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▽レス始

「とわいらいと・えんど  プロローグの2 (GS)」

でまえそば (2005-02-18 02:08)
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午後五時―――

学校の授業をなんとなく上の空で聞き流し、
担任には、とりあえず学校に行ったって事で今日は許してもらい事務所に向かっていた。

少し赤くなってきた空をぼぉっと眺めながらおれは妙に感傷的になっていた。

理由は分かりきっている、………今朝見た夢の事だ。
全く、らしくないなぁ。おれは軽く溜息つきながら空を見上げた。


         とわいらいと・えんど プロローグの2


おれは事務所に向かって歩きながら、やはり彼女のことを考えていた。
所詮、夢だ。と考えてもそう簡単に忘れることはできそうにない。

別に彼女のことを忘れていたわけじゃない、いや、むしろ彼女ことはいつも胸に思っていた。
美神さん達と話をする時も、除霊に行く時も、セクハラをする時も……―――今のは関係ないな、うん。

―――彼女のことが今でも好きか?
と、聞かれれば間違いなく、YESと答えるだろう。
―――後悔しているのか?
と、聞かれればそれもきっと、YESと答えるだろう。

彼女はおれを助けたために、……死んだ。
それは事実だ。覆しようも無く確かなことだ。
別に、その事実を否定するつもりは無い。

彼女はおれの事を好きでいてくれた……と思う。
だから、おれに生きていてほしいから、おれを助けたのだ。

自分の魂をおれに注ぎ込んでまで。

ならば、おれは彼女が愛してくれたおれらしく、
今までどおり生きていかなければならないと思う。

そうしてやることが、彼女にしてやれる唯一の事になってしまったから。


………―――だが、だが、この胸に湧き上がってくる気持ちは何だろう?

哀しい、悔しい、虚しい……………どれも正解でどれも違う気がする。

でも、あぁ……、本当は分かっている。おれは聞きたいのだ、彼女に………


「君は……―――本当に、本当に■■だったのか?」


と、きっとそう聞きたいのだろう―――。

そこまで考えて、おれは考えるのを止めた。
もう、死んでしまった彼女に物を尋ねるなんて無茶だし、
なにより、……こんなのおれのキャラじゃない。

よっしゃ、ここは一発ナンパでもすっかぁ!

そう意気込んで、顔を上げると目の前に男が立っていた。
黒いスーツに、黒いサングラス…
バリバリに怪しいおっさんだった。


「あ……、すいません、ボッーとしてまして、はは……」


おれは係わり合いにならないように足早に横をすり抜けようと―――


「いや、気にすることは無い。ただ……、少しついて来てもらえるかな、横島忠夫君……?」

「え……」


振り向こうとした瞬間、背中に棒の先のような物を当てられた。
首筋にいやな予感が走る。

おぉう、これってまさか……

おれが考える間も無く


「この先を左に入れ」


男がおれの後ろでそう呟く。


「なんで…」


と、反論しようとすると背中に当てられている‘何か’を
グィッと更に押し付けられる。


「いいから、言うとおりにしろ。その方がお前にとってもいいと思うんだが……?」


と、後ろでさらに、呟いてきた。
おれは抵抗もできないまま、角を左に入り、薄暗い路地裏に連れて行かれた。


            †  †  †


「……で、こんなとこ連れてきて、あんた一体何なんだよ?
はっ!! まさか、あれか! そういう趣味か!!
いやいや、おれにそういう趣味はないぞっ!!
ウホッ、とか言われても、やらないぞぉ!!」


改めて男を正面に見ながらおれは喚く。
が、男は微動だにせずこちらを見ている。
………無視かよっ!と内心で舌打ちながら
マジでそういう趣味じゃないだろうな……とか不安に思ったところでで思いついた。まっ、まさか……、美神さんか!? あの人がらみかっ!!
一瞬、脳裏に高笑いする女性の姿が浮かんできた。
慌てて頭を振ってその姿を消す。


