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▽レス始

「道程 その6(GS)」

みどりのたぬき (2005-02-14 23:25)
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「おはよーございます」

いつものように事務所に入ってくる横島
いつもと違うのは今日の仕事は本当は休みで、横島は今頃学校に行っている筈だった事
だろうか。

『美神殿、急な仕事という事だが説明して頂けるか?』

美神の顔を見るなり事情の説明を要求する心眼
急に出張する事になった事以外は、何も聞いていないのだから無理も無かった。

「仕事自体は前から受けていたものよ。ただその仕事って言うのが厄介でね、
 ある物がどうしても必要だったの」

『成る程、そのある物とやらが手に入ったのか』

「そういう事よ」

本体よりも頭の切れる心眼と話していると、来客を報せる音が聞こえてきた。
おキヌが客に応対すべく玄関に向かう。その間に美神は、今一事情が飲み込めていない
横島に分かりやすく掻い摘んで説明するのだった。


『美神さーん、お荷物届きましたよー』

客は配送業者だったらしい。
業者から受け取った小包をその手に抱えたおキヌが戻ってくる。

「ご苦労さま」

おキヌから手渡された小包の包装を破り、中から爪楊枝の携帯容器のような物を
取り出す。

その時、美神の背後から不気味な声が響いた。

『ホッホッホー! そいつはおいらのもんだよ! 返してもらおうか!!』

「パイパー! なんで!?」

慌てて背後を振り向く美神。
そこには身体が透けたピエロのような男が宙に浮いていた。
予期していなかった襲撃に、攻撃に転じる事もその場から逃げ出す事も出来ない。

『あんたを監視していたのさ、そいつを取り寄せると思ってね。
 さあっ、そいつをよこしな!』

パイパーは、自分の接近にも監視されていた事にも気付かなかった美神を嘲笑う。
そして、美神に向けて笛を吹き始めた。


横島が美神より先にそれに気付いたのは偶然だった。たまたま窓のほうを向いていた、
それが美神の明暗を分ける事になった。

突然現れたピエロに美神は不意を討たれて動けない。どうやらあのピエロが今回の
仕事の相手のようだ。動けない美神をいつでも援護できるように身構える。

『さぁっ、そいつをよこしな!!』

突然笛を吹き始めるピエロ

『いかん、やらせるな!』

美神に聞いた被害者を子供に変えた力、それがおそらくあの笛なのだろう。
心眼に言われまでもなく、笛を吹くピエロに向けてサイキック・ソーサーを投げつけた。


不意を衝かれて反応が遅くなった美神に向けて笛を吹く。

この美神という女、人間にしては強い力を感じるが所詮自分の敵ではない。
その証拠に、まるで自分に気付けず、今もこうして何の手も打てない。
しかし、これで金の針が手に入る。あれさえ戻ればこの世界を自分の意のままに出来る。

パイパーは美神と金の針に気を取られていた。
だから横島には気付かない。こちらに向けて霊力の塊を投げつける横島に。


『ぐおっ、何だ!?』

突然背後から飛んできたそれは、自分の横を抜け無防備に笛を吹いていたパイパーに
命中した。
凝縮された霊力の塊を無防備な所に、まともに受けては悪魔とはいえダメージは受ける。

「これでも喰らいなさい!!」

美神はその隙を見逃さず、身に着けていた精霊石を全てパイパーに投げつける。

『精霊石か・・・!』

不意討ちによるダメージに視界を奪う爆煙、追い討ちをかけるように精霊石による攻撃。
煙が晴れるとそこにパイパーの姿は無かった。
思わぬ反撃を受け、パイパーは一旦退く事にしたようだ。


