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▽レス始

「GS蛍・極楽大作戦〜その5〜(GS+オリジナル)」

斧 (2005-01-09 03:29/2005-01-09 03:45)
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 ひゅう、と私とおキヌちゃんは結界に近づく。
 近づく間にも、元栓締めたっけ、とか色々浮かんでくる不安を無視して、結界を破る。箒が少し軋んだが、問題はない。
 おキヌちゃんが色々と不安そうな顔をしているのを見て、
「大丈夫よ、不安だけだから」
 と言った。おキヌちゃんはそれに頷き、私の後ろにくっ憑いた。
 庭では草木が伸び放題。屋敷の窓は全て木で閉鎖されている。
 見た感じではただの幽霊屋敷。
 近づいてよく見れば、壊れている所は目立たないように裏打ちされている。
「…誰か住んでいる?」
 仮のアジトかと思ったが、そうでもないらしい。
 窓や煙突からは入れない。だけど、結界を破っておいて、コソコソと行く必要も無いわけだし。
 真っ正直に、玄関の前に降り立ち、蹴ってノックする。
「郵便でーす」
 こう言ってしまうのはちょっと薄い関西の血と言うか。
 予想通り開く気配も無いので、ブラジルのレゲエ頭のおっちゃんから習ったピッキング術で鍵を解除。
 中に、箒を持って押し入った。
『お邪魔しまーす』
 お行儀がいいのねおキヌちゃん。
「周囲全部に注意してね…」
 私は密林の中を行くように、周囲に注意を飛ばした。


「来た」
 スイッチを入れられる直前。少女がそう言った。
 がぽ、と帽子…というか機械が外される。
「来たか、イレギュラー…いや、氷室キヌも居るようだな」
 少女は電気を流すスイッチの横、[止]の上に[少]が付いた漢字(?)の刻まれたスイッチを押す。
 がひょん、と横島の体が上に移動した。
 動く範囲で見れば、なんと椅子に足が。
 それが歩き、少女の後ろについていく。
 はっきり言って無駄だよなぁ、と感じつつ、少女に横島は目を向けた。
「なぁ――あんたの名前はなんていうんだ?」
「言って何の益がある」
 言う意味はない、と言外に言っている。
 確かにその通りだが、横島は言い切った。
「俺が嬉しい!」
 フゥ、と少女はため息をつき、言った。
「ワタシはゴゼン――漢字では御前<おまえ>と書くが――と呼ばれている。アルケミストマスターと呼ばれて久しいな。」
 さすがの横島も、彼女の名前は知っていたようで、
「をを!俺って幸運だ!サインを――と、色紙なんかもってねーな」
 ちっ、と横島は舌打ち。運がねーなー、とキーやんを呪う。
「お前は…」
 くは、とゴゼンは息を吐いた。
「一応ワタシはお前を拷問しているのだが!?」
「可愛いから問題なしだ!」
 またも横島は断言。
 ゴゼンはもはやそれを無視し、扉に歩いて行った。


「なんなのよこの屋敷は」
 私は下を見て呟く。
 明らかにレプリカと思われる人骨。
 それが棘に突き刺さっている。入ってまだ3mの地点だ。
 箒を操って落とし穴の横に下り立ち、箒で先を叩きながら進む。
 落とし穴を回った所、10cmあけてまたも落とし穴。
 超えて安心した所で、というところか。
 スッ、とその横に行くと、唐突におキヌちゃんが叫んだ。
『蛍さん、下がって!』
 直後ににシャンデリアが落ちて来た。
 ガラスが割れる音が馬鹿でかいホールに響き、破片がこちらに飛んでくる。
「さ、【サイキックバックラー】!」
 ばしばし、と破片を盾――前腕に発生させた小さいシールドで防ぐ。
 いくらか服も破れてしまったが、見えても減るものじゃないからOK。重要な部分は見えてないし。
 ふい、と安心したのも束の間。床が割れる。
「時間差っ!?」
 箒で体を持ち上げる。
 直後、落とし穴の壁から矢が飛び出した。底には棘が。
 それなりに手の込んだ罠だ。シャンデリアが落ちてくるのは定番だが、下がった後ろに時間差落とし穴があったとは。
 手こずりそうね、と私は唇をなめる。