「ぉぃ………、おいっ!!」

「ひ、ひゃいッ!! ご、ごめんなさいぃ!!」


思わず、謝ってしまった。
男はおれのそんな様子を気にすることなく唐突に話始めた。


「横島忠夫―――GS見習い 横島大樹、百合子の一人息子。
美神除霊事務所にアルバイトとして雇われる。
雇用当初、霊能力には目覚めていなかったが、
次第にその才能を開花させ、サイキック・ソーサー、ハンズオブグローリー、そして、……文殊の霊能力に目覚め、人類唯一の文殊使いになる。
アシュタロス戦役ではその能力を使い、公にこそされてはいないが、
解決のため大きな役割を果たす。

アシュタロス戦役の中、敵側の魔族の女と恋に堕ちるが、
彼女はその戦いの途中、瀕死の重傷を負った横島忠夫を助けるため自分の
霊機構造を注ぎ込み、その結果消滅する。
助けられた横島忠夫は美神令子と共に、アシュタロスを倒し、
その後、特に問題も無く現在に至る」


頭が混乱する。なんだ、こいつら?なんでそんなこと知ってる?
おれの事だけじゃなくて、ルシオラのことまで………?
おれや、彼女の事は隊長がちゃんと秘密にしてくれてたはずだ。
マスコミには美神さんや、西条のようなもともと有名な人たちの名前しか出てないのに……。驚いたおれの顔を見て、男は軽く鼻で笑い、


「なぜ、知っているのか……? そんな顔をしているな。
だがこの程度のことは少し調べれば分かることだ。
まぁ……、貴様はある意味有名だからな」


ある…意味? 目の前の男はさらに混乱するおれを尻目に
再び、口を開いた。


「問題は私が貴様の事をなぜ知っているか、では無い。
 貴様の体の中に魔族の霊機構造が注入されている、ということだ」                                                                                                 
おれの体に入っているルシオラの霊機構造……? 
彼女のことを言われ、思わず声が出た。


「な、なんで、その事が問題なんだよっ! あんたには関係ないだろッ!!」                           

「関係無い……? ふん、そうはいかないのだよ。
 しかし、ほんとに何も知らないといった顔だな。
 当然と言えば当然か……。
 まぁいい、簡単に説明してやろう。元々、そのつもりだったしな。

 さて、貴様は人間、魔族、神族の魂の違いを知っているか?」


魂の違い……?一体どういう……
突然、講釈を始める男におれは混乱の度合いを深める。


「魂、とは言い方を変えれば霊機構造のことだ。
 人間、魔族、神族それぞれに違いはあるのだが、
 特に人間のそれは、魔族、神族のそれと大きく違う。
 人間にはまず、肉体という器があり、そこに魂が入っている。
 しかし、魔族、神族にはその肉体という器が無い。何故か……?

 答えは簡単だ。霊機構造そのものが肉体として成り立っているからだ。
 貴様は霊力がほぼ無くなった神族や魔族を見たことがあるか?」


霊力の無くなった……、そういや前に小竜姫様や、ヒャクメが霊力の供給を絶たれて 
小さくなったことがあったな…、そういうことか?


「ほぉ、あるのか?それは珍しいものを見たな。
 そうあることではないんだが……、まぁそういうことだ」


こ、こいつ、なんでおれの考えていることがッ!?


「ちなみに全部口に出していぞ、どちらでもいいことだがな。

 説明を続けさせて貰う。 
 では、人間にとって魂とはなにか?………一概に言う事は出来ないが、それは概念だ。
 その人間をその人間たらしめようとする概念の事だ。
 性格、といってもいいかもしれん。
わかるか? 例え、それをなにかの事故で、何十パーセント失うことになろうとも
それは一時的だ。本人が生きている限り、時間が経てば元に戻る。
性格が無くなる、なんて事は無いだろう?
 しかし、元に戻った時、そこに魔族の魂などという余分な物があったらどうなる?

