私は机妖怪、
彼が現れるまで今、思えばわがままなことをしていたと思う。
彼は私を受け入れてくれた。そして、彼のクラスメート達も私を受けてくれた。
私は本当の意味で青春を楽しむことが出来た。
でも、私は机妖怪、学校に縛られる存在、彼が…彼らがいなくなるのをただ見ているだけの存在。
自分の存在が恨めしくて、泣いていた卒業式前夜、彼が私の元にきた。
「俺さ、卒業したら事務所もつって言ってたろ」
「うん」
「だがな、重大な問題が生まれたんだ」
「重大な問題?」
何でも人並みにやってのける彼が言うほどの重大な問題って
「俺はデスクワークが苦手なのだ」
「意外ね」
「そうか?」
「ええ」
明日で会えなくなると思うと泣きそうになった。涙をこらえるためにどうしても口数が減ってしまう。ずっとずっと話していたいのに…
「まぁいっか、そこで俺はデスクワークができそうな奴を見つけたんだ」
「ふ〜ん」
「…軽く受け流しやがって、お前さ、卒業した後どうすんだ?」
「私はここに居続けるに決まってんじゃない」
あなたと離れることが苦しいのに…
「そっか、よかったぁ」
私の中の何かが切れた。
「なにがよがったよ!私は明日であなたに会えなくなるって苦しんでるのによかったですって!?」
「お、落ち着けよ」
「これが落ち着いていられると思う!?私は永久にここに縛られるのよ!あなたにわかる?この辛さが!!仲良くなった人を見送る事しかできない辛さが!!」
『鎮/静』
「あ…」
「ふ〜、人の話は最後まで聞けよ」
別れの言葉なんて聞きたくない。
「うちの事務所で働かないか?」
は?
「なに言ってんのよ!私は学校に縛られた妖怪なのよ!」
「わかってるよ。だから聞きにきたんだ。ここに居続けるっていうならそれでいいけど、事務所手伝ってくれるんなら、ちょっとした裏技使うんだけど」
……
「裏技って?」
「文殊を使ってな」
「失敗しないでよ」
「任せとけ」
彼の手からいくつもの玉が出てきた。
「まず」
『肉』『体』『構/成』
私によく似たっていうか私が現れた。
裸で
突っ込もうとしたけど彼は真剣な顔をしていて気にしていないようだったから手を出すのをやめた。
「次」
『核』『転/移』
机が光の粒子になって、裸の私の中に消えた。
「後少し」
私の方へ一つ玉を投げる。
『憑』
私が裸の私に吸い込まれた。
「ラスト」
『固/定』
「完了」
彼の声を聞きながら私は意識を手放した。
―――――――――――
「ん…」
目を覚ますと彼の顔が真上にあった。これって膝枕!?
「起きたか、体で変なとこあるか?」
名残惜しいけど私は起き上がって体を動かしてみた。
「平気みたい」
「そっか、よかった」
彼は笑った。
「ねぇ」
「ん?」
「一つ聞いていい?」
「なに?」
「何で私のスリーサイズ知ってたの?」
「修学旅行のとき酔ったお前で言ってたの思い出した」
「な!!」
「そんなことより」
彼の手が頭に乗って顔をキスするギリギリのところまで近づけて
「これで一緒に卒業出来るな」
と言って笑った。
「うん」
―――――――――――
次の日、私は卒業証書を持って今まで体にまとわりついていた鎖を断ち切って校門を出た。
今までありがとう!そしてさようなら!大好きな学校!
あとがき
ここの横島はアモンがいるのであの文殊も使えます。
では
おまけ
人間と言うわけではないが、人間に近い姿になって同級生&後輩に告白されたらしい(かなりの数)が、彼女はイエスと言わなかったらしい。