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「タマモのショー2(書き下ろしw)(GS)」

MAGIふぁ (2005-02-14 20:39/2005-02-14 21:20)
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「デミアンと!」
「ベルゼブルのー!」
「ちっちゃいって事はー!」

「………………哀しいね」
「………………始まるぜ」


 タマモのショー2〜公開録音の巻〜


 ある日、美神除霊事務所に攻め込んできた2鬼の魔族、デミアン&ベルゼバブ。まぁ、正確に言えば本人ではなく、コスモプロセッサで製作された再生魔族のなれの果て、ではあるのだが、それはさて置き。
 彼らは襲撃してそうそうに、事務所の居候その2、もしくは事務所のケモノっ娘その2の幻術に引っ掛かり、何故かその場でラジオの収録のようなコントをやり出したのだった。
 こら、そこ。出だしから強引だな。とかゆーな。

「ではまず、おはがきのコーナーだ。東京都にお住まいのラジオネーム、メッシュの赤が広がれば3倍さんから質問が届いている」

 どこからともなく、はがきを取り出し紹介するデミアン。何故か手馴れている。

「ほぅ。どれどれ。ん〜…」

 一方、ベルゼブルの方はぎこちなさが隠せない。芸達者と、粗忽者の差が良く出ていたりする。そして放送事故に抵触しつつも、何とか読み上げる蝿の王。

「べるぜぶると言えば、魔王の一人のはずなのに、どうしてあんなに弱いんでござるか?………………よけーなお世話だこの野郎!本名読むぞコラ!

 自分でも気にしていたのか、はがきに八つ当たり気味のツッコミを入れ、わめき散らすベルゼブル。このままでは放送にならない。
 だがそこはさすが相方。デミアンが何とかフォローする。

「ま、まぁ質問は受け付けてしまったんだ。それに私も気にはなってたんだよ。教えてくれないか?」
「…しょーがねぇな。確かに一応は読んじまったし…説明してやるよ。あのな、一言で言えば…生き残るためだ
「いや、まとめすぎだ。それでは解らん」

 しぶしぶ仲裁を受け入れたものの、ふてくされたのかテキトーで済まそうという相方にツッコミを入れて、話を進めるデミアン。苦労人である。

「ちっ…だからだな。デタントになる前、俺ら神魔は戦ってたわけだ」
「まぁな」
「魔王クラスだって、今と比べりゃ数も多かった。キリスト系が土着の宗教の神々を魔族化したおかげで、ゴロゴロ…とまではいかねーが、そこそこはいたんだ。俺もその一人さ」
「ふ〜ん。で、何でそこで弱くなるのが、生き残る事に繋がるんだ?」

 話しているうちに興が乗ったのか、滑らかに喋り始めるベルゼブル。相方の合いの手の効果もあって、一口水を飲むと気分良く続きを話し始めた。

「さっきも言ったが、魔王の数は昔よか少ない。何でか?つったら、単純に負けたからだ」
「神族にか?」
「同じ魔族の権力争いってパターンもある。魔力やら権力を取り上げられちまったりとかな。そんでな?そうなると弱体化して、中級以下の魔族として生きるか、ここじゃない、どっか別の宇宙なり世界に放逐されちまうんだ」
「ふむ。聞いた事がある。北欧あたりの神々は放逐が多かったらしいな」
「神々の黄昏(ラグナロク)なんつー終末が、神話体系に組み込まれてたからな。神族でも魔族でも煙たがられたって話だ。それに神族側で強力なヤツが多かったからな。魔王クラスの死と引き換えに、次々放逐されたらしい」

 しばらく、北欧神話の登場人物らについての話で盛り上がるデミアンとベルゼブル。ノルン3姉妹はいい女だったとか、トールのハンマーは痛かったとか、氷と炎の巨人族はだいたい魔界に来てるけど、滅多に人間界には行かないよな。とか。
 だが自分達の本体が殺された時、敵方にいたジークとワルキューレも北欧系だと気付いて、ようやく我に帰った。