結果は火を見るより明らかだ。行き場を失くし、エネルギーの使い道を失った魔族の魂は
次第にその力を増大させて行く。そのエネルギーは人間ではとても抑えることはできない。
 そして、最後には暴走を始める………。

 過去、貴様と同じように魔族の霊機構造を注入された人間は何人かいた。
 だが、その結末はみな同じだ、暴走の結果、
ある者は町一つ吹き飛ばし、巨大なクレーターを作り出した。またある者は
体その物を変態させ、周りの人間という人間を虐殺した。……まぁ、
時間が経つと勝手に崩壊して言ったがな……。

さて、ここで改めて貴様だ。横島忠夫。
貴様が過去そうなった人間のようになる危険性を考え………、 

我々、異端執行組織 エレーティコ・インピッカトーレは貴様の処刑を決定した」


男の話が止まった……。しかし、何を言っている?
暴走? 異端? 処分? なんだそれは……?
考えようとするが、まるで頭が 動かない。
だが……、一つだけ、確かに理解したことがある。


「つまり……、アンタは、おれを、その…、殺しに来た……って事なのか……?」

「ふむ、まぁそこだけでも理解できれば十分か……。
 そういうわけだ、死んでくれ」


瞬間、頭が沸騰した。
こんなこと許されて言い訳が無い!!


「ふっ、ふざけんなッ!!一方的に言われて、はいそうですかって
死ねるわけ無いだろッ!!だいたい……、暴走?ったって
おれがそうなるって決まったわけじゃないだろッ!!!」

「その通りだ。決まってはいない。
 だが、そうなってからでは遅すぎるのだよ。分かっているのか?
 そうなった瞬間貴様はもっとも近しい人間を自分の手で殺すことになるんだぞ?」


「なッ!」頭に冷や水がかけられた。
体中の血の気が引く感じがする。 
おれが……?美神さんやおキヌちゃん、シロやタマモを殺すって………?


「そんなわけ無いだろっ!! おれが、どうしてみんなを!!」

「そこに貴様の意思など存在しない。
 だが、いくら言ったところで納得しまい…。
 せめて痛みのないように殺してやる」


男はおれの言葉を遮る様に言い、男が懐から、黒い鉄塊を取り出した。
男は静かにそれをおれのほうに向ける。

おれは動けない……、頭が真っ白のまま、ただ、
向けられた‘もの’の先を見つめていた………。


―――ガチャ―――


突然、横の扉が開いた。
ゴミでも出しに来たのだろうか大きなゴミ袋を持った女性が驚いた顔をしてこちらを見ている。
男は舌打ちをして、それを懐にしまった。

その瞬間―――、おれは全力で駆け出していた。
別にどうしようか、思ったわけじゃない。
ただ、気づいたときには体が勝手に動いていた。
男の横をすり抜け、全力で駆ける。

「ちッ! 各員に連絡っ! ターゲットが逃亡した、
 見つけ次第、かまわん!!………殺せっ!!」


そう叫ぶ、男の声を背に受けながら――――――


                   †  †  †


―――おれは目の前に迫ってくる、無数の弾丸を見つめていた……。
あぁ、死ぬのか……。
たくさんの人、たくさんの事が脳裏に浮かんでは消えていく。

その時、頭にある言葉が浮かんだ……


(………ルシオラも、あなたの子供として幸せにしてあげれば………)


脳がスパークを起こした。

ルシオラッ!! そうだ!おれの中には、彼女がいる!!
おれが、死ぬってことは彼女も死ぬって事だ!!

だめだ、だめだ! だめだッ!! 死ねない!………死ねないッ!!!