 〜1時間経過〜

 巨大なホールの階段(段差高が微妙に違って昇りにくかった)をやっと昇りきり、私が目にしたのは2つのドア。
 右には小さく赤で○、左には大きく青で×。右のドアは洋館らしいドアだが、左はどう見ても日本家屋の襖っぽい。
 微妙な所だ。おキヌちゃんに先に行ってもらおうにも危ない。
 ここは1つ、好きな色――青の×を選んだ。
 したーん、とばかりに襖を開け、箒で先の地面を叩いたり押し込んだりして確認。
 一気に踏み込――
「へぶっ!?」
 鼻に鈍痛。
 ぶつけた物を鼻を押さえながら触ってみると、ガラスかアクリルか、とにかく透明な素材が床から1m40cmぐらいの所に壁としてある。
 踏み込ませてぶつけさせるという物凄く腹の立つ罠。
 ああ、猛烈に悔しい。
 くぐって、また頭を上げ――ごすぅ――また、壁…おキヌちゃんのひんやりと冷たい手がしみた。


「わーっはっはっはっは!!ひーっかかったひーっかかった!!」
 ゴゼンは腹を抱えて笑い転げている。
 横島も一応我慢しているが、明らかに肩を震わせている。ククク、なんて声も漏れてきて、そのうち堰でも切ったかのよーに笑い出しそうである。
 現在彼らが居るのは映画館っぽい部屋。
 横島にはよく分からない機械――DVDプレーヤーを始め、PS2、ワンダースワンその他etcの【今】には無いはずの機器――に囲まれつつ、スクリーンに大写しで流される蛍の活劇を見ていたわけだが。
 現在蛍は後頭部を押さえてしゃがんでいる。おキヌちゃんがよしよーしなんて言いながらやっているのが妙に似合っているが、これはこの娘のキャラだから置いておくとして。
 現在横島の椅子は【足】が収納され、手も自由に動かせる。
 がしょんとばかりに横に飛び出た箱からポテチまで食って、今や観戦ムード。確かに出来る事は無いが、妹が頑張ってる中これはどうかと。
「ふーむ。まともに罠にかかっているのは多いが、深刻な被害などはほとんど受けていないな」
「俺の妹やしなー…」
 今も画面では箒を槍の様にして鉄球を打ち砕く蛍の姿が。
 父親の血か、避ける事は非常に上手い。
 今画面では残った鎖をバク転で避けている。
 振り返した鎖に後頭部を叩かれる辺りは、やっぱり横島家だが。


「ぅあ痛たたたたったた…!!!」
 さっきから何回も後頭部を強打しているためか、すんごく痛い。
 きっと脳細胞が大量に死滅しているだろう。
 ちょっぴり涙目になりつつ、立ち上がって叫ぶ。
「私はっ!負けないっ!!」
 …と、おキヌちゃんをすり抜けながら叫んで少し冷静になる。
 目的と手段が入れ替わっている。
 私はここに(一応)兄貴を助けるために来た。攻略するために来たんじゃない。
 壁に手を付いて、とりあえず頭を冷やす。
 なんとなく兄貴が「あ、冷静になった」と詰まんなさそうに呟いているのが聞こえてくる気がする。


