置いて、行かれた… 

…遅れたから置いて行かれたのか、 
存在を忘れられただけなのか… 

…いや、どっちでもいい。 
とにかく今は、みんなと合流しないと… 



ボクはロゼリアと二人で、仲間達が向かった思われる方へ歩いていった。 
はぐれた時はじっとしているのが鉄則…なんだろうけど、 
この辺りは夜になると野生のポケモンが出る。 
日が暮れるまでに、仲間と合流するか… 
…無理だとしても、どこかの町なり村なりにたどり着かなければならなかった。 


ボクたちは、必死で歩きつづけた。 


「ねぇ… ねぇってば!」 

ロゼリアの声で、ふと我に返る。 

「向こう… あれ、家じゃない…?」 

ロゼリアの指す方を見る… 

…確かに、家だ! 

「…行ってみよう!」 

ロゼリアの手(?)を引いて家の方に走る。 
どんな人が住んでいるのかは解らないけど… 


…とにかく、今は人が恋しかった。 


「すみませーん」 

1回、2回… 

「すみませーん」 

…3回、4回、5回… 

「すみませーん!」 

6、7、8、9… 


「何だ、うるせぇな!」 

10回…  

…あれ…? 


「ボウズ… 初対面の人を殴るたぁ、良い度胸じゃねぇか…」 

その人の両手の大きなハサミを見た時… 
…ボクは一瞬、死を覚悟しました… 


「…なるほどなるほど… よーするに、ボウズ共は仲間から置いてけぼり食らったってワケか。」 

ハサミの人… いや、ハッサムさんは、話せば解る人で… 
…ボクたちにスープを出してくれて、話を聞いてくれた。 

「はい… もう、ボクたちどうしたらいいか…」 

「…まぁ、この辺りは夜は危険だしな… とりあえず、今日は泊まってけよ。」 

「あ…ありがとうございます!」 

なんて親切な人なんだ… 
ボクは何一つ疑わず、泊めてもらうことにした。 

「…あのう…」 

…と、ロゼリアが後ろから口を出す。 

「ん…?」 

「ハッサムさんは、戦争には行かないんですか…?」 

“戦争”と言う言葉を聞いた途端…ハッサムさんの表情が険しくなった。 
…正直、ボクが真っ先に心配したのは… 
ハッサムさんが怒って、泊めてくれなくなる事だった。 


「…戦争、か…」 
「はい… ハッサムさん、お強そうなのに…」 

ボクはとりあえず、これ以上ロゼリアがヘタな事を言わないか、内心ヒヤヒヤしていた。 

「…行ったさ。」 
「えぇっ!?」 
「…負けたよ… 炎軍に攻め入られてな。」 

炎軍に… と言う事は、炎軍は次々に色んな所を侵略して行ってるのか… 

「…ん…?」 

ここで、一つの疑問と…不安が生じた。 

「あの… ハッサムさんは… “どこの軍に所属していたんですか?”」 

…本当は聞きたくなかった。 
帰ってくる可能性のある答えのうち… ひとつは、最悪の答えなんだから… 


ハッサムさんは、少し下を向いて…言い辛そうに答えた。 


…そして… 帰ってきた答えは 

「“鋼軍”だ…」 

…最悪のものだった。 


「そんな…」 

…鋼軍が、壊滅していた… 

つまり、それは… 




…ボクは、ショックと…積もりに積もった疲れのせいで、そのまま気を失った。 



光が、まぶしい… 
…すごく、いい気持ちだ… 

いつ以来だろうか… こんなに、休んだのは… 
…こんなに、気持ち良い朝を迎えたのは… 

「…お、目ぇ覚めたか。」 

「…ん…?」 

…目が覚めると…そこにロゼリアとハッサムさんの姿はなく、 
黄色と黒のポケモンが立っていた。 

「あんた… いきなり倒れて、今の今まで寝てたんやで?」 

「はぁ…」 

…誰なんだろう、この人… 
顔はかわいい…けど、頭についた大きな口…? みたいなのが、怖い… 

「…あ… うちはクチートや。 よろしゅう。」 

「…えっと…」 

とりあえず、手を出されたので握手はして置いたが… 

…聞きたい事と言うか、聞くべきことが多すぎて、 
何から質問すればいいか…全く解らなかった。 


…クチートから水を貰うと…ボクは、まるで封が切れたように、 
次から次へと質問を浴びせた。 

結構無茶をしたとは思うが…クチートは、それに一つ一つ答えてくれた。 


…まず… クチートは、ハッサムと一緒に逃げ延びた残党らしい。 
そして、ハッサムとロゼリアは食料の調達に行ったらしい。 

他にも色々と聞いた気がするが、その8割位が無意味な質問だったように思う。 
…とにかく…その時は、人と話せるのが嬉しかったんだろうな… 


そういえば… 皆、どうなったんだろう… 


それから… 掃除をして、料理を作って、 
皆で話して… 遊んで… 

…あっという間に、夜になってしまった。 


とりあえず…今は、この人たちと一緒に居よう。 

…多分、全員がそう思った…と、思う。 




それは… 叶わない、事…だったんだけど… 


…朝… 


いや… 正確に言うと… 
…真夜中… だったと思う… 


ものすごい爆音で、目が覚めた。 

…焼けた匂い… 

…すごい煙… 



…家が… 燃えている…!! 


ボクはあわてて外に出た。 

…と、同時に… 家が崩れた。 

もし、取り残されてるなら… 炎に弱い、3人は… 



…夢なら、覚めて… 


「…何だ… 生きていたのですか。」 

「…!?」 

ボクは、声のした方を振り返る。 

…そこには…一匹のムウマージが居た。 


「…私が狙っていたのは、あなただったのですが… 残念です。」 


「おまえが… やったのか…?」 


…ボクは… 

「…ええ、そうですよ…」 
…ボクは、はじめて… 

「なんで! なんでこんなことを!」 
…はじめて… 

「…あなたを…仕留める為、ですよ。」 
…はじめて、人を殺したくなった。 

「このやろぉぉぉッ!!」 
無意識に放ったのは… 父から教わった、シャドーボールだった。 

「むぅっ…!?」 
ムウマージはよろめき… そして、舌打ちを残して…どこかへ消えてしまった。 

「待てよ…」 
…なんで… 

「何で… 何でなんだよ…」 
…どうして…? 

「何で、こんな事するんだ…」 
…なんで、こんな事になるんだ… 


「父さぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」 


−第二部 完− 


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