこじゃ?」


この少年の名は天竜童子。
竜神王の一子にして後継者である。


その天竜童子が何故一人でこのような場所にいるかと言うと、一人で人間界に来た所を魔族に襲われたからだ。

事態はそれだけでなく、異界に流されるというおまけが付いた。


「やはり異世界なのか?」


王の後継者である天竜童子の言葉は酷く冷静だった。
内心ではパニック状態だったが、長年の教育のお蔭で感情を外に出したりはしない。


「何事じゃ、あれは?」


天竜童子は林の下の方から人の声が聞こえる事に気が付いた。
そして、その声が争っているという事を彼に教えてくれる。


「てめえ、俺らが誰だと思ってるんだ」
「燃やすぞ」


どうやら三人の男が、男と少女を脅しているようだ。


そう状況を判断した天竜童子は、脅されている二人を助ける事にする。
これは彼が受けてきた教育の影響でもあった。


「ぐわっ!」


天竜童子が介入する前に三人のうち一人が放った炎で、少女を守るように立っていた男が地面に倒れこむ。


どうやら三人の内一人は発火能力者という事を頭で把握し、心で行動した天竜童子。


「さて楽しませてくれよ」


少女に迫る男達の前に、天竜童子は立ち塞がる。


「この余が来たからにはもう安心じゃ」


そう天竜童子は怯える少女に優しく笑いかける。


だが天竜童子の姿は10歳程の子供であり、どう見ても少女より年下だ。
少女はまったく安心する事ができなかった。


「俺たちに歯向かった事を、あの世で後悔しな!」


突然、先ほど炎を放った男とは別の男が炎を放つ。


突然迫ってきた炎に、天竜童子は避けられずに直撃してしまう。


「はは、俺達に歯向かうからだよ」
「何て事を!まだ子供だったんですよ」
「風牙衆ごときが、俺たちに意見するな!」


男に怒鳴られた少女は黙り込んでしまう。
この男女の間には、一方的な身分の違いがあるのだ。


「びっくりしたの」
「「「へ」」」」


男達は間の抜けた声を出してしまう。
必殺の炎を受けた子供が、無傷で立っているのだ。
驚くのも無理はないだろう。


「お主ら、この様な女子をどうするつもりじゃ」
「うるせえ、こいつは俺らの奴隷なんだよ」
「たとえ臣下の者に対してでも、この様な行いが許されると思っておるのか?」
「当たり前だろうが」


これを聞いて天竜童子は、この男達と戦う事を決める。
彼は正義を守る神であるし、この様な悪行を見過ごせる性格では無いのだ。


「余は寛大じゃ、命だけは助けてやるぞ」
「は?」


男達が天竜童子の言葉を正確に理解する前に、天竜童子は行動を始めていた。


左端の男の背後に回り込み、その顎に鞘に入れたままの剣を打ち下ろす。

その衝撃で男は地面に倒れ付す。


「なに?」


仲間がやられても、残りの男達はまだ事態に反応できていなかった。


「ふっ」


気合と共に、天竜童子は真ん中に立っていた男の腹に剣を叩き込む。
勿論まだ鞘に入ったままだ。
この腹に剣を打ち込まれた男も、あまりの激痛に動けなくなってしまう。


「くそ!このガキ!」


最期に残った男はようやく事態を把握し、天竜童子に炎を放つ。


だが遅かった。


男が放った炎を飛んで避けると、そのまま天竜童子は剣の柄で男の頭を打つ。
落下速度もプラスされた攻撃に、男は気を失う事しか出来なかった。


「大丈夫じゃったか?」
「はい、大丈夫です」


男達が負けたのを知っても、少女に笑顔が戻る事は無い様だった。


「余は天竜童子、そなたは?」
「天竜童子?変な名前」


こう言われた天竜童子は、かなりのショックを受けた。
今の人間界では、自分の名前が変な事はTVを見ているから知っていた。
が、他人から面と向かって言われると、想像していた以上にショックだった。


