リポート2 さあ、始めよう!皆の笑顔を守る為の戦いを!! その2
ベリアルとの死闘を繰り広げた横島は、戦いが終わり倒れると同時に気を失ってしまった。
その様子を離れてみていた雪菜とエミは、横島に走り寄って行った。
「ちょっとおたく!大丈夫なワケ!?」
「主様!」
雪菜が横島の事を『忠夫様』と呼ばない理由は、
事前に横島が自分の名前を呼ばない様に行っていた為だった。
横島に駆け寄った雪菜は、外傷が腕の傷以外は大した怪我で無い事を知って安堵の溜息を吐いた。
エミはと言うと、眼に涙を溜めて横島を睨んでいた。
横島の腕の治療を雪菜が始めると、暫くして横島は気が付いた。
それを見たエミは、溜めていた涙を流しながら横島に近づき、声を荒げて問い掛けた。
「何で?何でおたくは、見も知らない私の事なんか助けたワケ!?
もしかしたら死んいでたかも知れないのよ!?」
横島の手を握りながらエミがそう言うと、横島はエミの頬に手を当てて話しかけた。
「あ・・れ・?エミさ・・ん、また泣いて・・るんですか?
あんまり・・泣くと、美人が・・台無し・・・ですよ?」
横島は頭がはっきりしていないのか、途切れ途切れに話していた。
だが、頬に当てた手でエミが流す涙を拭うと、その手を頭に持って行き優しく撫でた。
その横島の手の暖かさを感じ、今頃になって死への恐怖を感じたのかエミは震えだしてしまった。
横島が自分の名前を言った事にも気付く事無く。
そんなエミの頭を横島は片手で抱き寄せると、子供を安心させるかの様に優しく背を叩き、
頭がしっかりして来たのか、人を安心させる横島独特の声で話し掛けた。
「もう大丈夫ですよ。ここに襲って来る奴はいませんから。
それに、襲って来ても今みたいに俺が守ります。だから安心して下さい」
横島にそう言われたエミは安心してきたのか、少しずつ体の震えが収まって行った。
しかし背中に回した手は優しく叩き続け、エミは頭を胸に押し付けられた時に掴んだ胸の服を握り続けた。
それをヒーリングが終わった為、少し離れて見ていた雪菜は笑顔を浮かべている。
・・・笑顔。・・・・・・笑顔?・・・・・・・・・笑顔ねぇ~。
まあ、後ろに阿修羅を背負っていても笑顔は笑顔だ!!
「・・・悪かったわ。助けてくれてありがとう・・・・・・」
完全に体の震えが収まったエミは体を離しながらそう言った。頬は真っ赤に染まっていたが。
そんなエミを横島は優しい眼差しで微笑みながら見ていた。
それを間近に見てしまったエミは、
ボンッ
と音を立てて頬だけでなく首まで真っ赤に染めて俯いてしまった。
それを見た横島は慌て出した。
「えっ!?ど、どうしたんですか!?」
「な、何でも無いワケ!!」
「そ、そうですか。えっと、怪我はありませんか?」
エミに怪我をしたか聞くと、エミは俯いたまま少しだけ動かして頷いた。
「そうですか。良かった・・・。(この過去はエミさんの心に傷を負わせたからな)
もう帰れますか?」
そう聞くと、同じ様に頷いた。
「分かりました。じゃあ、俺ももう行きますね?」
「あっ・・・・・・」
横島がそう言うと、エミは悲しそうな顔をしながら顔を上げるが、
既に横島は立ち上がっていてそれを見逃してしまった。
立ち上がった横島がエミに手を差し伸べた時には、
エミも何時もの表情に戻していて横島に気付かれる事は無かった。
そして、エミは横島に再度お礼を言って倉庫の入り口に向かうと、
横島に名前を聞いていなかった事を思い出して、振り返りながら聞くと其処にはもう誰もいなかった。
「あっ!そう言えば、おたくの名前は何て言うの?