 〜しばらく深呼吸〜


 私が居るのは地下道。
 果てしなくいかにも的なにおいがする。
 私は少しだけ汚れてしまった白き疾風を左手に、先へと歩みを進める。
 曲がり角を曲がると、ドアが見えてきた。
 何か文字が書いてある。
「…ラストボス(はぁと)…」
 思わず口に出してしまった。その文字は角と言うものが無く、そのくせ筆(しかも極太)で書かれていたからだ。
 ふざけるなと言うべきか、呆れるべきか判断が付かない。
『丁寧な人ですね』
「丁寧と言うよりは馬鹿…?」
[失礼なーっ!!馬鹿っていうヤツが馬鹿なんだと日本語辞書に書いてあったぞーっ!]
「『どんな日本語辞書よ(ですか)っ!?』」
 怒声に対し、条件反射的に私は言い返した。おキヌちゃんも一緒なあたり、やっぱり突っ込みどころではある。
[とにかーく!私と横島はこの部屋の向こうに居るーっ!氷室キヌは置いて来んと、こっちの横島に何してやろうか考えてやるぞ!]
「罠満載でしょ、どうせ!そこに行く馬鹿なんか居ないわよっ!」
[馬鹿は来る!]
 …断言された。確かにその通りで――
「――私は、馬鹿だっ!」
 ドアを蹴り開ける。
 おキヌちゃんも憑いて来ようとするが、私は箒で止めた。
「おキヌちゃんは来るなって、言ってたでしょ?」
 にっこり笑って、ドアを閉める。
 広い。高さは30m以上、広さに至ってはサッカーが出来るくらいかもしれない。
 ドーム状の天井は薄く光り、一番上にスピーカーらしきものが据え付けてある。
 反対側のドアに、これでもかと言うほどの南京錠がかかっているのが見て取れた。
 あの先に居るのだろう。
 そして、私とドアを結ぶ直線の真ん中辺りの空間に横線が入った。
 次に縦線。
 線がどんどん折り重なり。
 厚みを持って、存在を持ったそれは、紫の鱗と、涎を垂らす八つ首。長大な尻尾は太く、長い。
 ぐぅん、と20m近くまで鎌首をもたげたそれは、ヒドラと呼ばれる蛇だった。
[悪いが、消えてもらう!行け、実験体パート4529!ヒドラのヒー君!]
 スピーカーからなんだろう、少女の声が聞こえてくる。
 ちょっと脱力感を覚えつつ、叫ぶ。
「首をタワシででも洗って血だらけにして待ってなさいよこのーっ!」
 影に箒を傍らに浮かせ、代わりにある恩人から貰った錫杖を取り出す。
 ギュ、とそれを握り締め、ヒドラに向かう。
 …とは言え。どうやって立ち向かったものか。
 体の大きさは比較にならない。首1つが乗っただけで動くのは不可能、その上相手はおそらく毒持ちだ。
 体重差は絶望的、私は霊波砲なんて便利なものはほとんど使えない。
 ずずり、とヒドラが石畳の上を滑る。
 と。
 びゅわ、とヒドラが飛んだ。
「なっ!?」
 私はとっさにしゃがみ、箒を掴んだ。
 そのまま、箒を前に飛ばす。
 ぐい、と引っ張られた私の体はヒドラの下を通り抜け、さらにそのまま回りこんで背に乗った。
「っこのっ!」
 錫杖を勢いのまま叩きつける。硬く、腕がしびれた。鉄、と言うわけではないが、私の腕力では剣でもない限り貫けそうにない。
[ふはははは!お前程度の腕力では貫けはしない!]
「うるさーい!」
 箒に跨って、そこから離れる。
 錫杖を真下に落とす。真下の影に吸い込まれていく錫杖を見つつ、ちょっと昔を思い出す。
 ――頭を使え。君には、人とは違うものがある。
 そう言ったのは、私の恩人。兄さんの人生の師匠、私の影術の師匠。
 頭を使う。言うのは簡単だけど、少し難しいものだと思う。
 私の頭は、はっきり言って固いと思う。石とは言わずとも、ゴムボール程度だろう。兄さんのような溶けかけアイスクリームみたいな頭じゃない。
 妖怪変化にアプローチできるほど差別がないわけでもないし、いろんな道具の変な使い方を思いつくわけでもない。
 何か、武器になるもの。あれの鱗を貫けるもの。それを固い頭で考える。
 天井。駄目だ。私も潰れる。
 影の中の道具。お札も一応あるけど、一番高いもので30万円。効力も余りありそうにない。
 切り札。箒に回す霊力もなくなるし、集中しなくちゃいけないから、ヒドラが跳んだら危ない。
 ヒドラ自身の牙。とりあえず最後の候補。
 ジュワジュワと融けていく、突進された壁を見ながら思う。
[あ、ちなみにわざと扉溶かさせてこっち着たら君の兄さんはどうなるかは保障しない。ちょうど手元に未実験の薬があるんでな]
「…実験台にしても死なないだろうからやってみようかな…?」
[こらー!さすがに死ぬだろー!お前にゃ見えてねーかも知れんけどな、原始の海がフラスコ一杯に入ってるんだよーっ!ってイヤーっ!?近づけないでー!]
 …さすがにそれはマズイか。
 ヒドラに追い詰められる前に下のほうまで下降する。
 ずるずると石畳を滑っていたヒドラが尻尾を縮める。
 さっきのヤツはこれか。上左右どこにでも避けられるように私は箒に霊波を溜める。
 ヒドラの首が低くなった。
 尻尾の先が爆発したように爆ぜ、ヒドラの巨体がこちらに向けて飛んでくる。
 首を横一杯に広げ、左右では避けられそうもない。
 あからさまに罠を張っている。
 でも、その罠にかかりに行く以外、生きる道は無さそうだ。
「南無三ッ!!」
 ぎゅう、と私を乗せた白き疾風が白い光の尾を引いて加速する。
 それを予期していたヒドラが、3つの鎌首を瞬時に擡げた。
 私は、服の袖の影からお札を全て――しめて二百三十六万円――取り出し、
「破ッ!」
 気合を込めて、飛ばす。
 1つの首の目に、まともに札が当たった。
 次の瞬間、爆発。他の二つの首も硬直する。
 とりあえず逃げられた――そう思った瞬間。2つの紫の霧の固まり――おそらくは毒の妖気――が私に向けて飛んできた。
 思考の息継ぎに入ってしまっていた私は、とっさに反応できなかった。
『ダメッ!』
 ――おキヌちゃんが、2発の妖気弾の直撃を食らった。
 暗転。


