無謀だった。

と言うより、自分はこの時の為に連れて来られたのかもしれない。ただ一つだけ分かったのは、自分はこの先の運命から逃れる事は出来ない。

 

『絶望』

 

その言葉がこの状況を説明するには十分だった。

 

事の始まりは数日前。

 

『え、ええっ!?ぼ、ボクなんかが着いてっていいんですか・・・?』

 

驚きと嬉しさの表情が入り混じった顔をしながら、カメックスとオーダイルの顔を見上げる。

 

「ああ、いいんだよ。お前にもたまにはお宝を手に入れる喜びを知って欲しいからな。」

 

オーダイルが笑顔でそう告げ、カメックスも頷く。・・・下働きの条件で、このチーム・・・探検隊 ウォーターズ に入れてもらったんだから。

それから数年。毎日のように街を歩き、情報を仕入れてはリーダーであるカメックスに報告する。彼らは二人で不思議のダンジョンに行き、喜んでお宝を持ち帰ったこともあればガセネタだったと悔しがり、ブイゼルに八つ当たりする事もしばしば。

ブイゼルに対しては厳しく、そして体調を崩しても無理矢理働かせたりとスパルタのような毎日だった。

 

そんな彼らが優しくブイゼルにそう言う。本来なら疑うべき態度だが、初めて言われた事・・・しかも、冒険の話となれば彼の中で抑えていた何かが開放されて、小さな身体に留めきれなくなった気持ちが溢れているのであろう。

 

『ボ、ボクでいいなら・・・精一杯がんばります!』

 

オーダイルの口が一瞬歪んだように見えた。が、ブイゼルはその事に気付かない。

嬉しさに身を震わせているブイゼルに、カメックスが

 

「よし、出発は明日だ。・・・今日のうちに準備を済ませて、さっそくお宝の眠る-マグマのちてい-へ向かおう。」

『ハイ!頑張ります!』

 

元気良く返事をするブイゼルを横目に、二人はその場を立ち去っていった。

 

『うー。 楽しみだな、早く準備しなくっちゃ♪』

 

と、はしゃぎながら街へと向かうブイゼル。軽快な足取りで、口笛を吹きながら道を歩むその姿はまだ世界を知らない一人の子供のようであった。

 

『はじめての冒険かぁ・・・うー、すっごい楽しみだな!』

 

尻尾をパタパタと振りながら、冒険への夢と希望を膨らませて喜んでいる。

そんな時間はあっという間に過ぎて、夜になってブイゼルは寝床へと戻る。

その喜び顔と言ったら、もう小さな子供のような表情をしながら、ゆっくりと眠りについていった。

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