「天竜じゃ、そう呼べ」
「は〜い、それじゃ天竜ちゃん」
「ちゃんを付けるのも止めてくれ」


天竜ちゃんと呼ばれたのは恥ずかしいが、そう言った少女にはほんの少しだが笑みがあった。
それだけで、天竜童子は嬉しかった。


「私は鈴。風見鈴」
「鈴というのか。
して、鈴はどうしてこの様な者達の臣下をしておるのじゃ?」
「昔から私達は神凪一族の奴隷なの」
「そうか」


天竜童子は鈴の境遇に同情してしまう。
ただ奴隷だからと、主人から理不尽な暴力を受ける。
それは天竜童子には許すことのできない行為なのだ。


「そうじゃ、鈴」
「なに?天竜ちゃん」
「余の臣下になれ」
「はい?」


突然すぎる展開に、鈴はついていくことが出来ないでいる。


「この様な者達の臣下を辞めて、余の臣下にならんか?」
「無理だよ。そんな事できっこない」
「大丈夫じゃ。余は竜神族の主、竜神王の後継者じゃ。
 これくらいの事はできる」
「竜神王?何、それ?」


竜神王は、この世界とは別の世界の神だ。
この世界の住人である鈴が知っている訳が無かった。


「神ですよ、この世界とは別の世界の」


声が突然空から響いてくる。


「もっとも、この世界は魔がいても神はいないようですが」


そう、この世界には神はいない。
基本的にこの世界の神は、事件がおきた場合だけ出張してくるのだ。


「お主、あの時余を襲った魔族の一鬼か」
「覚えていてくれたのかい?」


忘れるはずが無かった。
この魔族とその仲間に襲われて、天竜童子はこの世界に流されたのだ。


「他の魔族達はどうしたのじゃ?」
「離れ離れさ。この世界にはいるんだが、離れた場所に転移したらしい」


人間の男に翼が生えたようなその魔族は、芝居がかった動作で両手を広げる。
まるで己の悲劇を観客にアピールするように。


「それで俺は仲間を捜さなくちゃならない、さっさと死んでくれ」


そう言った魔族は、天竜童子に霊波砲を放つ。


「きゃああっ」


咄嗟に天竜童子は鈴を抱き上げ、迫り来る霊波砲を避ける。


霊波砲は地面に当たり、地面を深く抉り取る。


地面に倒れていた男達も、どうやら生きているようだ。
手や足が変な方向へ曲がっているが。


「この!」


天竜童子は魔族に霊波砲を撃ち返す。
その霊波砲は魔族のそれよりも、数十倍の出力があった。


「ふん」


しかし天竜童子の霊波砲は、魔族のいない空間を撃ち抜いていった。


「やはり自分の力を制御できていない様ですな、殿下」

天竜童子は神族の中でも、力の強い竜神族の王子だ。
その力は強大だったが、それを制御する技術が天竜童子には無かった。


「さあ死んでください!」


再び魔族は霊波砲を放ってくる。

その霊波砲を、天竜童子は鈴を抱いたまま避ける。


「無事か、鈴?」


天竜童子は腕の中にいる鈴に話しかけるが、鈴からの返事は無かった。
どうやら、気を失ってしまったようだ。

気を失った鈴を、天竜童子は優しく地面に下ろす。
