そして、次の日・・・ 「ブイゼル、お前は荷物持ちでいい。余り無茶をするなよ。」 オーダイルがそう言って、ブイゼルの頭を撫でる。・・・表情は険しいが、この二人は今まで殆ど冒険に失敗したことがない。 自信を持って、荷物持ちとして着いていこうと自分に気合を入れて、-マグマのちてい-へと歩みを進めていった。 『うぅ・・・暑い・・・。』 水タイプだからとは言ったものの、暑さには弱い。しかし、前の二人が襲ってくるポケモンを軽々と倒していることから、自分の気苦労は荷物の重さと背後の確認だけになった。 そして十数階降りた階段の前で、カメックスの提案により休憩をとることになった。 辺りからはマグマが発する熱が漂ってきて、いくら暑い所に慣れたポケモンと言えども汗は出てくるだろう。2人とも疲労の色は隠せないようで、リンゴを食べる早さもかなりゆっくりになっている。 『あ、あのっ・・・大丈夫・・・ですか・・・?』 恐る恐る聞いてみる。カメックスはその心配そうな声を聞いて、ブイゼルの頭を撫でる。 「こんなコトは良くある。まあ、オーダイルも辛そうだが・・・今まで、俺たちはこんな困難も乗り越えてきたから、大丈夫さ。」 『は、はいっ!』 一途な心と言うのは疑うコトを知らず、言われた事を鵜呑みにしてしまう。この2人への憧れがその言葉で更に膨れ上がったのか、それこそ-期待の眼差し-で見ている。 そんなブイゼルにカメックスは、わしゃわしゃと頭を撫でてから立ち上がり、オーダイルに何かを耳打ちすると、指示を出すようにカメックスが二人に 「行こう。これから先、安全な場所に出るまでは休憩は無しだから、疲れたなら言えよ」 「ふん、この俺が疲れる?・・・ブイゼル、お前は疲れたなら俺に言えよな。」 そう告げ、二人は階段を降りていく。置いていかれないようにと、ブイゼルもその後に続いた。 地下二十階付近に近付くと、更に暑くなってきた。ふと、通路の横を見るとマグマが通路を埋め、熱気を発している。・・・落ちたらただじゃ済まない。と思いながら、二人はそんな事も気にせず現れる敵を倒して行く。時折渡されるどうぐには見たこともないようなモノまであり、それがお宝への希望を膨らませていっている。 ポタ、とブイゼルの頭に何かが垂れる。 何かと思い、その垂れたモノに触れる・・・粘っこい。それに、何か生暖かい。 だが、オーダイルは前を向いて、歩いている。・・・まさか。 腹部に鋭い痛みが走るのと同時に、視界が0・・・いや、赤く染まる。しかも、その赤い何かはゆっくりと脈動していて、かつ背中にはそれより早く蠢きながら先程頭に垂れてきたのと同じ液体の感覚がする、何か柔らかいモノがある。 この感覚は。 街に居たときだって、狙われたコトもあった。だが、街だから制止する人も居るし、そんな事をしてしまえば警察にだって狙われる可能性だって有り得る。 だが一度、町外れで襲われたコトはあった。 あの時は誰かが通りかかってくれたから助かったものの、今現在のこの感覚はそれと酷似している。 此処はまだまだ何があるか分からない未開の地でもある為に、秩序が成っていない場所・・・つまり、何をしても許される弱肉強食の世界。弱き者は負け、強い者だけが生き残る世界では、必ず食物連鎖というのが発生している。 「捕まえたぜ、おチビちゃん・・・」 聞き慣れない声と共に、背中にある柔らかな何かが蠢き、身体を這って行く。 これは舌であると思って間違いないだろう。・・・誰かの口の中に上半身が閉じ込められている。背後から銜え込まれたせいでこの体位で抵抗もままならないこともあるのだが、いずれにせよ早く抜け出さないと危険なことは変わりない。 『んぅっ・・・だ、出して!』 「可愛い声で鳴くじゃねぇか・・・だが、逃がす訳にはいかんなぁ・・・」 その這っている舌が突然顔に巻き付いて顔を覆われ、締め上げられると声を出すどころか息さえ苦しくなってくる。 口からはみ出している下半身をバタつかせ、手でも舌を引き剥がそうとしているものの、一向に離す気配が見られない。味わうように蠢く舌に嬲られ、段々と体力が奪われていくのが自分でも分かっているが、抗おうとする力も少しずつ抜けてくる。 『う・・・ぅ・・・』 「へへ・・・弱ってきたみたいだな、おチビちゃん。・・・そろそろ、呑み込ませてもらうぜ。」 ゆっくりと身体が傾くのが分かる。・・・顔を上に向けているのだろう。 「そうはさせねぇ・・・オラァ!」 「んぐっ!?」 突然大きな衝撃が走り、それと同時に身体が宙に浮く感覚がした。しかし、その直後何かに抱きとめられる。見上げれば、オーダイルが自分の身体を受け止めて抱いていた。 「ハガネールか。・・・危なかったな、ほら。」 オレンの実を口に運んでくれる。体力がみるみるうちに回復して、直ぐに歩けるようになった。 『あ、あの・・・ありがとうございます。』 ペコリと頭を下げて、オーダイルにお礼を言うと微笑んでからカメックスが階段の前で待ってるぞと言って歩き始める。ブイゼルはふらつきながらも後をついて、それからカメックスに会うと水鉄砲で身体の唾液を流してくれた。お礼を言うばかりだが、二人はそれだけで良いと言って更に深部へ。 そして、地底の奥深く・・・少し開けた小部屋に出て、それからカメックスがこう言った。 「俺達は先に行ってるから、後からゆっくり着いてくればいい。・・・多分、直ぐに最深部に到着するだろうからな」 その一言は嬉しかった。・・・荷物も、食料と水を置いて持っていってくれると言う、かなり 重かった荷物が無くなって少し気も楽になる。 「じゃ、後からゆっくり来いよ。・・・待ってるぞ。」 二人は先に行った。それを見送ってからリンゴをかじり、周囲を見回す。・・・どうやら、誰も居ないようで、少し安心しながらリンゴを齧る。 二人はもうお宝のある部屋に着いているだろうか。・・・どんなお宝なのか、見当もつかないためにそんな気持ちが出てくる。リンゴを食べ終わり、後を追おうとした直後・・・ |