「―――アッ、アァ!アァァァァッ―――!!!」


              †  †  †


「――――――な、に……?」


その驚愕は誰の物か―――、男たちは呆然と、ただ目の前の風景を見つめていた。
男たちの目の前には今、放ったはずの銃弾が空中で停止していた。
横島にあたる寸前、まるで、ビデオで一時停止の画面のように止まっている。
男たちは横島を見る。彼の手には、緑色のビー玉サイズ位の玉が二つ握られていた。


「あれは……、文殊かッ!
 し、しかし、馬鹿なッ!! 我々の銃弾にはすべて霊力を無効にする特殊礼装が、施されているッ!
 いくら文殊といえど、すべて受け止められるはずが無いっ!!」


男は悲鳴を上げるように叫んだ。


                 †  †  † 


――――――びっ、びびったぁ〜。

が、男たちが驚いている以上に横島は驚いていた。
横島が文殊に込めた文字は「斥/力」物体と物体を引き離す力のことだ。
あの瞬間、銃弾が横島に当たるあの瞬間、彼は懐かしい、あの声を聞いた気がした。

横島は当然、斥力なんて言葉は知らない。
たが、その声が聞こえた瞬間、今までにないスピードで文殊を作り出し、
気付くとその文字を込めていた。
まるで、それが当然というように。


「くっ! だがいくら文殊といえど
 そういつまでも、保ちはしまい! 貴様がここまでだということに変わりは無いッ!!」


(そのとおりだ……。さて、どうしたもんかな……。
 「転/移」で逃げるにしても、そう遠くまでは行けないし、
 美神さんとこに……ってなわけにはいかないか、みんなに迷惑かける
 訳にもいかないしなぁ……)


横島は冷静だった、あの声が聞こえてから妙に頭が覚めていた。
いくら文殊が万能とはいえ、所詮人が生み出す力だ、限界はある。
それにあれだけ、横島のことを調べていた連中だ。
事務所にもあいつらの仲間がいる可能性は十分にある。


(やっぱ、とりあえず「転/移」使って逃げれるだけ逃げるしかないかぁ)


横島がそう決めた瞬間、再び声が聞こえた。


(大丈夫……、わたしが力を貸したげる……)


その時、横島の目の前に文殊が現れた。
だが、その文殊は普通のものとは違っている。
まるで対極図のように陰陽に分かれていた。
横島は何の疑問も持たない様子で開いた片手でそれを握り「転/移」と文字を込める。

横島の周りを太陽のような、凄まじい光が覆う。

光が消えたとき―――そこには誰もいなくなっていた。
今まで空中で止まっていた銃弾は再び動き出し、コンクリートの壁に幾つもの穴を開ける。

男たちはそれを呆然と眺めていると、一人の男が口を開いた。


「……逃げたのか……。おい、レーダーには?」

「いえ、ターゲットの霊波、この周辺には反応ありません」


また、一人の男がすばやく声を返す。

「くそッ!! お前らは、本国に連絡しとけ!
 お前とお前はついて来い、美神令子の事務所に行くぞっ!」


男たちは指示を受け、急いでその場から立ち去っていった。
その場に再び静寂が戻る。


もう、日は完全に落ちようとしていた――――――


                                  とわいらいと・えんど  プロローグの2 終


       あとがき

どうも、でまえそばです。プロローグは終了しました。
ここから、いよいよ本編に入っていくわけなんですが、今回、どうでしたでしょうか?
なんか、やたら説明くさくなったような……。
この魂の解釈は勝手に考えた物なので、あんまり深く考えないでくださいね〜。
さて、とわいらいと・えんど ですが、この後横島はいろんなとこに、
とんでっちゃう事になるので原作キャラとの絡みが少なくなってしまうかもしれません。
絡ませたいとは思っているのですが……、どうしたもんか……。
ちなみに、エレーティコ・インピッカトーレとはイタリア語で異端者の執行人という意味です……多分。そのまんまですね・・・、ネーミングセンスが欲しい……。
文殊でなぜ「壁」とかを出さなかったかというと、壁では無効にされてしまうかもしれないからです。
そこで「斥力」という文字を込め霊力を空間に作用させた、ということです。
……どうなんだろ?この説明。
               でっ、でわ!! でまえそばでした!!

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