・・・あれ?何処に行ったの?出て来くるワケ!?」
辺りを見回しながらそう言うと、何処からか声が聞こえて来た。
『すみません。今は名前を教える訳にはいかないんです。
でも、きっとまた会えますよ。きっとね・・・』
「ちょっとどう言う事!ちゃんと説明するワケ!!」
しかし、エミのその言葉に答えるか暫く待っていたが、それに誰も答える事は無く。
もう答える事は無いと知ったエミは、彼が最後に言った『また会える』と言う言葉を信じ、
自分が彼と会った時に力を付けて彼を驚かそうと決意をすると倉庫を後にした。
~~再び東京タワー展望台の上~~
「さてと、これでエミさんの怪我は未然に防げた筈だ。後は・・・・・・。
いい加減機嫌を直してくれよぉ~、雪菜ぁ~」
「分かってます。忠夫様が何の為にこの時代に帰ってきたのか・・・。
でも、頭では理解出来ていても心が嫌なんです!
理解は出来ても、眼の前で見せられたらいくら私でも嫉妬してしまいます!
忠夫様は私の気持ちを知っている癖に・・・・・・クスンッ・・・」
雪菜はそう言うと、後ろを向いて眼に溜まった涙を拭った。
横島は雪菜が声を荒げて言ってくる事を驚いていたが、
雪菜が後ろを向いて涙を拭ったのを見て、後ろから抱きしめて話しかけた。
「ごめん雪菜。でも俺は・・・」
「分かっていますよ。忠夫様は『皆を愛している』と言う事は。
でも、ちょっと意地悪をしたくなったんです。眼の前であんな事を見せられたんですから」
雪菜は後ろから横島に抱きしめられたまま夜空を見上げながらそう言うと、
言われた張本人である横島は苦笑いを浮かべていた。
「意地悪はここまでにしておきますね?でも、前に言いましたよね?
私は嫉妬深いですよ?って。・・・まあ、それは置いといてですね。
忠夫様が高校生になるまで、私は何処にいたらいいのでしょうか?」
「(まさか、ここまで嫉妬深いとは・・・)あ、ああ。その事な?
その事については明日の朝だ。取り敢えずは家に戻らないとな。
親父達に俺がいない事に気付かれる前に戻らんと本気でヤバイ」
横島はまだ気付かれていないと思っているが、
既に両親は横島が部屋にいない事に気付いていて、居間で話しながら横島の帰宅を待っている。
さすがは最強の母である百合子と素手で悪霊を消滅させた父の大樹である。
そんな事は知らない横島は文珠を二個使い部屋に戻った。
これで、横島の文珠のストックはエミの所で『伝』『言』と『転』『移』で四個使い、
二十六個あったのが残り十二個となってしまった。荒使いである。
部屋に横島が帰ってきた事を気付いた百合子は、
気配が二つある事に気付いたが取り敢えずここに呼ぶ事にし、二階へと上がっていった。
さて部屋に雪菜と一緒に転移した横島は、今の霊力では同時転移はうまく出来なかったのか、
布団に雪菜を押し倒した体勢になっていた。
部屋の中がそんな状態になっているなど知る由も無い百合子は、ドアを空けて話しかけた。
「忠夫いるんでしょ?ちょっと入るわよ?
・・・・・・忠夫、そちらのお嬢さんはどなたかしら?」
「げっ!?お、お袋!?!?こ、こちらの女性は!?」
「そのお嬢さんは?」
部屋に入ってきた百合子が最初に見た光景は、横島が雪菜を押し倒した体勢になっていて、
お互いが頬を赤らめながら見つめ合っていると言う光景だった。
そして、百合子に見られた事で焦りに焦りまくった横島は、
どもりながら、何とかこの状況を説明しようとしていた。
・・・そんな光景なら百合子の額に青筋が浮かんでいても仕方ないだろう。
「はぁ~・・・まあいいわ。そちらのお嬢さんと一緒に下に降りてらっしゃい。
下で説明して貰うわ」
「・・・な、殴りまくっといてそれかよ」
頑張って説明しようとした横島を取り敢えず殴った百合子は、
部屋を出て行きながらそう言うと一階へと降りて行った。
部屋の中には血だらけの横島を心配する雪菜と、痙攣し続ける横島だけが残されていた。
あとがき~
今回の話のちょっとした説明で~す。
エミが横島がいなくなった後に、『隣に立つ為に』とか『一緒に戦いたい』(殆ど同じ意味ですけど)
と考えなかったのは、会って数十分で人を好きになるか?と聞かれたら、微妙ですよね?
つまりはそう言う事です。
それではまた次回お会いしましょう~。
すみません。今回はレス返しは無しと言う事で(泣