*これは一応本編後の設定ですが、まだ本編が完結していないこともあり、食い違いが生まれる可能性があります。その辺、あらかじめご了承ください。
「あー、もうこうなったら自棄やー!!」
幻海から教師という仕事を押し付けられた横島が覚悟を決めて教室に入る。そこには六道女学院の1年が並んでいた。
「えーと、今日から1週間この学校で臨時講師を務めることになった横島です。」
とりあえず、無難な挨拶をする横島、以前の彼なら女子高生の集団の前に立ってこういったまともな対応をする訳はなかったが、とりあえず、現在の彼には恋人候補が全部で4人(潜在的候補他数名)もいるし、何より、ここでそんな事をした場合、この学校の責任者である六道母、横島を推薦した幻海師範、そして、彼の雇用主である美神令子の3者に制裁を受けることになる。如何に彼とてそんな愚を冒すほど命知らずではなかった。そして彼は次の台詞を発した。
「それでですが・・・・・・俺は一体何を教えればいいんすかね?」
そう言って頭の後ろに手をやった横島に対し、生徒のほとんどが呆れた顔をする。幸いよこの生徒達は1年、つまりは横島が去年、六道でやった事を知らないものばかりだったので、悪印象こそ無かったが、それでも、見かけ凄そうには到底見えず、自分達と大して年の変わらない彼がいきなりこんな事を言いだせば、侮られても無理はないだろう。
「あ、いや、俺はみんなが普段どんな事を勉強してるのか知らないからさあ。まずはその辺を教えて欲しいんだけど。」
生徒の反応を見て慌ててフォローを入れる横島。彼は正当な訓練というものを受けた事が一切ない。妙神山での修業にしても幻海のものにしてもいずれも常軌を逸したものであるし、後は実戦で学んだものである。だから、一般にGSを目指す弟子や学生がどの程度の技術を持っているのか、その辺が一切わからないのだ。
(ほんとに俺に教えられる事なんてあるのか?いざとなったら霊光波動拳の基礎でも教えれば・・・。いや、でもなあ・・・・。)
何を教えていいかわからず霊光波動拳を教えてもいいかと駄目もとで聞いたら実はあっさり承認は得ている。だが、過分な力を与える事は与えられた本人もその周りも不幸にしかねないという事を肝に命じておけとも釘を刺されている。なので、出来れば教えるのは他の事にしたい。
「何を・・・・って言われてましても・・・。それより、先生って本当にあの幻海師範の弟子で優秀なGSなんですか?」
一人の生徒が横島の問いに対し答え、そして疑わしげな表情をした。当初の六道側の予定では講師にくるのは幻海の予定だった。伝説の霊能力者に指示を受けられると言う事で生徒側はずいぶん色めきたったものである。しかし、その後幻海に断られ、多くの生徒は失望し、しかし、その幻海の弟子で優秀なGSと言う事でその失望を取り戻し期待されていたのである。だが、来たのは予想に反した頼りなさそうな男、期待が大きかっただけに失望も大きかったのだ。だが、しかし、次の横島の言葉を聞いて彼女の顔色が変わる。
「うっ、えーと一応二つ星でAランクかな。後、知識の方は結構、駄目駄目だけど、戦闘に関してはそれなりに強いと思うよ。」
その横島の答えに教室中がざわめく。GSの階級には二つある。A~Cのランクと星だ。ランクはその実績と実力を評価されて分類され、星は特別な功績をしたものに与えられる。AランクのGSはおよそ全体の1割、そして星は一つ星をもつものですらそれより更に少ない。現在3つ星を持つのは美神令子と後三人だけである。星は一種の勲章で幻海のように実力は最高クラスなれども星を持たないものもいるし、引退や衰退しても剥奪はされないので実力と直結する訳ではないが、横島の年で二つ星というのがどれほど凄いかは考えるまでも無いだろう。
「ほ、ほんとですか。」
「あ、ああ、一応ほんとだけど・・・。」
「し、失礼しました!!」
驚き、そして恐縮する女生徒。しかし、横島の自信なさ気な様子にいまだ疑わしげにしている別の女生徒が発言した。
「それでは、先生、先生の実力を見せていただけはしないでしょうか?」
「いいけど、どうするの?」
「そうですね。生徒の誰かと勝負してもらえないでしょうか?それなら一緒に私達のレベルの程もわかるでしょうし。」
「ああ、わかった。」
その女生徒の提案に最初戸惑いを見せた横島だったがとりあえずの方針が立った事にほっとする。そして、対戦希望者を募ったところかなりの数の希望者が手を上げた。
(おー、みんなやる気あるなー。おれんとこの高校じゃあ、こういう事を決めようとすると、大抵の奴は黙っちまうっていうのに。)
