世界には幾つもの種族が存在している。
人間界に住む人間。
神界に住む神族。
魔界に住む魔族。
その他にも月に住んでいる月神族。
人狼、猫又などの妖怪族など。
その数や勢力に違いはあるものの、この世界には様々な種族が混在しているのだ。
そして、その中の一つに機械の体を持つ種族。
機神族がいた。
人間界と、機神族の住む機神界との境界付近。
ゲートと呼ばれるその異空間の中を飛ぶ4つの黒い光。
そしてそれを追う9つの白い光。
「待ちなさいっ!!人間界へ無断で立ち入る事は許しませんよ!!」
『フンッ、我らを止める気か?ここは既に人間界との境界……。貴様らではろくに力を振るう事も出来まい!!』
「くっ……、だが、それはお前たちも同じはずだ!!」
『我らには人間から吸収した悪しきエナジーがあるのさ!!』
『そうだ!!邪魔をするな!!勇者ども!!』
黒い光が閃光を放った。
「キャァーーーーーーーーッ!!??」
「うわぁーーーーーーーーっ!!??」
『ヒャーッハハハハハハハハハハハハハハ!!思い知ったか!!』
『バッ、バカ!!』
『なっ、何だよ!?』
『いっ、今の衝撃で……ゲッ、ゲートが!!』
『なにぃ!?』
黒い光の放ったエネルギーが異空間そのものを捻じ曲げてしまっていた。
『まっ、まずい!?』
『こんな不安定な空間で力を使うからだぞ、馬鹿者!!』
『んな事言ってる場合じゃないですぜ!!』
『キッ、キャァーーーーーーーーッ!!??』
散り散りになり人間界へと落ちていく白と黒の光。
やがて歪んだ空間そのものが、消滅してしまったのだった。
勇者霊能
バスターダーン!!
1−A
「全ての始まり」
21世紀。
そこは、かつて考えられていたような明るい未来ではなかったものの、人々は平和な日々を送っていた。
それはアシュタロスの乱を乗り切ったGSたちにも言える事である。
穏やかな日曜日の朝。
犬の鳴き声一つしない静かな……。
「先生〜〜!!早くぅ!!早く行くでござるよっ!!」
「わぁ〜〜った!!わぁ〜ったからそう大声出すな!!」
……静かではないそこは、横島のアパートであった。
そのドアの前で尻尾をブンブカ振っているのはシロである。
いつものカットジーンズとTシャツ姿だが、その中身はここ1年ほどでかなりの成長を遂げた、とは彼女の師匠である少年の談。
しかし、頭の中身はまったく変わらず相変わらずのお気楽少女である。
「そうよ、バカ犬。横島が迷惑してるじゃない」
と言ってシロに冷ややかな視線を送るのはタマモ。
白のワンピースを着た彼女もこの1年で穏やかな表情を見せるようになってきた。
相棒であるシロとの仲もそれなりに。
「拙者は狼でござるっ!!大体なんでタマモまで付いて来ているでござるか!?」
「アンタが横島に迷惑かけないかどうか監視しに来てるのよ」
「どうして拙者が先生に迷惑をかけるのでござるかっ!!」
「いっつもかけっぱなしでしょうが!!」
「かけてないでござるっ!!」
「かけてるわよ!!」
「かけてないっ!!」
「かけてるっ!!」
「あ〜、もううっさいぞ!?玄関先でキャンキャン吠えるな!!」
そう言いながら部屋から出てくる横島。
彼は現在18歳。
奇跡的に進級し、現在高校3年生である。
今日彼女たちが彼のアパートを訪れたのは、彼がある資格を取得したからなのだが。
「先生〜〜、タマモがいじめるでござるぅ〜〜」
「ちょっと!!だれがいじめてんのよ!?」
「わかった、わかった。とにかく喧嘩するんなら連れてかないぞ?」
「けっ、喧嘩なんかしてないでござるよ!!そうでござろう、タマモ!?」
「はい、はい。そういう事にしといてあげるわよ。しっかし、良く車なんか買う気になったわね、ヨコシマ?」
そうなのだ。
彼は夏休みを利用し普通免許を取得。
そして無謀にも先日購入した車を受け取りに行こうとしているのだ。
彼の住むアパートをしげしげと眺めたタマモがそう言うのも無理はない。
