「やあ♪久しぶりだね。」

 其処に居たのは会った事の無い男性だった。思わず固まってしまった。
思考が回復して来る。
(泥棒……?)

「あっ!その目は疑ってるな〜。」

 いや、そんな事を言われてもなぁ…
何処かで聞いたような声だけど。

「いや、悪いが記憶に無いんだが…」

 そう言うと、

「あ、この姿じゃ会ったこと無かったね。ではでは感動のご対面〜♪」

 言い終わるのが早いか彼の体から閃光がほとばしる。光が収まると、そこに居たのは見覚えのある竜だった。よく考えたら、普段からこんなハイテンションな奴なんて竜以外に知らない。

「どう?思い出した?待たせてごめんね。」

「ああ、しっかりとな。久しぶり。でも何で俺の所に?もっとお前の仲間がいる世界も知っていただろうに。この世界には竜なんて多分お前だけだぞ。」

 そう言うと竜は少し言いにくそうに、
「えーと…その、なんて言ったら良いのかな…?」

 ん?なんか困ってる?竜が人間相手に困るってのも面白いもんだな。

「僕の事を怖がらなくてくれた、ただ一人の人だから…かな?」

「え?でも、最初は俺も怖がったと思うけど…」

「そんな事は無いよ。みんな最初は驚くけれど、その後に怖がったり、敵意を見せなかったのは君だけだったんだ。僕はそれが嬉しくて君と…ヒクッ」

 だんだん声が小さくなっていき、終いには竜は泣き出してしまった。

「お、おい。泣くなよ…大丈夫だって。此処にはお前を怖がったりする奴はいないから…」

「ウウッ…有難う……ヒクッ。僕ね……たくさん人を殺したって言ったでしょ…ウクッ……あれはみんなが襲って来てね……仕ヒクッ方なくやったウクッんだ。僕は、最後まで話し合おうとヒクッしたんだ。でもね、みんな聞いてくれなくて……戦わなきゃなったんだ。ウウ…その時にね……偶然、神様の子供をね……傷つけちゃったんだ……ウクッ……それでね、こんな罰を受けてたの……」

 その事を聞いてショックを受けた。まるっきり人間の身勝手じゃあないか。

「そうだったのか…なら尚更僕にそばにいてあげる資格は無いよ…」

 そう言って目線をそらす。しかし、竜は首を下げてきて顔を摺り寄せてきた。

「ううん、そんな事無いよ。怖がらずにいてくれた。その事だけでも嬉しかったんだ。だから、ずっと一緒に居て欲しい。」

 か、可愛い…
思わずそう思ってしまった。だが、ふと気になった事がある。
 周りに見つかったら大騒ぎになりやしないか?

「なあ、ふと気になったんだが、お前が周りに見つかったらどうするんだ?前も言ったけどこの世界には竜は存在しないと言われているから存在がバレたら大騒ぎになるぞ。」

「それは大丈夫♪こっちに来るときにこの世界の神様にお願いして僕の姿を見ても『なんだ、ドラゴンか』程度で済むようにしてあるから。ついでに言うと、食費の心配も要らないよ〜♪僕はひと月に二回食べれば大丈夫だから。」

 へぇ…なら背に乗せてもらって一緒に空を飛んだり出来るんだ。

「それってひと月に二回しか食事しない代わりにドカ食いするとかじゃ無いよな。」

 姿を見られても問題ない以上、唯一の懸念材料を聞いてみる。

「大丈夫大丈夫♪牛一頭だから。」

……………どこが?

「うそ♪ほんとは普通の人間の大人の1日分ぐらいで良いの。」


「そう言えば、どうやって神様と取引したんだ?」

 竜が返した答は納得出来るような出来ない様な物だった。

「飲み込んだの♪気持ち良かったって。最初は暴れてたけどね〜。」

「へ、へえ〜。(確かにあれは気持ち良かったからな………でも、神様がそれで良いのか?)あと、最後になっちまったが名前は何て言うんだ?俺は長谷川省吾って言うんだが。」

 

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