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「彼女たちのひとりごと4-2 おかえりなさい (GS)」

S (2005-03-11 15:01)
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最後の一欠片は、消え入りそうなくらい儚くて まるで蛍のようだったと

ヒャクメがそう言って泣いていました


ただ、無意味に文珠を手のひらに浮かべて 砕け散るたびに、また一つ

命を削っているようで


もう、見ていられないのね


そう言って逃げようとしたヒャクメの頬を張り飛ばしました

私は冷酷なんでしょうか いえそうじゃないはずです

ヒャクメは、弱い子です そして、優しい子です 目を逸らしても、その眼がある限り、横島さんを見てしまうでしょう そして傷つくんです

見捨てた自分を悔やみながら、千の目から涙を零すのでしょう

横島さんは、彼女を忌避したりしないのに そんなことになったら、二度と顔を逢わせられなくなっちゃうでしょう?

私 は、大丈夫です

これでも、武神の端くれですから

剥ぎ捨てた逆鱗から血が止まりませんが、これくらい、どうということはありません

ああ 懐かしいですね

妙神山でのことを、思い出しました

今ならきっと、あんなことにはならないでしょう


……パキリ


音がするたびに、首をすくめるヒャクメ 彼女の眼を通して、私も同じものを見ています

一つ、文珠が散るたびに、握り締めた爪が手のひらに食い込んで……何だか、肉が凄いことになってます

剣が握れなくなるのが少し心配ですが


……パキ リ


……本当に、これでよかったんでしょうか

本当に、これしかなかったんでしょうか?

横島さんを封印したくないというのは、私一人のエゴだったんでしょうか?

もう剥がす逆鱗もありません

そういえば あれって、嘘だったんですね 竜は逆鱗を失うと死ぬって

ただちょっと痛いだけでした


「……あ」


っ! どうしました、ヒャクメ?


「……あれ……あれが、最後の一つなのね」


見えないほどに儚い けれど、たしかにそこに


サラリ と、音もなく光になって解けていく 横島さんは、ただそれを見詰めていました


ヒャクメと二人で、温泉に入れてあげました

とてもとても疲れている横島さんは、半分眠っているようでした

身体が用をたすことも忘れてしまっているらしく、お湯をつかって出させてあげました


10日もしたら、そのあたりのことも思い出してくるのねー


本当に、赤ちゃんみたいですね

ただ、ときどき呼吸まで止めてしまいそうになるので、目が離せません


……本当に、楽しかったですよ

みんなにないしょで というのが、いけないことをしているみたいで、ドキドキしましたし


寝言

それでも、横島さんがもう一度声を聞かせてくれたときは、我慢できなくて泣いてしまいました


そして……


「……あ……れ?……ゅうき さま?」

くそ なんだ 頭がぼうっとしてる

そんな俺に、心配そうにでもにこにこと優しく微笑んでくれているのは、随分懐かしいような あれ変だな頭の下に絶妙の張りと柔らかさいやまさかだが覚えている美神さんの感触と比べてしまうバレたら本当に切られるぞ


「すいません、つい力が入りすぎてしまいました」

まだ痛みますか?


「いやっ! まったくそんなことはありませんっ! あ、でもすっげぇいた……くはないけどもう少しこのままでいたいなぁなんてああっ俺の馬鹿なんでそんな正直なことを!」


くすくすと微笑みながら、そっと俺の頭の下から足を抜いて

……あ

本当に、もう少しだけ、していたかった

振り払うように、よっと勢いを付けて起き上がる
身体を確かめて……大丈夫だ このくらいならいつものこと
気絶していたのも、精々10分かそこらだろう


「どうしますか? もう一本?」


チャキ と、神剣の切っ先を俺の方に


「い、いやっ! もう結構です! ほら、パピリオの奴とも遊んでやらないといけないしっ」


くすくす

ああ、なんだ
最初からここで解放してくれるつもりだったんだ
奇麗だけど怖いお師匠様から、奇麗で優しい、いつもの小竜姫さまに


「では、この続きは夕食の後にしましょうか」


ぐふっ


もう大丈夫なのねー 次に目が覚めたときは、元の横島さんに戻ってるのねー


そして、私たちの手のひらには、それぞれ文珠が一つずつ


アタシはきっと黙ってるなんてできないから、これを使うけど……小竜姫なら大丈夫だと思うのー


お願いですから、そうやって誘惑するのはやめてください

私は……自分を嫌いになりたくありませんから


分かったのねー それじゃあ、アタシはもう行くから


修練場の床の上に、大の字になってる横島さん


本当に、帰って来れたんですね ここに

そっと、足の上に、横島さんの頭を抱き上げる


そのまま


「……ぅ」


あ もう、目が覚めますね

握っていた文珠に、『忘』の字を篭める


きっと、私も驚くでしょうね 気がついたら横島さんに膝枕してるんですから


くすっ


「役得ですよ その代わり、上手くごまかしてくださいね」


そして、私は文珠を飲み込んだ


          Fin

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