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▽レス始

「彼が選んだ道−20−(GS)」

リキミ・スキッド (2005-03-05 22:40)
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「ほぅ。私の城に侵入者か。これまた珍妙な客だな。」
「そういうでないブラドーよ。かれこれ、何百年ぶりかの再会ではないか。」
「ふむ。ついこの前に現れた能力者どもに続いてカオス、貴様が訪れるということは、時が動き出しということか?」
「いや、なに。お主の息子と会ってな。お前を倒したというから本当かどうか見に来たんじゃ。」

そう言ってカオスはこの城において、絶対の君主として玉座に君臨するブラドー伯爵を見上げた。
ブラドーは過去と比類なき力を誇ったまま、玉座で不敵な笑みを浮かべている。

「あの馬鹿息子に花を持たせてやったのよ。これからの時を背負うのはあいつの役目であるし、当然のことだろう。」
「ふむ。ブラドー伯爵も引退する時が来たということかの?」
「馬鹿をいえ。時の速度から逃れた俺、そしてお前。今と関わることになんの利益もあるまい。」
「ならば、何故目覚めたブラドーよ。」
「時から外れたのは俺だけだ。他を巻き込むわけにもいくまい。」

そう言うとブラドーは立ち上がり、カオスの方へと歩き始める。
カオスの隣に控えていたマリアとテレサはカオスを守るようにして、ブラドーに向い立つ。
その様子をブラドーは鼻で笑い、カオスの目前で立ち止まる。

「用件を言えカオス。この頃は機嫌がいい。大抵のことならば聞いてやろう。」
「話が早くて助かるわい。ちと、ワシを狙っている輩がおっての。そやつらを固唾けてもらいたい。」
「代償は?」
「退屈しない時間を提供してやる。」

カオスの言葉にぴくりとブラドーが反応する。

「面白い奴らがいてな。奴らといれば、退屈だけはせんよ。」
「――――いいだろう。お前とは長い付き合いだ。嘘は無いだろう。」

そう言うとブラドーはその姿を闇に溶かした。
カオスはブラドーの対応に思惑通りと笑みを浮かべ、マリアとテレサに視線を向ける。

「帰るかの。」
「イエス。ドクター・カオス。」
「はい。ドクターカオス。」

テレサは勤めて機械的にカオスの言葉に答えながら、己の心に自分の知る『世界』との相違点を刻み込む。

「テレサ。」
「なんですか? 姉さん。」
「いきましょう。」

気がつけばカオスはこの王の間を出ようとしている。
テレサは少しの間、考えに没頭していたのだ。

「はい。」

マリアに、かつての自分にそう答えるとマリアは少しだけ嬉しそうにテレサの手を取った。
マリア自身には理解できていないが、かつての自分を見ているテレサには理解できた。
同じ存在がこの世界にいる。それはとても嬉しいことだと知っているから。


―横島―

女性化した横島は、ギルミアの言う通り『文珠』も『デリートスキル』も使えなくなっていた。
色々と試してみた結果、霊波刀は男であった時ほど強力ではないが出すことは出来る。
サイキックソーサーも同様だ。
そして、妙神山に来て一週間たった今日、新たに女横島は二つのことに気がついた。
一つは、女性化した自分は完全に後衛の役割を得意とする存在だということだ。
それはなぜかというと、女性化した横島には治癒の才能があることが判明したからだ。
妙神山に来てからすぐに始まった小竜姫との手合わせで傷を負うたびに、小竜姫に手当てしてもらっていた横島がそれは悪いと自分で治癒を試みたところで、それは判明した。

「はぁっ!!」
「甘いぜ!!」
「ぬるい。」

そしてもう一つは、珠姫と実体化させたファーブニルを使役する式神使い、もしくは眷属使いとしての才能だ。
いや、これは才能というよりも運がよかったというべきだろう。
考えなしに突っ込んでいく前衛の珠姫、めんどくさそうに珠姫をサポートするファーブニルという二人の力を持つ存在を男であったときから手にしていたのだから。