『倒したんですか?』

「いえ・・・一時的に退いただけよ」

『奴の本体とやらを叩かなければ何度でも襲ってくるだろうな』

「ぐずぐずしてる暇は無さそうね・・・横島クンすぐに準備して!」

パイパー本体を叩かなければ意味が無い、美神はすぐに移動すべく横島に荷物を
纏めさせる。その間に美神も精霊石の補充等の用意をしに、部屋へ向かうのだった。


「準備できました、いつでも行けます」

いつものリュックに装備や道具を詰め込んだ横島が戻ってくるのを待って、
美神はガレージに向かう。

「横島クン・・・さっきはその、ありがと・・・助かったわ」

横島の前を通る時におキヌには聞こえないように礼を言う美神、その顔は赤かった。

「美神さん・・・お礼ならその身体で!」

「ちょーしに乗るな!」

がんっ

飛び掛る横島の顔面に、美神は鉄拳をお見舞いする。

『何度も何度も同じ事を・・・』

一向に反省とか学習をしない横島に呆れる心眼、実はこの男マゾではあるまいかと
思ったりしたとか何とか。


「ちょっと寄り道してくわよ」

美神は、横島たちにそう言うと車を発進させた。


『あの小僧・・・!』

あのボンクラそうな小僧にしてやられた、あの小僧がいなければ間違いなく美神令子を
子供にする事が出来たのだ。

苛立つ気持ちを抑えて美神の居所を探る。

『霊波を消しているのか・・・クソ!』

事務所で後退を余儀なくされ、美神を見失ってしまったのは手痛い失敗だった。
このままでは本体が狙われるだろう、一旦居城に帰って罠を張って待つかべきか

その時だった、美神の知人等を見張らせていた使い魔から連絡が入ったのは。

『仲間に助けを求める気か・・・そうは行かないよ』

パイパーは禍々しい笑みを浮かべると、その場から姿を消した。


「──と言う訳で、力を貸してちょうだい」

「令子ちゃんが私を頼ってくれるなんて嬉しいわ〜」

美神が寄ったのは六道邸だった。
彼女の式神には高速で移動する手段を持つ者がいる。美神は彼らを使って一気に
パイパーの懐に飛び込むつもりだった。

「インダラちゃんとシンダラちゃん、どっちがいい〜?」

のほほんとした様子で聞いてくる冥子、インダラとは時速300kmで走る午の式神で、
シンダラは亜音速で飛行する酉の式神である。
ちなみに横島とおキヌは全ての式神の能力を知っているわけではない。

「速い方でお願い」

「それならシンダラちゃんね〜」

美神の答えにシンダラを呼び出す冥子、影の中から出てきたシンダラは冥子の命令を
待っている。

「でも、いいの〜? シンダラちゃんは〜」

「ああ、大丈夫よ。運んでもらうのは横島クンだから・・・
 それより急いで、ここも奴に嗅ぎ付けられるかもしれないから」

「ちょっと、シンダラは何なんですか!?
 大丈夫って何か大丈夫じゃない事があるんですか・・・!?」

何かを言い掛けた冥子を遮った美神に、いやな予感を感じて抗議する横島だったが、

「これを奴の本体に刺す事が出来れば、あいつの息の根を止められるわ。頑張ってね」

「頑張ります」

美神の胸元に寄せられるようにして握られた手の感触に、すっかりやる気になるのだった。

「じゃあ、シンダラちゃんお願いね〜」

冥子の命を受けたシンダラは、背に括られた横島と共に六道邸から飛び立っていった。


シンダラが飛び立った後、その空を見上げているとそこから笛の音が聞こえてきた。

『ホッホッホー、おいらから逃げられるとでも思ったのかい』

美神の事務所の時と同じように、突然空から染み出すように姿を現すパイパー

『ヘイ!!』

姿を見せると同時に冥子めがけて魔力を放出する。
横島の事を教訓にして先に周りから潰す事にしたのだった。

しかし、子供になっている筈の冥子の姿はそこには無かった。

『何!?』

「メキラちゃんありがと〜」

冥子の服を銜えたメキラが(寅)が美神の背後に現れる。

「もう見つかったか・・・」

「令子ちゃん〜、私怖い〜」

今度は遅れは取らないとばかりに、油断無く神通棍を構える美神とは対照的に
冥子は逃げ腰だった。

「しっかりしなさい! あんたがやられちゃったらシンダラも消えちゃうんだから!」

そんな冥子を叱咤すると、美神はパイパーに切りかかっていった。


一方、シンダラは冥子の言うとおりバブルランドに向かって飛んでいた。

「・・・ちょ! ・・・息が!! 目が! 目がぁぁぁ!!」

割と全力で。

ムスカごっこを楽しむ横島に余裕を感じたのか、更に亜音速に近づくシンダラ。
この分ならあっという間にバブルランドに到着しそうだった。


『あの小僧はどこに行った?』

美神と式神相手に戦っていたパイパーは、横島がいないことに気が付いた。

「横島クンが気になるのかしら? そうよねー、また不意打ち食らったら困るもんねー?」

おほほほほと上品そうに、かつ嫌味ったらしく横島を気にしているパイパーを嘲笑う。

今横島を追いかけられるわけには行かない。そのために美神はわざと挑発するような
態度を取ったのだが・・・

「横島君なら〜、バブルランドに行ったわよ〜」

冥子は馬鹿正直に答えてしまった。

「こん馬鹿たれがー! 何で素直に教えるのよ!?」

作戦をぶち壊してしまった冥子の頭を叩く。

『しまった! こいつらは囮か!』

「ああっ! 気付かれた!」

「・・・ぶった」

罠に嵌められた事を悟ったパイパーは美神から距離を置く。そして徐々に姿が消えていく。
本体の所に戻るつもりなのだろう。

「待ちなさいっ!」

「令子ちゃんがぶった・・・」

『待てといわれて待つ奴がいると思うか? ホーホッホッホッ・・・・・・ホッ?』

「令子ちゃんがぶった〜〜〜〜〜〜〜!!」

冥子がプッツンしてしまった。

横島への折檻に比べれば撫でられたような物だったが、冥子にはショックだった様だ。
感情が暴走し制御を失った式神達が辺り構わず暴れ始める。

主にその標的はパイパーだった。サンチラが電撃を放ち、アジラが火を吹き、アンチラが
切り裂き、ハイラが毛針を飛ばし、その他一斉による攻撃を食らう。

『うぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!』


普通の人間なら死んでもおかしくない速度で、バブルランドまで運ばれてきた横島。
途中で気絶していたのだが、目的地に付いたシンダラが横島を括っていた縄を解いて
振り落とす。

