清しこの夜
横島がピートを連れて事務所にやってきた。
ピートと事務所の車で唐巣の教会へクリスマスのご馳走を運んで貰う為だ。
美神も弟子を持つ様になったせいか、師匠である唐巣に気配りをする様になった。
美神は別にケチで今まで唐巣に差し入れをしなかった訳では無い。
もっと酷い理由だ。そういった発想自体がなかったのだ。
唐巣は「思いやり」や「労り」といった教えを説いたのだが、当時の美神はGSとして関係ある事しか聞く耳持たなかった。当然といえば当然だが。
やはり、まだまだ未熟だったのである。
しかし、おキヌという善良な弟子が毎日。食事の用意から洗い物、洗濯に掃除とやってくれる様になり変わった。
おキヌの方は美神や仕事も好きだが、自分が世話になっている「感謝」の意味もあって楽しく熱心にやっているのだ。
おキヌのバイト料は、GS免許を持っている横島より高い。
手料理と身の回りの世話いうのがポイントだが彼女の性格が大きい。
美智恵が死んだと偽っていた為、昔から外食が多く身の回りの整理などしない美神に取って、おキヌの存在は大きい。
しかし、おキヌの献身は銭勘定抜きだ。
もし、そうなら美神に分からない訳が無い。
美神は相手の本音を読む。
だからこそ、おキヌの心が嬉しくもあり、苦しくもある。
報酬として金を払っても気が済まないのだ。
これによって美神は「感謝」というものを思い知らされた。
唐巣が知ったら、おキヌを聖母と呼んで崇めただろう。
魔鈴にクリスマスディナーを依頼して、おキヌに今晩くらいは楽をして貰い。一緒に頼んだ分を唐巣とピートに食べて貰うのだ。
唐巣もピートも素直に喜べなかった。。
美神を知っているから。
クリスマスのミサも気もそぞろで、せっかくのご馳走もろくに味わえずに食べた。
「いったいどんな裏があるんだろう?」
とビクビクする日々を送る事になり。
後日、美神が困った時にアテにするまで悩み。
唐巣は髪がさらに後退する。
人間、日頃の行いが大事だが、神父はたまには美神を信じてみよう。(年に一度くらいは)
雪之丞やタイガーは、それぞれ今夜の為に矯めた稼ぎで彼女を連れて魔鈴の店に行った。
2人共食事の後の「ムフフ」な期待で頭が一杯。
「「今夜こそは大人の階段を昇る。」」
と、意気込んで。
横島も教会への料理の配達を終えて事務所の分を運んで来た。
事務所一同で仲良くご馳走を食べてプレゼントの交換となる。
と、いっても横島以外は彼が外に出ている間に済ませていた。
美神が横島以外の3人に渡したプレゼントが破格だった為、彼に気ずかれない様にしたのだ。
美神がおキヌに渡したプレゼントは時価数十億円の精霊石で出来たネックレス。
シロとタマモには事務所のテレビに繋ぐPSXとゲームソフト約20万円。
そして、横島にはPSXを買った時に引いたクジで当った中古のPSとゲームソフト推定2千〜4千円。
全員一緒に渡すとさすがにマズイ。(横島なら中古の売買に詳しいハズ)
おキヌは全員に手編みのセーター。
シロはタマモと共同で美神に宝クジを、おキヌには「お使い券」(代わりにお使いに行ったりする)
シロタマは横島に渡すプレゼントは別々で。
シロはなんとマウンテンバイク。どうやら散歩用らしい。金の掛かったプレゼントだが横島が喜ぶかどうか。
タマモのプレゼントは袋に入っていて見えないが、実は美神の使用済下着。大変喜ばれるだろう。(後日美神がない事に気付いて勘違いされ、普段よりシバかれる事になる)
横島が皆の為に用意したプレゼントは。
シロには肉屋に頼んで手に入れた国産牛の骨500円分。
タマモには豆腐屋で買った厚揚げ500円分。
それぞれ喜ばれた。
そして、普段から食事や美神のシバキの仲裁で世話になっているおキヌには感謝の気持ちで
「天使のブラ」
胸の周りや背中の肉を集めてカップに入れるという謎のモノ。
サイズもピッタリ。
値段は結構高い。
雇い主で師匠でもある美神には日頃の観察結果から
「いつものモノよりカップが少しだけ大きいブラ」
どうやらまだ成長している様だ。
事務所から叩き出された。
(後日、横島が確認した所2人共ちゃんと使っている様だ。)
シロがくれたMTBでプレゼントを持って幸福荘に帰る。
小鳩一家やカオスは、どうやら大家の婆さんと賑やかにやった様だ。
雪之丞やタイガーはまだ帰ってない。
まだ帰ってない2人の事を考えると・・・。
「許せ〜ん!高校生があ〜んなコトやこ〜んなコトなど!神が許しても俺が許せん!」
と1人で喚く。
部屋に帰って貰ったゲームをしようにもテレビが無い。
テレビを買う予定の金でプレゼントを買ったのだ。
布団や食器、鍋は買ったが炊飯器はまだ。身一つで焼け出されたから大変だ。
ご馳走はしっかり食べたが、自分1人で過ごすのが今晩は特にツライ。
暫くしてピートがやって来た。
どうやら一心不乱に神に祈る唐巣から逃げて来た様だ。
横島なら多分1人だろうと失礼な事を考えて避難してきた。
だが男2人で、クリスマスの夜をテレビも無い部屋で過ごすのは寂しい。
廊下をドカドカ歩く音がして横島の部屋の戸が開く。
雪之丞とタイガーだ。
2人共ビールやポテトチップの入った袋を抱えている。
話を聞くと横島は喜んだ。
「正義は死なず!神は我らを見捨てなかった!」
雪之丞もタイガーも食事の後、「御休憩」とか表示してあるホテルに行く気だった。
彼等の稼ぎでは魔鈴の店で精一杯で、この時期の割り増し料金になっているマトモ?なホテルは手が届かない。
かおり、摩理共に食事に満足し、楽しい一時を過ごして
「さあ。これからが本番。」
とはいかなかった。
弓かおり、一文字摩理。どちらも自宅から女子高に通う高校生だ。
アチラの事に興味はあるが、雰囲気を楽しむ年頃でもある。
嬉しそうな顔で、
「「御馳走様。お休み。」」
と言われては雪之丞もタイガーも黙って手を振るしかなかった。
ふてくされてスーパーでラブホ代を使ってビールやツマミを買い横島の部屋にやって来たのだ。(2人共未成年に見えない)
その後、場所をタイガーの部屋に移して横島の貰ってきたゲームをやりながら男だけの宴会が行われた。
清い夜は過ぎてゆく。
帝様。紫竜様。リ−マン様。九尾様。Dan様。MAGIふぁ様。
感想ありがとうございます。
今回の話はタイミングが遅れてしまいました。
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