「貰った!」
「どけ小娘。」

珠姫が小竜姫に攻撃を仕掛けようとした瞬間に、背後からファーブニルの霊波砲が降り注ぐ。
珠姫はそれを辛うじてよけている隙に小竜姫に逃げられてしまう。

「てっめぇ! ファーブニル!! 俺を道連れにするつもりか!!」
「――――――そこか。」

ファーブニルは珠姫の抗議になんの反応も示さず、完全に無視した価値で小竜姫へと攻撃を続行する。
小竜姫はその攻撃を超加速にはいることで避けると一瞬にして、横島の傍にまでたどり着く。
横島もそのことを感じ取っており、霊波刀で対応しようとするが・・・・・・。

「ここまでですね。」
「そうみたいです。」

横島が霊波刀を具現するよりも前に小竜姫の剣が横島の首に添えられる。

「珠姫さんとファーブニル。どちらも前に出すぎていて、肝心のジョーカーさんを守れていませんよ。」
「ファーブニル! てめぇちゃんとジョーカーを守れよ!!」
「黙れ。お前が守ればなんの問題も無かったのだ。」

小竜姫に注意された二人は互いに互いのせいにして、横島の元へと集まる。
ファーブニルは文句を言いつづける珠姫煩わしそうに一瞥すると横島の額に口付けし、額のバンダナへと精神を戻す。

「に、逃げやがったな!!」

こうなれば珠姫がどれほど怒鳴ろうとファーブニルは反応しない。
悔しそうにバンダナを珠姫は睨みつけると、舌打ちをして歩き出す。

「どこにいくんですか? 珠姫さん。」
「猿とゲームでもしてくる。」
「老子さまと遊ぶのであれば、殿下と遊んであげてくれませんか?」
「殿下?」
「ええ。竜神王様のご子息である天龍童子様です。竜神王様のご降臨の折にここであずかることになったんです。」
「あ〜〜、あの生意気な奴か。けどアイツ、テレビに噛り付いていたような。」
「――殿下と遊ぶのはお嫌ですか?」

妙に丁寧な口調で言って、小竜姫はにこりと微笑んだ。
その微笑に珠姫は引きつった笑みを浮かべる。
小竜姫本人に自覚は無いのだが、小竜機のこういう微笑みは後で何をさせるというわけでもないのに頼みを聞いてしまう力がある。
珠姫はその微笑から逃げるようにして走り去る。

「・・・・・・。」

未だに浮かべられている微笑に横島の顔にも引きつった笑みが張り付く。

「もしかして、俺もですか?」
「お願いしますね。」

断れるはずが無かった。  
そしてこれが、小さくも意味のある事件発生の二日前である。


―雪乃丞―

「高校に行きなさい。」

と、美神から宣告され、なかば強制的に地元の雪乃丞の学力では入れる高校への入学が決定したのが一週間前である。
雪乃丞も学校に対してひそかな憧れを抱いて、勉強していたので学力的にはかろうじて高校二年で通用するぐらいにはあった。
だが、元々じっとしていることが出来ない男である。
静かな教室でカリカリとシャーペンの動く音だけが響くのに、辟易としていた。
家ならば、まわりが静かでいようが、自分のシャーペンの音だけが聞こえていようが気にならないのだが

「暇だ。」

そもそも周りに人がいるからいけないのではと雪乃丞は考える。
喋りたい。
友達になった隣の席の奴と格闘技について語り合いたい。
こんな真昼間から勉強している暇があるのなら修行したい。
雪乃丞は少しずつ右手に霊気を集めていく。

「こらっ。」

しかしそれも雪乃丞の前の席に存在する学校妖怪もしくは机妖怪愛子にばれてしかられる。
雪乃丞は諦めたように溜息をつくと、書きかけのノートの続きを書き始めた。
そして退屈な授業が終わり、雪乃丞はすぐに鞄を掴んだ。
今日は土曜日で昼までなので、後はとっとと家に帰って美神の所に行くだけである。
しかし、教室を出ようとしたところで声をかけられる。