そして自分は鈴の前に立ち、剣を抜き上空の魔族と対峙する。


「これで終わりです!」


三度、魔族が霊波砲を放ってくる。

後に鈴がいる為、天竜童子は避ける事ができない。
構える剣で斬るつもりなのだ。


ごおおおお


しかし霊波砲は天竜童子に当たる前に、まるでタイミングを計ったように横から飛来した炎の塊により相殺される。


霊波砲が相殺したさいの衝撃音が消えると、天竜童子の前には一人の少年が立っていた。


「大丈夫か、坊主?」


そう目の前の少年は声をかけてくる。


「大丈夫じゃ」


坊主と呼ばれた事が気にいらない天竜童子は、なげやりな返事をする。
目の前の少年とは、見た目の年齢は変わらない。
しかし、天竜童子は700歳なのだ。


「そうか」
「お主、余より年下で余を坊主と呼ぶでない」


言葉に今の自分の気持ちを入れ、天竜童子はこの少年に抗議する。


「それじゃ、何て呼べば良い?」


少年に自分の気持ちが伝わったようだ。

天竜童子は自分の名を教えようと思ったが、先ほどの鈴の反応を思い出した。


「・・・天竜じゃ」


と、自分の名前を略して教える事にする。


「天竜?」


怪訝な顔で少年は天竜童子を見てきたが、少年は何かに気が付いたのか納得した顔になった。


「それじゃ天竜、あいつの相手は俺がする。天竜はその女の子を守れ」
「あやつの狙いは余じゃ。だから余が相手をする」
「天竜は空の敵と戦えないだろ。俺に任せろ」


この少年の言う事は大体正しかったので、天竜童子は不本意だが任せる事にする。


「それじゃ、行くぜ!」


少年は気合と共に、妖魔に炎を放つ。

が、妖魔は簡単に炎を避けてしまう。


「そりゃ、炎は風と違って見えやすいからな」


少年は愚痴を漏らすが、天竜童子にはその意味は分からない。
風は見えずに、炎は見えるのは世間の常識なのだから。


「まいったな、こりゃ」


無数の炎で攻撃しても魔族の結界で防がれ、結界を破る炎は簡単に避けられる。
天竜童子と同じく、この少年にも魔族への決定打が無いようであった。


「口だけじゃな」
「五月蝿い、黙ってろ!」


天竜童子は小声で喋ったのだが、この目の前の少年には聞こえたらしい。


「ふぅ、仕方ないのう」


自分も先ほどまでは何も出来なかったが、今は違う。
天竜童子は、霊波砲は使えないが神剣がある。

この神剣には霊力が籠められている。
相手が上級魔族でも、その威力は無視できるものではない。
この神剣は、霊力を斬る事ができるのだから。

この神剣だけでは、空を飛ぶ魔族と戦う事はできない。
しかし、天竜童子は空を飛ぶことができる。
目の前の下級魔族でさえ飛べるのだ、上級神である天竜童子に飛べないはずが無い。


そして何故、先ほどまでは飛べなかったかというと。
天竜童子の後で気を失っている鈴の為だ。
天竜童子は鈴のそばを離れる訳にはいかなかった。
何時、魔族が鈴にその牙を向けるか分からないからだ。

