「んぐぅうぅっ!!!」 幸い、まだ呑み込まれてない。 だが身体は先程より高い位置にあり、肩口まで口の中に収められている。 危機的状況なのは変わりないが、まあ出来る限り抵抗して、あわよくば吐き出して・・・ ふとここで考えた。 この行為をする前、アレイの表情は熱を帯びた物であり、あの眼差しは俺をしっかりと見据えていた。 つまり、感情を抑えられなくなったアレイがボールを壊し。 どうやったのかは分からないが、腰のホルダーを外し。 この閉鎖空間まで連れてきて。 説明になってないかもしれないが、多分こんな流れだと想う。 この全てを言い換えれば、「誰にも邪魔されない、二人だけの空間」ってことになる。 これが相思相愛なら何も問題はないだろう。 だが、今はアレイだけの一方的な愛情でここに居る。 いつもなら言うことをキチンと聞いてくれる、賢い子がこうやって。 愛する余り、こんな行動に出てしまった。 歪んだ愛情。 そんな表現が一番正しいと想う。 抱きしめ、嬉しそうな表情。 嫌がるのも厭わずに、自分の都合のみでコトを進められる力。 こと愛する者に関してはその力も強くなり、まさしく自分の玩具のような扱いも出来る。 そんな中で、彼女は俺を捕えて呑み込もうと忙しなく動いている。 【アナタは私だけのモノ。】 幻聴かもしれない。 耳から入ってきたと想われるその声は、確かにそう言った。 その次の瞬間、頭から腰まで一気に喉へと収められる。 「・・・・!!・・・・・・っ!!」 狭く、そして俺を呑み込まんと動く肉壁。 柔らかでありながら、力強く蠢いているソレは気持ちよいと言える程ではないが、ああ、こんな感じなんだなぁと思わせるには十分だった。 声が出せないのが難点で、腕も動かせない。 唯一外にある足だけが自由に動かせるが、次第に先程感じた口内の感触が現れ始める。 足をばたつかせても、顎や舌に当たるだけ。 万事休す・・・ その言葉を思い浮かべた後に、足が喉に入る感覚がした。 -ゴクン- その音が聞こえ、もう逃げられないことを悟った。 重力に引っ張られるまま、喉を落ちていく。 外から見れば異様な光景である。 だが、そのボスゴドラは呑み込んだ愛する者を自分だけのものに出来たという、その事実を感じながら悦に入っている。 そして小さく鳴いてから、その場で暫くお腹の中に入った愛する人を愛でるように優しくお腹を撫でる。 胃壁は身体を包むように、そして動けないように狭くなっている。 何も出来ないまま、その状態にされて少し辛い。 何度かここから出せと言っているものの、特に何の反応もなく時間だけが過ぎ去っていく。 ポケッチが無いから時間も分からず、その柔らかな胃壁が身体を微かに刺激している感触に悶えているしかなくなる。 しかし、胃の中に消化液が分泌されることはなかった。 これも恋心が成せる、一つの技であろう。 この場合は、歪んだ愛情だが。 話す体力もなくなり、呼吸も弱々しくなっていく。 そのせいか、意識が虚ろになっていく。 このまま意識を失えば、何をされるか分かったものじゃない。 だが、このまま起きていてもいつかは同じ状況に陥るだろう。 そう考えた後、俺はそこで目を閉じた。 めのまえが まっくらになった! |