「………ん……」 「……起きたのね……?」 アルが目を覚ますと、そこは二人の出会った……洞窟の中だった。 ライラはアルの看病をしていたのか、薬草などがあちらこちらに落ちている。 「あのね……アル」 「僕……ライラさんの迷惑ばかりかけて……ごめんなさい……ぐすっ」 「……ほら、泣かないの。とりあえず、今だけは私の話を聞いて……?」 ライラはアルの元から去る……最後の話をするために。 しかし、アルは話し出す前に泣いて謝ってくる。こちらがアルと過ごすことを望んだばかりの結果、どちらかといえばこちらの方が悪い筈なのに。 しかし、アルをこのまま泣かせておくわけにもいかないライラはそっと抱き上げて、顔を見せる。 そのお陰もあり、アルは静かに泣き止み、怯えることもなく話を聞く姿勢をとってくれた。 「……アル、私は龍族……貴方が見たように、あのような水龍なの 掟に従い、龍の姿を見た獣人は食べなきゃいけないの…… 単刀直入に言うと…龍族は獣人とは仲良くはできないのよ……」 「なんで……?」 アルはきょとんとしながらライラを見つめる。 その様子にはライラも目を点にする。 「なんでって……分かってるの…!?アルを喰らう力を持つ龍よ……!? いつ食べられるか分からないくらいの抗うことの力を私は持っているのよ…!?」 「クス……そんなの、僕は誰から見ても餌対象なのは分かってるよ……? でも、ライラさんはそんな風に見てないでしょ……? 僕を呑み込む時だって謝ってたし」 「……はぁ、やはり子供ね……ふふっ、でも龍族の掟は暗黙のルールなだけよね。 破ったところで、群れを作らない龍族には罰されることもないわ」 アルの面白い考えに、ため息を着くと共に、笑みを浮かべる。 「アルに最後に問うわ……私がここから去るのが良いか……私と共にここで住み続けるか……どっちが良いかしら? ふふっ……住むとなったら、アルは私が思わず食べてしまうかも……」 「アハハ……!ライラさんにはそんな気もないのに……!うんっ!ライラさんと一緒に住むよっ♪」 「あら……そんなこと言っていいのかしら?舌の上で暴れても何も動けなかったくせに……♪」 ライラはピンと、アルのおでこを指で弾く。アルも初めは痛そうにしていたが、直ぐに二人は顔を見合わせて笑っていたそうな……。 ―――――――あれから。 「ライラさんは泳ぎが上手いね……♪まるで魚みたいっ♪」 殆ど泳げないアルはライラの背に乗り、二人で水の上を駆ける。 「アル、魚じゃないと何回言えば分かるのかしら……?深いところに置いてこようかしら」 「わわっ!?ごめんなさいっ!」 スイスイと流れの速い滝の近くまで寄っていくライラにアルは慌てて謝罪をしたそうな。 こうして、アルとライラのお話はおしまい。 あまり近づくと、ライラに怒られちゃうからね。また機会があればまた今度。 森の奥深く。白い狐を見つけたら追ってはいけない。 その先には大きな水龍が待ち受けているのだから……。 もし、追いかけたのなら大きな水の波紋だけを残して全てを呑み込むことだろう……。 |