「伊達君。今日、貴方掃除当番よ。」
「――――。」

無言で箒を手に取り、近くを通ろうとしていた男子学生に手渡す。
ポンポンと肩をたたくと、仕事は終わったとばかりに帰ろうとして女子の非難に満ちた視線の放火を浴びた。

「な、なんだよ。」
「なんで柿崎君に渡すのよ!! 貴方が掃除当番なのよ!!」
「おまえ、俺の代わりに掃除してくれるよな。」

雪乃丞はギロリと目つきの悪い瞳を柿崎(男子学生)に向ける。
柿崎はその視線に怯えたように首を縦に動かそうとして、愛子に助けられた。

「学校で生活するなら、決まり事は守らなくては駄目よ伊達君。ほら、掃除するの!!」

柿崎から愛子は箒を取ると、無理やり雪乃丞に持たせる。
その間に柿崎はそそくさと教室から出る。
雪乃丞はしんそこめんどくさそうに掃除を始めるのだった。


掃除を終えて、美神の事務所に向かう。その途中で雪乃丞は人とぶつかった。

「どこ目ぇつけてあるいとんじゃ!!」
「あぁ?」

慣れない学校生活と成果の出ない修行のせいでたまりに溜まっていた雪乃丞のストレスがぶつかった相手に対して流出する。
自分より背の高い、学生には見えない男の睨みを真っ向から睨み返す。

「なんじゃその眼は? あぁなめとんのか!」
「うるせぇ。」

ぼそりと呟くと同時に雪乃丞の手が動く。霊気を纏ったそれは近くのコンクリートの壁に激突し、破壊した。

「喧嘩するならしようじゃねぇか。相手になってやるよ。」
「ひっ。」

誰でも片手の拳だけでコンクリートを粉砕する相手に敵意をむけられたらビビルだろう。
男とて例外ではなかった。

「す、すすす。」
「あぁ。はっきり喋りやがれ。」
「すいませんでしたぁ〜!!」

男はそう言うと、猛然と逃げ去った。
男は体を鍛えているのかそこそこの速さで遠ざかっていく。
雪乃丞は舌打ちをすると、はっと我に返り呟いた。

「何やってんだ。俺・・・・・・。」

こんな弱い者虐めのような事をするつもりなど無かった。求めているのは強者との戦い。
それと、その土俵に立てるだけの強さ。
安寧な日々への憧れが、雪乃丞から消え始めている。

「――珠姫。やっぱり、小竜姫さまに連絡したほうが・・・・・・。」
「ならん。それはならんぞ!」
「しかし、殿下・・・・・・。」
「気にすることねぇよジョーカー。大丈夫だって。」

雪乃丞は耳に届いた声に、なぜか反応して声のしたほうを見る。
女性二人と子供が一人。
その内の鋭い目つきの女性と雪乃丞の眼があった。

「・・・・・・っ。」

悲しげな瞳で雪乃丞は見つめられた。
いや、実際には少しだけ目線が交差しただけなのだが、雪乃丞はそう感じた。
まさかそれが、後々にまで交友を深めることになる女(男)だとは雪乃丞に気づける由も無かった。


あとがき
テスト期間中でまったく小説をかけませんでした。
雪乃丞導入部そのニ。もしくは前編。
今回は短めなので、次回は長めでお届けします。

>星之白金様  横島君には式神もしくは眷属使いとなってもらいました。

>DIA様  神族のヘタレっぷりは今に始まったことじゃないですよ。

>無貌の仮面様  レイドルママは実は、横島君がいない寂しさで荒れていたりします。外伝でそらへんはかきますけどね。

>D,様  ジークはワルキューレしかりで鋭い目つきの怖いお姉さんがタイプだろうから、仕方ないかと(ぇ

>覇邪丸様  雪乃丞とはすれ違っただけでした。今の彼は自分の悩みで周りが見れてませんからね。

>猿サブレ様  萌え殺し・・・・・・ちっばれたか(マテ

>十六式様  美神との出会い。そう遠くない未来に起こりますよ。

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