もっと他に使うべき物があるだろう、と言っているのだ。
「いいだろ?美神さんたちとは別行動する事も多くなったんだし、依頼先に行くまでの交通費だってバカにならないんだよ」
「そのぐらい美神に出させないさいよ?」
「んな事できたら苦労しないわい……」
つまり、別行動中の交通費が自腹な為車を購入してその分を浮かせようという訳である。
「でも先生〜?ガソリン代だって結構高いのよ、って美神殿が言ってたでござるよ?」
「それなら問題ない!!ふっふっふ……見ろ、これを!!」
と言って懐から横島が取り出したのは文珠。
そこに浮かんだ文字は。
”燃”
”料”
「どうだ!!これでガソリン代もタダ!!」
「さすがは拙者の先生でござる♪」
「そうだろ、そうだろ〜〜♪」
ご機嫌な師弟にタマモは。
「バカばっか……」
こらこら。
ちょうど同じ頃、都内のある大学生のアパートで。
「ふふ……ふふふふふ……」
一人の太めの青年がTV画面を見ながらニヤニヤ笑っている。
「ふへへへへ……可愛いなぁ……可愛いなぁ、アルたん……」
涎を垂らさんばかりに、っと言うか垂らしまくりながら某ADVをやっている彼の名は海鮮男 体盛(かせな たいもり)。
見ての通りのオタクである。
「うぇへへへ〜!!萌え〜〜っ!!アルたん萌え〜〜〜〜っ!!」
叫び出したよ……。
彼は三度の飯より幼女キャラが好きなのである。
作者とは関係無さ気……?
「あぁ……実物のアルたんに会いたいなぁ……って言うか、○○たいっ!!△△△されたいっ!!萌えっ!!萌え〜〜〜〜っ!!」
「クックックックック……その願い、叶えてやろうか?」
「だっ、誰!?誰だよ、アンタ!!」
床から湧き上がるように現れた青年。
銀色の長髪を顔の半分に垂らしたなかなかの美男子だ。
「お前のような人間を探していたのだ……お前の夢を叶えてやろう。世界の女どもをお前の思うように作り変えてやるがいい!!」
「え……?えっ……!?」
青年が彼に手を差し出した。
「お前のその陰の気……我らが為に役立ててもらうぞ?クックックックックックックックック……」
その手が輝き、二人を包み込んだ。
「はっ!?この気配は……!!」
別の場所で、空を仰ぎ見る少女。
「しまった……!!もう始まってしまうの!?」
ポニーテールが似合う中学生ほどの少女だが、その瞳は見た目以上の思慮深さを感じさせる。
少女は舌打ちをすると走り出した。
「早くっ!!早く見つけないと!!本当の勇気を持つ人を!!」
「早いでござるな〜、先生♪」
「そうだろ〜?気に入ったか?」
「もちろんでござるよ♪青い色も先生に似合うでござる♪」
「確かにね。ヨコシマっていっつも青ばっかりだから」
「ジーンズは楽でいいんだよ、丈夫だしな〜」
一方、問題なく車を受け取り、そのままドライブへと繰り出した横島たち。
都内を抜け、郊外の山へでも、と車を走らせていた彼らの前に異様な光景が飛び込んできたのだった。
彼らとは逆の方向へ、逃げるように走っていく小学生くらいの少女。
それだけならなんら異様でもなんでもないのだが。
「……なぁ」
「うん……おかしいわね……」
「双子……あ、いや、二十子くらいでござるか?」
そう。
走ってきたのは一人ではなかった。
何十人も走ってくる人影。
その全てが、銀色の髪にひらひらした白いドレスを着た少女の姿をしているのだ。
しかも全員が双子かと思うほど良く似ている。
「って、こりゃどう考えてもおかしいぞ!?」
「ヨ……ヨコシマ!!あれ!!」
「んん!?」
その日、突如として東京市街に出現したバンダナ・リュックサック・メガネ装備の巨大霊。
通常では考えられないほどの霊力を持ち、オカルトGメンでも太刀打ちできなかったこの霊は、後にThe ghost beast 01(通称GB01)と呼ばれる事となる。
MOOOOOOOOOOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEN!!!!
