このいじめの状況を目の当たりにして 今まで一方に吹き付けていた 「いじめ」の風向きの変化に、クラス中が恐れ慄く。
「今度は自分がやられるのではないか?」
一種異様な緊張感が、教室内を支配する。
当時、Yにホウキンのターゲットにされた者が 泣きながら嗚咽交じりに「許して」とYに懇願していたのを思い出す。 幸い、Uと少しだけ関係があったので彼は免れたようだが、 別れ際、Uとの関係を必死に繋ぎ止めようと 卑屈なほどUに 「さようなら」を繰り返し伝えていた。 ・・・もう痛々しいぐらいにね。
それまで、誰か一人をいじめの生け贄にして、安心を得ていた傍観者も ここに来て、Uとの関係が築けていない「ただの傍観者」では 安心して傍観も出来なくなっていたのだ。 そんな者達にとって、この流れは ”生きるか、死ぬか”の死活問題だっただろう。
クラスの中で、ホウキンを行われた者と そうでない者の扱いは、天と地の差ほどあるのだから。