「なっ!?」
 ポテチに目をやっていた横島は、その声にモニターを見た。
 その目が見開かれる。
 おキヌちゃんが――上半身しかない。いや、その上半身だって右肩はごっそりとない。
 紫の妖気が、彼女を分解していく。
「お、おキ――」
 何かが横島の中で切れた。
 ばつん、とロープが切れる。
 その傍らに光る珠――[切]と刻まれた文珠がある。
「お前、縄を――」
「除けッ!!」
 叫ぶと同時、走る。
 ドアを[開]き、サッカーコート半分ほどの距離を詰める。
 遅い。遅い。
 そう心の中で叫び、さらに足を酷使。何かが千切れる音と共に、さらに速くなる。
 おキヌちゃんが、どんどん分解していく!
 いつも慈愛の微笑を浮かべる彼女が、苦しみの表情を浮かべている!
「おキヌちゃんっ!」
 それだけを思い、叫んだ。
 蛍が箒ごと落ちてくる。
 それを受け止め、再度叫ぶ。
「おキヌちゃんッ!!」
 右手に宿った、【栄光の手】に文珠を握らせ、伸ばす。
 その文珠には、[蘇/生]と刻まれていた。
 かっ、と文珠が発動し――おキヌちゃんが、落ちた。
『痛ー!」
 ガクン、と横島の膝が折れる。
 口を押さえ、嘔吐を防御。
 足の痛みが、いまさらながらに襲ってきて、暗転。


 がくん、と蛍の体が揺れた。
 それと同時に、横島が意識を失ったかのようにくず折れる。
《俺は、許す気はないからな》
 蛍が右腕を振る。
 彼女が、切り札にしている霊波刀――それが、発動した。


 ――煌きが、ヒドラを断った。


 カメラの映像を見ながら、ゴゼンは震えた。
 震えて、素晴らしい、と呟いた。
「霊力収束率低く見積もって50万%…文珠の3千よりもなお密度が高いか!」
 さらに計測結果を見る。
「霊圧そのものは40マイト程度…!しかし、この値ならば猿神の如意棒すら抵抗できず斬られるだろう!」
 そこまで言ってから、キーボードに指を走らせる。
「イレギュラーにはイレギュラーなりの理由があったか…!!」
 ククク、とゴゼンは笑った。


 ――空港。
 そこから、一人の男が出てくる。
 見た目は30代ほど。金髪で、右目に眼帯。何故かアロハシャツ。左手には黒いコートらしきものを引っ掛けている。
 後ろには黒髪と赤髪の双子か姉妹かと思しき美女。
 さらにその後ろ、10歳ぐらいの金髪美少女。
 周囲の視線(嫉妬・羨望・軽蔑その他複合視線)すら受け流し、ニヒルに笑うその男の名は――Dr.カオスと言った。


早起きしてゲリラ投稿。
現在横島君たちのマイト数は

横島 23マイト
蛍  44マイト
美神 82マイト
おキヌちゃん 32マイト(ただし動かせるのは人魂分の10マイト程度)
ゴゼン 900マイトオーバー
ヒドラ 4000マイト弱

といった設定です。
ゴゼンの名前の由来が解った人には拍手を送ります。
一応オリジナルですが、アルケミスト・マスターって事で。

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