横島がそれを見てそんな事を思う。今時の高校生なら横島の考えるような反応が普通だが、ここは既に進路を決め、それを一路に目指しているものの集まりである。プロのGSと直接対戦できるようなチャンスを自ら逃すような者はむしろ少数だ。そして、一人ではお互いレベルがはっきりしないと言う事で横島は3名をその中から適当に選んだ。ちなみに選んだ第一基準はかわいい娘だが、感じる霊力や立ち振る舞いからして平均そうなのを二人、優秀そうなのを一人と考えて選んでいるあたり、彼も多少は成長したと言えるかもしれない。
「準備はいいですか?」
「あ、ああ・・・・」
屋外の試合場に移動した横島達、その相手は横島の試合を希望した女生徒『倉坂瞳』である。彼女は学年3位の成績を持った優秀な生徒だった。それどころか、3位に甘んじているのとて、上二人の出来があまりに良すぎるからであり、通年なら主席になっていてもおかしくない実力の持ち主である。そして、彼女の言葉に横島は緊張した面持ちで答える。何故なら・・・・
「あの人、ほんとに強いのー?」
「あ、あいつ去年、美神おねえさまについてきた痴漢男。」
「倉坂さん、ぼっこぼこにしちゃってー!!」
周囲に響き渡る声。横島達は今、全校生徒に囲まれ観戦を受けていた。
「うー、やりにくいなー。」
横島が唸る。何故こうなったかと言うと試合場を使用する許可を取るために六道理事長に会いに行った横島に対し、彼女は急遽全校生徒を集め、さらに前年度の総合成績が学年トップだった2年、3年から主席生徒を選び、横島と対戦するよう命じたのだ。理由は横島に対する生徒の信頼性を挙げるため。横島は何も1クラスのみを担当する訳ではなく、クラスを変えるごとにいちいちその実力を疑われては授業にならない。そこで、一度全校生徒の前で横島の実力をはっきりと見せようというのがその理由だった。それに対し、横島はそれでは『相手の娘がさらし者みたいでかわいそうだ』と主張したが、『だからこそ学年主席の生徒を選んだ』のだと六道理事長は言った。2年、3年の主席生徒が相手ならば横島が負けて恥な相手なのかはっきりわかるからである。
『もっとかっこいい人がよかったなー。』
『美神おねえさまが来てくれたらよかったのに。』
『幻海師範に教わってみたかったなー。一生を独身で過ごした伝説のGS。自立した女の鏡って感じよね。』
観客の声のほとんどは瞳に対する声援か、横島に対する不満である。だが、応援の声も僅かにあった。
「横島さん、がんばってくださーい!!」
「先生、がんばるでござる!!」
「まっ、恥かかないようにね。」
「ま、氷室さんと雪之丞の御知り合いですから一応応援してさしあげますわ。」
「あたしも、一応応援してやるよ。」
今年3年になったおキヌと今年六道に入学し、現在さまざまな事情から美神事務所に住んでいる人狼のシロ、九尾の妖狐タマモ。そしておキヌの友人の弓と一文字である。ちなみに彼等の前年度の学年順位と入学試験の順位はおキヌ3位、シロ19位、タマモ2位、弓2位、一文字51位である。おキヌと弓はアシュタロス戦での怪我などによる欠席が響き、主席を逃し、シロは実技は抜群だったが学科の方の成績が響いてこの順位になっている。
「おー、おキヌちゃん達、ありがとー!!」
ブーイングだらけの中でのこの感性に横島が感激の涙を流す。そして試合が開始された。
(後書き)
教師者難しいですねえ。このssでは横島の性格をなるべく極端に変えないよう意識しているのですが、こんなもんでどうでしょうか?一応後2話で完結。続きは評判次第で考えます(本編もありますしねw)
追記:
横島のランクですが、よく他のssではGSランクD・Eで半人前みたいな扱いになっていますがよく考えたら新人を抜かせばどの業界でもプロの免許持ってて本気で駄目な奴ってそうはいないよなあ(いてもすぐ消えてくだろうし)、と思ってあえて3ランクにしてみました。後、下に幻海が暗黒武術大会に出た時のメンバー、考えたの載せときます。
<神凪志郎>
退魔の名家、神凪の本家で中堅の術者だった男。才能を補う為に他流派の技を学び炎の物質化を為した「炎の矢」「幻惑の炎」等を習得し、他にも多くの技巧を取得した。霊力(炎の強さ)でこそ劣るものの総合的な実力で神凪の先々代当主をも超える戦闘力を持っていたが、身内から他家にこびへつらう男と言われ、またその強さを当主から嫉妬され、一族を追放される。
<六道冥夜>
凛とした性格の女性。性格は基本的にクールだが、実は優しく内に熱さを秘めた激情家。頭もよく彼女と幻海がチームのリーダー的存在だった。母親がいわゆる典型的六道だった為、それを反面教師にして過ごし、よく面倒を見ていたため、しっかりした性格になった模様。惜しくも若くして病気で死ぬ。
<九条友鷹>
喧嘩早く、感情の激しい男。関西弁を話す。霊力で身体を強化する術を使って戦う。基本的な戦闘力は他のメンバーに比べやや低かったが底力が強く、チームのムードメーカー的存在だった。
役割的には纏めるとこんな感じ
戸愚呂 エース
幻海 主将
冥夜 主将補佐
志郎 中堅
友鷹 切り込み隊長
戸愚呂兄 補欠