しかし、今は魔族から鈴を守ってくれる少年がいた。


「ふっ、俺の実力に恐れをなしたか」


気が付くと、何時の間にか魔族はいなくなっていた。

天竜童子は少年の言葉に眉をひそめるが、その表情を見て何も言えなくなってしまう。


「・・・そうだの」


この言葉しか、天竜童子は少年に言えなかった。
悔しがっている、この目の前の少年には。


「天竜、おまえ行くとこ無いだろ」

そう少年は唐突に話しかけてきた。
天竜童子は自分の行く場所が無い事を知っている少年を不審に思うが、助けてくれた事実があるので味方と判断する。


「そうじゃが、何故分かる?」
「氣でな。天竜は異界の神だろ」
「そうじゃ」


氣という言葉は知らなかったが、神という事は事実なので天竜童子は少年の言葉を認める。


「俺の家に来ないか?」


この少年の言葉に、天竜童子は迷ってしまった。
たしかに魅力的な誘いだが、自分は魔族に狙われている身だからだ。


「そっちの女の子も、ここに寝かせておけないだろ」

こう言われると、天竜童子は頷くしかなかった。
このまま鈴を置いては行けなかったし、彼は鈴を救いたかったのだ。


「頼む」
「素直でよろしい。
それと、俺は三咲和人だ。
よろしく、天竜」


こうして天竜童子は気絶している鈴を連れ、三咲和人の家に行くのだった。


「また女の子を拾ってきたの?」


和人の家で最初に出会ったのは、鈴より少し年上の少女だった。


「拾ったのは俺じゃない」

そう反論している和人を助けてやろうと考えた天竜童子は、自分が拾った事を教える事にする。


「余じゃ」
「・・・そう」


この少女は納得いかないように見ていたが、見られている天竜童子は堂々とした態度でいた。

神である天竜童子にとっては、鈴を拾った事はヤマシイ事ではない。
人が動物を拾うような物であった。


「ほら、いくぞ」
「わかった」


そして天竜童子が連れてこられた部屋では、二人の少年と一人の少女がケーキを食べていた。


その様子を見て、和人は驚いている。
何か天竜童子の知らない理由があるようだ。


「それで和人、その二人は?」
「ああ、まだ紹介して無かったな」


ケーキを食べている三人で、年長者の少年が天竜童子の事をしきりに気にしていた。


「それが、事態が複雑になってな」


和人が自分の事を説明しているのを聞きながら、天竜童子は鈴を見ていた。


どうしても、天竜童子は鈴が気になるのだ。
それは恋愛感情と呼べるものではなく、兄が妹を心配する気持ちに似ていた。


まだ、この時は。


おまけ

「美神さん、見鬼くんが反応してます!」
「本当、おキヌちゃん!?」
「これを」

確かに、おキヌが持っている見鬼くんは反応していた。

「こっちね!」

美神は見鬼くんが指す方へ行こうと、車を発進させようとするが無理だった。
まだ目の前に車が立ち塞がっているのだ。

「さっさとどきなさい!」

改めてそう叫ぶが、目の前の車はどきそうにない。

「こっちがどいたら良いんじゃ」
「何言ってんのよ、横島君。それじゃ私が負けたことになるでしょ!」

美神は自分から道を譲ろうとはしない。
美神の中では、その行為は負けと同意義だからだ。

「どっちでも良いから、早くしてください!」

おキヌの悲鳴のような言葉でも、美神の姿勢を変える事はできなかった。


「我々がどいたらどうでしょう?」
「世迷言を。そしら私が負けた事になるじゃないのさ」
「はぁ」


美神達の前に立ち塞がっている涼子も、道を譲る気は無いようであった。


「あ、反応が消えました」
「そんな。
これも前の車がどかないから!」


果たして美神達は天竜童子に会えるのか、それはまだ不明である。


あとがき

転生日記GS美神編 GSサイドでした。
若き竜の涙 とタイトルがありますが、最初は転生日記番外と考えていました。
こちらに投稿する為に、今のタイトルを考えたんです。

その為、GS美神の中では天竜童子が主役です。
美神達はポスト雪之丞となります。

しかし、主役の天竜童子が元の主人公と一緒にいるので次回は美神達を中心に書きます。
天竜童子が元の主人公から離れたら、その時は今回のように天竜童子中心になります。


最期に、このSSとよろずにある転生日記を両方読んでいただいた方に

同じ内容を読んでいるかもしれませんが、書きます。
このSSは霊力などGS美神の呼び方をしていますが、転生日記ではすべて氣と呼んでいます。
これは世界が違う為で、呼び方が違うだけで同じものです。

その他にもあるかもしれませんが、このGSサイドではGS美神の呼び方や考え方で書いていきます。

そして、あくまでもGS美神のSSとして書いていきます。


レス返し
千鳥足通りすがり様
>他にも色々クロスしてるとのこと、大丈夫なのかと
今の所は大丈夫です。今後もそれぞれの作品を壊さないように頑張ります。

>って、まず「転生日記」を読まねばいけませんな
読まないでも大丈夫なように書きますが、読んでもらったほうが説明は楽で良いです。
一応、次で 風の聖痕 の設定を作品中で書きますんで

>コブラだったら明らかな道路交通法違反……?
これは転生日記で書いたんで、こちらでは書かなかったんですがコブラです

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