「はっ! ここは一体!?」

地べたに叩きつけられたショックで目を覚ました。

『気が付いたか、ここがどうやらパイパーの根城らしい』

辺りを見回す。
建造中のアトラクション、無数の資材やほったらかしのままの重機などが見える。

「で・・・パイパーの本体はどこよ?」

『知らん』

「駄目じゃん・・・」

目的地に着いたはいいが、敵の位置が分からなくてはどうしようもない。
なす術が無い横島は途方に暮れる。

『ダウジングでもしてみるか』

「ダウジングってあの金属の棒とか振り子の?」

『そうだ。栄光の手とか言ったか、あれを出してみろ。
 指を立てて針をその先に置け、そうしたらパイパーの居場所が知りたいと念じるんだ』

言われるがままに栄光の手を右手に纏い、立てた人差し指の先に針を置き念じる。
置かれた針はくるくると回りだし、ある建物を指し示した。

「おぉ、すげー!」

『感心していないでさっさと行くぞ』


アトラクションの中をレール沿いに歩き、池のような場所にたどり着く。
池の中程まで歩いていくと、広大な空間に無数の風船が浮かんでいるのが見て取れた。

「風船・・・?」

目を凝らしてよく見てみるとその一つ一つに顔が描かれている。

『今まで奴に子供にされた人間の時間と記憶のようだな』

「じゃあ、あれを割ればこの人達は元に戻るのか?」

『おそらくはな。
 しかし、今なすべき事はそれではない・・・分かってるな?』

最初の目的を忘れるなと言外に言う心眼に頷くと、再び針に念じる。
針が指したのは池の中だった。

「この下にいるのか・・・」

『ぐずぐずしている暇は無い、行くぞ!』

横島は意を決すると池の中に飛び込んだ。


『クソ! 何なんだこいつらは・・・!!』

式神の暴走に巻き込まれたパイパーはぼろぼろだった。

「横島クンはまだなの!?」

「もう着いてる筈よ〜」

気がすんだのか、それとも落ち着いたのか冥子は既に泣き止んでおり、式神たちも
冥子のコントロール下に戻っている。
まだ消滅せずに抵抗を続けているパイパーに、横島は何をやっているのかと、美神は
苛立ちを抑えきれない様子だった。

『グッ・・・ギャ────ッ!!』

「やったの!?」

突然パイパーが胸を押さえて苦しみ始めたと思ったら、霊体が霧散し始めた。
だがまだ気は抜けない、こいつは一度自分を出し抜いている。美神は油断無く身構える。

「終わったみたいよ〜」

頭の上にクビラを乗せた冥子がやはりのほほんとした感じで、終わった事を告げる。
クビラの霊視能力で確認したらしい。

「はぁ〜、まったく・・・何を手間取ってたんだか」

おそらく横島の事を言っているのだろう、それでも美神はほっとした表情だった。
そんな様子を見ていたおキヌはくすくすと忍び笑いを洩らす。

「ちょっとおキヌちゃん、何を笑ってるのかしら?」

『いえ、何でもないです』

「何かとっても気になるんだけど・・・ま、いいわ」

おキヌの態度が気になるが、厄介な仕事も片付いて依頼料と賞金が手に入る事だしと、
機嫌を直す美神だった。


「なあ・・・こっからどーやって帰るんだ?」

『私に聞くな』


あとがき

こんばんわ、みどりのたぬきです

今回はパイパー編でしたが、冥子嬢に登場してもらいました。

何か作風が安定しないのですが、書いてく内に定まるのでしょうか?
力量不足を痛感しております。

それではまた次回


今回からこちらに感想へのレスをつけさせて頂きたいと思います。

>法師陰陽師様
愛子って結構強い妖怪らしいんですよね、原作でも美神が別格ぽいと言ってましたし。
違和感がありましたか、すみませんひとえに私の力量不足です。

>MAGIふぁ様
申し訳ありません、自然に原作の雰囲気を醸し出せるように以後ますます努力したいと
思います。

>柿の種様
書いては消して書いては消してと繰り返している内に、話が出来上がったのですが、
書いてて面白くないかもとか自分で思っていたので、多分しばらくはやりません。

>LINUS様
貧乏神は彼女の父親代わりなのですw
試練を受けていないので福の神にはジョブチェンジ出来ませんでした。

>偽バルタン様
漂流教室美神抜きという発想から始めたのですが、美神抜きだと先生役が居ないから、
綺麗に纏まらなくなってしまいました。

>柳野雫様
読み返すとまんま妖怪ですね・・・
横島にいずれ試練を受けてもらって福の神にジョブチェンジさせようかなと思ってます。

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