呑み込まれてどれくらい経っただろう…
私は彼女の体内で胃壁に抱きつくようにうつ伏せになっていた。

意外にも不快感は感じなく、彼女の体内は何故か心地よい空間を生み出していた。
そうしてる間に胃壁からねっとりとした液体が滲み出てくるようになった。
心地よさに気を奪われていたのか、私は胃液の存在に気づくのが少し遅かった。

体の力が一瞬で抜けるような感覚に襲われたからである。
体を動かそうにも力が入らず、全く動かせない。
そうしてる間にどんどん私の力は抜けていった。

力が抜けていくと同時に私の意識もどんどん沈んでいった
その直前私は理解した、彼女が何を糧として生きているのか。
彼女は生気を自分の糧として生きている。
それも相手の命をギリギリ奪い取らない程度まで。
それだけで彼女は生きているということに。




それを理解した時点で私の意識はぷつりと途絶えた。






再び目が覚めた時には私は彼女の暖かな腹の上で横になっていた。
あれから私のことを吐き出してくれたのだろう。

彼女は私のことをじっと見つめて
「あなたの生気、とても美味しかったわ。」
と言って私の頬を一舐めして、
「また食べさせてね。」
と言った。



それから私は彼女に村の近くまで送ってもらった。
無事に村に着いたのはいいが、村の人たちは私のことを見るなり無事に戻ってきたかと私を歓迎してきた。

それから数日、私は今こうやって手記を書いている。
生活も元に戻って、今まで通りの生活を過ごしている。

でも出来ることならもう一度彼女に会いたかった。
だから私は決めた。
元の生活に戻れなくなってもいい。
彼女と共に過ごせるならすっと居たいと。

そして私はこれから彼女の元へとまた向かうのであった。




―――手記はここで途絶えている。

…かなり古い手記だった。
おそらくこの後、その村人は彼女の元で暮らしていたのだろう。
相当幸せそうだったに違いない

そして私もこれからそうなる運命であることは間違いなかった。


何故なら私も―――


「ふふ…また獲物が一人…」

 

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