「話がズレたな。で、なんだっけ?」
「あ、しまった。忘れてた。ここで一旦CMでーす」

 ぱらっぱ♪ぱっぱらぱっ♪ぱっぱらっ♪

 深夜に受け継がれてきた伝統の音楽が流れ、CMが流れる。
 そう。GSでCMと言えばアレだ。チーズ餡シメサババーガーである。

「未知なる組み合わせが、君の魂を幽体離脱させる!口にするだけで神秘体験、チーズ餡シメサババーガー!」
「味については、一切責任は持ちません」

 ラジオなのでサッパリ意味はないが、レオタード姿の愛子と被り物を着こんだ横島の出演でした。
 そして再び例の音楽が流れ、番組が再開する。

「で、なんだっけ?」
「さっきCM前も言ってたな、それ…お前が生き残るために弱体化したって話だろ」
「おう、それそれ」

 どうやら本気で忘れていたらしいベルゼブル。ナリも小さいが、脳みそも小さいのか?そうデミアンが勘ぐったところで、誰も彼を責められまい。

「それで、やっぱりお前も誰かに負けて弱体化したのか?」
「やっぱりってなんだよ。俺は負けちゃいねぇよ。ただ力を割りふって増えただけだ」
「分身を大勢、それもケタはずれに大勢作ったって事か?…なるほどな」
「ああ。俺は魔王でいることよりも、俺であり続ける事を選んだんだ」

 魔王一人の戦力は強力だが、倒されたら一度で滅んでしまう。その魂は復活させられるかもしれないが、記憶や人格はリセットされ、自分ではなくなる。
 それならば、中級から下級クラスまで魔力は落ち込んでも、無数に分身したならば?
 魔王ではなくなるが、自分という存在は消滅しにくいだろう。

「なるほど。そういうふうに言うとカッコいいな」
「ふ、よせよ。テレるだろ」

 ニヤニヤしながら、含むところアリアリでそう言うデミアンに、サッパリ気付かずふつーにテレるベルゼバブ。だが、そのテレ笑いはデミアンの一言で凍りついた。

「ウソはいけないな」
「なに!?」
「某、女神様でも言っていた………………分身しすぎると、段々わけが解らない物になる。と!」
「なにぃ!?し、知っていたのかキサマ!!」
「ふははは!当たり前だ!!追い詰められて、出来る限りの数を分身して逃げおおせたはいいが、いまやどこの誰が本体なのか自分でも解らんのだろうが、この劣化コピー!!
「れ……劣化コピーだとー!」

 信じていた相方に裏切られ、そのショックで絶望とともに叫ぶベルゼブル。まぁ、魔族の絆なんぞこんなもんである。

「劣化コピーで満足できないんなら、デッドコピーか?欠陥品か?出来損ないか?」
「言うな!そう言うお前だって、その体ダミーなんだろ!?体そのものがニセモノなヤツに言われたかねぇよ!」
「なんだとー!?」
「やるか、コラァ!!」
「やらいでか!!」

 ぼこすかぼこすか

「いやー。魔界の裏事情とか聞けて、思わず勉強になっちゃったわ。でも、もういいわよ。ありがとタマモ」

 目の前で愉快なケンカを繰り広げる2鬼に向けて、とっくに準備万端整っていた美神除霊事務所ご一行は、その美神の一言を合図に各々の武器を振り下ろした――


「うう……なんとか逃げ出したが……もうお前とは組まん!絶対に組まんぞ!」
「それはこっちのセリフだ!仮面だかアーメンだか言う映画が無かったらどマイナーな野郎と誰が組むか!」
「なんだとこのクソハエがー!!虫けらの分際で!」
「虫をなめるなー!!」

 その日。殴り合いの果てに友情を取り戻した、2鬼の魔族の姿がどこかで見られたかもしれない。
 だがそれは、まぁ別にどーでもいいっちゃーいいお話である。


 <完>

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