『退屈だねえ。』
『退屈と言われましても…』
『だれか人間でも来ないのか?』
『来ませんよ。こんな所に。』
『ニタ殿。人間が来ましたよ…』
『来たじゃねえか』
『はあ… なぜこんな所に…』
『人間と猫1匹です。』
『ほう。見に行くぞ。』
『はい』
そう言って3匹の猫たちはどこかへ歩いていってしまった…
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ごく普通の町
ごく普通の学校
ごく普通の生徒の中の…
蒼いブレスレットをした1人の非凡な少年
それが僕。「津田祥吉」です。ある国の王様です。
それと腕のブレスレットは…
異世界の魔石…とても簡潔に片づけておきます。
とても不思議な力を持っています。
9月のやや寒い風が走る道路を自転車で家に帰るところだ。
そうして自転車に跨った。
いつものルートをのんびり走っている。
しばらく走っていると、いつも通る道沿いの居酒屋の前にいつもいる白黒柄の猫がいた。
「おっ いたいた。」
そう言って自転車を降りた。そして手を伸ばすと、案の定こちらに来てくれた。
喉を鳴らして体を摺り寄せてくる。
そのときに、うっすら何かを訴えようとしているんじゃないのか? と思ったけども、前に猫の言葉を聞けるようにして大変なことになった。腹減った腹減ったとしか言われない… しかも返事しちゃってもういろいろ…
だから猫の言葉を聞けるようにすることをできるだけ避けているのだ。
そんなことを考えてるとその猫がじっとこっちを見ている。聞いてくれと言わんばかりに…
「あ〜 もう!!」
そう言ってからこう思い浮かべた。
(この猫が何を言っているのか…)
その瞬間
『聞こえていますか?聞いてください!!』
と声がする。この声の不便なところは普通の声と聞きわけがしにくいところだ。
「聞こえてるよ。なんかご用で?」
少しめんどくさそうな感じで答える。
『できればお願いをしたいのですが…』
「それは?」
『ある場所へ連れて行って欲しいのです。』
「なんでまた?」
『それは…』
そう言ってから猫はきょろきょろと周りを見てからこちらを向いた。
『この通りです。』
「えっ…」
ぼくは息をのんだ。
それもそのはず。猫の尻尾が、なんと二本に裂けているのだ。
「お前さんって…猫股?」
『ああ。御存知ですか。私のように一定の年をとった猫が猫股に変化しかかり、その場所に修行に行くのです。そしてその後戻ってもよし、修行を続けてもよしといった所です。お分かりですか?』
尻尾を一本に戻してから言った。
「はぁ…なんとなく。 それでどこに連れて行けばいいんだ?」
『肥後の天草下島です…』
「…えーっと、昔の地名で言われてもわかんねんだけど。」
『そんなこと言われましても…世界は広いものですし…』
「いや、今の地名でどこって聞いてんの。」
『えーっと…熊本というところでしょう。その猫股岳というところに…』
「熊本!?おれにゃあちょっと無理だな!遠い!」
猫の言葉を遮って言った。
『そんな…私の言葉がわかるのはあなただけなんですよ!?どうすればいいのですか?』
「どうしろって言われてもねぇ…。悪いんだけど…」
そういって思い浮かべた。
(元にもどれ!)
そう言ってからあの猫の言葉は聞こえなくなった。…はずだが
『こうしたくはないのですが…』
「えっ?」
そう言う間もなく気づいたころには猫にまんまと体当たりを喰らい、倒れてしまった。
「いってぇ…」
『連れて行かないのですか?』
仰向けに倒れた僕の上に乗り睨んでいる。
「近くならともかくこんなに遠いとなると…」
『なら仕方ないですね…』
すると猫の尻尾が再び2本に裂け、その2本の尻尾が僕の喉を勢いよく跨いだ。
「おわっ…何するんだっ!」
動けない。
『…』
このとき見た。
猫の目は
血のように真っ赤だった。
これは…
本で読んだことがあった。
何だったっけ…
確か猫股が裂けた尻尾で人間を跨いで…
それで…
それで……
…
呪いをかける!!
思いだした頃にはもう猫は僕から下りていた。
『恨らまないで頂きたいですね。これは私のせいではないですから。』
「…どういうこと?」
『わたしはここにいます。その時に教えましょう。』
そして猫はよったよったと路地裏に行ってしまった。
う〜ん…
それだけ言い残されても困るんですけど…
とにかく僕は猫に呪いをかけられてしまった。
どうしよう…
…
「わっ!!」
ってなんで僕は道路に大の字に寝てんだよ!!
急いで起き上った。見られなくて良かったぁ。車も来なくてよかったよぉ…
まあ…猫は行っちゃったことだし、呪いが本当とは限らないし、と前向きに家に帰った。
|