三人の前に出現した巨大な悪霊。
それはおぞましい叫び声を上げながら人々を飲み込んでいく。
「ひっ、人が!!」
「食べられたでござるっ!?」
「待って……、あれを見て!!」
飲み込まれた人々は悪霊の腰の部分に開いた穴から排出されていた。
男性はそのまま。
女性は……。
「みんな、あの少女の姿にされてるでござるよ?」
「無害なのか、有害なのか良く分からん奴だな〜……」
「まったくね……」
しかし三人は知らなかった。
GB01が出現した直後に出動した、西条輝彦氏率いるオカルトGメン部隊がわずか2分で壊滅させられていた事を。
そして西条氏が顔以外美少女にされる、と言う世にも恐ろしい攻撃を受けていた事を。
知る由も無かった。
「クックックックック……さて、遊びはここまでだ」
空中に浮かんだ銀髪の青年が両手を翳した。
その手の中に瘴気が溜まっていく。
「その悪しき心、存分に蓄えただろう!!出でよ、機霊獣!!」
瘴気が眼下の悪霊に向かって放たれた。
MOOOOOOOOOOOOOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEN!!!!
再び咆哮する悪霊。
その全身が鋼鉄の装甲で覆われていく。
「クックック……さぁ、人間の心に絶望を植えつけてやるがいい!!フハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
「な……なんだぁ!?」
「悪霊がロボットになったの!?」
「つ、強そうでござる……!!」
「仕方ないっ!!ドライブは中止だっ!!二人とも、美神さんたちに連絡を!!」
そう言って飛び出していく横島。
その背中にタマモが声をかける。
「ちょっと!!ヨコシマはどうするのよ!!」
「俺の文珠ならなんとかなるかもしれないだろ!?あれを止めに行くっ!!」
「拙者も行くでござるっ!!」
「あっ、こら!!シローーっ!?」
横島を追って飛び出していくシロ。
「ったく、もう!!」
一人残されたタマモはため息をつくと携帯電話で美神に連絡を取り始めた。
MOOOOOOOOOOOOOOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEN!!!!
ビルを破壊しながら進む機霊獣。
降り注ぐ瓦礫の中、ポニーテールの少女が機霊獣へ向かっていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……私一人じゃどうにもならないかもしれないけど……行かなきゃ……行かなきゃ……!!――キャッ!?」
間一髪、落下してきたビルの破片を避ける。
「あっ……痛ぅ〜……」
だが、避けた時に足首を捻ったようだ。
手で足首を押さえ、うずくまってしまう。
「わ……私がやらなきゃ……!!私がやらなきゃいけないのにっ!!くぅぅっ……!!」
全身の力を振り絞るが立ち上がれない。
そして。
MOOOOOOOOOOOOOOOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEN!!!!
ちょうど、機霊獣が破壊した巨大なビルの破片が、彼女に向かって落下してきたのだった。
「キャッ……キャーーーーーーーーッ!!??」
「シロっ!!お前はタマモと一緒に美神さんたちを待てっ!!」
走りながら後方を追走するシロにそう叫ぶ横島。
「でも、先生!!」
「デモもストライキも無いっ!!戻らないと散歩に付き合ってやらないぞっ!?」
「う゛っ……それは嫌でござるぅ……」
「いいから戻るんだっ!!――――っ!?」
その時、横島の目が倒れた少女の姿と、その上に落下するビルの破片を捉えた。
「やっばいっ!!くっ……間に合えぇーーーーっ!!」
握り締めていた文珠をその足に向かって投げる。
”爆”
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
爆発した文珠が破片を粉々に粉砕する。
「今だっ!!」
その瞬間、右手のハンズオブグローリーを伸ばして地面に引っ掛け、一気に収縮させて移動する。
舞い散る破片が少女に当たらないよう抱きかかえる横島。
ズズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!
しかし、その直後、大量の瓦礫が二人の上に降り注いだのだった。
「先生ーーーーーーーーっ!!??」
もうもうと舞い上がる砂埃の中。
少女は自分を助け、気絶した青年を見た。
(この人なら……この人となら……!!)
「う……うぅん……んあ……?こ、ここは……」
横島が意識を取り戻す。
少女は彼の腕を取り、そしてこう言った。
「あの…………私と合体してください!!!!」
(テーマ音楽が鳴り響いてロゴ登場)
「バスターダーンッ!!」
後半(?)へ続く。
あとがき
以前から考えていたGS+勇者ロボなネタです。
目指すはウザイほど王道。
あ、ちなみにガガガとかは出てきません。
最後の部分はCM前のアイキャッチ風……?
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